題「誕生日の出来事」 | |
7月15日は一護の誕生日。 この日を一日一緒に居る為に剣八は非番をもぎ取った。一護が朝ご飯を食べ終えた青陽に、 「青陽、お母さんとお父さんはデートしてくるから虎白兄ちゃんと今日一日遊べるぞ」 と言うと、 「にいたん来るの?!」 「そうだぞ!夜までずっと一緒だぞ〜。夜には一緒にケーキ食べような〜」 とうりうり頬ずりする一護。 そんな訳で呼び出された虎白。 「要するにお前ら夫婦がいちゃついてる間は俺が子守りする訳だな」 「そう言う事だ。・・・変なトコに連れてくんじゃねえぞ」 と剣八が言う。 「てめえと一緒にすんな。さっさと行って来い、ガキが泣く前に帰って来いよ」 「へいへい。ほらよ!」 と投げて寄越されたのは財布。しかも結構入っている。 「なんだよ、これ?」 「一日ガキの面倒見るんだ。要るもんだろうが、好きに使え。余ったらやる」 「流石に太っ腹だな」 その財布を懐に仕舞うと青陽を呼んだ。 「にいたん!」 たたっ!と走り寄る青陽を抱き上げると、 「おう、大分重くなったな。背も伸びたか?」 「わかんない!でもにいたんみたいにカッコよくなりたい!」 「そうかそうか」 ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやる虎白。 お昼近くに出掛けると言う二人。 「じゃあな。行ってくる。お昼ごはんは台所に置いてあるから一緒に食ってくれ。洗濯物はご飯が済んだ後で取り込んでくれ。畳まなくて良いからな」 と一護が言った。 「あー」 私服の着物に着替えて出掛ける一護と剣八。 麻の生成りに焦げ茶の帯の一護。常磐色に藍の帯の剣八。 「ケーキおっきいの買って来るからなー!楽しみにしてろよ、青陽!」 「あい!いってらっしゃい!おかあしゃん!おとうしゃん!」 二人が出て行ってから用意してあったお昼を食べ、洗濯物を取り込んだ。 「相変わらず、洗濯物多いよな・・・」 「どうしたの?にいたん」 「何でもね。さてと昼寝の後でどっか遊びに行くか?」 「うん!」 「じゃ、さっさと寝ちまうか」 「はーい!」 とワカメ大使のクッションとタオルケットを引きずって来ると居間で昼寝を始める青陽。 「俺も寝ちまお・・・」 大きな欠伸をして青陽の横で寝転がる虎白。 その頃の一護。 「今日はどこに連れてってくれるんだ?」 「すぐそこの店だよ」 と示されたのは大きな料亭だった。 「でけえ・・・」 呆然としている一護を置いて先に行く剣八。 「何してんだ?さっさと来い」 「あ、おう!」 一護が暖簾を潜ると帳場で剣八が、 「約束してた更木だ」 と言うと、 「お待ちしておりました。こちらでございます」 と女将が案内を始めた。 広い建物の廊下を歩いて行くと一旦外に出た。 「え?」 一護が戸惑っていると女将が、スッと手を伸ばし先を指した。 「あちらでございます。更木様がご予約なさった離れにございます」 そこは雨乾堂程の広さの離れだった。 「では後ほど料理を運びますのでどうぞお先に温泉にて疲れをお取り下さい」 さらに大浴場まで案内され、汗を流す二人だった。 その頃の虎白達。 「ん〜、むにゅ・・・う?」 昼寝から目が覚めた青陽が虎白を起こす。 「にいたん、おっきして?にいたん!」 「んう?なんだもう起きんのか」 「うん!遊び行こ!」 「だなぁ」 コキッと首を鳴らすと一緒に出掛けた。 「にいたんどこ行くの?」 「イイとこ」 虎白に肩車されてご機嫌な青陽が訪れた場所は・・・。 六番隊・隊首室。 青陽を肩車したまま、ドガンッ!とその扉を蹴り開ける虎白。 「邪魔すんぜ」 「お前な・・・」 む、とした顔の白哉。青陽を認めるといつもの顔に戻った。 呆れた顔で何かを言おうとする恋次を無視し、彼の斬魄刀を蹴り上げる。 「おい!起きろ!」 「なッ!てめえ何しやがんだ!」 「ああ?うっせえな。青陽がお前の猿と遊びたがってんだ。貸せ」 「貸せってお前なぁ」 「あっ!」 嬉しそうな顔で恋次の後ろを指差す青陽。 「貴様・・・、儂を蹴るとは何事だ・・・」 「るせえよ、猿。おい、茶菓子と茶!気が利かねえな。一護は客にはすぐ出すぞ」 ボスン!と来客用のソファに座る虎白。その隣りに座る青陽が目をキラキラさせて蛇尾丸を見ている。 「人使いが荒いな」 とぶつぶつ文句を言いながら用意してやる恋次。 「ほれ!饅頭と茶!」 ついでに自分と白哉の分も淹れた。 「ほれ」 虎白が青陽に饅頭を取ってやった。 「ありがと!にいたん!」 はむ!と饅頭を頬張る青陽。 はむ! もきゅもきゅ。 はむ! もきゅもきゅ。 と子リスの様に同じ動きを繰り返すのをじっと見ている恋次達。 「可愛いっすね」 「うむ」 「お猿さんも食べる?」 二つ目を食べようとして自分の横の蛇尾丸に訊いてみた。 「む?うむ」 青陽から饅頭を貰うと口へと運ぶ。 「美味しいねぇ」 「ふむ・・・」 もぐもぐと咀嚼する。 「ああ、そうだ。おい赤毛!69の伝令神機に連絡入れろ」 「あ?なんで!?」 「良いからやれ」 「にいたん、風死にいたんも?」 「おう。お前が良いっつうんなら蛇尾丸もな」 「うん!良いよ!一緒に遊ぼ!」 「よっしゃ、決まりだな。おい」 「わあったよ!」 渋々修兵の伝令神機に電話を掛けた。 「・・・あ、センパイっすか。ええ、まあ。あのですね」 と話している途中で虎白が神機を奪った。 「あ!こら!」 「おい69、コレお前の斬魄刀に聞かせろ」 『はあ?何言って・・・』 「さっさとしろよ、鼓膜破けんぜ?」 すぅ〜、と息を吸うと大声で、 「今から行くから具象化しとけ!青陽も行くからな!」 それだけ言うと電話を切った。 キーンッ!!と耳鳴りがする耳を押さえる修兵。 「な、なんなんだ!一体」 と憤慨する修兵の横を黒い何かが横切って行った。 「ん!?あ、こらー!風死!」 六番隊の隊首室に黒い疾風が飛び込んできた。 「うおっす!来たぜ!」 「遅えよ」 「風死にいたん!」 「早いっつーの!んで今日はどうしたよ?また子守りか?」 「あのねぇ、おかあしゃんとおとうしゃんがね、おデートに行ってるから青陽と虎白にいたん、お留守番なの」 「なるほど。そうかぁ、えれぇな、青陽は」 「うぷ!」 ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやる風死。 「んじゃ、どっか行こーぜ」 「どこ行くんだ?」 「青陽連れてっからな。いつもと一緒で良いんじゃね」 「金は?」 「剣八が寄越した。心配すんなよ」 「あそこの旦那は嫁に甘ぇよな。お前に小遣い渡すなんてよ」 「大概な」 と言いながら出て行く四人(?) 「おじゃましました!」 蛇尾丸の背中に乗って青陽が恋次と白哉に挨拶をした。 「おーう、あんま遅くなんなよ、蛇尾丸!」 「へいへい」 その頃の一護と剣八。 「ふぅ〜、良いお湯だった。今度青陽たちも連れて来てえな」 「また今度な」 部屋に着くと料理が運びこまれている所だった。 「すっげ!こんな豪華なもん久し振りだな!」 「ちゃんと食えよ」 「おう!」 と並べられた豪華な食事を平らげて行く一護。 「剣八、ほらお酒」 と剣八に酌をする。 「おう、お前も飲むか?」 「ん、少しだけな」 食事が済み、後片付けも済んだ。 「こう言う所って後片付けしなくて良いのが助かるよな〜」 と寛いでいる一護を抱き上げると隣の部屋へ連れ込んだ。 そこには一組の蒲団が敷かれてあった。 「さて今度は俺がお前を可愛がってやるよ」 「もう、真昼間なのに・・・!」 「偶にゃあ良いだろ?」 「ばーか・・・」 静かに襖は閉められたのだった。 その頃の青陽達。 虎白と風死は駄菓子を買い食いしながら子供談義に花を咲かせている。その横で青陽と蛇尾丸は買ってもらった駄菓子を食べながらじゃれ合っている。 「蛇尾丸たん、お尻尾が蛇たんなの?」 「うむ、儂は鵺を呼ばれておる」 「触っても良い?」 「さて、蛇に聞いてみたらどうだ?」 「うん!蛇たん、触っても良い?」 「別に構わねえよ。その菓子寄越せよ」 「これ?はい!」 と青陽が手に持っていたお金の形のチョコを差し出すと丸呑みした。 「わあ!すごいすごい!おっきいお口だぁ!」 きゃっきゃっと喜んでいる。 そこにふらりと京楽が現れた。 「おやぁ?青陽君じゃないの。どうしたのこんな所で斬魄刀と遊んで」 「こんにちは、きょーおじしゃん。今日は虎白にいたんと風死にいたんと蛇尾丸たんと遊んでるの!おかあしゃんはデート!」 「なるほどね。もうすぐ夕飯でしょ?おじさんがご飯奢ったげるからおいで」 「ん〜・・。虎白にいたん!」 「あん?どうした青陽」 「きょーおじしゃんがいっしょにご飯食べようって!」 「はん?てめえの奢りなら行ってやるよ」 「勿論さ。風死も蛇尾丸もおいで」 と全員を食事に誘った。 食事がてら酒を勧められた3人。青陽は虎白の胡坐の中でご飯を食べている。 「あ〜、ん!」 「美味しいかい?青陽君」 「うん!」 「この酒美味いな」 「役得だな、おい」 「そうだの」 と酒が進む3人。酔いが回った虎白がニコニコしている。 「にいたん、楽しそう」 見ている青陽も嬉しそうにニコニコ笑っている。 「おや、もう外が暗いねぇ。蛇尾丸、青陽君を送ってってくれるかい?」 「ああ、良いぞ。行くぞ、青陽」 「にいたんは?」 「あ奴はまだ飲むようだ。久し振りだから楽しんでおるようだの」 「ふうん、虎白にいたん。僕先に帰るね〜」 「ん〜?おお〜、ケーキ残しとけよ〜」 「うん、分かったぁ!」 「さて、行くかの」 「うん!」 鬼(虎白)が居ぬ間に、と帰り道で青陽と遊ぶ蛇尾丸。 「一護、青陽を連れてきてやったぞw」 「あれ?蛇尾丸?虎白はどうしたんだ?一緒じゃなかったのか?」 「あいつは・・・ちょっと事情があってな・・・。そのうち帰って来るだろう(目線を逸らす)」 「あいつ・・・帰って来たらお仕置きだな。ああ、蛇尾丸。ありがとな!」 「いや、いい。我等も青陽と遊べたからな」 「バイバイ、蛇尾丸たん!またね〜!」 後ろめたさを感じながら去っていく蛇尾丸だった。 「しょうがねえお兄ちゃんだな。ケーキは残してやるか。さ、青陽はお母さんと一緒にケーキ食べようなぁ〜!」 「うん!」 酔いつぶれて京楽にお持ち帰りされて喰われて朝帰りした虎白。 「あいつ、何処行ってるんだ?」 「あ?お前の中に帰ったんじゃねぇのか?」 「それなら分かるって。まったく朝まで何処ほっつき歩いてるんだか」 一護が呆れているとガタンと音がして虎白が帰ってきた。俯いて壁伝いに歩いている。 「お前、なんでへろへろなんだ?」 「・・・一護ぉ〜・・・」 ふらふらと一護に近づくとはふりと抱きついた。 「お、おい!?」 「一護・・・・俺、喰われた・・」 「・・・は?」 「俺、虚なのに・・・喰われたっ!」 いつもはキッチリ着込んでいる死覇装の、乱れた項からキスマークが見え、虎白の様子から喰われたと言う意味が判った剣八。 「誰にやられた?」 「髭面の酒臭せぇオヤジ」 「京楽か。つーかお前ぇ京楽に付いていったのか?」 「んな訳あるかっ!・・・・・酔い潰れて起きたら喰われてたんだよっ!」 剣八に食って掛かるが、ずるずると蹲ってしまった虎白。 「〜〜〜;腰が痛てぇ・・・ケツが痛てぇ・・・」 状況が判って溜息しか出ない2人。 後日 「やぁ、虎白ちゃん。誕生日プレゼントは気に入ってもらえたかなぁ〜?」 ニコニコと虎白に話しかける京楽。心当たりがない虎白。 「ああ?んなもん貰ってねぇぞ」 「いやだな〜。僕の愛をあげたでしょ〜?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・月牙天衝おぉぉぉぉ!!!」 後には凄まじい破壊の跡と吹き飛ばされた京楽と涙目で肩で息をする虎白の姿があった。 おまけへ続く 11/08/24作 食われる虎白とイチャコラ夫婦は別に書きます。 蛇尾丸は他の斬魄刀に自慢してるといい。「青陽と遊んだぞ!」 他の斬魄刀はまだ遊べて無いとか。 |
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