題「結晶」2
 剣八の書類仕事が終わり、一度隊首室に帰る剣八。
一人になった一護はもそもそと蒲団から這い出ると縁側に座った。

 日はだいぶ傾き、日陰になっているので過ごしやすい。時折涼しい風も吹いている。
一護は今までの事を思い出していた。

 子供が欲しいと言われ、二十歳まで待ってくれと言った自分。待つと言ってくれた剣八。
その間もこちらに来ればいつもの様に愛し合う事もした。

 でも四年の間に心変わりするかも知れないと言う不安。

 そんな不安に押し潰されそうな時に相談に乗ってくれたのが、弓親や乱菊である。
女々しいと思いながらも不安を口にすれば親身になって慰めてくれたのだ。
そして四年たったあの日、剣八は何も言わずとも自分を求めてくれたのである。

 そんな事を思い出し、ふっ・・・と微かに笑うと、
「いっちー、寝てなくて大丈夫なの?」
 といつから居たのかやちるに声を掛けられた。
「やちる、いつからそこに居たんだ?」
「今さっき。ねぇ赤ちゃん出来た?」
 と首を傾げて訊いて来た。
「ん?まだ。もうちょっと掛かりそうだな」
「そっかぁ〜。でも無理しないでね?いっちーの身体も大事だからね」
「ありがと、やちる。やちるは俺達の子供のお姉ちゃんになってくれるか?」
 やちるを抱き上げ、膝枕をしてやった。
「うん!あったり前だよ!妹でも弟でもあたし嬉しい!」
「ありがとな・・・」
 それから色んな話をした。一護はここに連れてこられてから他の奴らには会っていない。恐らく皆が気を遣っているのだろう。
だから今日はこんなことがあったなど、取るに足りない話しでも楽しかった。
そのうち眠ってしまったやちるの髪を優しく撫でていると剣八が戻って来た。
「おう、なんだ縁側で涼んでんのか?」
「剣八、うん・・・」
 一護の隣りに腰を下ろすと、
「なんだ、やちるのヤツ、昼寝か?」
「みたいだな」
 くすくす笑う一護。
ここ数日の一護は纏う色気が濃くなっている。昼夜問わず子作りに励んでいるのだから当たり前かもしれない。
「そういやぁ最近討伐に行ってねえよなぁ?」
 一護がここに来てからの疑問を聞いてみた。
「ん?ああ・・・、討伐は入れてねぇ」
「なんで?」

 一護の誕生日前日、隊首会にて。
「以上で儂からの話は終わりじゃ。他に何かあるかの?」
「じいさん、頼みがあんだがよ」
「なんじゃい、更木」
「明日から俺んとこには討伐は回さないでくれや」
「ほ、珍しい事もあるもんじゃの?して理由は?」

「子作り」

 その一言を聞いた各隊長は、目を見開く者や、頷く者などがいた。そんな隊長格を代表して京楽が聞いた。
「聞いても良いかな?お相手は?」
「あぁ?一護に決まってんだろうが。じゃあな、じいさん。頼んだぜ」
 白い羽織を翻し悠々と帰っていく剣八だった。
それを思い出して喉の奥で笑う剣八。
「なんだよ、思い出し笑いか?」
 すぅ、すぅ、と軽い寝息を立て丸くなって眠るやちるを撫でる一護。
「俺達の子もやちるみたいに良い子に育ってくれるかなぁ」
「大丈夫だろ・・・お前が母親なんだ・・・」
 一護の肩を抱き引き寄せると、額に口付けてやった。
「ん・・・」
 日が暮れ、夕焼けが辺りを染めていた。
「もうすぐ晩飯だな。起きろ、やちる!」
「ん〜・・・、剣ちゃん・・・?」
「飯の時間だぞ、起きろよ」
「うん・・・」
 こしこしと目を擦りながら起きたやちる。
「じゃあまた明日ね、いっちー」
 と皆が居る隊舎に帰っていった。
「な〜んか、さみしいな」
「そうか・・・」
 さぁ・・・っと夜風に舞う一護の髪を梳いてやると、
「先に風呂に入るか?」
「そうだな、皆待たせるとアレだし・・・」
 二人で風呂に入った。

 風呂でも剣八は一護を丁寧に扱った。
髪から身体から全て洗ってやり、一緒に湯船に浸かっている。
「なんか、甘やかしすぎ・・・」
「良いじゃねえか、甘えてろ」
「うん・・・」
 ちゅ、とキスをしながら温まり、風呂から上がると部屋へと戻った。
「ふう・・・、気持ち良かった。なぁ今日しなくても良いのか?」
「続けざまは負担も掛かるだろ。ゆっくりでいいさ」
一護の髪を乾かしてやりながら言い聞かせる。
「分かった・・・」
 その日は大人しく眠った二人だった。

そして一護が瀞霊廷に来て早一ヶ月が経とうとしていた。


第3話へ続く




11/1/26作  まったりとした日々を過ごす一護でした。

02/24加筆しました。


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