題「結晶」13
 一護がしゃがんで庭いじりをしていると後ろから元気な声を掛けられた。
「一護ッ!」
「ん?」
 と振り向くと塀を乗り越えようとする夜一が居た。
「ああ、夜一さん。こんちは」
「うむ、久しいのぉ。最近はずっとここにおる様じゃの?」
「まあな」
 よっこらしょ、と腰をあげると夜一が眉根を寄せた。
「一護?お主、太ったか?」
「ああ、そりゃな」
「その割に顔は以前のままじゃの」
「・・・もしかして夜一さん、浦原さんから何も聞いてねえの?」
「なんじゃ、あ奴は知っておるのか?」
「ああ、あのさ、俺、妊娠したんだ」
「だ!誰じゃ!誰の子じゃ!」
「誰って、剣八に決まってんじゃねえか」
「ほ・・・、お主らがそう言う関係じゃと言うのは知っておったが・・・」
「もう3ヶ月なんだ。あと3ヶ月もしたら生まれるんだって」
 にっこりと幸せそうに笑い、誇らしげにお腹を撫でる一護。
「剣八がさ、欲しいって、言ってくれたんだ」
「ほお、あの更木がのぉ・・・」
 にんまりと笑う夜一。そこへ、
「いっちー!おやつ食べよー!」
 とやちるがやってきた。
「あ、夜にゃんだ。今日は人間だ」
「うむ、お主も元気そうじゃの」
「夜一さん、一緒におやつ食べません?」
「お主が作るのか」
「ええ、最近色々練習中なんだ、今日はホットケーキなんですよ。これだとやちると一緒に作れますからね」
「ほう!ほっとけーきか!バターと蜂蜜はケチるなよ、一護」
「あはは!好きなだけ掛けて良いですよ。俺はメープルシロップが好きっすね」
「あれも美味いがな」
「じゃ、居間で待ってて下さい。飲み物はホットミルクで良いですか?」
「うむ」

 やちると一緒に台所へ消えると、かちゃかちゃと音が聞こえて来た。
次第に甘い香りが漂い始めた。数分後、一人3枚重ねのホットケーキとホットミルクを持って二人は居間にやってきた。
「お待たせ、夜一さん!」
「おお!待ちかねたぞ!」
 コト、と皿を目の前に置くと、
「はい、蜂蜜。バターはたっぷり染み込ませてあるぜ」
「美味そうじゃの」
 金色の蜂蜜をこれまたたっぷりと垂らすとナイフとフォークで食べ始める夜一。
「おおッ!美味いの!生地もふわふわで綺麗に焼けておる。一護は良い嫁さんじゃのう!」
「いいでしょー!あたしのお母さんにもなってくれるんだよ!あたしお姉ちゃんになるんだもん!」
「かっかっかっ!良い良い!あれだけデカい男じゃ!子供の二人もおって丁度良いわ!」
「夜一さん・・・」
 はにかむ様に笑う一護。
「儂もこっちに逗留しようかの。一護の子供の顔も見たいしの」
「ありがと、夜一さん」

「おい、一護。なんだ、来てたのか四楓院」
「邪魔しておるぞ、婿殿」
「ああ?」
 剣八は部屋に入ると一護を自分の膝に乗せた。
「お主ら祝言は挙げんのか?」
「ん、どうする?俺は今のままでも良いけど」
「子供も生まれるのじゃろ。両親の名字が違うと不便ではないのか?」
「別に今どき夫婦別姓のとこもあるよ。俺は剣八と子供らと居られればそれで良いよ」
 と後ろの剣八に身体を預け、片手でお腹を、もう片方でやちるを撫でた。
「ほ・・、相変わらず欲が無いのぉ」
「そうかぁ?」
 首を傾げる一護の口へホットケーキを運ぶ剣八。
「ん・・・」
「さっさと食えよ、晩飯になるぞ」
「ん〜」
 まふまふと残りを食べる一護が剣八に、
「剣八も食べるか?」
 と聞けば、
「いい、甘そうだ」
 と答えた。
「美味いのに」
 食べ終わると夜一が、
「儂も帰るかの。こっちでは砕蜂の所で逗留しておるでの、暇なら遊びにでも来るが良い」
 と隊舎を後にした。
「またな、夜一さん」
 と見送った一護の口の端に付いた欠片を剣八が舐め取り、そのまま口付けた。
「ん、ふあ・・・」
「やっぱ甘え・・・」
「あほ・・・」
 食器を片づけると、やちるは外に遊びに出かけた。

 剣八の膝の中で編み物を始める一護。
「まだ編むのかよ。今度は何色だ?」
「ん?これ。薄い紫つーか、お前の羽織の裏地ってこんな感じだろ?」
「ありゃ滅紫つーんだ。これは藤色だろう」
 と毛糸玉を弄る。
「現世じゃラベンダー色とか言うけどな」
「今度はお前の髪の色にでもしろ。俺ばっかじゃねえか」
「そだな〜。良い感じの色があったら良いな」
 手の中のおくるみを編み進めながら、
「なあ、子供になんて呼ばれたい?パパ?」
「なんでだよ、親父で良いだろが」
「え〜、始めは可愛く『パパ』とか『おとーさん』とか言われたくねぇ?」
「俺がそんな柄かよ。お前は?なんて呼ばれたいんだよ」
「ん〜、ママも捨てがたいけど、やっぱり『おかあさん』かな。男でも女でもお母さんっ子にしてえな」
「なんだそりゃ、軟弱に育てる気はねえぞ」
「お母さんっ子だからって弱いとは限らねえぞ」
「そんなもんかよ」
「そういやぁ、冬に生まれるんだよな。毛糸の帽子とかも編もうかな?剣八も要るか?」
「俺にか」
「うん、お前以外と白い色とか似合うんだよな。白くて太い毛糸でもこもこしたヤツ出来るかな」
「また松本にでも教われば良いんじゃねえのか」
「そだな!靴下とか手袋とかちっちゃいんだぜ!赤ちゃんってすげえよな!」
 と自分のお腹を撫でる一護。
「ああ、そうだな」
 と剣八も一緒に撫でる。

ぽこん!

「お・・・!」
「あ、喜んでる・・・」
「分かるもんなのか?」
「ん、なんとなくな。胎児ってさ母親の感情モロに受けるんだって。剣八と一緒に居ると良く動くんだ」
 それは俺と一緒に居るとお前が嬉しいと言う事か?
「可愛い事言うなぁ、お前・・・」
「え、なにが?」
「なんでもねえ。さっさとこっち出て来やがれ」
 とお腹の子に話しかける剣八。

ぽこんっ!

「おっと」
「まだここに居たいってよ」
「ち!つまらねえな」
「拗ねんなよ。あ、それより大事なことがあったな」
「うん?」
「子供の名前だよ。大事だぜ」
「そうだな。ま、二人で考えようぜ」
「うん、俺達の子供だもんな」
 と夕飯の時間になるまで二人でくっ付きながら、幸せそうな剣八と一護が居た。


第14話へ続く





11/02/20作 今回はほのぼの〜v
生まれた子には猫の着ぐるみパジャマ(?)を着せたいです。黒猫で足の裏に肉球が付いてるヤツ。夜一さんに言ったら超高級な素材で作ってくれるんじゃないだろうか。


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