題「結晶」12
 一護の悪阻が始まってから剣八は一護が食べられそうな物を作っては食べさせていた。
お粥や雑炊など水分の多い物を作っては膝に乗せ、食べさせた。
「ほれ、一護。口開けろ」
「あむ、ん、美味しい」
「もっと食えるか?」
「つか自分で食うから良いよ」
 照れながら自分で食べようとしても、
「テメェ、自分で食ってたんじゃ時間掛かってしゃあねえだろうが、チマチマ食いやがって」
 とひな鳥に餌をやるように食べさせるのを止めなかった。
「だって、いつオエッてなるか分かんねえんだもん」
「俺が食わせてたらならねえじゃねえか」
 そうなのだ。剣八が一護に食事をさせると吐く事はせず最後まで食べられるのだ。
「そうだけど・・・」
「ならちゃんと食え!」
「うん、あむ」
 温かい雑炊を食べていく剣八。
「おっと、ほれ・・・」
 口の周りに付いた雑炊を指で拭うと一護がその指を舐めた。
「ちゅ・・・」
 周りの隊士は慣れたとはいえ朝から甘い空気は少々キツかった。
「果物は?」
「食べる。ブドウと八朔とグレープフルーツ」
「やっぱり酸っぱい方が良いの?」
 と果物を持ってきた弓親が聞いた。
「ん〜、なんかスッとする感じがしてな」
「へえ〜」
「ほれ」
 房から取られたブドウを一護の口に入れる剣八。
「ん・・・あま。良い香り」
「本当、甘そうだね」
 と言って二人きりにさせる弓親。

「今日は遅い・・・?」
「さあなぁ。早めに終わらせるけどよ」
「ん、書類ばっかじゃ鈍るよな」
「あ〜・・・、まあな」
 剣八としては一護を抱けない鬱憤を晴らしているにすぎないが・・・。
「ほれ、最後だ」
「ん、美味しかった。御馳走様」
「ああ」
 手拭いで手を拭いている剣八。
「なあ、剣八・・・」
「うん?ん!」
 ちゅう、と一護から剣八にキスをした。薄い唇を食む様に啄ばみ、歯列をなぞり誘いをかける。
「ん、ん、んふぅ・・・」
 舌を絡ませると甘く噛み、吸い上げる。いつも剣八にしてもらってる事を再現する。
「ん・・・ふぁ・・・」
「どうしたよ、急に」
「だって、最近してないし・・・。キスぐらいなら良いかなって・・・」
 悪阻が始まってからは肌を合わせていない二人。それどころがキスもあまりしていなかった。
「で?お前は大丈夫なのか」
「ん、平気みたいだ・・んあ!」
 そう言った途端に猛然と深い口付けをしてきた剣八。
「ん!ん!んん!ふあ!あん!ん〜〜!」
「は・・、お許しが出たんだ、今日から口吸いでイかせてやるよ」
「〜〜!ばか!」
 顔を真っ赤にした一護に睨まれても痛くも痒くも無い。

 それから隊舎に居る時や部屋に居る時は色んなキスをする二人だった。
触れるだけのキス。行ってらっしゃいのキス。お帰りなさいのキス。おやすみなさいのキス。
ちょっとエッチなキス。腰が抜けてしまう様なキス。実際お風呂でイかされた事も何度かある一護だった。

 二ヶ月もするとお腹もぽっこり膨らんできた。
「赤ちゃんまだ動かないね〜」
と一護のお腹に耳を当てているやちる。
「そうだなぁ。でもおっきくなってきたな」
「うん!」
 撫で撫でと優しくお腹を撫でるやちる。そんなやちるを見ながら編み物をする一護。
「一護」
「あ、剣八」
 ずんずん近づいて来ると背中にあったワカメ大使を抜き取り、部屋の隅に投げる。
「お前な・・・」
 すぐに自分の胡坐の中に納める剣八。
「なんだ、糸の色が違うな」
「あ、うん。一枚は編み上がったんだ」
 と薄い緑色の毛糸で新しいおくるみを編んでいる一護。
「綺麗な色だろ?」
「あ?まあな」
「お前の目の色と合わせたんだ」
 へへ、と笑う一護の膨らんだお腹を撫でる剣八。すると、
「うひゃ!」
「んん?!」
「どうしたの?いっちー」
「う、動いた・・・」
「動いたよな?今・・・」
 お腹の中の赤ん坊が動いた。あんまり擽ったかったので驚いた一護と初めての感触に驚く剣八。
「良いなぁ〜!あたしも触りたい!」
 さわさわ触りながら、
「あたしお姉ちゃんだよ、分かる?」
 と語りかけた。

くにゅ。

「わ・・・!動いた!分かるんだ!わーい!」
 と騒いでいると恋次が紙袋を持ってやって来た。
「失礼します。何騒いでんすか?」
「あー!れんれんだ!今ね、いっちーの赤ちゃんが動いたんだよ!」
「へえ!すげえな!あ、と、これ土産だ。食えるか?」
「鯛焼きか?」
「ああ、俺の行きつけの店のだ。美味いぜ」
「ふうん。あ、あったかい」
「あんことクリームだ」
「おお!今あったかいカスタードが食いたかったんだ!グッジョブ!恋次」
 ガサガサと袋を覗く。
「どれがクリームだ?」
「貸せ、一護」
 と剣八に袋を渡す。
「これだろ、ほれ」
「あ〜ん」
 編み物をしているので剣八に食べさせてもらう。
「お前自分で食えよ・・・」
「今編み物してんだ。汚れたら嫌だ」
 もぐもぐと口を動かす一護の口の端にクリームが付いていた。
「一護」
「ん?」
 剣八の長い指が一護の小さな顎を掴み、上に向けるとクリームを舐め取った。
「・・・甘ェ」
「そらクリームだもんよ。あ、やちるも恋次も食って良いぞ」
「わーい!」
「おお、さんきゅ・・・」
 鯛焼きを食べながら話をする。
「で、身体の調子とかどうなんだよ」
「ん〜、もうちょっと太れってさ。10kgぐらい」
「10キロもかよ!?」
「ん、子供の分5kg、俺の分5kgで10kgだってよ」
「ふ〜ん」
「ま、明日検診があるからな〜」
「気を付けて行けよ?」
「あんがとよ」
 少しずつ食欲が増えて来た一護。

 翌朝。
「んじゃ検診行ってくるな」
「待て、俺も行く」
「良いのか?」
「ああ」
「じゃ一緒に行こ!」
 ゆっくり歩いて四番隊へ行く二人。
「まだまだ暑いけど、秋っぽくはなって来たな〜」
 少し涼しくなった風が気持ち良いのか笑う一護。
「もう九月だしな」
 と言っているうちに四番隊に着いた。

「もう安定期に入ってますね」
 と告げられた。
「へ?早くないですか?」
「女性で言うと今で五カ月ぐらいですね。男性の身体での妊娠ですからね、女性より早くなるんですよ。生まれるのも半年くらいなんですよ」
「半年って言うと後・・・」
「四ヶ月くらいですわね。冬生まれですわ」
 優しく笑う卯ノ花。
「これから過ごしやすい気候にもなりますし、悪阻もなくなりますからどんどん食べて下さいね」
「はい!」
「おい、卯ノ花」
「ああ、夜の営みはもう大丈夫ですわ。ただ激しくはなさらないでください。優しくお願いしますね」
「ああ」
「ちょっ!卯ノ花さ!」
「今更だろうが」
「うう〜」
 他にも色々聞いて検診は終わった。
「ありがとうございました」
「はい、御苦労さまでした」

 帰り道。
「もう安定期か〜」
「飯も普通に食えて良かったじゃねえか」
「ん?うん」
 ちょっと寂しいかな?と思ってしまう一護。
「なんだ?まだ膝に乗せて欲しいか?」
 くっくっと笑う剣八に、
「ん・・・」
 と恥ずかしそうに頷く一護。
ぐしゃぐしゃと一護の髪をかき混ぜる剣八が居た。

 夕飯が済み、二人で風呂に入ると早々に部屋へと籠る二人。
「ちょ、重い、剣八・・・ん・・・」
 口付けで黙らせると寝間着を脱がせていく剣八。
「ん、あ・・・」
「キツくはしねえよ、安心しろ」
「うん・・・」
 大きくなったお腹を守るようにやんわり抱きしめると一護の首筋に吸い付いた。
「ん!あ・・・」
「久し振りだから敏感だな」
 ぬるぬると熱い舌が首筋から鎖骨へと降りる。
「ん、ん、あ、剣八・・・」
 胸の真ん中に残る傷跡を舐める。
「ひぁ・・・あ、ん」
 其処への愛撫で触れることなく勃ちあがった胸の小粒をちゅ、と口に含む。
「あ!熱い・・・」
 ころころと舌で転がし、もう片方を指で摘まんで転がした。
「あ、あ、はっ、ん」
 ちゅ、ちゅ、と優しい愛撫に油断しているとカリッ!と歯を立てられた。
「あうんっ!」
 大きくなったお腹を撫でながら一護の中心をやんわりと握り込む。
「ふあ!」
「は・・・、もうこんなかよ・・・」
「んん!だって」
 一護の中心は既に天を仰いでトクトクと透明な蜜を零していた。
「おっと・・・、下まで濡れてもうグチャグチャだな・・・」
「あ、あ、や」
 息が掛かるほど近くで囁かれたと思ったら蕾に舌を這わされた。
「ひああっ!や、や、けん、ぱちぃ!」
 皺の一本一本を数える様に舐めては奥へと舌を入れて来た。
「はっ!あ!ああ!ん!はぁ!」
 にゅぐにゅぐとした動きで唾液を奥へと送り込み、指を入れて解していく。

 指が3本入った所で、
「もう良いか・・・?」
 と一護に聞けば、
「ん・・・も、きて・・・」
 と目を赤くしながら強請って来た。
指を引き抜き、滾る自身を宛がい沈めて行く。
「ん、んあ!はぁあああ・・・!」
 ゆっくりと中を満たしていく。入口から奥までみっしりと埋め込んで腰を動かす。
「ん、ん、あ、ああ・・・」
 いつもの様な激しい突きあげではなく、小刻みに身体を揺らしていく。
「は!はあ!ああ!けん!ぱち!」
 久し振りに繋がった身体はそれだけで悦び、一護の先端からは白濁が止めどなく溢れている。
「一護・・・」
「ああ!いい!剣八!剣八!熱い!中、溶ける!溶け、ちゃう!」
 繋がった所が熱くて蕩けそうだ。
「は!ここか?お前はここが弱いよなぁ?」
 前立腺を絶えず擦ってやる。先の快感が終わる前に次の快感を優しく叩き込まれガクガク震える一護。
「ひぁ!ひぅ!やあぁあ!」
「もうイくか?」
「ん!うん!うん!も!イク!」
 最奥を気遣いながら引き抜くと前立腺を抉り、剣八の腰の動きが早くなった。
「あ!あ!ああ!やあ!イク!イっちゃう!んあ!あーーっ!」
 達する一護の締め付けで剣八も一護の中に注ぎ込んだ。
「っくう!」
「んふぅぁあ!あ、あつ・・・」
 どくん、と奥に熱の塊を感じて一護の意識は途切れた。

 ・・・リーリーリー・・・
こおろぎの声に、ふわ、と意識が浮かび上がる感覚で一護が目を覚ますと横に剣八が居た。
もう風呂に入れられたのか、お互い髪が湿っている。
「ん・・・」
 もそ・・・、と動くとお腹にはキチンと夏掛けが掛けられている。良く見ると剣八は団扇で一護を扇いでいる。
「起きてんのか・・・?」
 見る限り剣八は肩肘を付いて目を閉じ横になっている。
なのに手は休みなく動いている。なんだか嬉しくなった一護は、
「ありがとな・・・」
 と囁いて剣八にも夏掛けを掛けて眠りに就いた。聞こえるのは二人の寝息と虫の声だけ。


第13話へ続く





11/02/20作  安定期に入りました。これから食欲も戻ってエッチも出来て今以上に甘甘になるかもです。


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