題「結晶」1
 薄暗い部屋に響く湿り気を帯びた熱い吐息と声。

「あ・・・!ぅん!もう・・!」
 蒲団の上で組み敷かれ、啼いているのは黒崎 一護。彼を組み敷いているのは更木 剣八。
「なんだ、もう限界か?」
「ん!もう、むり・・・!」
 震える声で限界を告げると、
「しゃあねえな、続きは明日だな」
「うん・・・」
 素直に頷き、絶頂へと導かれる。
「ああ!あ!ふぁああ!」
「くぅ!」
 二人同時に達し、剣八は一護の最奥に精を注ぎ込み、その身体を抱きしめて暫くは動かなかった。

「ん・・・、重い、剣八・・・」
「ああ・・・ワリィ」
 ずるりと中から抜くと一護が震えた。
「ふっ!ん・・・・」
 一護の身体を抱き上げ風呂へと運ぶと優しく洗い清め、二人で湯船に浸かる。
背中から一護を抱きしめ、腹を撫でる剣八。
「いつ出来るんだろうな・・・」
 その手を上から包み込んで微笑みながら一護が言った。
「さぁな、こればっかりはな・・・」
 一護の肩に顎を乗せ、ゆっくりゆっくり撫でていく。
「くすぐったい・・・」
 身動ぎながら剣八に甘える一護。
「もう出るか?」
「ん・・・寝ようか」
 そう言いながら風呂から出ると一護の髪を拭いてやり、着替えさせる剣八。
「あんたの髪も長いんだから、ちゃんと乾かせよ」
「わあってんよ」
 ガシガシと髪を乾かし寝間着に着替えると二人で寝室へと帰る。

 寝室は既に新しい蒲団に替えられており、そのまま眠れば良いだけだ。
「明日も励むんだ。良く休めよ、一護」
「うん・・・」

 何故この二人がこんな風にしているのかと言うと溯る事、一護が瀞霊廷に報告しに来た時に始まる。

無事に報告を終え、歩いている一護を疾風の如く攫った剣八は日も高いうちから一護を組み敷いて身体を繋げたのである。
いきなりの事に当然怒った一護。
「いきなり何すんだ!バカ!」
「馬鹿とはなんだ。ちゃんと約束通りにテメエが二十歳になるまで待ってやったぞ!もう待ったは聞かねえ!」
 それだけ言うと一護の身体を喰らいつくした。

 今現在の一護の年齢は二十歳である。
16歳から恋人である剣八とはちゃんと身体の関係もあったがある日剣八が、
「ガキが欲しい」
 と言い出した。突然の事に一護は、
「はあ?」
 と聞き返した。
詳しく聞けば、こちらでは生身の身体ではなく魂魄であるから、男同士であろうと子供が出来る事もあるのだと言う。
だかその時の一護はまだ未成年であった。

16年を生きて来た。

16年しか生きていない。

そんな自分が子供を産み、きちんと育てられるのか?

悩んでみた所で答えは出なかった。

だからせめて、親の手を離れ、自分で責任を取れる歳になるまではと剣八に話した。

「剣八。その、俺、嬉しいよ。すごく・・・!でも俺はまだ未熟な人間だ。だから・・・」
「だから?」
「俺が二十歳になるまで、待ってくれるか・・・?」
 と告げた。
告げた瞬間剣八は眉間にしわを寄せてじぃっと一護の目を見た。
一護の目は真っすぐに剣八の目を見据えて逸らされる事は無かった。
「後、4年だな・・・」
 そう呟く剣八。
「剣八・・・!うん、待っててくれな?」
「ああ・・・」
 一護の口から『待っててくれ』と言う言葉が出たという事は一護も自分との子供を欲してくれていると言う事。
だから剣八は4年待つと了承したのだ。


 そして晴れて解禁となった7月15日。
瀞霊廷にやって来た一護を自分の腕に納めているのである。
隣りで眠る一護の髪を梳きながら自分も眠りに落ちて行く剣八だった。

 数日後。
午後になったばかりの寝室に昼食の膳を持って部屋に入り、
「おう、一護。大丈夫か?」
 いまだ布団の中でくったりしている一護に話かける剣八。
「・・・剣八。ん、へーき・・・」
 眠そうに舌足らずな声で返事が返ってきた。
「そうか、飯食えそうか?」
 さら・・・、と乱れた一護の髪を撫でる剣八。首筋に残る赤い跡に目を細める。
「んん!あ・・・!」
「っと、えらく敏感だな?ん?」
「あ、だって、ずっと・・・」
 顔を赤らめ夏掛けに潜る一護。
「そうだな、あれからずっと子作りに励んでるもんな」
 ぽんぽんと夏掛けの上から一護の頭を撫でた。
「昼飯は食えそうか?」
「ん、食べる。体力付けねえとだし」
もそもそと蒲団から出て座ると、腰に鈍い痛みが走った。
「ッつぅ・・・」
「痛えか?今日は控えるか・・・」
「でも・・・」
「無理強いしてお前の体に何かあったらどうすんだ。今日は飯食って寝てろ、いいな」
「分かったよ」
 剣八が用意してくれた朝昼兼用の食事に手を伸ばす。
「俺は飯が済んだら此処で書類仕事するからな」
「あ、うん。今日討伐は?」
「無え」
「ふうん、珍しいな」
「そうでもねえさ」
 ひょい、と剣八が自分の分の玉子焼を一護の皿に入れた。
「おい・・・」
「ちゃんと食って滋養にしとけ」
 茶碗に残ったご飯をお茶づけにしてかき込む剣八が漬け物を齧りながら言った。
「ありがと・・・」

 食事が済むと剣八が膳を下げ、書類の束を持って部屋に戻ってきた。
文机に向かい、さらさらと筆を運んでいる。
外からは蝉の鳴き声とやちるや他の隊士の声が聞こえている。

「なぁ、なんか手伝う事ってあるか?」
 一人手持無沙汰で蒲団で寝る一護が話しかける。
「ん?じゃあ、その書類を日付順に並べてろ」
「んー」

さらさらと流れる様な筆の音。

かさかさと書類の触れる音。

そんな音が響いていた。


第2話へ続く



11/1/24作 第158作目です。
はい、子作り開始です!さてどんな子が生まれますやら。

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