題「クリスマスデート」〜現世deデート剣一編〜
 季節は冬。もう12月だ。
瀞霊廷通信の特集も現世を真似て『クリスマス特集!』と銘打って色々なコーナーが企画された。
その中には、
『理想のカップル・あの人に聞く!!愛される秘訣!!』
と言う対談形式の記事もあった。その内容は・・・?

遡ること2週間ほど前、十一番隊に檜佐木修兵がやって来た。
「すんません。更木隊長と一護居ますかね?」
「あん?檜佐木じゃねえか。隊長と一護に何か用か?」
「ちょっとな。用は一護の方なんだけど、一応更木隊長の承諾取っとこうかと思ってよ」
「賢明だな。隊首室に居るから呼んでやるよ」
「サンキューな、一角」
少しして二人がやって来た。
「なんの用だ?檜佐木」
「こんにちは!」
「こんにちは。いえね、今度の通信の特集に一護と白の話を載せたいと思って・・・」
「なんの話だ」
「クリスマスの特集なんで、愛される秘訣〜とか」
「はぁん?」
「ひけつって何?剣八」
「後でな。なんで一護と白なんだよ」
「あれ?知りませんでした?一護と白って結構有名なんすよ。理想のカップルだって」
「へえ・・・」
「時間もそんなに取らせない様にしますんで、出来れば・・・」
「別に良いけどよ。白の方はどうなんだよ。アイツは嫌がりそうだぜ?」
「そうなんですよね〜・・・。白の話も聞きたいってハガキが結構来てるんですけどね〜」
「俺がにぃにを説得してあげる!俺もにぃにのお話聞きたいし!」
「おお!頼めるか一護!じゃあ、これから・・・!」
「おい、先に京楽に言っといた方が良いぞ。お前の身の為だ」
と剣八が言うと、
「あ、あぁ、そうっすよね・・・」
と納得する修兵だった。
八番隊に居た京楽の許可も得て一護と白の所へ行く修兵。

京楽邸。
「あ?取材?瀞霊廷通信の?なんで俺が」
「いや、皆聞きたがってるしさ」
「知らねえ奴に聞かせる話なんざねえよ」
夕月をあやしながら縁側で話す白。
「良いじゃないにぃに。俺もお話するんだ〜」
「一護も?ふぅん・・・」
「ねえ、京楽さんがどれだけ良い旦那さんか皆に教えようよ。にぃにの物だって分かったら誰も手を出さないよ!」
「ん〜・・・」
眉間にしわを寄せ悩む白。
「一護と一緒なら・・・」
と渋々了解する白。
「マジか!良かった〜!クリスマス特集の目玉だったんだ!助かったぜ〜!」
と喜ぶ修兵。
「早速で悪いんだけどさ。今からうちの隊に来れるか?」
「うちの隊?」
「九番隊」
「ああ、隣かよ」
「まぁな。なんかあったら京楽隊長が飛んで来るから」
本当にやりそうだから困る。と白は思った。

九番隊。
執務室の応接セットに二人を座らせ、お菓子とお茶を出し、修兵と女性隊士が取材を始めた。
「お二人の出会いは?」
「俺は山かな。狩りの途中で剣八が仇の虚を倒してくれたの」
「俺はココだな。一護の見舞の後、飲みに誘われた」
「へえ」
その後も色々な質問をされたが答える内容がだんだん惚気になって来た様に感じる取材陣。
「愛される秘訣は?」
「ひけつって良く分かんないけど、俺は自分の気持ちをちゃんと言うよ。剣八が大好き!って」
ニコニコ笑いながら言う一護。
「まぁ俺も似た様なもんか?あと隠し事はしないし、させねぇな」
「へえ〜」
「デートの場所は?」
「でーとって何だよ」
「二人っきりでご飯食べに行ったり、甘味処に行ったりするんだって」
と一護が言えば、
「ふう〜ん・・・。2、3回ぐらいしかやってねえな」
と答えた。
「俺もそんなに行かない。一緒に居られるだけで嬉しいもん」
「白はどこに行ったんだ?デート」
「え〜っと、確か、甘味処と呉服屋と、あと現世に一日居た事あったな。桜がキレイだった」
「え!にぃに現世でデートしたことあるの?!」
「ああ、その一回と結婚式の服買いに行ったきりだけどな」
「でもでも!現世でデートした事あるんだ!良いなぁ、良いなぁ!俺した事無いよ」
ぷくっと頬を膨らませ少し拗ねる一護。
「じゃあお前の旦那に言えば良いじゃねえか。ほら、膨れんな」
笑いながら膨らんだ頬を白が押さえると、ぷひゅっ!と変な音を立て潰れた。
「行ってくれるかなぁ・・・?」
「お前は行きたいんだろ?ソレちゃんと言っておねだりしてみれば良いんじゃねえの」
「うん!言ってみるね!」
「白、そん時の話とか聞けるか?」
「あ〜、ちょっとだけならな」
と恥ずかしい所はさすがに端折って聞かせた白。
「さすが京楽隊長ですね!好きな子の為に高級料亭を予約するなんて!」
「だなぁ。見習いてえよな」
その後、写真を何枚か撮って取材は終わった。
白は出されたお菓子をまくまくと食べている。
「にぃに、お口に付いてるよ」
「ん?」
一護が白の口の周りに付いたお菓子を取って食べた。あんまり可愛い仕草だったので思わずシャッターを押してしまった。
その写真と色んな話が載った瀞霊廷通信十二月号は、過去最高の売り上げを見せ、嬉しい悲鳴が聞こえたとか。

そして、隊舎に帰る二人。
「現世行きたいなぁ・・・。子供達のプレゼントも買えるし・・・」
初めてのクリスマスにはしゃいでいるグリとノイを思い浮かべて呟く。
「だから、言ってみろって!意外と簡単に頷くかもだろ?」
「うん」
「じゃあな!俺は八番隊に寄って帰るからよ」
「分かった。またね!にぃに」
「おう」

十一番隊。
「ただいま〜!剣八居る?」
「お帰り、一護君。隊首室に居るよ」
「ありがと!弓親」
隊首室に入ると剣八が机に座って何やら書類に判子を押してた。
「何見てんだ?寒いだろ?中に入れよ」
「う、うん」
机の前に行き、モジモジとする一護。寒いのかと思い、膝の上に抱き寄せる剣八。
「寒いか?火鉢の炭でも増やすか?」
「う、ううん!違うの。あのね、お願い、があるんだけど・・・いい?」
見上げながら小首を傾げる一護。
「・・・何だよ」
「あのね。クリスマスに現世で、剣八とデートしたいの。だめ?」
「クリスマス・・・」
ふっと隊首室の飾られたクリスマスツリーに目をやる。
そう言えば、子供達と一緒になって飾っていたなと思い出す。
「良いんじゃないですか?24日でしょう?丁度非番ですし、楽しんで来られたら良いじゃないですか」
と弓親が言ってくれる。
「にぃにもね、京楽さんと現世でデートしたことあるんだって!俺もしたい!ね、行こ?お願い!」
剣八の死覇装の袖をグイグイ引っ張っておねだりする一護。
「現世、ねぇ・・・」
そう呟くと一護を見遣る。
「お前の義骸はどうすんだ?女物しかねえんじゃねえのか」
「あ・・・」
「まぁ後二週間はあるし、技局に掛け合えばすぐ作るだろうさ」
「じゃあ・・・!」
「ああ。構わねえよ」
「やったぁ!剣八大好き!」
ギュッと抱きつく一護の頭をあやす様に撫でてやる剣八だった。

クリスマス・イヴ。
その日一護は乱菊達が見立てた洋服を着ていた。
長袖のTシャツにベージュのジャンパー。内側にはもこもこした生地が付いている。シルバーアクセサリ―の指輪やネックレス。ベルトのバックルもシルバーだ。
剣八は黒いジャケットに黒い皮パン、それに丸いサングラス。髪は下ろして束ねている。
「剣八、これ似合うかな?」
「ああ、良く似合ってんぞ」
くしゃくしゃと頭を撫でてやる。
「け、剣八もカッコイイよ。サングラス、似合ってる」
「そうかよ・・・」
既に甘い空気が漂っている。
「かか様達明日には帰ってくるのよね?」
「うん。良い子にしててね、じゃないとサンタさんがプレゼント持って来てくれないよ」
と子供達に言う一護。
「分かった!早く帰ってきてね!色々聞かせてね〜!」
「いってきまーす!」
と現世に向かった一護達だった。

現世もクリスマスと言う事で人がたくさん居た。
「ふわぁ〜。すごいねぇ」
「はぐれんなよ。一護」
と手を差し出せば、
「うん!」
と頷き握り返す。
そんな二人に声を掛ける人物が居た。
「君、その子とどういう関係だい?」
制服を来た二人の男。警官だ。
「ああ?何だ、てめえら?」
「なに?なに?剣八のお友達?」
「ちげえよ、こんな奴ら知らねえ」
「私達は警官だ。君、この人とどういう関係だい?」
「関係・・・。夫婦だけど?ねえ?剣八」
「ああ、邪魔すんじゃねえよ」
「ねえ時間無いよ、早く行こうよ」
「そうだな、まず腹ごしらえか?旅館どこだ?」
「え〜とね、地図の見方分かんない」
若い警官が覗きこみ、
「旅館?これホテルですよ?そのホテルならまっすぐ行って三つ目の信号を右に曲がれば見えてきますよ」
と道順を教えてやった。
「そうなの?ありがとう!だって!早く行こうよ、剣八!」
「そうだな」
と寄り添いながら目的地へと向かう二人を見送りながら、
「あれは絶対夫婦ですよ・・・」
「男同士のか?居るとこには居るんだな」
と納得はしている警官二人だった。

ホテルへ行く道すがら、一護は見知らぬ男に声を掛けられた。剣八が無視してぐいぐい引っ張っているのにも拘わらず、
「ねぇねぇ、君可愛いね。どこ行くの?」
「そんな怖い人より俺らと一緒に遊ぼうよ」
と言っては反対側の腕を取り、引っ張る。
「やッ!痛いよ!離して!」
ナンパされて泣きそうな一護を見て容赦なくアイアンクローを掛ける剣八。
「何ヒトの嫁に手ぇ出してんだ?殺すぞ」
ギリギリを頭を絞められ、宙に浮く男。バタバタとあがく足。他の仲間は飛んで逃げて行った。
「あががが!」
まるでゴミを放る様に投げ捨てる剣八。剣八に抱き付いて涙目の一護。
「怖かったよぅ、剣八ぃ・・・」
「ああ・・・さっさと行くぞ」

漸くホテルに付いた二人。
「ココかな?」
「だろ」
ホテルに入り、名前を告げると部屋まで案内された。
最上階のスウィートルーム。
「では失礼します。ごゆっくりどうぞ」
とホテルマンは出て行った。
「わぁー!すごい高い!良い眺め〜。色んなのが見える!」
はしゃぐ一護の横に、窓に手を付き一緒に外を眺める剣八。
「そうだな。飯、食いに行くぞ」
「うん!」
部屋を出て食事に行く一護と剣八。

京楽夫妻の場合。
「今日は剣八さん一護君と現世でデートなんだってね」
「ああ、一護が誘ったんだろ」
「僕らも行こうか?」
「何言ってんだ。夕月どうすんだよ?」
「ウルも居るし、四番隊も預かってくれるって言ってるよ。何も一日居る訳じゃないんだよ。見せたい物があるんだ」
「見せたい物?ん〜、すぐ帰って来れるんなら良いぞ」
「良かったぁ!今から行けば間に合うよ!」
「今からぁ?!夕月に乳やっても4時間ぐらいしか居られねえからな」
「充分だよ!お洋服もちゃんと用意してるんだ!」
といそいそと自分の部屋に行き、服を持ってくる。
夕月にお乳をあげる白。
「たくさん飲めよ。ちょっと出掛けるからな。・・・今日白哉休みだった様な・・・、白哉に預けた方が良いんじゃねえのか」
ポンポンとげっぷをさせ、おしめを換える。
「お待たせ!この服なんだけど」
出されたのは純白の毛皮のロングコート。ふわふわとした毛皮が気持ち良い。
「すげ・・・。キレイだし、あったかい」
「気に入ったかい?君に似合うと思って買ったんだ」
「お前なぁ。あぁ、そうだ。夕月達だけどよ。今日白哉が休みって言ってたろ?」
「うん」
「じゃあ白哉の所に預けたらダメか?」
「君はその方が安心出来る?」
「こいつらも慣れてるし、四番隊は忙しいだろ?」
「そうだねぇ。聞いてみるよ」
と伝令神機で白哉に連絡を入れ、聞いてみた。
『構わぬ』
と一言だけ返って来た。
「良いってさ!」
「よし!朝月ー!ウルー!ちょっと来い!」
と事情を説明した。
「分かったわ。夕月も白哉に慣れてるし、ミルクも粉ミルクがあるし、楽しんできてね!かか様、とと様」
「楽しんできて下さい」
と子供達に見送られて京楽夫妻も現世にデートに出掛けた。

現世は既に陽が暮れていたが、派手なイルミネーションが街を照らし、まばゆいばかりの光を放っていた。
「うわぁ!綺麗だな!春水!あのでっかい木なんだ!」
と巨大なクリスマスツリーを指差す。
「クリスマスツリーだよ。クリスマスに飾るんだ」
「へぇ〜!でっけえなぁ!コレも綺麗だ!」
両手を広げて、
「こんなん見たことねえよ!春水、ありがとな!」
ツリーと街のイルミネーションの色とりどりの光を受けてキラキラ光る白の毛皮のコートや、白い髪。何よりその笑顔が一番輝いていた。
「喜んでいただけて嬉しゅうございます。我が女神さま」
「それやめろよ」
くすくす笑う白は周りの目を集めていたが気にしていなかった。そんな白に近づく影があった。
若い男だ。何人も居る。
「綺麗なお姉さん。僕らとお茶しませんか?」
「なんだ、お前等?」
「そんなおじさん相手にしてないでさ〜、若い僕らと遊ぼう?」
「うっさい!どっか行けよ。なんなんだよ!うっとおしい!」
とかバッサリ切ってもしつこい男が、
「良いじゃん、行こうよ〜」
と言いながら腕を掴んで連れて行こうとした。
「うっとーしいつってんだろうが!」
下顎に拳がクリーンヒット!
「あー!もう!気分台無しじゃねえか!」
プンスカ怒っている白を宥めても後から後から湧いて出るお邪魔虫ども。
「そんなおじさんじゃつまんないでしょ?俺らが楽しいトコロ教えてあげるからさぁ」
としつこく食い下がってくる。
「はあ?何言ってんだ?比べてもらえると思ってんのか?春水と?幸せな頭だな、おい。大体お前らが居なくなれば俺は楽しいんだよ」
散れ。と犬を追い払う様に手を振る白。
「・・・せっかくの夫婦二人っきりのデート、邪魔しないでくれるかな・・・?」
と京楽が凄んでも引かない男達。
「子供ら3人も連れて来てやりたかったな〜」
「そうだねぇ。明日も来てみるかい?今度は皆でさ」
「ん〜、止めとく。こんな馬鹿ばっかり居る所に連れてきたくねえ」
「そうだねぇ。ケーキ食べて行く?」
「おう!久し振りだな!土産にも買って行こうぜ!」
「うん」
二人の世界に入り込み、極上の甘さの空気に耐えられず散っていく邪魔ものども。

喫茶店を探していると白が花屋さんを見つけた。
「あっ!」
小走りに店に行くと何やら花を買っている。
「なんのお花を買ったの?白」
「ん、薔薇。こっち来い春水」
「ん?」
京楽のコートの襟元に白い薔薇を一輪挿した。白のコートには赤い薔薇が挿してあった。
「これは・・・?」
「お前赤い薔薇が好きなんだろ?」
「うん、そうだけど。あ・・・」
ぷい!と横を向く白。
「ありがとう。大好きだよ、この薔薇は君だね。ねえ、ピンクの薔薇の花束も買って行こうよ」
「ん?良いけどよ」
「この薔薇は僕達の子供たちだね」
とピンクの薔薇の花束を抱えて嬉しそうに笑った京楽。
「・・・ばーか」

喫茶店でゆっくりとお茶とケーキを食べ、お土産に大きなクリスマスケーキを買って帰っていった京楽夫妻だった。


第2話へ続く



10/12/25作 156作目 クリスマスデートです。夜の部は次で書こうかと・・・。しばしお待ちをぉ〜〜!

12/26加筆修正しました。
1/5加筆修正しました。
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