題「甘い生活」2 | |
剣八と一護は出張の日まで通常の業務をこなしていた。 いつもの様に書類を書き、部下に稽古を付け、討伐に行く。 家ではやちるが一護から離れないようになったがいつもの様に家事に勤しんだ。 出張の日が近づくにつれ、一護の心情を表す様におやつの出来も変わっていった。その日のおやつは・・・? 「一護ってば本当に楽しみにしてるのね〜」 と紅茶を飲みながら乱菊が呟く。 「ですよね〜。出張が近づく度におやつが豪華になってますもんね」 「ねぇ」 と女性死神メンバーが舌鼓を打っているのは一護渾身のオペラ・ケーキ。グラサ―ジュがツヤツヤと光って魅力的だ。 「昨日は苺のシャルロット」 「その前がカスタードと生クリームたっぷりのクロカンブッシュでしたよね」 「太っちゃうわぁ〜」 と少し困った顔で、それよりもっと嬉しそうにケーキを食べている女性陣。 「やちるも毎日こうかしらね?」 「だと思いますよ。食事の方も気合が入ってるみたいですし」 「もう、本当に可愛いんだから」 と和む面々だった。 出張当日。 隊舎の門の前で義骸に入った剣八と一護、そしてやちる達が揃っていた。今回の一護は髪が背中の中程まで伸びていた。 「ではやちる様、剣八様と俺が現世に居る間、皆様の言う事を聞いて良い子にしていて下さいね?」 「うん」 「…金平糖を食べ過ぎてはなりませんよ?」 「…うん」 「…お風呂上がりに髪を濡らしたままにしてはいけませんよ?お風邪を召してしまいますからね?」 「…うん…!」 「…ひ、非番の日に、現世に来られるのを、お待ちしておりますからね・・・!」 「…うん!」 「やちる様!」 「いっちー!」 ひし!と抱き合う一護とやちる。 「…おい、何も今生の別れじゃねえだろ…」 二人のやり取りに剣八が突っ込んだ。 「で、ですが!こんなに長くやちる様と離れるのは初めてです!俺の居ない所でお怪我をなさったら!御病気になったらと!」 「あーあー、分かってるよ。やちる」 「なぁに?剣ちゃん」 一護の胸の中から剣八を見上げるやちる。 「俺が居ねえ間の隊の事ぁ、任せたぞ」 「うん!大丈夫だよ!つるりんも居るし!ゆみちーも居るから!だから大丈夫だよ!」 と元気よく二人を送り出したやちる。後ろ髪を引かれながらも現世へと赴いた一護と剣八。 現世で今回住むマンションの前にやって来た剣八と一護。 「ここで剣八様と一ヶ月暮らすのですね」 とマンションを見上げる一護。そんな一護を見ながら、 「ああ」 と答える剣八。 「えっと?部屋の番号は…?」 とメモを見ると『0815』とあり、下の方に『隊長と一護君の数字だよ』と弓親の字で書いてあった。なるほど、これなら忘れないと一護は思ったが気恥ずかしい。ひょいっと横から剣八にメモを引き抜かれた。 「あ!」 「はぁん…、アイツの考えそうなこった。早く部屋に行くぞ」 と一護を促す。 「は、はい!」 エレベーターに乗り、目当ての部屋に着き中に入ると見慣れない現世の家具やキッチンにはしゃぐ一護。 「わあ!こんな風に服が入ってるのですね!」 と初めて見るクローゼットやお風呂にベランダからの景色を見た後、夫婦の寝室を見に行った。 そこには大きなベッドが鎮座していた。 「大きなベッド…」 一護がベッドにちょこんと座ると剣八も乗って来た。 「へえ…」 剣八の巨体を乗せても軋みもしないベッドに気を良くした剣八が体重を掛けてみた。 「…こりゃ激しくしても壊れそうにねえな」 と呟く。 「っ!け!剣八様!」 「んだよ。ここにゃぁ誰も居ねえんだぞ?声我慢することねえんだ。分かんだろ」 「し!し!し!知りません!」 真っ赤になった一護が寝室を出て行き、その後ろ姿を笑いながら見送る剣八だった。 剣八が寝室から出ると一護が何やら荷物を纏めている。 「何してんだ?」 「あ、引っ越しの挨拶にと思いまして…」 「ひと月っきゃ居ねえんだぞ。しなくていいだろ」 と一護が配ろうとしていた洗剤とタオルのセットを一つ持ち上げる。 「ですが、ひと月も居るのですから、気持ち良く生活したいです」 にっこりと笑いながら言う一護。仕事で居ない自分より長い時間を過ごすのは一護だったことに気付く剣八。 「あ〜…、一緒に行くか」 「はい!」 まずは両隣の部屋に挨拶に行き、それから上下階の部屋に挨拶に行った剣八と一護。例外無く皆一護の後ろに居る剣八に恐れ慄いていた。 「皆さん、感じの良い方達でしたねぇ」 「あ〜、そうだな」 中には一護に色目を使おうとした奴も居たが剣八の一睨みで震えあがっていた。 挨拶の後は二人で近くのスーパーに買い物に行き、食材を買い揃えた。 「今夜は何が食べたいですか?」 「何でもいい…」 「…じゃあ冷奴にしましょうか。それと焼きナスとお味噌汁と…」 「おい、肉は」 「何でもいいと仰ったのは剣八様ですよ?」 何でも良いは困ると言ったでしょう?と無言で責める一護。 「あ〜、悪かったよ。お前の作る飯はみんな美味いからよ。んじゃこれで何か作れ」 とカゴの中に入れて来たのは脂の乗った豚ロースだった。 「トンテキにでもしましょうか?」 「美味そうだな」 「ではキャベツも買いましょう」 「酒も」 と買い物を済ませ、家路に着いた。道すがら剣八はさり気無く重いほうの荷物を持ち、車道側を歩いた。 マンションの部屋に帰ると夕飯の用意をし、出来あがったご飯をテーブルに並べて行く。 ほかほかと湯気の上がる炊き立てのご飯と、カリカリのガーリックスライスが振りかけられたソースたっぷりのトンテキ。 「おう、美味そうな匂いだな」 「ちゃんとお野菜も食べて下さいね」 「おう」 野菜たっぷりの味噌汁とサラダを並べると二人で食べていく。 「いただきます」 向かいに座っている剣八は見ているだけで気持ち良くなる食べっぷりだ。 「ん!」 空になった茶碗を差し出され、ご飯をよそう。 「どうぞ」 「おう」 やはりご飯も味噌汁も何も残らなかった。後片付けをしながら一護は明日の朝のお米を用意し、弁当のおかずを作っておいた。 風呂の用意をしながら、やちるの伝令神機に連絡を入れる頃には午後9時を過ぎる頃であった。 やちるは一護からの電話を喜び、おしゃべりに花を咲かせた。今日はこんな事があった、今日は何を食べたの?と楽しい時間は過ぎて行く。 風呂が沸いたお知らせが鳴り響き、おしゃべりはお終いとなった。 「ではやちる様、また明日。おやすみなさいませ」 『うん!おやすみー!剣ちゃんにも言っといてー!』 「はい、わかりました」 伝令神機を切ると剣八が声を掛けてきた。 「なんだって?」 「あ、ええ。とてもお元気そうで、剣八様にお休みなさいと仰って」 「そうかよ。ほれ、風呂に入るぞ」 「あ、はい」 二人で入浴し、湯船に浸かりながら話をする。 「明日は何時に起きられるのですか?」 「あー、なんか8時までにここで用意した会社とやらに着けば良いそうだ。一応迎えも来るからな」 「そうなんですか」 剣八の方向音痴はここでも有名なようだ。 「お弁当も作りますので俺は5時には起きたいですね」 「マジかよ。そんなにデキねえじゃねえか」 「当たり前です。お仕事に来てるのですよ?それに今日は…」 「あん?」 「お、遅かった、ですし…」 「あ〜、だめだ。今から部屋に行くぞ!」 一護を姫抱きにして湯船から出ると大雑把に身体を拭き、寝室のベッドに押し倒した。 「あ!」 「加減はする。この身体は久し振りだからな」 と一護に口付けると細い身体を撫でさすっていく。 「ん、あぁ、ん…」 ふにふにと優しく乳房を揉んでいくと桃色の果実が存在を主張しだす。そこに舌を這わせ、吸い上げる。 「はあんっ!ん!ん!」 もう片方を指で捏ねていく。 「んっ!んん!あ!あ!剣八様ぁ!」 ゆっくりと時間を掛け、慣らしていく剣八。もう一護がドロドロに蕩けて漸く自身を挿入した。 「あ…、ふあぁあああん!」 「くう…!この…!」 きゅうきゅうと締め付ける一護に危うく持っていかれそうになった剣八。それを堪えると思う存分一護を啼かせた。 翌朝、辛うじて起きられた一護が朝食と弁当の用意をしていると剣八も起きて来た。 「おう…」 「おはようございます剣八様。早くお顔を洗って来て下さいな」 「ん」 洗顔から帰って来るとおはようのキスをし、食卓に着く。 「今日は何時に帰って来られるのですか?」 「大体定時だそうだ。夕方の5時辺りか?」 「ではまたご一緒にお買い物に行きましょう」 「ああ、終わったら連絡入れらぁ」 そうこうしているうちに迎えの者が訪れた。 「そうそんな時間かよ。着替えてくらぁ」 「はい」 剣八が着替えている間に一護は片付けを終わらせた。 「剣八様、どうですか?あまりお待たせしては…!」 「おう、一護。コレどうやって締めんだ?訳分からん」 とネクタイに四苦八苦している剣八はスーツ姿だった。一護は初めて見る姿に一瞬息を飲み、見惚れてしまった。 「あ、ああ!それはこうして…」 と一護が結んでやった。 「ありがとよ。んじゃ行ってくるぜ。俺が居ない間に他の男を家に入れるんじゃねえぞ?」 「分かっておりますよ。では行ってらっしゃいませ」 とキスをして送り出した。 第3話へ続く 14/04/08作 よ、漸く2話めが書けました!気長にお待ち頂けると助かります。 |
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