題「甘い生活」3 | |
剣八が出勤してから一護はいつもの様に掃除や洗濯に取り掛かった。 「ん?あれ?剣八様、お弁当をお忘れだ」 テーブルの上には剣八が持って行ったと思っていた弁当が取り残されていた。 「後で持って行きましょう」 と洗濯を続けた。 その頃の剣八。 「あ」 「どうかされましたか?更木隊長」 迎えに来ていた死神が変な声を出した剣八に訪ねた。 「いや…(弁当忘れちまったな、くそ!)」 そんな事を考えていると、 「ここでございます」 と目当ての建物に到着した。見た感じは普通の商社が入っているビルだ。 「ふうん。近えな…」 と思わず呟くと、 「そうですね。何かがあった時にと総隊長殿がお決めになったと聞いております」 「……ああ、なるほどな」 ビルに入り、指定された部屋に入ると現世滞在組の死神が何人かいた。 「おはようございます!更木隊長!」 「おう」 「ここでは書類に目を通して頂いて虚が出現したら討伐に向かいます!義骸はそのままでも脱いでも良いそうです!」 と説明され、いい加減窮屈に感じていた剣八は早速義骸を脱いだ。 「あ〜!窮屈だったぜ」 といつもの死覇装と隊長羽織の姿に戻り、肩をぐるぐると回した。 そんなこんなで時が過ぎ、もうすぐ昼休みという頃、剣八の伝令神機が鳴った。 「あん?」 出てみると一護からだった。 「おう、どうした。なんかあったか?」 『剣八様、今朝はお弁当をお忘れでしたので持って行こうと思ったのですが…』 「うん?」 『その、会社の場所をお聞きしていなかったもので…』 「ああ…今どこに居る?」 『えっと、マンションを出てすぐの…。あ、喫茶店が見えます』 「さっき通ったな。今から行くからその店の前で待ってろ」 『あ、はい』 通話を切るとサッと義骸に入り、ビルを出て行った。 数分後。 喫茶店の前で大きな重箱を持って佇んでいる一護を見つけた剣八は声を掛けた。 「一護!」 その声にぱっと振り向いた。スーツの上着を脱いで肩に掛けている剣八に一瞬見惚れながらも、 「剣八様!」 と走り寄る一護。その手にある重箱を持ってやりながら、 「ワリィな、わざわざ」 と言えば一護も、 「いいえ!俺もきちんと確認しなかったのが悪いのです」 と謝ってくる。 「まあそれはもう良いからよ。どこで食う?どっかその辺で…」 「あ、そこに公園がございますよ、あそこで食べましょう?」 「そうだな」 途中、自販機でお茶を買い、公園のベンチでお重を広げる一護と剣八。 「へえ、美味そうだ」 「たくさん食べて下さいね」 と箸を手渡す一護。 「おう」 と食べ始めるが一護の箸が無い事に気付いた。 「お前ぇの箸はどうした」 「いえ、これは剣八様のお弁当ですから俺は…」 「俺一人だけで食えってか?つれねえな」 「そ、そんな!そんなつもりでは!」 「冗談だ。ほれ、口開けろ」 と弁当のおかずを差し出してやる。 「あ、ん」 「一緒に食った方が美味えだろうがよ」 そう言いながらおにぎりも食わせる。 「ん、…な、なんだか照れくさいです」 頬を染めながらも嬉しそうな一護。 「今晩は何が食べたいですか?」 「刺身で一杯やってから、肉が食いてえな」 「昨日もお肉でしたよ?ん〜、今日も暑いですから冷しゃぶは如何です?お野菜も摂れますし、さっぱりしてますよ」 「そうだな、それで良い。多分定時で上がりだろうから昨日の市場みてぇなトコで買いもんすっか?」 「はい。あそこはスーパーマーケットと言うそうですよ。では17時過ぎにお店の前でお待ちしております」 楽しい昼食が済み、一護はマンションに、剣八は仕事場のあるビルへと帰って行った。 無論二人は自分達の世界に浸っていたので気付かなかったが公園にはそこそこ人が居て注目の的だった。 定時になり退社する剣八。運転手にスーパーの近くで降ろすように言い、目的地で降りる。 スーパーまで歩いていくと一護は既に待っていた。 近所の者は、ああ最近越してきた新婚さんの…。旦那さんでも待ってるのかしら?と噂していた。 暑い午後の日差しの中、佇む一護は白い肌が日差しを跳ね返し、輝かんばかりの美しさだった。 「ふう…」 流れる汗をハンカチで拭い顔を上げると剣八を見つけた。 「あ!剣…あ、と。あなた!」 と満面の笑顔で呼びかける一護。そんな一護に見惚れていた剣八は漸く我に返り、 「おう、待たせたか?」 と何事も無かったように受け答えた。 「いいえ!俺も今来た所です!」 「嘘付け、汗だくじゃねか」 と笑って一護の汗を拭いてやった。 「ん、ありがとうございます」 「良いから、早く買って帰るぞ」 冷しゃぶの材料と刺身の盛り合わせを買い、二人で家路に着く。外ではまだ蝉が元気に鳴いていた。 家に着くと先に冷しゃぶの用意を始める一護。野菜を切っていき、大根おろしを擦って汁を切っておく。 一護が料理をしている間にひとっ風呂浴びてきた剣八。 「ふぅ〜、さっぱりしたぜ」 「あ、剣八様、もうすぐ出来あがりますのでお待ちくださいね」 「ああ」 冷たいお茶を持ってリビングに行くとキッチンで忙しなく動く一護を何の気なしに見る。 (いつもあんな風に飯作ってんだな) 「お待たせしました!」 と出来あがった冷しゃぶとご飯、味噌汁をテーブルに並べる一護。 「美味そうだ」 「たくさんお食べ下さいね」 「ああ」 いつもの如く、何も残さず食べ終えた剣八に食後のお茶を出す一護。二人で一服を済ますとやちるに連絡を入れる。 やちるの元気な声に安心し楽しくおしゃべりに花を咲かせる。 「剣八様ともお話されますか?」 と聞けば即答で、 「うん!」 と返ってきた。 「剣八様、どうぞ」 と伝令神機を手渡す。 「おう、何かあったか?」 「んーん!何も無いよ!討伐だって弱いのばっかだし!つるりんもゆみちーも頑張ってるよー!」 「ああ、そうかよ」 「今度そっちに行くからね!その日はあたしがいっちーを独り占めしちゃうんだから!」 「わあったよ。ったく」 「約束だよー!」 「へいへい。一護に代わるぞ」 「うん!」 一護に伝令神機を渡す。 「もうよろしいので?」 「ああ、まあな」 と優しい顔で返す。一護とやちるは暫く話すと、 「おやすみなさい」 と通話を終わらせた。 第4話へ続く 14/11/17作 またエロにならなかった…!つーかこの話、一護も一緒に仕事しに行く話じゃなかったか?何気に主婦してるんだけど…。早く裸エプロンさせたい、キッチンエロさせたい!← |
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