題「恋する人形」11 | |
翌日、一護は昨晩酔っ払いに絡まれたと言う話を仕事の時にやちるにした。 「え!大丈夫だったの!いっちー!」 「ええ、たまたま通りかかった朽木様に助けていただきました」 「へえ〜、びゃっくんに・・・。何ともなくて良かったねぇ」 「はい。朽木様はどういう食べ物がお好きなんでしょうか?」 「え〜とね辛いもの!なんで?」 「いえ、お礼に何か作ろうかと思いまして・・・。俺が出来るのは怪我の治療と料理だけなので・・・」 「ふうん、今度は何を作るの〜?」 「何にしましょうか・・・。辛いもの辛いもの・・・あ!あれがいいかも。草鹿様ご一緒に作りませんか?」 「良いの!やった!作る〜!」 お昼時。十一番隊の台所を借りて料理する一護。 小麦粉を練り何か生地を作っている。 「なに作るの〜?いっちー」 「タコスです。美味しいんですけれど辛いんですよ」 「へえ〜!あたしも食べられる?」 「はい、あまり辛くないサルサを使えばきっと」 トルティーヤを数枚焼き、中の具を用意していく。 「えっと、野菜野菜、レタスとキャベツとトマトに玉ねぎ・・・」 「お野菜だけなの?」 「いいえ、お肉もありますよ。チキンとビーフ、ソーセージがありますよ」 「わ、おいしそ〜」 野菜とそれぞれ好きな肉を挟み、やちるにはあまり辛くないサルサを、白哉には結構辛めのサルサを入れた。 「どれくらい辛いの・・・?」 ドキドキしながらやちるが聞いて来た。 「舐めてみますか?」 「う、うん・・・」 ぺろ・・・。 「〜〜〜!!!辛い!なにコレ〜!」 「これは朽木様用ですからね。草鹿様はそんなに辛くないと思いますよ」 一人二つずつのタコスが出来上がった。さあ詰めようとした時ハプニングが起きた。 「あっ!」 ゴトッ!と音を立て赤いビンが転がり、中の液体がタコスに染み込んでいった。 「ああ!どうしましょう!」 「どうしたの?いっちー。それ何?」 「タバスコです・・・。あ〜あ、朽木様のに・・・」 「辛いもの?」 「はい、もう食べられませんね・・・」 しょんぼりと言うと、 「大丈夫だよ!びゃっくん辛いもの大好きだもん!出来た?早く行こ!」 「あ、待ってください、飲み物が・・・」 先に作っておいた紅茶。ポットの外側から氷で冷やしていたそれを水筒に入れると、 「お待たせしました!行きましょう」 「うん!あたしも何か持つ〜!」 「では水筒をお願いしますね」 「うん!」 一護はバスケットを持ち、二人で六番隊を目指す。 「なあ〜んか美味そうなもん作ってましたね〜」 「卑しいよ、一角」 「うっせ〜」 「ふん・・・」 ピリリリ!剣八の伝令神機が鳴った。 「あん・・・?」 着信:やちる 「なんだ・・?」 『台所にいっちーが剣ちゃん達にもってたこす作ってくれたよ!』 「弓親、台所に一護がたこす置いてるってよ」 「そうなんですか!取ってきま〜す!」 「なんだあいつ。てめえも喰いたかったんじゃねえかよ」 憮然とする一角。 「これですかね、隊長」 「知るか」 「たこすってタコ入ってるんスかね?」 「食えば分かんだろ」 「そうですよね。いただきます!」 ぱくっ!と食べる3人。 「うめ・・・。辛いけど丁度いいっつーか」 「うん、美味しい」 「・・・・・・」 無言で食べて行く剣八。 「あ!隊長食い過ぎっすよ!」 「あ、後二つしかない!」 「お前等が遅いんだろうが」 ふん、と湯のみの茶を啜り、指に付いたサルサを舐めた。 「料理上手いね〜。一護君」 「だな」 六番隊。 「びゃっく〜ん!あっそぼ〜!」 「断る」 ぴしゃりと言い切る白哉。 「あの、昨晩はありがとうございました」 「気にする事ではないと申したであろう。何用だ?」 「はい、差し出がましい様ですが、お礼をと思いまして、簡単な食事をお持ちしました」 「すっごく美味しいんだから!びゃっくん好みに辛〜いお料理だよ」 「ほお・・・」 興味を持った白哉。 「飲み物もありますので、器をお借りしてもよろしいですか?」 「うむ。恋次、案内してやれ」 「あ、はい。こっち来いよ」 「はい」 やちるから水筒を受け取ると恋次の後に付いていった。 「まだ開けちゃダメだからね」 白哉の机の上に手を付きニコニコ笑って待っている。ガラスコップに氷と紅茶を入れお盆に乗せると持って行った。 「お待たせしました。辛いのでアイスティーを作りました。これシロップです」 「要らぬ。恋次にでも与えておけ」 「はあ。どうぞ」 「おお」 バスケットの中には8つのタコスが入っていた。 「これは・・・?」 「タコスと言います。メキシコ料理です。これとこれが朽木様の分です・・・」 見た目からして赤いそれ・・・。恋次が眉を顰める。 「どう食すのだ」 「あ、そのまま。包み紙は手が汚れない様になんで・・・」 ぱくり。もぐもぐ・・・。 「ふむ・・・」 「お口に合いましたでしょうか・・・」 「うむ。何か酸い味もするが・・・?」 「あ、きっとタバスコです。多く入れ過ぎた様で・・・」 「たばすことはなんだ」 もぐもぐ。 「えと、唐辛子を塩と酢に漬けこんだ調味料です。これなんですけど」 差し出したビンは買ったばかりなのに半分にまで減っていた。 「ほう・・・」 やちるもぱくぱく食べている。 「美味しい!ちょっと辛いけど!」 「阿散井様、お口に合いませんか?」 「いや、辛いモン苦手なんだよ」 「そうなのですか。気が利きませんで」 「いや別に」 「恋次、人の心づくしが受け取れぬと言うか?」 「いやあの!」 (隊長が気に入るってどんだけ辛いんだよ!) 「あの、普通の辛さです、こちらは・・・」 と小声で告げる一護。ホッとして口に運ぶ恋次。 「かっれ〜!」 先程ガムシロップを山と入れたアイスティーを飲む。 「普通?これ普通なのか?」 氷をガリガリと噛んでいる。 「草鹿様と同じサルサを使ったのですけれど・・・」 「れんれん、子供舌〜!」 「うるせえな!残りのヤツやる!」 「わ〜い!もーらい!」 二人とも残さず食べてくれたのが嬉しかった。 白哉がまじまじとタバスコを見ているので、 「よろしければ差し上げますよ」 「だがこれを使う料理など・・・」 「なんにでも使えるはずですよ?目玉焼きとかピザトーストとか」 「???」 「いっちー、びゃっくんそう言うお料理食べたことないよ」 「そうですか。ではまた今度何かお作りしましょうか?」 「え〜!ずるい〜!」 「もちろん草鹿様もご一緒です」 「うわあ〜い!なになに?何作る?」 「パスタでアラビアータはどうでしょう?なすとベーコンのトマトソースなんですけれど辛いんですよ」 「食べたい!食べたい!」 「どうですか?」 「む、好きにすればよい」 「はい、俺の非番に日に来ますね」 「楽しみ〜!」 「今度はお菓子も作りましょうか」 「ホントに!?」 「練習しないといけませんが・・・」 「楽しみに待ってるからね!」 「はい。もうこんな時間ですね。長居をしました、失礼いたします」 空になったバスケットに水筒を入れ、コップを片付けると帰る二人。 「まったね〜!びゃっくん、れんれん!」 「お〜」 「うむ」 「たこす美味しかったね〜!きっと剣ちゃん達も美味しかったって言うよ!」 「ありがとうございます」 十一番隊に着くと、 「一護、たこす美味かったぞ!」 「作り方教えてくれないかな」 と一角と弓親に言われた。 「おう、遅かったじゃねえか」 「剣ちゃん、たこす美味しかった〜?」 「ああ、美味かった、タコ入ってなかったぞ?」 「タコスのタコはそっちの蛸じゃないんですよ。俺も良くは知らないんですけど・・・」 「ふうん・・・」 「怪我人見てきますね」 と道場へ行った一護。 今日も一日が終わった。 「お先に失礼します」 「おう」 部屋に帰ると料理の本に付箋を付けメモを書いた。 『好評』 と書かれていた。 「お菓子も頑張らなきゃ」 と今度は製菓の本を読み始めた一護だった。 「リンゴ・・・。美味しそうだな。上手く作れたら持って行こう・・・」 一護はリンゴを大量に買い求めた。 第12話へ続く 10/11/07作 アイスティーに使われている紅茶はジャワです。あっさりしてるので合うんじゃないかなと。 次はリンゴのお菓子を作る一護。そしてその身に! |
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