題「新しいエプロン」3
 皆で囲む食卓は思いのほか楽しかった。
はぐはぐと骨付きの鶏肉を食べている幾望の口の周りを拭ってやる一護。
「ああ、ほら幾望こっち向いて」
「むー」
「ほら、お姉ちゃんが作ったお味噌汁だよ」
とジャガイモを口元に持っていく。ぱく、と食べる幾望。
「美味しい?」
「んー!もっと!」
「はい、次はタマネギね」
「あむ!」
珍しく幾望が野菜を食べている。
「珍しいな、おい」
と剣八も見ている。
「ふふ、それだけ美味しいんだよ、きっと」
「まあ、美味いけどよ」
ずず、と味噌汁をすする剣八。
「にぃに、鶏肉どう?」
「うん?美味いぞ。お前すげぇな」
「乱菊さんに教わったんだよ。良かったらにぃにも教わってみる?」
「んー、そうだなぁ、考えとく・・・」
と味噌汁を掻き混ぜた。
「? にぃに、タマネギ嫌いだった?」
「へ?いや?なんでだ」
「あんまり食べて無いから・・・」
「食ってるよ、芋も美味いしな」
「そか!良かった」
食事が済み、ゆっくりしていると、急に剣八が、
「おう、丁度良いから今日はガキども泊らせろ」
「へ?何言ってるの、剣八」
「良いじゃねえか、たまにはよ・・・」
と目で京楽を見る。あぁ、そういう事かと男同士分かるのか、あっさり了承する京楽。
「僕はいいよ〜。朝月も嬉しいよね?」
「うん!わあ〜!今日はお祭りみたい!お泊りなんて初めてよね!十六夜!朔!幾望!」
「うん!かか様が良いって言うならあたしもお泊りしたい!」
「え、でも幾望大丈夫かな?」
「にいちゃ居るも!だいじょぶ!」
と尻尾をぶんぶん左右に振って喜ぶ幾望。
「ん〜、にぃに、良い、かなぁ?」
「あん?俺は構わねえよ、お前の子だしな」
「じゃあ、子供らも喜んでるし、甘えよっかな」
「そうしろそうしろ。今度はうちに泊まりゃあいいじゃねえか」
「そうだね!朝月、今度はうちにおいでね」
「うん!」
「あ、じゃあ、着替え取ってくるね!」
と隊舎に向かう一護に、
「待て、俺も行く」
と剣八が付いていった。

(ふふ、剣八さんてば可愛いとこあるじゃない。ま、あの一護君の恰好じゃ仕方ないよねぇ・・・)
と白が作ったふわふわ豆腐に舌鼓を打ちながら京楽は思った。

「え〜と、十六夜と朔と幾望っと。これで良いよね」
「終わったか?さっさと行くぞ」
「うん。どうしたの?変な剣八・・」
子供達の着替えを風呂敷に包んで持つと京楽邸へと戻った。

「ただいま〜!着替え持って来たよ。寝巻きと明日の分の着物ね」
「はあーい!」
「あ、そうだ!にぃに、後もう一個お料理教えとかなきゃね!」
「うん?ああ、アレか・・・」
と台所へ行く二人。
一護が大根を取り出すと、
「これで雑炊を作るの!」
「大根で?」
「そ!スッゴイ良く効くからね〜♪」
と作り方を教えて行った。

材料。
大根、おろして200g。ご飯250g。塩。
@ご飯を水洗いしてザルにあけ、水切りしておく。
A丁寧に大根をおろす。鮫皮か目の細かいおろし金でゆっくりとね。
B水を600cc沸かし、@を入れ塩をばらりと振り、煮立ったら弱火にして6分間煮て、Aを入れて、ぐらりと来たら出来上がり。
「こんだけ?」
「うんそう」
「他の、味とか、ネギとかは?」
「いらない、逆に大根臭くなっちゃうの。あ、そういえば!この間のホタテのおつまみどうだった?」
「あ、ああ・・・、ぅ、美味いって言ってたよ・・・」
と少し頬を赤らめた白。
「良かったぁ」
そう言っていると剣八が、
「おい、一護もう帰るぞ」
と声を掛けて来た。
「あ、うん、分かったーぁ!」
「んふふ、剣八さんも大変だねぇ」
「うっせえよ、ったく」
無自覚に色気を振りまいているとは本人には流石に言えない。
隊舎に帰ったら思う存分啼かせてやろう。そう心の中で舌舐めずりする剣八だった。

「じゃ、俺達帰るけど、あんまり騒いで迷惑掛けちゃダメだぞ?」
「は〜い!」
「じゃあ、お休みなさい、にぃに、京楽さん、朝月、十六夜、朔、幾望」
「おやすみなさ〜い!」×4。
「お休み一護」
「おやすみ、気をつけてね〜」
「? はい、じゃあね」
と帰って行った。
「やれやれ、気付いてないんだねぇ・・・」
「あん?何がだ?」
「あんな恰好した奥さんが傍にいたら、今夜は励んじゃうってことさ」
「そんなもんなのか?」
「みたいだね」
「・・・お前は?」
「うん?もちろん!でも今日は静かにしないとね・・・」
「あ、おう・・・」
横目ではしゃいでいる子供達を見て頬を赤らめた白。
「で、何作ってたの?」
「大根の雑炊だってよ・・・。食うか?」
「そうだね、今日は軽めに行こうか」
と皆で雑炊を食べ、片付けている間(水に浸けるだけ)に子供達に風呂に入るように言う白。

 お風呂場から子供達の遊ぶ声が聞こえて、
「何がおかしいんだか・・・」
とお茶を啜る白に、
「ふふ、子供達だけだからと思うよ。ちゃんとあったまってくれれば良いけどね」
「そうだな」
「ね、今日はどうするの?皆居るし、やめとくかい?」
「え。ん〜、そう、だな・・、なんか、はずかし・・・」
「可愛いなぁ〜、もう!じゃあ、キスだけでも、霊力あげられるから。貰ってね」
と口付けた。
「あ、ん・・・、んふ、んく、んく、くちゅ、ちゅっ、ぷちゅ・・・あ、はぁ・・・」
妖しく濡れそぼった白の唇はほんのりと赤く色付くほどに充血していた。
光る唇を京楽が舐めると、
「ひゃん!」
と声をあげた。
「んふふ、敏感・・・」
「今日はしないぞ・・・」
「うん・・・、また明日もコレ着てね?」
「かっぽうぎか?」
「うん、とても良く似合ってるよ、また好きになっちゃったよ」
と白の肩に頭を乗せ、囁いた。
「う・・!ばか春水・・・」
「うん・・・」
子供達が風呂からあがるまで睦言は続いた。


第4話へ続く




10/01/14作 皆でお食事でした。今度は白に京楽さんの耳掃除でもやってもらいたいですな。
お次は、一護と剣八夫婦のターン!

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