題「新しいエプロン」2 | |
にこやかに一護を迎え入れた白は一護が持っている荷物を見て質問した。 「何持ってんだ、それ?」 「あ、コレ?あのねこっちはにぃにへのプレゼントなの!開けてみて!」 「プレゼント?ふう〜ん、あんがとよ。取りあえずあがれよ」 「うん、お邪魔しま〜す」 居間に通されると座布団を進められ、白は自分の場所に座るとプレゼントの袋を嬉しそうに開けた。 「なんだこれ?こないだ着た服?」 「うん、割烹着っていうの。お料理する時に着るんだよ。こないだにぃにが来た時すごく似合ってたから!」 「へえ」 「でね、折角割烹着あるし、お料理教えてあげようかなって思ったの。にぃに、どう?」 「俺に出来んのかよ・・・」 「出来るよ!俺にだって出来たんだもの!それにね、すごく簡単なの!」 「でもな・・」 「それに、二日酔いに良く効く雑炊もあるよ?」 ぴくっと反応する白。 「京楽さんも良くお酒飲むでしょ?剣八も時々二日酔いになるんだけど効果テキメンだよ!」 「う、一護が言うなら・・・」 「じゃあ今日はここで食べて行っても良い?一緒に作って皆で食べよ?」 「一緒に?手伝ってくれんのか、じゃあ、出来る、かな」 「出来るよ!にぃに器用だもん!剣八に言ってくるね。子供達も連れてくるから!」 「おう、待っとくよ」 と隊舎に帰っていく一護を見送った白だった。 十一番隊。 隊舎に着くと一護はエプロンを身につけ、剣八を探した。 隊首室を見たが居なかった。ふと道場の方が騒がしいので行ってみると剣八が隊士に稽古をつけていた。 「あっ!居た。剣八ー」 「あん?一護か、なんか用か」 「うんあのね、今日の夕ご飯なんだけど、にぃにの所で食べようかと思って聞きに来たの」 「京楽ん家か?別にいいけどよ。・・・ん?」 剣八が周りの隊士の視線に気付いた。全員が一護を見ていた。一護を、と言うより一護の腰を・・・。 むっとしつつも理由を聞いてみた。 「で、なんであいつんトコで食うんだよ」 「あのね、にぃにと一緒にお料理作るの!それを皆で食べようって!・・・だめ?」 不安そうに訊ねてくる一護を道場から連れ出し、隊士の視線から逃した。 「良いって言ったろ。何時に行きゃあ良いんだ」 「え〜とね、今から準備だから、いつも通りだよ、お仕事終わったら来てね。子供達も先に行ってるからね!」 「ガキ共は知ってんのか?」 「ううんまだ!剣八が最初!」 とにこやかに言う一護。 「そうかよ、じゃあ仕事終わったら行きゃあ良いんだな。分かった」 「待ってるからねー!」 と一護は帰っていった。 「やれやれ・・・、あのエプロン、どうにかしなきゃな・・・」 と呟きながら道場に戻る剣八の耳に隊士の声が聞こえた。 「一護のヤツ良いケツしてんのなー」 「なあー、隊長がうらやましいぜ!」 などと騒いでいた。 「お前等いい加減にしとけよ」 「そうだよ、隊長に聞かれても知らないよ」 聞こえてんよ・・・。 「おう、お前ら元気だなぁ・・・、まだまだいけそうだな」 にいっと笑うとその場に居た隊士をここぞとばかりにシゴキまくる剣八の姿が見られた。 「あ〜あ、聞かれたな・・・」 「だねぇ・・・」 一角と弓親が溜息を吐いた。 一護は子供達を呼び集めると説明を始めた。 「あのね、今日はにぃにの家で食べる事になったんだ」 「白にぃの!初めてね、楽しみ〜!」 「そうだね〜、とと様は知ってるんですか?かか様」 「うん、もう知ってるよ。だから今から行って用意して出来あがる頃にはとと様も来てる時間だよ」 「わあ!早く行こう!朝月も知ってるの?」 「にぃにが説明してると思うから知ってると思うよ」 子供達は皆はしゃいで早く早くとはやし立てた。 白の家に着くと一護は白に割烹着を着せた。 「わあ!かか様可愛い!」 と朝月が声をあげた。 「そ、そうか?似合うか?」 「うん!とっても!かか様もとと様みりょーするの?」 「なっ!違っ!」 「違うよ〜、今日はにぃにがお料理するんだよ」 「ほんと!うわぁ、楽しみ!」 「ねぇ〜!」 「ほらほら、皆は向こうで待ってて?危ないからね」 「ねえかか様・・・、その、あたし、見てて良い・・・?」 「うん?なんで・・・?あ、もしかして・・・」 「あの、その・・・」 もじもじとしている十六夜の様子で狛村に何か作りたいのだな、と察した一護。 「良いよ、十六夜には味噌汁の作り方教えてあげる」 「本当!」 「うん、俺もお味噌汁から始めたんだよ。ガンバろ!」 「うん!」 十六夜がたすき掛けをして台所で味噌汁を作っている間、居間の方では3人が遊んでいた。 「で、今日は何作るんだ?一護」 「えっとね、にぃには『ふわふわ豆腐』を作ってもらうよ、俺は子供達のおかずに『鶏の柚子風味焼き』を作るから!十六夜がお味噌汁作るから、ご飯にはそれで良いと思うんだー」 「なるほど・・・」 「先に鶏肉に下味付けちゃうね」 と手羽元と柚子を取り出して準備していった。 柚子を絞った果汁に塩と荒引き胡椒、酒、オリーブ油で作った付け汁に鶏肉を漬け込んだ。 「これを1時間置いてから焼いてっと」 「ふうん・・・」 十六夜にジャガイモの皮むきを頼み、自分は玉ねぎを切ってやった。 「そうそう、指切らない様に気を付けてな、そんでジャガイモは乱切りにして鍋に、うん、そう」 だしを入れて具に火が通ったら味噌を溶かし入れた。 「そうそう、ちょっとずつ溶かして・・・、味噌入れたら沸かし過ぎちゃダメだぞ?上手い上手い」 「んしょ、んしょ・・・!これくらいで良い?かか様」 「ん、味見してみよ」 小皿の取って味を見る。 「ん!美味しい!これでいけるよ!十六夜、才能あるよ!」 「本当!嬉しいな!」 「どれ?俺にも」 「はい」 「ん・・、お!美味いな!」 「本当!白にぃ!」 「おー!いつも飲んでるお手伝いさんより美味いぞ」 「わあ!嬉しいな!」 「十六夜は良いお嫁さんになれるな」 「やだ!もう!かか様ってば!」 と頬を赤らめる十六夜。 そうこうしているうちに旦那二人が仕事から帰って来た。 「たっだいま〜!やあ!美味しそうな匂いだねぇ」 「おう、お帰り春水」 「おかえりなさい、京楽さん、剣八」 「おう、京楽が先ってのが気に食わねえがまあいい、何作ってんだ?」 「十六夜がね、初めてお味噌汁作ったんだよ!」 「ほお、えらいな十六夜」 「えへへ、かか様の教え方が上手だったから・・・」 「じゃ、後は俺らが作るから、十六夜も皆の所に行っといで」 「はあい!」 十六夜が居間へ行くと旦那二人は、台所が見える部屋で座って待っていた。 「何やってんの?」 「いやいや、こんなに可愛い子が居るのに、もったいないじゃない。お料理してる所見せてよ」 「俺は良いけど・・・?」 「勝手にしろ」 「うん、勝手にする」 と二人で酒を飲み始めた。 「あ、おつまみね、お刺身と、にぃにが作るヤツがあるから考えて飲んでね」 と刺身の盛り合わせをお膳に置いて、台所へ戻る。 「お待たせ!次はにぃにの番ね!」 「お、おう」 すり鉢に豆腐を3分の1丁を入れ、良くするように言うと慣れない手付きながらも白は豆腐を擦り合わせた。 「こ、こうか?」 「うんそう、満遍なく、なめらかになるようにね」 「ん」 そこへ溶き卵を少しずつ加えていく一護。二人が寄り添って料理をしている様を肴に酒を飲んでいる京楽と剣八。 「いやぁ、初々しいねぇ、うちの奥さんは」 とデレデレしている。剣八は一護が動くたびに揺れる腰、と言うかお尻を肴にしている。 「んふふ〜、可愛いお尻だなぁ、白は」 と京楽が呟けば負けじと剣八も、 「一護の方が良い形だろうが」 と惚気だか何だか分からない話をしていた。それが耳に入った白が近くにあった小皿を京楽めがけて思い切り投げ付けた。 「ぶっ!」 見事、額に当たった小皿はぱっきりと半分に割れた。 「ど、どうしたの!にぃに!」 「・・・何でもねぇ、で次は?」 「あ、うん。次はね・・・」 溶き卵と豆腐を良く擦り合わせた物を鰹節と昆布で取っただし汁に塩と白醤油で整えたを煮立たせ、そこへ「の」の字を描く様に入れると教えた。 「のの字・・・。こう、か?」 と覚束無い手付きで頑張る白。 「そうそう、で、蓋して。10秒待って・・・はい!器に入れて!」 「お、おう!」 綺麗に掬って器に盛る。 「これに白胡椒を振ってっと。はい!出来あがり!」 「おお!これ、俺が作ったのか・・・?」 「そうだよ、ね?簡単だったでしょ?」 「お、おう」 少し照れている白。 「おんやぁ?出来たの?白」 「おう、朝月達呼べよ」 「はあい!朝月ー!みんなー!おいで〜!」 どたどたと走って子供達が集まって来た。 「はあ〜い!」×4。 「かか様が作ったお料理だよ、朝月」 「わあ、美味しそう!食べてもいいの?」 「良いぞ」 「いったっだっきま〜す!」 「みんなも食べなよ?」 「うん!」 そう言いながら一護も白を手伝いながら焼いていた鶏肉の様子を見る。 丁度良い具合に焼けている。 大皿に取り出すと青柚子の皮を刻んで振りかけ、くし形に切った柚子と合わせてみんなの所へ持っていった。 「はあい!今日のご飯のおかずだよ!」 白が味噌汁の鍋を持ってこようとしてるのを見た京楽が、 「僕が運ぶから先に行っといで」 「あ、うん・・・」 用意された茶碗やお椀、箸、皿、炊かれてあったご飯で夕ご飯を食べる二家族。 「わあ!このお味噌汁美味しいね!」 「それは十六夜が作ったんだよ」 「本当!すごい!」 「このふわふわしたお豆腐?コレも美味しい!」 「白にぃ、お料理上手!」 「鶏肉も美味しい!」 と子供達は嬉しそうに食べていた。 剣八は一護のエプロン姿を見ながら、良からぬ事を考えていた。 第3話へ続く 10/01/12作 お料理に挑戦!の白にぃでした。彼の挑戦はもちっと続きます。 良からぬコトは、まあ、ねえ? |
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