題「秋祭り」2
 神社の境内に着くと一護は子供達を呼んだ。
「なあに?かか様」
「これ、お祭りで遊ぶのに。お小遣いだよ」
と3人にお小遣いを渡した。
「わ!やったぁ!ありがとうかか様!」
「ありがとう!かか様!」
「幾望は兄ちゃんに持ってて貰おうな」
「うん!」
屋台へと走りだす子供達に、
「知らない人に付いてっちゃだめだぞ」
と声を掛けていると、
「あー、居た居た。隊長ー!」
「おう、遅かったな、一角、弓親」
「これでも早く終わらせた方ですよ、まったく」
と一角が零す。
「子供達は僕等が見てますから、安心して下さい。一護君も楽しみたいでしょ?」
と弓親。
「う、うん、ありがとう二人とも」
ほんのり頬を染めて礼を言う一護。
「じゃあ、行くか」
「うん、あ、9時になったら子供達帰らせてね?お願い」
というと剣八と二人で神社を見て回った。

「すごい人だねぇ、いっぱいお店がある」
とわくわくしながら周りを見回す一護。
「あ!」
とある屋台へと進む一護。
「なんだ?」
「いらっしゃい!組紐どうだい?可愛い子にはお安くしとくよ」
それは色とりどりの組紐や髪飾りを売っている店だった。
「ん〜と、じゃ、これください!」
深い紅色の組紐、先の方には鈴が一つ付いていた。
「まいど!」
「あ、今使うからそのままでいいよ」
と代金を支払い受け取る一護。
「なんでぇ、組紐なんか買って、お前にゃ似合わねぇ色だぞ」
「ん?これ剣八のだよ」
「は?俺の?」
「うん、剣八に似合うと思って。後ろ向いて・・・」
一護は剣八の髪紐をほどくと、その組紐で髪を結んでいった。
ちりん・・・。と小さな鈴が音を立てた。
「うん、やっぱり似合う・・・」
目を細めて微笑む一護だった。
「そうかよ、もうすぐ奉納剣舞が始まんぞ・・・」
「あ!見たい!」
と社の方へと歩を進めた二人。

「おう、一護!」
「あ!にぃに、お腹大丈夫?」
「ああ、ここに良い盾があるからな」
と京楽を指して言った。
「もうにぃにってば!」
「それより、もう始まるみたいだぜ。俺剣舞なんか見るの初めてだ」
「俺もだよ!楽しみ!」
言っている内に神楽が流れはじめ、着飾った巫女が静々と出てきた。巫女の周りには鬼を模した面を被った者が取り囲み舞を舞い始めた。
刀を持った巫女が舞う度に、頭に付けた鈴がシャラン、シャランと涼やかな音を奏でていた。
鬼を退治する舞を舞う巫女、倒れて下手に去る鬼達。最後に剣を神に捧げ、舞は終わった。

「すごい・・・、綺麗な舞だったね、剣八」
「そうだな・・・」
きゅう、と手を握っている一護が可愛くてあまり見ては居なかった剣八だった。
「ねえ?にぃに」
「ああ、すごかったな。一護、お前も祭りは初めてなんだろ?旦那に色々買ってもらえよ」
「え、あ、うん!にぃにもね!しんどくなったら帰った方が良いよ?」
「分かってる、楽しんで来い」
「うん!」

 一方の子供達は?
「一角!あれ何?」
「あ〜、金魚すくいだよ、やんのか?」
「やりたい!」
「僕も!」
と皆で金魚すくいに挑戦するが、すぐにポイが破れて、一匹も掬えなかった。
「う〜むずかしい!」
「コツがあんだよ、見てろ」
と一角が手本を見せた。瞬く間に5匹の金魚を掬った一角。
「どうだ!」
「すごいです!一角さん!どうして?僕らと何が違うんですか?」
「お前らは水に漬けすぎなんだよ、だからすぐ破けんだ、後、水も一緒にすくっちまってる」
「へえー、じゃ、やってみよ!」
とアドバイスどおりに挑戦すると、全員が一匹ずつ掬えた。
「やったぁ!」
「あぅ〜!」
「あ、幾望はまだだったんだね、待っててあげるから、ね?」
「うん!にいちゃ大好き!」
すっかりお兄ちゃん子になっている幾望だった。十六夜は朝月と遊びに行ったり、狛村隊長の所へと行ったりで、中々構わないので朔が面倒を見ている。
「ほら、この金魚いけそうだよ!」
「うん!」
そ〜、とポイを近づけ、お椀も近づけてやっと一匹取れた!
「にいちゃ!取れた!小さい魚!取れた!」
尻尾をぶんぶん振って身体全体で喜ぶ幾望。
「やったね!幾望!幾望のは赤と黒と白が混じってるから分かりやすいね。かか様もとと様も褒めてくれるよ!」
「にぃちゃは?」
「うん、僕も嬉しいよ!やったね、すごいよ!幾望」
それぞれ金魚を持ち帰り、他の店も覗いて遊んだ。
きらきら光るガラスのおもちゃや、タコ焼き、焼きそば、綿あめ、ミルクせんべいなどを買い食べているとそんなこんなでお小遣いも底をつき、9時近くになっていた。
「もう時間だよ、帰ろっか」
と弓親が言うと、
「うん、眠い・・。かか様達は?」
「今晩はゆっくり二人きりにさせてあげてよ、ね?」
「ん〜、いっか!楽しかったし!帰って寝よ!金魚何処に入れたらいいの?」
「僕と一角がしといてあげるよ」
「ありがとう」
「おう、帰んのか?」
「あ、かか様ー!」
白が京楽と迎えに来ていた。
「うん、もう9時だからね、一護君にも頼まれてるし」
「ふうん、じゃあ、帰ろうぜ。ん?なんだそれ」
「おや、金魚だねぇ、朝月が取ったのかい?」
「うん!みんな一匹ずつ取れたの!キレイでしょ!」
赤と白の金魚を見せて満面の笑みで笑う朝月達。
「うん、キレイだねぇ、さ、冷えるといけないから帰ろう」
と促され子供達は帰って行った。

「あ、弓親達が帰ってく」
「ガキも一緒だな、一護なんか喰いたいか?」
「ん〜とね、剣八は?」
「俺は良い」
「んー、俺もお腹へってないんだ、もうちょっとお店見たいかな」
「そうか、後で花火があるってよ」
「花火?わあ!楽しみ!」
「打ち上げ花火だからな、空いっぱいに上がるぜ?」
「そんな大きな花火あるんだ!」
「ああ、楽しみにな・・・」
「うん!あ、あれ美味しそう!」
「あん?」
一護が指差すソコはミルクせんべいが売っていた。
「これ練乳でしょ?俺練乳好き!」
「しゃあねえな、買えよ」
「いいの!やったぁ!」
10枚重ねたせんべいを頬張る一護の指にはみ出た練乳が付いていた。
「ん!美味し〜い!剣八これすっごく美味しい!」
「そうかよ、指に付いてんぞ」
「あ、ほんとだ」
食べ終わりペロペロと舐め取っていく一護。その口の端にも練乳が付いていた。
「一護・・・」
「ん?んむ・・・」
「甘ぇな」
「も、馬鹿・・・」
「ふん・・・もう時間だな」
一護の手を取ると、ずんずん歩きだす剣八。
「ど、どこ行くの?剣八?」
「花火見んのに、良い場所があってな・・・」
「そうなの」
素直について行く一護。



第3話へ続く




09/09/08作 絶対何人かは気付いてます。剣八も気付いててやめません。




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