題「ORANGE・TAIL」5
 翌朝、剣八が起きると一護はちゃんと人の姿だった。
身体のそこかしこに、昨日の跡を残し気だるげに眠っていた。
「一護・・・」
さらりと髪を撫でると起き上がり、部屋を後にした。

その数分後に一護が目を覚ました。
「ん・・・、ん〜・・・!あれ?剣八?」
隣りに剣八が居ない事に気が付いた。
「どこ行ったんだろ・・・?」
寝巻きのまま部屋を出ると隊首室へと向かった。
「剣八ーぃ、どこぉ?」
その途中で、
「ああ、一護君、こっちだよ」
と弓親に呼ばれてそちらに行った。
「弓親、剣八どこ?」
「うん、その前に着替えようか」
「お着替え・・・?」
「そ!これね、隊長が買って来てくれたんだよ」
「剣八が!」
嬉しそうに笑う一護。
「そう、下帯もね、ちゃんと着けなよ?」
「うん!」
いそいそと寝巻きを脱いでいく一護。その身体には昨日の跡がバッチリ残っていて弓親は目のやり場に少々困った。
「早く、早く!」
「はいはい」
と着物を着せて行く。オレンジ色の髪に映える若草色の着流しだった。帯は濃い緑の兵児帯だった。
「似合う?」
くるんと回ってみせる一護に、
「うん、とっても!隊長は隊首室に居るから見せておいで」
「はーい!」
たたたた!と走って行った。
「やれやれ・・・(隊長・・・、跡付け過ぎですよ)」

「剣八ーぃ、居るの?」
「あ?入れ」
「うん!おはよ、あのねコレ、ありがと」
中に入って傍へ近付く。
「おお、似合うな、気に入ったか?」
「うん!とっても!剣八、剣八、ありがとう」
ゴロニャンと聞こえてきそうなほど身体を擦り付けては甘える一護。その内に膝の上に乗って来て唇を舐めた。
「ん・・・」
「お前な・・・」
「やぁらかい」
「おや、仲良しですね、隊長」
「うっせ・・・」
「・・?・・・。弓親ーぁ、ちょっと来て?」
「なんだい・・んむ」
ぺろ、と唇を舐めた。離れた後首を傾げる一護。
「あれぇ?おかしいな・・・」
と振り返りもう一度剣八にキスをする。
「ん・・・、あまい・・・、剣八何かお菓子でも食べたの?なんでそんなに口甘いの?」
と聞いてきた。
「は?甘いだぁ?」
「うん。弓親は甘くなかったよ、剣八は甘い。ずるい!俺もお菓子食べたい!ちょーだい!」
「・・・菓子なんざ喰ってねえよ」
「嘘だぁ!じゃあなんでこんな甘いの!」
「一護君?隊長はホントにお菓子食べてないよ?」
「え〜?じゃあなんで?」
「ふふ、隊長とのキスだからじゃないかな?」
「剣八だから?ふ〜ん」
納得したのか剣八の膝から下りると、
「お腹空いた、ご飯ちょーだい」
「もう出来てるよ、雑炊だけどもうそろそろお箸の使い方も覚えなきゃね」
「むずかしい・・?」
「馴れないうちはね」
と作ってもらった雑炊を食べると、
「じゃ、俺お散歩行ってくるー。弓親、ご馳走様!」
「ハイ、行ってらっしゃい」
と送り出してやった。

ぽてぽて道を歩いていると向こうの方に白哉を見つけた一護。嬉しくなって走って飛び付いた。
「白哉見ーっけ!何処行くの?」
と背中に飛び付いた。
「ぐっ!・・・誰だ、貴様は・・・」
「何言ってんのー!一護だよ!ねーねー!どこ行くの?おうち?隊舎?お菓子くれるって言ったよね?」
「一護・・・?一護は仔猫だ、お前のような人間ではない・・・」
「だって昨日この姿になったんだもん!ホラ!首輪まだ付いてるよ?」
更木隊所属・いちご。
「何故、その姿に・・・?」
「難しいこと分かんない!なんかね、剣八の霊力でこうなったから、ずっとこのままの姿で居たかったら交尾すると良いって言ってた」
「誰が・・・」
「マユリさま?って言う人」
「それで・・・」
「うん、したよ」
「そ、そうか・・・」
「おい、一護?お前その首どうしたんだ・・・」
「くび?」
「噛まれたみたいな・・・あ・・」
「ああ、剣八が噛んだんだよ、ほらこっちも!」
と無邪気に見せる。
「い、痛くないのか?」
「ん?んー、ちょっと痛い、かな?でも気持ち良かったよ」
「一護、聞いた俺も悪いけどよ、外でそう言う事言わない方が良いぞ・・・」
「そう言う事って?」
「その、誰と交尾、したとかな・・・」
「そうなの?」
と白哉の顔を見る。
「うむ、ヒトらしくするのであれば言わないことだ」
「分かった!あ、そうだ、白哉」
「なんだ・・・」
ぺろ。
と口を舐めた一護。
「んー、白哉も一緒だなぁ、恋次はぁ?」
「は?」
ぺろ。
「な、なにすんだ!お前!」
「変わんない。あのね、剣八の口ね、甘いの。弓親はどうかなって舐めたけど普通にしょっぱかったから、白哉は辛いのが好きでしょ?だから辛いかなって、恋次は甘いのが好きだから甘いかなって思って。でも普通だった。なんでだろうね?」
「甘い・・・?」
「そうなの!口吸われるとよく分かるけど、とっても甘いの」
「ど、どういう風に?」
「ん〜、お水みたいな感じ」
「水?」
「うん、美味しい水は甘いでしょ?身体に溶けるみたい」
「沁み込むって言うんじゃねえの?」
「ん〜、そうなのかな?多分そう!」
「ところで、早く降りろ。重い、背中に乗りたくば更木に背に乗れば良いだろう」
「あそこはやちるの場所だから駄目なの・・・」
「うん?」
「あそこはね、やちるの特等席なんだって。だから駄目、でもどんな感じなのかなって思ったんだ。ゴメンね」
と白哉の背中から降りた。
「一護君!」
と後ろから呼ばれた。
「ん?あ、弓親だ」
「一護君、隊首会に呼ばれたって隊長が言ってたから急いで戻って!あ、朽木隊長、おはようございます」
「うむ・・・、何故一護が呼ばれた?」
「さあ、多分、人化の話だと思います」
「そうか、行くぞ。恋次」
「あ、はい」
「バイバイ、またね」

隊舎。
「ただいま!剣八!」
「ああ、隊首会にお前も呼ばれた。多分説明と今後の事だろうから、ちゃんと聞いとけよ」
「うん、難しいことは分かんないよ?」
「分かるとこだけで良い」
「うん!
二人で隊首会へと赴いた。


第6話へ続く




09/08/28作 エッチの翌日でした。


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