題「看病」2 | |
朝食が済んで、剣八と四番隊に診察に行く。一角と弓親を思い出した事を報告した。 「そうですか、それは良かったですね。一護君も思い出せれば良かったですのに」 「そうですね、でも先に進めて良かった・・・!」 そう話しながらも剣八のこぶを診ている卯ノ花隊長。 「こぶの方は、もうほとんど治っていますね。これはどうですか?」 と少し強めに触っている。 「ちと痛ぇな」 「そうですか、もう軟膏は良いですね。あとは内服薬をもう2〜3回続けて下さい」 「はい、あ、お酒は・・・」 「もう飲んで良いですが、適量を守ってくださいな。そうですね、お銚子2本なら」 「だって、良かったな!剣八」 「おお、まあな」 喜ぶ一護に目を細める剣八。薬を貰いに行く一護。値段を聞き、財布を見るとギリギリしか入ってなかった。 ヤバイな・・・。後、2回ぐらいなのに・・・。どうしよう・・・。 「はい、今日の分です。良かったですね、お大事に」 「ありがとう」 二人で隊舎に帰る。 すぐ風呂の用意をする一護。髪が気持ち悪いと剣八が言いだしたので洗うのだ。 「用意出来たぜ」 「ああ・・・」 裸の剣八に、三助姿の一護。 「結構、様になってきたな、黒崎」 「うっせえ、早く座れよ」 椅子に座る様に促し、髪を丁寧に梳いていく。 「痛くないか・・・?」 「ああ、気持ち良いくらいだ・・・」 「そ、そうか!」 鏡に映った嬉しそうな笑顔の一護を見て剣八は、 (本当はもう全部思い出してるって言ったらお前はどうすんだろうな・・・。もうこうして髪を梳くこともねぇな・・・) 等と考えていた。不意に一護が、 「なあ、剣八、コレ知ってるか?」 と出して来たのは淡い緑色をしたビー玉だった。 「それが何だ?」 「これさ、お前が一番最初に俺に買ってくれたんだ。覚えてるか?出店でさ、お前の目の色に似てるって言ったらお前、黙って買って俺に渡したんだぜ」 嬉しかった。そう言って大事そうに懐に仕舞い込んだ。 「俺の目?」 「そう、光の加減でこの色に見えたりするんだ、知らなかったって言ってた」 「ふうん、初めて言われたな・・・他の奴らはそんな所に気が付くほど余裕なんてねえんだろ」 「へえ、じゃあ俺が最初に気付いたのか、何か嬉しいな」 「・・・もういいから、髪洗えよ・・・」 「あ、ワリィ」 そう言うと髪を洗い、身体を洗い始めた。 背中から始め、胸を洗い、下肢にも手を伸ばす。 「慣れてんだな・・・」 「今さらだからな」 「ふーん・・・」 「右足出せよ」 「ん」 爪先から一本一本丁寧に洗う一護。 「くすぐってえな、おい」 「我が儘言うな、ほい次」 と左足も同じ様に洗っていく。 「お湯掛けんぞ」 「おう・・・」 ザパ、ザパ、とお湯を掛け泡を落としていくと、何故か屹立した剣八自身があった。 「何勃たせてんだよ」 「溜まってんだろ、うるせえな抜くから出てろ」 「貸せよ、俺がやってやるから・・・」 「はあ!?」 「下手だけど、自分でやるより虚しくないと思うぜ?」 「お前な・・・」 言ってるうちに一護が手を這わせてきた。 ドクン、と脈打った。 「ほら、早くって言ってる・・・」 一護がそこに口付けると抵抗しなくなった剣八。 「好きにしろ・・・!」 「ん、剣八・・・」 くちゅっくちゅっ、ぴちゃぴちゃ、と淫らな音が風呂場に反響して響いていた。 「ん、ふう、相変わらずデカ・・・、んは、あ、んん」 悩ましげに眉根を寄せ、懸命に奉仕する一護の頭に手を添える剣八。 丁寧に舐める一護。愛おしそうに自身を愛撫する一護に今までの相手の違いに気付かされる。 今までは勃てばすぐ入れて事を終わらせたし、向こうも商売柄それを望んだ・・・。何より自分が他人と触れ合うのを厭んだ。 でもこいつは違う。記憶を無くそうが、自分を大事に思って接してくれる。何より愛してくれている。 「ふっ、く・・・(一護・・・)」 「んん、気持ち、い・・・?」 「ああ、出るぞ、離れろよ・・・!」 「ん、いいよ、出せよ・・・」 きゅうっと吸い上げた。 不意を突かれた剣八はそのまま達し、一護の口に吐き出した。 「んん!くふっ!んく、んく、あ、はぁ・・・」 ごくん、と喉を鳴らして飲み干した一護。 「お前・・・」 ぐいっと口を拭うと、 「湯冷めする前に着替えろよ・・・」 と顔も見ずに出ていった一護。その顔は赤く染まっていた。 着替えて部屋に戻ると一護は居なかった。 一護は自分の部屋に居た。 どうにか薬代を探したが、全然足りなかった。 「どうしよう・・・、後、もうちょっとで治るのに・・・、薬が・・・買えないなんて・・・情けない・・・」 ハァッと溜め息をついた一護。 「一護君、夕飯の買い物行って来てくれないかな?」 と弓親が部屋まで頼みに来た。 「あ、うん。良いよ」 「ありがとう、これに買うもの書いてあるからお願いね」 「これぐらい良いよ、じゃ、行ってくるな」 買い物先の市場で京楽隊長とバッタリ会った。 「やぁ一護君、どうしたの?浮かない顔して」 「あ、京楽さん、こんにちは」 「こんにちは、剣八さんの様子はどうだい?」 「だいぶ良いですよ。あ。そうだ、京楽さん 相談があるんですけど・・・」 「んん?なーに?」 「え、と、お金が要り様になったんですけど・・・、何かバイトって無いですか?」 「んー、そうだねぇ。どんなのが良いの?」 「えっと、出来れば日当で貰えて、給金の良い所なんですけど・・・。難しかったら日当だけでも・・・、仕事は量を増やせば金になるだろうし・・・」 「う〜ん・・・、そんなに困ってるの?」 「まぁその・・・どうしても欲しいものがあって・・・」 「代行のお金は?どうしたの」 「全部、使っちゃったから・・・」 「ふーむ、絶対に要るものなの?」 「はい、絶対に・・・」 「んー、じゃあねぇ、遊郭なんだけど、そこでね、雑用が足りないって言ってたんだけど・・・、どうかなぁ?」 「遊郭?」 「うん、料理運んだり、部屋の片付けしたりなんだけど・・・、重労働だよ?」 「・・・、給金が良ければ、現世の金で12万ぐらいだから、それ出来たら辞めれますか?」 「うん、ちゃんと言っといてあげるよ」 「ありがとうございます!助かります!ありがとう!ありがとう!ああ!良かった!これで・・・!」 「じゃあ、今日から行く?」 「あ、夕飯の準備あるんですけど、すぐ終わらせて行きます!」 一護は急いで隊舎に帰るとその日の夕飯を作って、弓親に用事が出来たから出掛けると言っておいた。 八番隊。 「こんにちは〜、京楽さん。遅くなりました!」 「って言うか何その格好は?変装?ま、いいや、丁度良い時間だし。さ、行こうか」 「はい、剣八達にばれたくないから・・・。霊圧制御装置も付けてるし・・・」 そう言う一護の格好は、いつもより長め黒髪の髪型のかつらを被っていた。 「そうかい。剣八さんが羨ましいねぇ・・・」 「何言ってんですか」 「これから行く所はね、僕の行きつけのお店だからね、安心していいよ」 「ありがとうございます。何から何まで・・・」 「どってこと無いさ。剣八さんのためでしょう?」 「えっ!あ、その・・・」 あたふたと顔を赤くさせて照れる一護。 「ためって言うか・・・、俺のせいだから・・・」 「一護君?」 「いえ、何でも・・・」 (ん〜なんだかなぁ) 胸中複雑な京楽。 「あ、ここだよ〜」 「え?わ、でかいとこですねぇ」 「ふふ、可愛い反応だなあ」 「んな!」 「はいはい、行くよ〜」 とさっさと中に入ってしまったので、慌てて追いかける一護。 中で店主と話をしている京楽。 「と、いう訳なんだ。お願いできるかな?」 「はい。他ならぬ京楽様の御頼みとあらば、おいそれと断れません」 「ありがとうね。後悪い虫が付かない様に気を付けてね?怖い人が来るからね〜」 「怖い人、ですか?」 「十一番隊の隊長さん」 「分かりました。えーと、君の名前は?」 「あ、黒崎一護です。よろしくお願いします」 と頭を下げる一護。 「早速今日から仕事を頼みたいんだけど良いかな?」 「はい、でも俺お金貯まったら辞めちゃいますけど、そんなのでも良いですか?」 と申し訳なさそうに聞いてきた。 「いいよ。事情があるんだろう?それまではよろしく頼むよ。仕事はきついからね」 「分かりました。お願いします」 それから京楽は帰って行った。一護は仕事の内容を聞かされて、一生懸命働いた。 皿洗いから、膳を運ぶ、使い終わった蒲団の片づけなどの重労働も文句も言わずに働いた。 それでも、薬代にはほど遠かった・・・。 休憩時間、先輩たちと話をしながら不意にぽつりと零してしまった。 「ふぅ・・・、まだ足りねえなぁ、間に合うかな、後3日分くらいしかねえし」 「なんだ?金が要んのかお前」 ソコの先輩に聞こえてしまった。 「へ?あ、聞こえました?ちょっと薬代が足りなくて・・・」 「へえ、親か?」 「まぁ、そんな感じです」 と曖昧に答えた。 「ふうん、なあ、お前さえ良ければ割りの良い仕事あるぜ?お前の器量ならすぐ稼げるぜ?」 「? 何の仕事ですか?」 「奉仕だよ、福祉福祉」 「福祉?」 「そ!どうする?」 「やります。時間がないし・・・」 「じゃあ、明日の夜な」 「? はい」 そう言って仕事に戻った一護達。 疲れきって隊舎に帰ると弓親が待っていた。 「お帰り、一護君。どこ行ってたの?」 「用事があるって言っといたろ?何かあったのか?」 「別に?隊長の機嫌が悪いぐらいだよ・・・」 「なんで?」 「君が居なかったからでしょ」 「変な奴だな。もうお前ら思い出したんだから、平気だろ?悪い風呂に入りてぇ」 「あ、うん」 一護が風呂の入っていると、剣八が入ってきた。 「ん?ああ、今からか?俺もう出るから・・・」 「一緒に入っとけ。黒崎、髪、洗え」 「へ?良いけど・・・」 髪を梳きながら洗っていく。 「あのさ、俺明日からちょっと居ないけど、夜には帰ると思うから・・・」 「何すんだ」 「ちょっと用事が出来てな。邪魔が入らなきゃ、すぐ終わるから・・・」 「そうか、ちゃんと言っとけ」 「ごめん」 そんな会話で納得した剣八は、翌日からは大人しかった。 翌日のバイト。遊廓の仕事も手を抜かずに働く一護は店主のお気に入りになった。 「君はよく働くねぇ。出来ればずっと居て欲しいくらいだよ」 「ありがとうございます。でも・・・」 「分かってるよ。約束だからね。ハイ、今日の分」 と日当を渡された。 「いただきます」 店を出ると、例の先輩が待っていた。 「おう、遅かったな。行くぜ」 「はあ、どこなんですか?」 「行きゃあ分かるよ」 と連れていった。 「・・・ここは?」 「男娼館みたいなモンだよ。男が春を売るんだよ」 「えっ!それって俺にも?」 「金が要るんだろ?ここなら一晩5万は固いぜ?」 「5万・・・」 揺れる一護。それだけ稼げれば、すぐ薬が買える。でも同時に剣八を裏切る事になる・・・。 「どうした?親の薬代が要るんだろ?」 「でも、相手にバレるのは・・・」 「化粧するから平気だって!」 「けしょう?するんですか?」 「女物の着物も着るぜ」 じゃぁ、大丈夫かな・・・。今、3万円ぐらい貯まってるし、2回ぐらい我慢しよう。誰のせいで剣八がああなったのか考えれば断る事など出来ないではないか・・・。 と、自分に言い聞かせ頷いた。 「よし、じゃあ準備すんぜ」 と着物と紅を渡してきた。 一護は着物を着替えると、紅を唇と目尻に注した。 「へえぇ、上玉じゃん。すぐ稼げるぜ。稼げばやめれば良いしな」 「はい・・・」 震える体を叱咤して他の子たちの居る部屋で声が掛るのを待った。 「おや?新入りの子がいるねえ」 「お呼びますか?」 「そうだねぇ・・・」 「ちょいと!新造!声が掛ったよ!」 と一護が呼ばれた。 「は、はい!」 部屋まで案内された一護。 「おや、近くで見るともっと可愛いねぇ。名前は?ん?」 「あ。まだ・・・」 「ほう、そうかい」 いやにべたべたと触ってきた。確か3日は通わないと寝るとか出来ないと言っていたが・・・。 「あの・・・、お酒は?」 必死に逃げようとする一護の身体に密着する男。 「何か芸は出来るのかい?」 「芸?」 「舞だの、三味線だのだよ。出来ないなら身体を差し出せ。金ならあるぞ?」 とばら撒く男。殴りたい衝動に駆られた一護。でも出来ない。 「10万ならな」 と言えば、 「安いもんだ」 とさっさと出した。 「さ、これで今日一晩はわしのものだな・・・」 と手の平が一護の身体を這いまわった。 蒲団の上で込み上げる吐き気に耐えながら震える体に、 「怖がることもないだろう?ここにいるって事は初めてじゃないだろう」 と乱暴に扱われた。 「あうっ!痛い!」 慣らしもせずに指を入れられ声が上がった。 「痛い?ふのりでも使うか。泣かれても興ざめだ・・・」 と潤滑剤を塗り、自身を宛がうと押し入れた。 「あ、あ、うう!」 (剣八!剣八!) 「こいつは具合が良いな・・!絡み付いてくる」 男は自分の快楽のみを追い、腰を動かし、果てると金を残して帰った。 残された一護は、起きる事も出来ず、声も無く泣いた・・・。紅が溶け、目尻を伝った涙は血の涙の様だった・・・。 その日はそこに居る事も出来そうになかったので帰った。 (これで明日の分は買える・・・) と言い聞かせ帰る一護。 帰り道で、小川を見つけた一護は裸になると水に入って中の処理をして身体を洗った。 男の匂いが身体に沁みついている気がした。身体が赤くなるまで擦った。 「嫌だ、嫌だ、汚い、汚い!いやだっ!」 体を見ると跡を付けられていた。 地下温泉に急いで行って、体中の跡や赤く擦れた後を消し隊舎に帰った。身体の傷は消えても心の傷は治らない。 第3話へ続く 09/08/03作 遂に春を売ってしまった一護でした。 |
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