題「新しい家族」8 | |
死神になる為に学院に入っても良いと言う養い親からの承諾を得た3人は一護に報告する為に十一番隊を訪れた。 そこには珍しく白も来ていて縁側で一護と話をしていた。 「ん?おい一護あのガキ共また来てんぞ」 「あ、本当だねぇ。こっちおいでよ」 と手招きすると小走りで寄って来た。 「あ!あのよ!俺ら死神になっても良いってハリベルが言ってくれたんだ!」 「おう!だからよ、ここに世話になるぞ!」 と口々に言ってくる。 「そうなの!良かったねぇ。あ、そうだ、にぃに一人だけ預かってもらえるかなぁ?」 「あ?こいつらの事か?」 「うんそう、ダメ、かな?」 「一人くらいならいけんだろ。まあまあ広い屋敷だしよ」 ずず・・・、とお茶を啜りながら答えた。 「良かった。ウル、にぃにが良いって言ってくれたよ」 とウルに向かってにっこり微笑んだ一護。 「おっさんは?!」 とノイトラが訊いてくる。 「まだ隊首会だよ。もうすぐ帰ってくるよ。あ、にぃにお昼一緒に食べようよ」 「あん?ああ、いいぞ」 そんな話をしていると白の様子が変わった。 「うっ・・・!」 お腹を押さえて呻いている。 「にぃに・・・?」 「一護・・・!はっ!産まれる・・・!」 大量の汗を掻きながら苦しそうに伝える白。 「わぁあ!にぃに!頑張って!すぐに卯ノ花さん呼ぶからね!弓親!弓親ぁ!」 大声で弓親を呼び、卯ノ花を呼んでもらう。 ふっ!ふっ!と荒い息を繰り返している白を見て子供達もそわそわしだした。 「かか様!かか様!」 「だい、じょうぶだ、あさつき・・・!」 心配で泣きそうになっている娘を安心させようと笑って見せる白。 すぐに四番隊から卯ノ花と勇音が訪れた。 「一護君!白君は?」 「縁側です!陣痛はさっき始まったばっかりです」 「そうですか。白君、今から四番隊へ行きます。京楽隊長には連絡済みですから向こうで会えますよ」 と優しく語りかける。 「う、ん・・・」 四番隊の担架で運ばれる白。心配で付いていく一護や子供達。 四番隊。 詰所に着くとすぐに分娩室へと運ばれた白。 その部屋の前で待っている一護と子供達。だんだん大きくなる白の呻き声に緊張しだす子供達。 ほとんど泣いている朝月を慰める十六夜。そわそわしている男の子4人。 分かりにくいがウルが涙目になっていた。 『うあぁあっ!!』 中から聞こえる声にとうとう泣き出した朝月。 「かかしゃまぁ〜!」 「ああ、大丈夫だよ朝月。子供を産む時は皆こうなるんだよ。俺もそうだったからね」 「・・ほんとに?」 「うん」 そして一護が幾望を産んだ時の話が始まった。 それは2回目の出産だったので初産よりは楽だったがやっぱりこんな風になった事。 隣りには剣八が付いていてくれて安心した事。 産まれた赤ん坊の声を聞いた途端に今までの痛みや苦しみが全て流れていった事。 「だからね、京楽さんが来てくれればにぃには安心して産めるよ。産まれて元気な赤ちゃんの泣き声を聞いたらもう大丈夫なんだ」 すんすんと鼻を鳴らしながら、 「そうなの・・・。早く、とと様来ないかなぁ」 と入り口の所を眺める朝月。 30分後。 漸く京楽が現れた。 「卯ノ花さん!白は!白の子は?」 「まだ分娩室です。早く!」 「朝月、とと様はかか様の傍に付いてるからね。もう安心していいよ」 とにっこり笑ってやった。 京楽が入った途端、白の怒声が聞こえた。 「今までどこほっつき歩いてた!馬鹿春水!」 「ごめんよ、不安にさせたね。もうここに居るから、ね?」 と震えている白い手を握った。その大きな手を手加減なしの力で握り返す白。 「うう〜〜!痛え〜!はっ!はっ!しゅん、すいぃ・・・・!」 「大丈夫、大丈夫、卯ノ花さんが居るから、僕も此処に居るからね。安心して、愛してるよ、白」 と優しく触れるだけの口付けを宥める様に繰り返した。 「ん、ん、も・・・と・・・」 「うん・・・」 「ひっ!ああぁあーーっ!」 脂汗を流し、叫ぶ白。 「白君、イキんではいけませんよ」 と卯ノ花に話しかけられる。 「う、ん・・・」 ふっ!ふっ!と徐々に力を抜いていくが、やはり痛い。 「うう〜!はぁ!はぁ!ふくっ!」 「もうすぐですよ・・・、イキんでと言ったらイキんで下さい」 苦しそうな白の顔に張り付いた髪を払ってやる京楽。 「今です!」 「ふぅううう〜〜ッ!」 握った京楽の手がみしりと音を立てた。そんな事は微塵も顔に出さず白を気遣う京楽。 「頑張って!白。やっと僕らの子が会いに来てくれたんだよ」 コクコクと頷く白。 「白、白、頑張って!」 汗を拭く京楽。 「もう一度!」 「ふぅうう〜〜ッ!」 「もう少しです!頭が見えてきました!」 「うぅうう〜〜ッ!」 「頭が出ました!まあ!へその緒が!」 京楽が覗きこむと赤ん坊の首にへその緒が巻きついていた。 「卯ノ花さん!」 「大丈夫です。すぐに外せます!もっとイキんで!」 「んんううう〜〜ッ!」 卯ノ花の指がするり、とへその緒を外すと赤ん坊を取り上げた。 「・・・ぷっ!ふわぁあ!ほわぁ!」 一瞬遅れて元気な産声を上げた赤ん坊。 「うまれた・・・」 「元気な女の子ですよ」 と産湯に浸け、綺麗にするとすぐに白の元へと戻される。 「ちいせえな・・・」 「朝月より髪が白いねぇ」 初乳も元気に吸い始めひと安心だ。 「さ、京楽隊長は一先ず出て下さいな。今からまだ処置がありますからね」 「うん、じゃあまた後でね、白」 「ああ・・・」 外に出ると一護と朝月が心配そうに駆け寄った。 「京楽さん!にぃには!赤ちゃんは!」 「とと様!」 朝月を抱きあげて一護に向き直ると、 「無事に生まれたよ。女の子だ。朝月、妹だよ」 「やったぁ!かか様!かか様は?」 「元気だよ。先に病室に行ってようか」 「うん!」 「おめでとう朝月!」 「ありがとう十六夜!」 「おめでとう!あーちゃん!」 「ありがとう!朔!」 「一護君達もおいで」 「う、うん」 そこに居た全員で白の病室へ向かった。 暫く待っていると車椅子に乗った白と産まれたての赤ん坊がやって来た。 「かか様!妹!生まれた!大丈夫!?」 「落ちつけよ、俺もこいつも元気だよ」 と笑ってみせる。 すりすりとその膝に顔を擦り付ける朝月。 白の腕の中には産まれた子が寝息を立てていた。 「くぅ、ぷぅ、くぅ、ぷぅ・・・」 京楽が白をベッドに寝かせてやる。 もう窓の外は暗くなりかけていた。 「今日はもう帰ろうか?」 一護が言うと全員が頷いた。 「じゃあにぃに明日来るからね。京楽さん、にぃにをよろしくお願いします」 とお辞儀する一護。 「うん、ありがとうね。一護君」 「気ぃ付けて帰れよ」 「バイバイ、十六夜、朔」 「「バイバイ、朝月」」 皆が帰って家族だけになった。 「新しい家族だね」 「そうだな・・・。名前は?決めたか?」 「うん。女の子で朝月の妹だからね、『夕月』(ゆうづき)ってどうかな?」 「良いんじゃねえか」 「綺麗な名前ね」 「じゃあ君の名前は夕月だね。ようこそ僕たちのもとへ」 「春水、実はよ、家族はもう一人増えるんだけどよ」 「うん?なにそれ」 「さっき居たガキのうち一人をうちで預かるんだと。学院に入るまで」 「ふぅ〜ん。良いよ別に・・・。大人しい子だと良いけどね」 「そうだな」 「ええ〜」 そんな会話が聞こえていた。 第9話へ続く 10/08/24作 時間掛かりましたが、待望の第2子の誕生です! |
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