題「新しい家族」7 | |
今日も今日とて一護の所に集まっている3人組。 ウルがきょろきょろと誰かを探している様なので一護が話し掛けてみた。 「どうしたの?誰か探してるの?」 と聞かれて少し驚きながら目を泳がせ、 「昨日の・・・、白い人は・・・?」 と聞いた。 「うん?にぃにの事かな?にぃには京楽さんの奥さんだからここには居ないよ、たまに遊びに来てくれるけどね」 と教えた。 「おくさん・・・」 「うん、朝月のお母さんだよ。もうすぐ二人目も産まれるんだ〜」 と自分の事の様に喜ぶ一護。 そうか・・・、もう誰かの物なのか・・・。自分の物にはならないのか・・・。 そう思うと胸の奥がツキンと痛んだ。けれどそれがなんの痛みなのか分からなかった。 「なぁおい!死神になったら強くなれんのか!」 剣八に投げ飛ばされていたノイトラが叫ぶ様に訊いた。 「ああん?なんでぇ、強くなりてぇのかよお前」 「当たり前だ!おっさんより強くなってやんよ!」 「くくっ!面白れぇガキだな、まあ今のままよりゃ強くなれるだろうぜ。基本と実践の繰り返しだからな」 「・・・どうやったら死神になれるんだ?」 「取り敢えず、学院に入るこった」 「がくいん・・・」 「試験に合格すれば入れるよ」 と一護が付けたした。その手には本日のおやつもある。 「はい剣八、お茶」 「ん」 「みんな〜、おやつだよ〜!」 と子供達を呼べば、皆集まってくる。 今日のおやつは、栗むし羊羹だ。 「学院に通うなら寮に入るのもあるけど、良ければうちから通う?」 「え?」×3 「一護、通うのは出来ねえぞ。全員寮住まいだ」 「そうなの?」 「ああ、それまでの勉強時間つーか、基礎知識教えるのとかなら預かってもいいがな」 ずずっとお茶を啜る剣八。 「どうする?そっちの方が安全だと思うけど・・・」 「ガキ同士で鍛錬するのも良いだろ」 「3人ともうちで預かるの?部屋大丈夫かな・・・」 「一人くらい京楽んトコでも良いだろ」 「ん〜・・・、それでもいい?」 一護が3人の方を見る。 「俺はおっさんトコが良い!」 「あ、俺も」 とノイトラとグリムジョーが言えば、 「京楽さんの所だとにぃにが居るから安心は安心なんだけどなー・・・」 と呟く一護。 「俺はそちらで良いです」 とやけにきっぱり言い切るウルキオラ。 「そう?ああでも、俺や君達で決めても駄目だよね。君達の家族にも相談しないとね」 と一護が言うと3人が、 「ああ〜・・・」 と頷いた。 「まずはおうちの人に訊いてからね?それからでも遅くはないしね」 と言い聞かせる一護。 「ふん、一回や二回反対されたくらいで止めるなんざ本気じゃねえってこった」 と羊羹と一口で食べる剣八。 「もう・・・。美味しい?」 「ああ、甘すぎねえからな」 と答える。 そして子供達は一先ず、養い親に相談することにした。 流魂街。 「どうやって言うんだ・・・?」 「そのまま言えば良いじゃねえか」 「そのままなぁ・・・」 自分達の家に帰れば養い親の一人である褐色の肌に金髪の女性が縫い物をしていた。その横には小さな女の子が居た。 「ただいま」×3。 「おかえり」 「あ、あのよ、ハリベル・・・、話があんだけど」 「なんだ?」 「俺達な、死神になろうと思うんだ」 「死神に・・・?必要ない」 ぴしゃり!と切り捨てた。 「でもよぉ」 「俺ら強くなりてえし・・・」 「それに、俺らの飯だって・・・、その、」 「なんだ?お前たちはそんなくだらないことを・・・」 言いかけると戸口が開いた。そこには男が立っていた。 「い〜んじゃねえの?俺は構わないが?」 「スターク・・・、貴様は黙ってろ・・・」 「俺とお前の稼ぎだけでやっていけるけどよ、そいつらはなりたいんだろ?死神に」 「お、おう。学校に入って寮とかいう所に住むんだってよ!」 「合格すれば良いんだって!後はなんか要るもんだけ買うつってた」 「駄目か?俺らだっていつまでもハリベルの荷物になりたくねえ!」 「駄目だろうか?」 子供達の熱意は分かる。だが、 「ならば覚悟はあるのだろうな?」 「「「覚悟?」」」 「行くと言うのならば、正式な死神になるまでここに帰ってくることは許さん・・・」 「おい・・・」 「何年掛かるか分からんぞ?それでも行く覚悟があるのなら行け」 真剣な眼差しで3人を見据えるハリベル。 ココを出て、もう帰ってくるなと、休みの日もあるが帰ってくる事は許さない。 重く圧し掛かる言葉・・・。 ここが好きだ。手の掛かる妹の様なヤツも居る。厳しいけれど優しい養母、普段は寝てるけどちゃんと俺達の食う分の食糧を調達してくれる養父。 「が、我慢する!」 「俺もだ!絶対に死神になって帰ってくる!」 「だから・・・!」 子供達の真剣な願い。 「分かった・・・、いつから行くのだ・・・?」 「えと、試験はまだらしいけど、それまでに色々勉強しなきゃ駄目らしくてよ」 「そんでな、それまで俺らを預かるって言ってくれたヤツが居るんだ」 「その人は死神で隊長をやっています」 「ハリベル・・・、明日良いって言ってくれたってそいつに教えるから」 その時ハリベルの横に居た女の子が口を開いた。 「ハリベル?なんのお話だす?ノイトラ?」 緑の髪をした女の子。 「ネル・・・、こいつらは死神になるために家を出るんだ」 「?しにがみってなんだすか?家を出るって・・・、うそ」 「嘘じゃねえよ、何年掛かるか分からねえけどな」 「いやだす!ノイトラまたイジワルしてるんだす!」 「ネル・・・、嘘ではない」 「ハリベル・・・いやだす〜!」 ハリベルの膝に顔を埋めて泣き出した。 「俺らは強くなりに行くんだ!泣くんじゃねえ!」 何を言ってもネルは聞く耳を持たず泣き疲れて寝てしまった。 翌日、いつものように一護達の居る瀞霊廷に行く3人。 第8話へ続く 10/07/31作 両親を説き伏せる3人でした。 |
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