題「新しい家族」6
 一護の所では、この間から例の子供たちが毎日来ていた。
先ずノイトラが剣八の強さに目を付け喧嘩を売っては返りうちに合い、再戦を繰り返す。
グリムジョーは一護に一目惚れし、十六夜と口げんかをしながらも一護には弱かった。
ウルキオラは必ずきょろきょろと周りを見回し誰かを探していた。

 そして今日も今日とて騒がしく、暴れている子供達。
そこへ朱色の内掛けを纏った白が訊ねて来た。
「一護、居るか」
「にぃに!うん!縁側でお茶飲も!」
かなり大きくなったお腹を見て一護が手を差し出す。
「悪いな」
「ううん!じゃ、ちょっと待っててね」
とお茶を用意しに消えた。
「ん・・・?」
ふと視線を感じ、顔を向けるとじっと見つめられていた。
「誰だ?お前」
大きな翠色の目をした子供は静かに、
「ウルキオラ」
と応えた。
「ふうん、ああこないだのガキか」
と納得した白。そこへお茶を持って来た一護がやって来た。
「お待たせ〜、あ、ウルどうかしたの?」
と問い掛けるとふるふると首を横に振った。
「そう。で、にぃに京楽さんとお話した?」
「あ、ああ、何かな、俺、アイツを一人占めしたいんだってよ」
と少し赤くなりながらも言われたコトを告げると、一護はキョトンとしてから、
「当たり前だよ、だって大好きな人なんだもの」
と事も無げに言った。
「そ、そうなのか?俺は初めてだからな、分かんねえ」
「うん俺も、剣八に逢ってからだもん。赤ちゃんは元気?」
と聞くとお腹を触りながら、
「ああ、良く動くよ。もうすぐ生まれるかもな」
「楽しみだねぇ、女の子かな?男の子かな?」
「さあなぁ、元気で生まれて来てくれりゃあ良いさ」
「そうだねぇ」
と一護も白のお腹を撫でた。ぽこっと内側から蹴られる感覚に、
「挨拶くれたよ、にぃに」
「あぁ、朝月!」
「なあに、かか様!」
と十六夜と一緒に喧嘩していた朝月が駆け寄って来た。
「ほら、手ぇ当ててみろ・・・」
と自分のお腹に手を導く白。朝月の手が当てられると、
「ほら、お前の姉ちゃんだ・・・」
とお腹に語りかけると、ぽこん!と蹴られた。
「きゃ!なに?」
「お腹の赤ちゃんが返事してくれたんだよ」
一護が説明した。
「そうなの?」
と首を傾げて見つめてくる朝月に、
「ああ、お前もこうして返事してくれたんだぜ?」
「あたしも・・・」
さわさわとお腹を撫でながら今度は耳を当て、
「あたしね、朝月って言うのよ、よろしくね」
と言えば、すぐにぽこっ!と返事が返ってくる。嬉しくなった朝月。
「あたしのコトが分かるのね!じゃあ!じゃあ!かか様もとと様も分かるのよね!」
「ああ、ちゃんと返事してくれる」
「〜〜!すっごーい!」
「みんなそうだよ?うちの十六夜も朔も、幾望もそうだった」
「へえ〜」
キラキラと目を輝かせる朝月に、
「ほら、もうすぐとと様が帰ってくるから帰るぞ」
と言うと、
「はあ〜い!じゃあね、十六夜!また明日〜!」
「バイバーイ!」
と二人連れだって帰っていった。
その後ろ姿を見つめるウルが居た。

「いつ生まれるのかな〜」
と白と手を繋ぎながら歩く朝月が呟いた。
「んん?まあ、もうすぐだろうなあ」
と返すと、
「早く会いたい!」
そんな話をしていると前を京楽が歩いていた。
「とと様〜ぁ!」
走って飛びつく朝月。
「わあ!今から家に帰るのかい?」
「うん!あのね!今日ね!かか様のお腹の赤ちゃんがね、返事してくれたの!」
頬を紅潮させ話す朝月の頭を撫でながら、
「ああ、ぽこん、って蹴ってくるでしょ。凄いよねぇ」
「うん!早く会いたいの!まだ?赤ちゃんまだこっち来ないの?」
「あはは・・、ちょっと分かんないなぁ」
「とと様にも分かんない事あるのね」
「たくさんあるよ。全部分かっちゃったらつまんないでしょ?」
「そうかしら?ん〜、きっとそうね!」
左に白、右に京楽。二人に手を繋いでもらい御機嫌な朝月。3人で家路に着いた。

 夜。
「し〜ろ!今日も頑張る?」
「そうだな、朝月も待ってるこったし」
「そうだねぇ、あんなに嬉しそうにしてくれるなんて嬉しいねぇ」
ちゅ、と白の頬にキスをした。
「ん・・・」
その夜も甘く、濃厚な営みとなった。

 翌日は非番だった京楽が近くの神社で白の安産祈願に出掛けた。
白に言うと、
「人混みが嫌だから勝手に行って来い」
と言われたので、朝月と行こうと声を掛けると、十六夜や朔、一護達が付いてきた。
「にぃにの安産祈願ってどんな事するの?」
と一護が聞けば、
「ん〜?赤ちゃんが無事に産まれてくれますように、お母さんが無事でありますようにって祈るんだよ」
と答えた。
「へえ〜」
全員で神主の所でお祈りを済ませると、ちらほらと出ている屋台に興味津津の子供たちの尻尾が一様に千切れんばかりに振られていた。
「ふふ、可愛いねぇ〜。何か買うかい?一護君達もね」
「良いの!やったぁ!」
「そんな、いいよ、京楽さん」
「いいの、いいの!僕達もう兄弟でしょう?ね?」
そうなのだ。京楽は一護にとって義兄で、一護は義弟になる。
「なんだか、くすぐったい気持ちになるね」
くすくす笑う一護。
「とと様!綿あめ食べたい!」
「はいはい」
「かか様良いんですか?」
「ん・・、良い、と思う」
「わ!ありがとう!京楽さん!」
綿あめを頬張る子供達を見ながら、京楽は一護に、
「あのさ一護君、僕ちょっと早めに帰って白の傍に居たいんだけど、朝月の事頼めるかな?」
とお願いしてきた。
「え?いいよ!夕飯はどうしようか?」
「ウチで食べるから大丈夫だよ。ありがとうね」
一頻り子供達に強請られるまま買い与える京楽。
「京楽さん、買い過ぎ・・・」
「そうかな?あんまりお出掛けしないからねぇ。朝月おいで」
「は〜い!なあに?とと様」
「うん、とと様は先に帰ってかか様と居るから、今日も皆と遊んでなさいね」
「うん!かか様のお土産どうしよう?」
「お守りと、お菓子を買おうか?」
「うん!」
綺麗な桃色のお守り袋に入った安産守りを京楽が買い、お菓子は朝月が選んだ。
「はい!とと様、ちゃんとかか様に渡してね!」
「分かったよ、じゃあ一護君、朝月お願いね」
「うん。京楽さんもにぃにの事お願いね」
と言われた。
「おや、じゃあ頑張らないとねぇ」
ふふっと笑うと帰って行く京楽。

その帰り道、境内でお面が売られていた。その中には白い狐の面もあった。
「ちょっと、この狐のお面二つくださいな」
と買って帰った。

 京楽邸。
「ただ〜いま!白!」
「おう、おかえり・・・、なにやってんだ、あんた」
笠の代わりに狐の面を被っている京楽に呆れた顔で白が言うと、
「いいでしょ〜、白に似てると思って買ったんだ〜」
と嬉しそうな声で答える。
「あほか・・・」
「ねえ白、朝月は今遊んでるからさ、甘えても良いかな?」
「・・・その面取ったらな・・・」
「わあい!白大好き〜!」
と面を外し、白を背中から抱きしめた。
「で、この荷物なんだよ?」
「えっとね、これがお守りでしょ、これが朝月からお土産にってお菓子だよ」
とりんご飴や綿菓子、ミルクせんべい、べっ甲飴などがあった。
「自分が食いたかったんじゃねえのか」
「大丈夫!ちゃんと食べてたから!」
「ふうん・・・」
と綿菓子を食べる白。
「ん・・・、あま・・・、ふわふわだな」
と次にミルクせんべいを食べると、
「後は朝月と食べる」
と残した。
「春水・・・」
「ん?」
「こっち来い」
ぐいっと抱き寄せると口付けた。
「ん・・・」
白の唇を舐めると、
「いつもより甘いね・・・」
「ん・・ばか・・・」
「お蒲団、行こうか?」
「ん・・・」


「ただいまー!」
「おかえり、朝月。楽しかったかい?」
「うん!金魚すくい無かったのがつまんなかったー」
「まだ夏に掬ったのがいるでしょうに」
「えー?だって一匹じゃ寂しいじゃない」
「ああそうだねえ」
「?かか様はぁ?」
「かか様は今日はもう寝てるんだよ」
「かか様もう寝てるの?」
「そうだよ〜、だから静かにね?」
「はぁ〜い」
二人で夕食を食べ、朝月をお風呂に入れると寝室に戻る京楽。
蒲団では白が満足そうな寝顔で眠っていた。
「ふふ可愛いなあ、早く産まれておいで、みんな待ってるよ」
とそのお腹を優しく撫でてやった。


第7話へ続く




10/05/28作 みんなで白の安産祈願と甘える旦那様でした。



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