題「新しい家族」2
 新しい浴衣を着た3人を促し、みんなが居る居間へと案内する一護。
「かか様おっそーい!」
「ごめんごめん、先に食べててくれて良かったのに」
「かか様と一緒じゃなきゃやー」
と幾望が拗ねる。
「だとよ。早くそのチッコイの座らせてお前も喰えよ」
「うん」

 3人は白の隣りにウル、ノイ、グリと座り、そのグリの隣りに一護が座った。
「あ!飲み物忘れた!ちょっと待ってて」
とパタパタ走っていった。
お膳の上には山積みになっているシュークリーム。それを興味深けに見る3人。
「お待たせ!みんなホットミルクで良いよね?」
と人数分のカップを配っていく。甘い香りのする白いそれ。
「なんだ?これ」
とグリが訊いてくる。
「ん?牛乳だよ。温めて蜂蜜入れたんだ〜。美味しいよ?」
皆に小皿を配り、シュークリームを入れていく。
「じゃ、いただきます!」
「いただきまーす!」
と子供達。幾望が一護の膝によじ登って来た。
「ああ、ゴメンな。食べにくかったなー、幾望、はい」
「あむ!」
「くく!甘えっ子」
「いいもん!」
「食べないの?」
「食うよ・・・」
と手を付ける3人。初めて食べるシュークリーム。一口食べて、
「ん!」
「うめ・・・」
「・・・」
三者三様だが口には合ったようだ。パクパク食べていく。指に付いたクリームを舐め取って次に手を伸ばす。
「美味しいか?」
「ああ!こんなん食ったことねえ!」
「良かったぁ!いっぱい食べてね!」
にっこりと満面の笑みを浮かべる一護に見とれる子供。
「あ、クリーム付いてるよ」
「え、あ?」
どんどん近付く一護の顔。

ぺろり。

あたたかい柔らかな舌が口の端を舐めた。

「な、な・・・」
舐められた頬を押え赤くなるグリ。
「ん?あ、ノイも・・・」
つ、と手を当てられぺろり、と舐め取られた。
「な、何しやがる!」
「うん?クリーム付いてたから舐めたんだけど・・・?」
おかしいか?と首を傾げる一護。
「なんだ、お前もじゃねえか」
白が言うと、ん?と振り返ったウルの口の端が舐められた。
「あー!ずるい!かか様あたしも!」
怒る十六夜の頬にはクリームが付いていた。
「何やってるの、もう〜」
くすくす笑いながらも舐め取ってやった。
「ほれ、朝月、お前も!」
「きゃあv」
「幾望も、ほら」
「うきゅう!」
「朔、ほらおいで」
「あ、はい」
そんなこんなで騒がしくおやつの時間は過ぎていった。

「俺らもう帰んぜ」
「そう?あ、じゃあ、コレ持って帰る?」
と余ったシュークリームを示す。
「う、いいのかよ・・・」
「うん!あんなに美味しそうに食べてくれたんだもん。嬉しかった!良かったら明日もおいでよ」
「一護?」
「だって子供ってうちの子達だけじゃない。ここって」
「ん〜、まあな」
「ね?」
「気が向いたら来る」
「ありがと」
とシュークリームを包んでやって持たせると3人は帰っていった。

「新しい友達増えて良かったな?」
「そうかしら?」
「そうだよ」
「一護、俺らも帰るわ」
「うん、にぃに気を付けて帰ってね?」
「大丈夫だよ。朝月帰るぞ」
「はあい!お邪魔しました。またね、十六夜」
「またねー」

 京楽邸
「ただいまー!」
「なんだ、春水帰ってたのか」
「お帰り、どこ行ってたの?」
「一護んとこだよ」
「あのね!あのね!おやつにシュークリーム食べてたの!」
「へえ!美味しかったかい?」
「うん!今日採った木苺も山ブドウも一護にぃがジャムにしてくれるって!」
嬉しさのあまり千切れんばかりに尻尾を振る愛娘に目を細める京楽。
「それでね、今日は変な子達がいたの。門の前に突っ立って邪魔だったわ」
「ああ、あいつらか・・・」
「うん?どんな子だい?」
「見たことないわ。流魂街の子じゃないかなぁ?一護にぃがおやつに誘ってね、一緒にシュークリーム食べたの」
居間に着いたので座って話を聞く。朝月は京楽の膝に座って話を続ける。
「それで、その子達口の周りにクリーム付けてね、一護にぃが舐めて取ってたの」
「ふうん、剣八さんが居なくて良かったよね〜」
「?後かか様も隣りに座ってた、え〜とウルだっけ?のホッペに付いたクリーム舐めてたの!」
「・・・へえ、ずるいねぇ」
「あほか」
その日はそれで済んだ。

 翌日。
「ただいま!白!朝月!お土産あるよ!」
「あん?なんだよ」
「なになに!」
白い四角い箱を持って立っていた。
「じゃーん!今日は現世で仕事があったからね、ケーキ買って来たんだー」
「わあ!すごい!とと様大好き!」
朝月が受け取って居間へと持って行く。
「なんだよ、突然」
「ん〜?白も最近大変でしょ?」
「なにが?言っとくけど俺は今、コーヒーも紅茶も飲めねえぞ」
「あたしがホットミルク作ったげるー!」
「だぁめ、危ないから朝月はまだ火を使わないの!とと様が用意するから」
「はあい」
ちょっとつまらなさそうに頷く朝月。台所に消える春水。
「十六夜はお料理してたのにー」
ぷー、と膨れる。
「あん時は俺も一護も傍に居ただろ?だからだよ」
「ふうーん」

「お待たせー。えーとね、ケーキは3つあるんだー。苺のショートケーキと、チーズケーキと、シフォンケーキ!」
箱を開け、一つずつ指差して教える。
「わあ!美味しそう!ね!かか様!」
「ん・・・!」
嬉しそうにはしゃぐ朝月とほんのり頬を染め、口元を弛める白。
「どれにする?」
「えっとね!えっとね!迷っちゃう〜!」
「取りあえず皿に出せよ」
「うん、そうだね〜」
皿に取り出し、3人のフォークを渡していく。柄の先に狐の絵が描かれている。白い狐は白の。狐色の狐は朝月の。焦げ茶色の狐は春水のと特注で作らせた。(スプーンも)初めて貰った時はアホかと思ったが、朝月は喜んだ。
どうやら次の子が産まれたらまた作るつもりのようだ。
「じゃあね、朝月一口ずつあげるから気に入ったのを食べればいいよ」
「いいの!ととさま!」
「うん、でもお外じゃやっちゃだめだよ?」
「うん!分かった!」
早速一口ずつ食べる朝月。
「ん〜!どれも美味しい〜」
と顔を綻ばせる。
「で?どれにするんだ?」
「えっとね〜、ショートケーキにする!」
「そうか、じゃ俺はチーズケーキにするかな」
「んじゃ僕はシフォンケーキね」
と仲良く決まったので食べていく。
「春水、お前のどんなのか寄越せよ」
「ん?はいあーん」
「あー」
ふわっとした口当たりのケーキだった。
「ん、美味いな」
「そう、良かった、白のは?」
「うん?ほれ」
と一口分フォークに刺して差し出す。
「あ〜ん!あ、美味しいねぇ」
ともぐもぐ食べている春水の口の髭にケーキの欠片が付いていた。
「春水、付いてる」
「え?何が?」
「ここ、ケーキ・・・」
反対の頬に手を添え、ぺろり。と舐め取った。

舐められた頬を押さえ、ふるふる震える春水。
「白・・・」
「あ?」
白を見つめていると、
「御馳走様〜!」
朝月が元気に食べ終えた。
「あ、ああ。美味しかったかい?」
「うん!とっても!とと様だ〜い好き!」
「じゃ、夜も遅いし、朝月は寝ようか?」
「はあーい!おやすみなさい、かか様、とと様」
「はい、おやすみ」
「おやすみ」
朝月が部屋に帰って寝た後も二人はケーキを食べていた。
「白、僕のも食べるかい?」
「はん?お前が食えよ、疲れてんだろ」
「んー、どっちっかって言うとさ、今はもう白の方が食べたいな〜」
駄目?と覗きこんでくる。
「あ、あ、あほか!さっさと食えよ!」
「はあい。じゃ後でね」
とパクパク食べていく春水。白のはもう一口ぐらいしか残っていなかった。

「さ、赤ちゃんの為にも頑張るからね〜」
と白を抱きあげて寝室に消えていく春水。
「・・・赤ん坊の為だけかよ?」
「まさか!愛してるよ、白」
と触れるだけのキスをして言った。
「ん、春水は俺のだからな・・・」
「白・・?」
「なんでもねえよ・・・」
きゅっと抱き付く白を訝しげに思いながらも、その夜も愛し合った二人だった。


第3話へ続く



10/03/13作 知らない子供にヤキモチ妬く京楽さんと、何かに嫉妬している白。




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