題「新しい家族」1 | |
子供達が生まれて1年経った。朔や十六夜は十歳ぐらいに、朝月も同じくらいになった。 両親共に霊力が強く、特に白が一護より強いので成長が早かった。子供達は気にする事なくむしろ喜んだ。 喜ばしい事はもう一つあった。白が二人目を宿したのだ。新婚旅行の時の子の様だ。もうお腹も膨れて来ている。 「良かったね!朝月もお姉ちゃんになるんだ!」 「うん!どっちが生まれるかなぁ?」 「楽しみだね」 「うん」 季節はもう秋。子供達は流魂街の山で木イチゴや山ブドウなどをカゴ一杯に摘んでいた。 「ねぇねぇ、名前はどうするの?」 「んー、まだ分かんない、男の子か女の子かで変わるから」 「そっか!そうだよね」 「ね、もうカゴ一杯だよ。帰ろっか」 「そうだねー、かか様おやつ作ってくれるって!」 「朝月も一緒に食べよ」 「うん!」 3人が瀞霊廷に戻ると門の所に3人の子供が立っていた。 「誰だろうね」 と朔。 「・・・邪魔ね」 と十六夜。イライラしてきた朝月が、 「ちょっと!何 門の前でボーっとしてんのよ!邪魔よ!さっさと退きなさいよ」 3人が振り返る。 「俺らに言ってんのかよ・・・」 「あんた達以外に門の前に突っ立てるバカいないでしょ。それとも何?あたしは見えない何かに話しかけてんの?」 眉を顰めて朝月は続けた。 「あーちゃん、言い過ぎだよ」 「良いんじゃないの?邪魔なのは事実だし」 「いっちゃんまで・・・」 「早く帰らないと折角摘んだ木イチゴとか傷んじゃう」 「・・・おいお前ココに住んでんのか?」 「そうよ。それが?」 「死神か?」 「まさか!とと様はそうだけど」 「ね!」 「何?死神になりたいの?」 「別に・・・」 「だったら試験受けるなりしないと無理だよ?」 「だからよ!」 「あんた達霊力もあるし、勿体無いわね」 「あん?」 「結構強い方に分類されるのにね」 「ま、どうでもいいわ、退いてよ」 と朝月が言っていると、門が開いて一護が迎えに来ていた。 「お帰り、遅かったな。ん?誰だその子ら」 「知らないわ、さっきから門の前に立ってんの」 「ふーん、新しい友達か?」 「違うわかか様、今会ったばかりだもの」 「まぁ良いや、一緒におやつ食べる?今日のはいい出来なんだ!」 「かか様の作るのはみんな美味しいわ!」 「ねー!」 と朔と朝月。 「ふふ、ありがと!ん?木イチゴか?いっぱい摘んだなぁ」 ニコニコと子供達の頭を撫でる一護。 ジッと見ている見知らぬ子供。どうして良いか分からない様だ。 「一護、ガキは?帰ってきたのか?」 いつの間にか白が立っていた。 「にぃに!出歩いても良いの?」 「ああ、安定期にゃとっくに入ってるよ」 朱色の打ち掛けを纏い、優しく笑う白はとても美しかった。 「ん?なんだ、そのちっこいの?」 「さぁ、さっきから居たんだって。おやつに誘ってんだけど何も言ってくんなくて・・・」 「ふーん・・・、お!木イチゴじゃねえか」 「うん、にぃに好物だったね」 ハイ、と一粒口元に持っていくとパクッと食べた白。 「ん・・・、甘・・・、ほれ一護も」 「ん・・・甘ぁい」 にっこり笑う一護。 ぐぅ〜きゅるるる・・・。と大きく腹の虫が鳴いた。 「へえ!お腹空くんだ。霊力持ってるんだね!すごいすごい、うちにおいでよ、一緒におやつ食べよ?にぃにも!」 「あー、良いけどよ、その前にこいつ等風呂の方が先じゃねえの?」 「本当だねぇ、おやつの前にお風呂だねぇ」 と子供達に、 「十六夜、朔、子ども用の浴衣3人分出してって弓親に頼んで来て」 と言った。 「ラジャ!」 と言うと隊舎へ走っていった二人。 「さ、おいでよ」 手を差し伸べてもその3人の子供達は動かなかった。疑い深い目で用心深くこちらの様子を見ていた。 一護がしゃがんで一番前の青い髪の男の子に話しかけた。 「ね、うちにおいでよ。お腹も空いてるでしょ?こんなにキレイな髪してるのに、お風呂に入ったらもっとキレイになるよ?」 とその子の髪を撫でた。 「う・・・」 たじろぐ子供。 「キミ達の名前は?」 「グ・・・グリムジョー・ジャガージャック」 「グリムジョー、グリムジョー、うん、じゃあグリだね!そっちの子は?」 「・・・ウルキオラ・シファー・・・」 「ウルキオラ、ウルキオラ、うん、じゃあウルね!キミは?」 「ノイトラ・ジルガだ・・・」 「ノイトラ、ノイトラ、へぇ、皆カッコいい名前だね!」 にっこり笑って交互に頭を撫でる一護。 「じゃ、うち来る?」 「行ってやってもいい・・・」 「なんだその言い草は?」 「にぃに!ありがと、早く行こ!夕飯の用意もしなきゃ」 十一番隊隊舎。 「ただいま!」 「お帰りかか様!ちょっと遅かったね」 「ん、ちょっとね、じゃお風呂入ろうか。弓親〜!」 「なんだい一護君、浴衣なら出しといたよ。はい」 「ありがと、あのね、この子達お風呂に入れるから共同浴場使っても良いかな?」 「お風呂?うん良いと思うよ」 「ありがと、俺も着替えの用意しなきゃ!」 急いで着替えを用意して子供達を風呂場に案内した。 「ねえ、お風呂入った事ある?」 と一護が問うと3人とも、ふるふると首を横に振った。 「そっかぁ、懐かしいな、俺もここに来るまで入った事無かったんだぁ」 そんな話をしながら着物を脱いでいく一護。 「早く脱ぎなよ、水浴びとそんなに変わんないよ。水がお湯になっただけだよ」 と安心させる様に笑って言う一護。 服を脱いだ子供達が風呂場に入るとむわっとした湯気に、 「な、なんだコレ!気持ちワリィ!」 と騒いだ。 「湯気だよ、慣れると気になんないよ?」 戸を閉めた一護がシャワーの前に座るとグリを呼んだ。 「なんだ?」 「髪洗ってあげるからおいで」 「い!良いよ!自分でやる!」 「お風呂入った事ないのに一人で出来るわけないだろ。良いからおいで!」 一護は強引にグリを腕の中に抱き込んだ。 「う・・・」 途端に動けなくなったグリ。 「ほら、髪の毛絡んでる。梳いてから洗おうな」 一護はグリが痛がらない様に優しく髪を梳いていった。 「よし!お湯掛けるから目ぇ瞑ってろよ」 ぬるめのお湯を頭から掛けていった。 「ぷふっ!」 「次はシャンプーな、目に染みるからこっち向いて、この手拭い目に当てて俺のお腹にくっ付いてろ」 「え!な!」 抗議する間もなく一護に抱きこまれたグリ。ワシャワシャとシャンプーが泡立ってみるみるキレイになる髪の毛。 「泡、落とすぞー」 お湯を掛け、丁寧にすすぐ一護。 「はい、お終い。良く我慢したな、えらいえらい」 「お前何赤くなってんだよ?」 とからかうノイトラ。 「うるせえ!赤くねえ!」 「んじゃ次ノイトラな」 「自分でやるからいい!」 「何言ってんだ!そんな長い髪してんのに!こっちおいで!」 腕の中に抱き込むと、 「あーあ、お前も髪絡まってんじゃん、大人しくしてろよ?」 とノイトラの長い髪を丁寧に梳かしていく一護。 「よし!綺麗になった!お湯掛けるぞ?」 たっぷりとした黒髪がお湯に濡れてツヤを増していた。 「お前らキレイな髪してるなぁ、羨ましいよ」 と言いながらシャンプーを泡立てていく一護。 「かゆいトコは?」 「な、ない」 「んじゃ流すぞー」 丁寧にすすぐ。 「じゃ、次はウルな!おいで」 他の2人と違い大人しく言う事を聞くウル。 「早くしないとおやつに間に合わないな」 と言いながらウルの髪をすすぐと手拭いに石鹸を付け泡立てウルの背中を洗い、耳の裏も洗った。 「後は自分で出来る?」 コク、と頷いたので手拭いを渡し他の2人の背中と耳の裏を洗ってやった。ウルキオラが全身を洗い終わったので、 「おいで、ウル」 と呼び泡を落としてやった。耳にお湯が入らない様に気を付け流してやった。 「ほら、次は?グリか?」 2人とも洗い終わっていた。 「ほらおいで?体冷えちゃうよ」 と泡を流してやった。次のノイトラの体も流してやり湯船の前に連れて行くと、 「後はあったまってお終い。みんなえらかったな」 とニッコリ笑って、自分に掛け湯をして3人にもお湯をかけ、湯に入ると抱きあげて湯船に入れた。 「う〜、何だこれ!熱い!」 「ちょっとガマンな?30数えたら出よ?」 いーち、と数えていく一護。 「・・・、29,30!さっ、出よ!」 と子供を見るとみんな真っ赤になっていた。 「大丈夫?」 「平気だ!」 とグリが勢い良く立ったがふらついて一護の胸に倒れ込んだ。 「おっと、無理するなよ?ゆっくり出よ?」 湯船の外に出た3人の足先からぬるめの水をかけ体を冷やし脱衣所へ出た。 3人の髪を拭き、体の水気を拭き取ると浴衣を着せ、自分も着替えるとドライヤーで髪を乾かし始めた。 「な、なんだソレ?」 「ん?ドライヤーって言って髪の毛乾かす物だよ」 一番髪の毛の多いノイトラの髪の毛を乾かし、櫛で整えた。 「さ、次は誰だ?」 「う・・・」 「グリか?ウルか?ん?早くしないとおやつ無くなるぞ?」 ウルキオラが一歩前へ出た。 「じゃ、ウルな」 優しく乾かして櫛を通す。 「ハイ、おしまい、ほらグリ」 最後にグリの髪を乾かして櫛を通してやった。 「お前らみんなキレイな髪してるね、いいな、羨ましい」 「キレイ?」 3人がキョトンとした顔をしている。 「ん?どうしたの?」 「キレイなんて言われたことねえ・・・」 「そうなのか?とってもキレイなのに」 さらりと髪を手櫛で梳いてやる一護。 「さ、おやつ食べよ!今日のおやつはシュークリームなんだ」 「喰ったことねえよ」 「じゃあ、早く行こう」 と3人を居間へと案内する一護だった。 第2話へ続く 09/07/13作 99作目です。分かりにくいかと思いますが一護はもう男の身体に戻ってます。白は二人目が出来たから女の身体ですよ。 09/12/06加筆 |
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