題「新婚旅行」9
 盥の前で家族写真を撮った朔。
盥と朔を真ん中に、十六夜、一護、剣八の片腕に幾望、もう片方の腕は朔の肩に乗せられていた。
「良かったわね、朔」
「はい、嬉しいです!」
満面の笑みで返事する朔。

「一護!こっちで遊ぼうぜ!」
と白が波打ち際で一護を呼んでいた。
「うん!じゃ、行ってくるね剣八」
「おう、さらわれんなよ」
「あはは!もう剣八ったら!」
そう笑うと白と一緒に遊びだした。
「なんでこの水動くんだろうな?」
「川の水も流れてるよね?同じかなぁ?」
皆が微笑ましそうに見ていた。そのうち、水の掛け合いが始まった。
「い〜ちごっ!そら!」
「ん?きゃっ!何するの!にぃに!」
ぱしゃぱしゃ!ぱちゃぱちゃ!とひとしきり遊んでいる。

 パラソルの下の剣八がうつらうつらしている朔に、
「疲れたか?朔」
「はい、少し・・・、でも楽しかったです。海の中はすごくきれいで、色んな魚がまるで飛んでるみたいに泳いでました・・・」
「ほお・・・、いいもん見れたな。そんなに眠かったら飯の時間まで寝るか?」
「はい・・・」
剣八は朔を胡坐に入れて寝かせた。
「あら、朔ってば寝ちゃったんですねー、やっぱりお父さんの近くは落ち着くのね」
と乱菊が覗きこんでいる。
「まぁ、昨日今日とほったらかしにしちまったからな」
「自覚はあるんですねぇ。でもあんなに可愛いカッコした一護が居たんじゃしょうが無いですけどね」
「へっ!」
「んん・・・」
「あうー、にいちゃ?おねむ・・・」
「おら、邪魔すんな」
「あうー!」
剣八にあやされてパサパサと尻尾を振って喜ぶ幾望。
「ふふ、可愛いですね。お昼もうすぐですから」
「ああ」
遠くの方でバーべキューの用意をしている男どもが居た。やちるも手伝っているようだ。
「見ねえと思ったら・・・」
十六夜は朝月と遊んでいた。
「やっ!剣八さん、ココいいかい?」
「なんだ京楽、女房が居なくて寂しくなったか?」
「ちょっとね〜、まぁ ああやって遊んでる姿も可愛いんだけどね」
二人の姿に目をやった剣八も、
「ああ、そうだな」
と言って二人の息子をあやした。
「幾望君も尻尾がまん丸になってきたねぇ。可愛い可愛い」
と頭を撫でてやると、
「うきゅう!」
と喜んで笑った幾望。
「うちの朝月と同じ日に生まれたんだよね?確か」
「いや、うちのが1日くらい早かったな。お前んとこは成長が早いな」
「うん、白が一護君より強いからだってこないだ言ってたよ。でも1年経ったら10歳くらいになって、それからは1年で一歳年を取るんだって言ってたよ」
「へえ、一護は何も言ってなかったがな」
「言わなくてもいいと思ったんじゃないの?」
「そんなもんかね」
と父親の会話が続いていた。
波打ち際での水遊びにはいつの間にか娘たちも加わっていた。

「一護〜、白〜、ご飯の用意出来たわよー!」
と乱菊が声を掛けてくれた。
「あ、は〜い!にぃに、皆、ご飯だって。行こ!」
「おう」
「「はぁい!」」
「剣八ー!ご飯だってー!」
と剣八達を呼ぶ一護。
「おう、おい朔、飯だ起きろ」
「むにゅ、は〜い・・・」
「幾望も行くか、もう食えるだろ」
「あい!」
皆がバーベキューの周りに集まってきた。

 恋次が朔の捕った獲物が入った盥を持って来てくれた。
「ホラ!朔、お前のだぞー、どうやって食うんだ?」
「えっと、とと様どうやって食べれば良いんですか?」
「あん?貝は焼いて醤油でも垂らして食えば良いし、ウニはそのまま割って食えば良い」
「じゃあそうします!とと様もかか様もいっちゃんも食べてね!幾望は食べれるのかな?」
「う〜ん、アサリなら大丈夫だと思うよ。ちょっと醤油少なめにしてね」
と一護が言った。
「肉は?喰えんのか?」
「うん、もう食べれるよ」
バーベキューのほかに焼き肉も用意されていた。
「ほら、朔、喰ってみろ」
と恋次がウニを割ってくれていた。
「どこを食べるんですか?」
「このオレンジのやつだ、ほれ」
あむっと食べて、
「あまぁい、ちょっとしょっぱいけど美味しい!」
「良かったな、更木隊長もどうぞ」
と次々に割っていった。
「おう、ほれ一護も喰え、十六夜も兄貴が捕った獲物喰えよ」
「は〜い!朔にぃ、すっごいね!こんなにいっぱい捕って!」
「えへへ!嬉しいな」
剣八がアサリやホタテなどを網の上に乗せて焼き始めた。

 ぶくぶく、じゅーじゅー、と音を立てて貝が開いていく。パカッと開いて、そこに醤油が垂らされると香ばしい香りが漂った。
「わあ〜、美味しそう!」
「朔、ほら、ヤケドしないようにね?十六夜も」
「「はい!」」
「酒が欲しくなるな」
醤油を垂らさなかったアサリをふー、ふー、と冷まして幾望に食べさせた。
「あふっ!はふっ!おいちい!」
「そっかぁ!コレな、お兄ちゃんが捕ったんだぞー」
「にいちゃ!しゅごい!」
ぶんぶん、と尻尾を振る幾望。尊敬の目で兄を見ている。くすぐったそうに笑う朔が居た。
「ほらほら、お肉もあるわよー!育ち盛りはたんとお食べなさい!」
と乱菊が声を掛ける。
「はあーい!」
家族で朔の獲物を食べ終えると、肉を食べ始めた。
「わっ!すごい、こんなの初めて!ねっ!かか様!」
「そうだねー、やったこと無いや」
「朔にぃも食べよ!あ、野菜もあるんだ」
「ちゃんと野菜も食べないと美人になれないぞ」
「はあ〜い」
子供達は各自勝手に食べ始めた。一護と剣八は幾望に食べさせたり、自分達が食べたりした。
「美味しいね、剣八、幾望」
「あー、そうだな」
「あい!」
幾望はやはり肉の方が好きなようで野菜や、魚にはあまり興味を示さなかった。
「ハイ、幾望、あ〜ん」
「や!」
「や、じゃないの。お野菜も食べなきゃ駄目!」
「む〜」
比較的軟らかいレタスを食べようともしない。
「もう、お腹痛くなっちゃうよ?美味しいのに」
シャクシャクとレタスやキャベツを食べる一護。剣八はトウモロコシもがつがつ食べている。
「嫌だってんならほっとけ。その内食うだろ」
「そうかなあ・・・」
「お前もちったぁ肉喰えよ」
「うん、美味しい」
ご飯と一緒に食べる一護。
「次は西瓜よー!」
「まだ食べるの?」
「みてえだな」
「俺お腹一杯だよ」
「ガキ共はそうでもねえな」
わー!と喜んで食べている。幾望も西瓜なら食べている。
「もう。生野菜だから嫌なのかな?」
「そうだろ」

 皆で後片付けをして、風呂に入って帰り支度を始めた。
「どう、一護、白?初めての海と旅行は」
「楽しかった!すっごく!子供達もあんなにはしゃいで、嬉しかった!にぃには?」
「ああ、楽しかった。朝月も楽しんでたしな」
「あんた達もね。初めての事ばっかりだったわね」
「うん!」
「写真もいっぱい撮ったからアルバム買わなきゃね」
「なぁにそれ?」
「写真をいっぱい貼って、本みたいにしたやつよ。思い出になるわね」
「うん!楽しそう!」
「そうだな。俺は写真自体見たことねえけどな」
「ふふ、面白いわよ、楽しみにしてなさい」

そうして一行は瀞霊廷へと帰って行った。乗り物の中で子供達を筆頭にほとんどが眠っていた。


第10話へ続く



09/08/13作 初めてのバーベキューを食べる一護と白、子供達でした。幾望は煮込んだ野菜なら食べるんじゃないかなとか思ったり。



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