題「新婚旅行」10
 瀞霊廷に着くと各々帰っていった。
「はぁ〜、疲れたね〜」
どさっと荷物を置くと残っていた隊士達が出てきて、
「お帰りなさいませ!隊長!副隊長!斑目三席!綾瀬川五席!」
と挨拶した。
「おう、風呂沸いてるか」
「はい!沸いてます!」
「おい、一護、ガキ共連れて来い。一緒に入るぞ」
「え、向こうでシャワー浴びたよ?」
「疲れが取れねえだろ。さっさと来いよ」
「は〜い、十六夜、朔、幾望をお願いね。俺は着替えを持ってくるからね」
「分かったー」
「はい、かか様」
子供達はお風呂場へと向かい、一護は着替えを取りに部屋へ行った。

 着替えを用意してお風呂に入ると、
「おら、早く髪洗え」
「あ、うん」
ワシャワシャと髪を洗い、身体も洗ってお湯に浸かる一護。
「はふぅ〜、やっぱりお家が落ち着くねえ」
「あんなに楽しんでやがったのによ」
「楽しかったよ?剣八も居るし十六夜も朔も幾望も居たし、にぃにも居た。幸せ〜」
ふにゃりと笑った一護。
「そうかよ、良かったな」
「うん・・・今日はみんなで寝ようか?」
「良いけどよ」
「じゃ、早く出よ!」
「は〜い!」
全員で脱衣所に出ると一護は幾望の身体を拭いて着替えさせてから自分も着替えた。
もう十六夜も朔も自分で着替えられるので安心だ。
「おい、ちゃんと髪乾かせよ」
「ぷっ!ありがと」
わしわし、と乾かされ、皆で寝室に向かう。
部屋には蒲団が二組敷かれてあった。
「誰だろ?弓親?」
「じゃ、ねぇの。ホレ寝るぞ。ガキ共が堕ちそうだ」
こっくりこっくり、船を漕ぎ出していた。
「うん、おいで、お休み、朔、十六夜、幾望」
「おやすみぃ〜」
「おやすみなさい・・・」
「あぅ・・・」
すぐに寝息が聞こえてきた。
「おやすみ、剣八」
「おう、どこ行くんだ?」
「え?水着干しに、もう洗ってあるし干すだけだから」
「早くな・・・」
「うん」
一護は、皆の水着を干し終えると、すぐ帰ってきた。
「ただいま、おやすみ」
そう言うとすぐ眠ってしまった。

 数日後、乱菊が隊舎を訪れた。
「やっほ!いっちご!写真持って来たわよ!」
「わあ、ありがとうございます」
「それでねぇ、写真なんだけど、こっちで写真集にしたのよ」
これ、と数冊出された。
「わ、すごい!何か一言添えられてるんだ」
「写真は全部載せたけど、あんた達の家族が写ってるのはここにあるからね。写真集も置いてくわねー」
「ありがとう、乱菊さん」
「かか様?どうかしたの?今、乱菊さん来てたでしょ?」
「あ、うん。写真と写真集を置いてってくれたよ」
「わあ!待ってたんだ!これで狛むーの所に行ける!」
「ああ、じゃあこの写真集を持っていけばいいよ。これもプレゼントしても良いんじゃないかな?」
「ありがとう!かか様!」
早速おめかしして、七番隊に行く十六夜だった。

 七番隊。
「狛むー、居る?」
「おう、十六夜か、おるぞ、丁度昼休みじゃ」
「ありがとう!鉄さん」
うきうきと隊首室へと向かう十六夜だった。
「微笑ましいのぅ」
と呟く射場だった。

 コンコンとノックして顔を覗かせる十六夜。
「こーまーむー、あそぼ?」
「おお、十六夜か、入っておいで」
「うん!今日はね、お土産とお話しに来たのよ!」
「ほう、楽しみだな。縁側に行くか?」
「うん!」
縁側に着くと、射場がお茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとう、射場さん」
「ええんじゃ、ゆっくりの十六夜」
「うん」
狛村に向き直ると、
「あのね、これがお土産第一弾、貝殻なの。綺麗なの探したの」
とビンに入れられた貝殻を差し出した。
「ほう、可愛いな、色々あるな」
「うん!あのね、この骨みたいなの一番先に見つけたの!面白い形でしょ」
「うむ」
「それでね、こっちの貝はね、内側がすごく綺麗なの、虹色に光ってるでしょ?」
巻き貝の一種だろうか、内側が光を受けてキラキラ光っている。
「これ見つけた時ね、狛むーに似てると思ったの」
「んむ?儂にか?」
「うん、普段は静かで怖がられてるけど、ホントはとっても優しいでしょ?だから」
「・・・そうか、ありがとう、十六夜」
ぽん、と頭を撫でられた。
「う、ううん!あ、後ね!コレ、写真集だって。さっき乱菊さんが持って来てくれたんだ」
「ほう」
ぱらり、ぱらり、と中をめくっていく狛村。
「ふふ、皆楽しそうだな」
と珍しく目を細めて眺めている。
「じゃあ今度は狛むーも一緒にどっか行こうよ!海じゃなくても、川でも良いじゃん!あたしも朔にぃも魚釣りってしたこと無いし、ねっ!狛むー教えてよ!」
身を乗り出して頼み込む十六夜。
「川で、か。ふむ、楽しそうだな。お主らの両親がうんと言えば良いが・・・」
「良いのね!やったぁ!かか様は絶対に良いって言うわ!」
「嬉しそうだな・・・。ん、これは十六夜か?綺麗な水着だな」
「え?あ!」
「赤い花が良く似合っておる」
「あ、ありがと・・・」
ぽっと頬を染めた十六夜。
「これは?」
家族で撮った写真だった。
「あ、それね、朔にぃが初めて潜って捕った獲物を記念してみんなで撮ったの」
「ほう、何を捕ったのだ?」
「え〜と、アサリとホタテとウニ!美味しかった!みんなで西瓜割りしたり、バーベキューしたりしたの!かき氷も食べたし、ソフトクリームも食べたの!後ね、何でか時々とと様とかか様が居なくなったりしたの。なんでだろ?」
「さあなぁ・・・。楽しかったのだな」
「うん!狛むーもこれば良かったのに」
「まあな、今度川遊びにでも付き合ってくれ」
「喜んで!」
お菓子を食べ、時間になったので帰る十六夜。
「これは?持って帰らなくて良いのか?」
「まだあるの。だから狛むーにあげる!」
「そうか、頂こう。ではまたな」
「うん!またね!」

 隊舎に帰った十六夜は一護に話をした。
「でね、狛むーと一緒に川遊びに行きたいの!朔にぃも一緒に!キャンプでお泊りしたいの!」
「ふうん、狛村さんからって言うのが珍しいね。良いよ、狛村さんなら安心だもの」
「やったぁ!かか様大好き!」
「後はとと様の説得だね。頑張って十六夜」
「うん!」

 道場にいる剣八を見つけると十六夜が、
「とと様!お願いがあるんだけど」
「あん?何だよ」
「今度ね、朔にぃと一緒に狛むーと川遊びに行きたいの。お泊まりで」
「・・・駄目だ」
「なんでぇ!」
「日帰りなら良いが泊まりは駄目だ!」
「むうー!かか様は良いって言ったもん!ねぇー、ねぇー、お願い!一日だけだから!」
「一護が?ちっ!しゃあねえな、一日だけだぞ」
「うん!やったぁ!とと様だぁ〜い好き!」

 その知らせを持って狛村の所に知らせに行った十六夜。
「そうか、なら夏のうちが良いだろうな。今度の非番の日に行くか?」
「うん!楽しみにしてるね!」
朔にも教えた。
「えっ!狛むーと?わあ、楽しそう!僕も良いの!」
「うん!一緒に行こ!朝月はどうしようか?」
「誘おうよ、白にぃがなんて言うか分かんないけど」
「そうね!明日行こう」

 京楽邸。
「駄目」
「え?なんで?」
「駄目だからダメ。お前らで遊んで来い」
「ゴメンね、誘ってくれてありがとう。帰ってきたら遊んでね」
「うん、じゃ、またね」

 隊舎に帰ると早速用意する十六夜と朔。
「ねえ、水着いるよね。川で泳いだりするかもだし」
「そうだね、持って行こう!」
わくわくと、その日を待ちわびる子供が二人。

 狛村、非番の日。
「ふぅむ、キャンプの用意も出来たな。二人を迎えに行くか」
十一番隊舎に狛村が訪れた。
「御免、狛村だが更木はおるか?」
「あ、狛村隊長、おはようございます。呼んできますね」
と弓親が対応した。
「あん?早えな、何の用だ?」
「子供らと釣りに行くと約束したのでな、迎えにきた」
「あー、一護、狛村が来てんぞ」
「はーい!十六夜、朔、来てくれたって」
「はーい」
「あ、ちょっと待って」
お重を持った十六夜と着替えの入ったカバンを持った朔。二人とも袴姿だった。
「おはよう!狛むー!」×2。
「うむ、おはよう。さ、行くか」
「うん!」
狛村は私服姿でやはり袴姿だった。藍色の着物に利休鼠の袴だった。
「行ってらっしゃい!みんな気を付けてね!」
「行ってきます!」

 川に着くと、狛村がテントを張った。朔が手伝う事はあるか?と聞くと、
「危ないから下がっておれ」
と優しく断った。
「わあ、おっき〜い!すごいすごい!狛むーカッコいい!」
きゃあきゃあ、とはしゃいでいる十六夜。
「さて、次は釣りでもするか。ほら、これが釣り竿だ、仕掛けはもう付けてあるからな、餌を付けて川に投げ入れるだけだ」
「餌ってなに?」
「みみずだ」
「これ?わぁー、うねうねしてる」
「コレを針に付けて、こう、川に入れる」
ぽちゃん、と川に投げ入れ、浮がぷかっと浮いた浮きがくん、くん!と引いて、狛村が引くとヤマメが釣れていた。
「とまあこうだ、出来るか?」
「はーい!」
二人とも釣りを楽しんだ。
「わっ!釣れた、釣れたよ!狛むー!」
タモで掬ってやった。
「やったぁ!」
「わわっ!僕も釣れた、釣れました!」
「これで二人とも釣れたな」
「うん!」
「はい!」

 その頃の隊舎。
「あれ?剣八どこ行くの?」
「・・・任務だよ、すぐ帰る」
「そう・・・、お昼には帰る?」
「ああ」
「行ってらっしゃい」
「ああ」
「ふふっ、嘘が下手だなぁ、一角も弓親もここにいるのにね」
「隊長、様子見に行ったの?」
「うん、今日のお昼はどうしようかな、久し振りに食堂に行こうかな」
「ああ、良いんじゃない?たまにはお休みしなよ」
「じゃあ、剣八が帰ってきたら一緒に行こうっと」

 川で剣八が見たのは魚を釣って喜んでいる子供達だった。
「・・・ん?まぁ良いか。朔、十六夜もう良いだろう、次は魚を捌くぞ」
「はあーい」
小さなナイフで魚をさばいて、焼く準備をする。
「さ、出来たぞ」
「あ、あたしおにぎり作ってきたよ!」
とお重を持ってきた。
「かか様に教わったの、足りるかな?」
「これだけあれば十分だ、さぁ焼くぞ」
串を刺された魚を火にくべていく。

「ふうーん、楽しそうだな。帰るか」
良く考えたら、子供達が居ないという事は思う存分一護を鳴かせられる。などと考え一人ニヤつき帰って行った。

「わあー、焼けて来たよ、美味しそうな匂い!」
「ほんとだね!」
「ほら、これとこれはもう焼けておるぞ」
と差し出してくれた。
「ありがとう!いただきます!」
「いただきます!」
はむっと初めて食べる川魚に舌鼓を打つ子供達。
「おいし〜い!皮がぱりぱりしてる!」
「いっちゃんのおにぎりも美味しいよ!ねっ!狛むー!」
「うむ、美味しいぞ、十六夜」
「えへへ、嬉しいな」

 お昼を食べ終えると、泳ごうと水着に着替えた二人。
「あまり深いところへは行かぬようにな」
「はーい!」
「わあ、海とは全然違う!」
「ほんとだ、水が冷たいね」
ぱちゃぱちゃと泳ぐ二人を見守りながら温かいお茶を淹れている狛村。
「二人とも、身体が冷え過ぎるといかん。もう上がってお茶でも飲むと良い」
「「はーい」」
バスタオルにくるまって、狛村の淹れてくたお茶を飲む二人。
「ね、夕飯は何にするの?」
「ふむ、カレーで良いか?」
「うん!作ったことも食べたこともない!楽しみ!」
「はい!」
夕飯は甘口の人参なしのカレーになった。

「おいしーい!ね、朔にぃ、これ美味しいね!」
「うん!とっても!」
「そうか、それは良かった」
少し残ったルーは3人分はあったので朝に食べる事にした。
「さて、もう寝るか」
「「はーい!」」
特注のテントに3人で入って眠ろうとしたが子供達は興奮して、ちょっとした事で笑ったりなかなか寝なかった。
「これ、早く眠らんと朝起きれんぞ?」
「うん、でもまだ眠くないの」
「僕もです、今日は楽しかったです」
「あたしも」
ふわぁ・・・、と漸く二人にも睡魔が襲って来たようで、すう、すう、と眠った。

 その頃の一護達。
食堂で昼食も夕食も食べた一護は、むずがる幾望を寝かしつけた。
「ふふ、何だか新婚に戻ったみたいだ」
「そうだな、一護こっち来い」
「ん?」
どさっと蒲団に押し倒された一護。
「剣八?」
「新婚に戻ったんだったらよ一護、今晩は気兼ねなく楽しもうや・・・」
「あ、ばか・・・」
赤くなるが嫌がる事はしない一護が居た。






09/08/14作 この後、続きます。一先ず新婚旅行は完結します。





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