題「新婚旅行」7
 「おーし!じゃあ始めるか!朔、お前素潜りとかした事あんのか?」
「無いです。泳ぐのもこの旅行が初めてです!」
興奮気味に言う朔に、恋次と修兵が、丁寧に教えていく。
「何か今日の昼飯はバーベキューだって言ってたからな、貝とかウニ捕ったら喜ぶんじゃねえかな」
「ハイ!」
尻尾を振りながら返事をする朔。

 ざぶざぶ、と海に入り、息を目いっぱい吸い込んで潜ると、見た事もない景色が広がった。
『わ〜!すごい!すごい!色んなお魚がいてキレイ!』
ツンツンとつつかれて、そちらを見ると恋次が下を指差している。見てみると。大きなアサリや二枚貝がたくさんいた。
朔が目を輝かせ、もっと潜ろうとしたが、息の限界が来てしまったので上にあがった。
「ぷはぁっ!はぁっ!はぁっ!あぁ、苦しかったぁ!」
「はは、でも初めてにしちゃあ長く潜れた方だぜ」
「ほんとですか?でもすごくキレイでした!早く、早く、あの貝捕りたいです!とと様もかか様も褒めてくれますよね!」
「ああ!絶対喜ぶぜ!」
「よーし!頑張ります!」

 朔は頑張った。何度も何度も潜って塩辛い海の水を飲んでは、また挑戦した。
「良くやるなぁ」
「基本、一護似だから頑張り屋なんでしょうね」
「せーの!」
トプン!とまた潜ると今度は捕れた!大きなアサリを一つ、取って上がった。
「捕ったー!捕れたよ!恋次さん!檜佐木さん!アサリ捕れたー!」
「おお!やったじゃねぇか!すげぇぞ」
「良くやったぞ!朔!」
「えへへ!もっとたくさん捕りたいです!」
「よーし!俺らも負けてらんねえな!」
恋次と修兵は朔を見ながら、自分らも魚などを銛で捕っていった。

 コツを掴んだのか、朔はどんどん獲物の量を増やしていった。腰にぶら下げた袋には、アサリやホタテ、ウニなどがたくさん入っていた。
「恋次さん、これくらいで良いかなぁ?まだ要る?」
「ん〜?おお!すっげぇ!大漁じゃねえか!すごいぞ!朔」
と頭をガシガシと撫でてくれた。
「わっぷ!恋次さんもすごいです。わ!蛸だ!あっ!おっきな魚もいる!」
「へっへー!檜佐木さんも色々捕れたみたいだな」
「おう!お前ら、成果はどうだ?」
「朔が凄いですよ、ほら!」
「んん?おお!すげえな!お前、才能あんじゃねえのか」
「えへへ!嬉しいな!いっちゃんも褒めてくれるかなぁ・・・」
「うん?喧嘩でもしてんのか、お前ら?」
「ううん、してないけど・・・、僕泣き虫だから、あんまりお兄ちゃんらしくないし、もっと強くなっていっちゃんやかか様を護らなくちゃ。お兄ちゃんは下の兄弟を守るんだってかか様言ってた・・・」
「そうか、でもお前はまだ小せえんだからゆっくり強くなりゃ良いんじゃねえのか?」
と恋次に言われた。
「でも!この間みたいにかか様が居なくなったら!いっちゃんや幾望を護らなきゃ!とと様のお仕事の邪魔にはなりたくないんです・・・」
初めて聞いた朔の本音に二人は、
「でもあの時はお前が十六夜を支えてただろ?充分お兄ちゃんじゃねえか」
「そうだぞ、強くなりてえって気持ちがあるんだったら、剣だけじゃねえ、鬼道を教わってみるのも良いんじゃねえのか?」
「誰に・・・?」
「ん〜、そうだな、七緒さんとか、雛森あたりか、手錬れだぜ」
「はい、お願いしてみます・・・」
「ん?お前唇の色悪くなってきたな、そろそろ帰るか」
「はい!」
「大漁旗が欲しいぐらいっすね」
「そうだなー、朔の初陣も兼ねてなー」
等と笑いながら岸へと帰る3人だった。
「あー。結構冷えたな、熱いお茶でも貰ってくるわ」
と檜佐木が海の家に取りに行った。
「朔や、何ぞ捕れたか?」
と重國が話し掛けてきた。
「おじいちゃん!はい!たくさん捕れました!恋次さんと檜佐木さんが教えてくれて、こんなに捕れたんですよ!」
満面の笑みで報告する朔。
「おお、おお、すごいのぅ、お昼が楽しみじゃの」
「はい!おじいちゃんもいっぱい食べて下さい!」
「朔・・・。海の中はどうだった・・・」
白哉も話し掛けてきた。
「はい!すごくきれいでした!おとぎ話の竜宮城もあるんじゃないかと思いました!」
「そうか、少し体が冷えておるな、温かいものでも飲んで休んでおれ」
「はい」
「おーい、恋次、朔、待たせた。っと朽木隊長に総隊長」
「うむ、早う飲ませてやれ」
「あ、はい!ほら、朔」
「ありがとうございます!」
こくこく、とお茶を飲む朔。
「美味しいです、朽木隊長は良いですね、恋次さんが副隊長で」
「む・・・?」
「朔?」
「檜佐木さんもですけど、恋次さんとっても優しいです!また遊んでくださいね」
「ああ!いつでもいいぜ」
「なんだか、眠くなってきました・・・」
ふわあぁ、と欠伸をするとコテンと寝てしまった朔。
「何かあったのか?」
「いえ、なんか、自分が兄貴らしくないんじゃないかって悩んでまして・・・」
「何故だ・・・?ちゃんと十六夜を護っておるではないか・・・」
「はあ、自分が泣き虫だからって気にしてましたよ。早く強くなりてぇって」
「子供も悩みがあるものなのだな」
「そっすね・・・。弟のこととか更木隊長の事も気にしてましたよ」
と頭を撫でてやる恋次。
「まっこと、あ奴には過ぎた子じゃな。孝行息子じゃ」
朔にバスタオルを掛けてやる重國が呟いた。
「で、女性陣と十六夜達は?」
「昼飯の買い物に出かけよった」
「そうですか、幾望大人しいですね」
「ふむ、儂らに掛っては赤ん坊の世話など・・・」
と嬉しげに笑う重國と清家。
大きな盥に水を張ってそこへ捕れた獲物を入れてお昼を待った。朔の分は別に分けておいた。
「ほう、これだけの量を一人でな」
「頑張ってましたよ、うをっと!」
ピュッとアサリが潮を吹いた。盥の中には大アサリやホタテ貝にウニがたくさんいた。

 その頃の一護と剣八。
浮輪でプカプカ浮いてる一護を足が着かない所まで引っ張っていく剣八。
「やー、すごーい、浮いてる、浮いてる!」
きゃっきゃっとはしゃぐ一護が海水を舐めて、
「塩辛〜い!」
「当たり前だ」
可愛いと思う反面欲情している自分も居るのが分かる剣八。
「剣八・・・」
「んん?」
「この水着、ありがとね。すごいうれしい」
ちゅっと触れるだけのキスをしてきた一護に剣八が、
「一護・・・!」
深い口付けをしてきた。
「ん!あっ!ふんん!剣!んっ!あ・・・」
「ああ!くそ、我慢出来ねえじゃねえか!」
「ええ!またこんなトコで?」
「心配すんなよ、海ん中じゃ染みるだろ?沖でな・・・」
そう言いながらも悪戯を続ける剣八。
水着の下からはみ出ている乳房の肉を舌でなぞり、リボンを外していった。
「や、や、だめぇ、剣、八・・・」
「ん?気持ち良くねえか?」
するり、と下肢に手が伸ばされた。
「ひあ!やだ!変な感じがするよ!あ、足が着かない!」
「ああ、大丈夫だ、俺に掴まっとけ」
「う、うん・・・」
きゅっと剣八の首に腕を回す一護。
するすると水着の上から撫でる愛撫にもどかしくなった一護が、
「剣八・・・!は、早くぅ!」
とせがんできた。
「くく!なんだ、お前も発情期か?」
「違うけど・・・。変なんだもん!早く剣八に抱かれたいの!ぎゅってして!」
「じゃあ、あそこの岩場まで我慢だ」
すいすい泳いでいく剣八と引っ張られていく一護。

「たっだいまー!あら、あんた達戻ってたのね」
「ええ、さっき」
「これあんた達が捕ったの?結構すごいわね!」
「こっちは朔が一人で捕ったんすよ」
「へえ!すごいわね!で、朔は?」
「疲れて昼寝してますよ、幾望とね」
「ふうん、ついでに聞くけど一護達は?」
「まだです」
「しょうがないわね、あたし達も遊んでこよーっと!あとお願いね!」
「はいはい」
バーベキューは男手で準備される事となった。
「朔にぃ、すごーい」
「なぁ十六夜、それ朔が起きたら言ってやれよ。喜ぶぜ」
「? うん!わかった」
「十六夜ー!こっちいらっしゃい!」
「はーい!」
浮輪を渡され、朝月と一緒に海で遊ぶ十六夜達。
そのうち幾望が起きて朔を起こしだした。
「あー、にいー」
ぺちぺちと顔を叩いて起こす幾望。
「んー、なぁに?幾望」
「んーんー」
「ちょっと待ってね・・・」
こしこしと目を擦りながら、パラソルの所まで行き、カバンから幾望の水筒を出してきた。
「お待たせ〜・・・」
中には麦茶が入ってあった。
「うー、うー」
んっく、んっくと飲んでいく幾望。抱きながらウトウトしてしまう朔。
「あうー!にい」
「あ!ごめん・・・」
「朔、こちらへ来るが良い」
「あ、朽木隊長・・・」
片手に朔、片手に幾望を抱き、お茶を飲ませる白哉。
「んくんく、んくんく」
「すう、すう・・・」
「よっし!準備できたぞっと!ん?」
恋次が見たものは優しく笑んで子供を撫でる白哉の姿と、それを写真に収める女性メンバーの姿だった。
「隊長・・・」
「む・・・、起こすでないぞ・・・」
「はい・・・」
そっとしておいた恋次。
「何だよ、一護の奴いねえの?」
白が来た。
「うむ、更木が海で遊ばせると連れて行ったきりだ」
「ふうん・・・、次はおむつだな。アンタ出来んの?」
「いや、やったことがない・・・」
「ゲップさせたらこっち寄こせ。替えてやる」
「すまん」
「一護の子だからだ」
「そうだな、私にもこのような子が欲しかったがな・・・」
「なんだ、番いの相手がいたのかよ」
「昔にな・・・。もう、どこにも居ないがな・・・」
「ふん?言い回しが回りくどい」
「病で、先に逝ってしまった・・・」
「・・・そうか」
白もその先は何も聞くことなく、ゲップを終えた幾望のおむつを替えてやった。
「じゃあ、遊んでやれよ。一護も喜ぶだろうよ、あんたらの事気に入ってるしよ」
そう言うとパラソルの下へ戻った。

「どうしたの?白」
「別に・・・、たまには騒がしいのも良いな・・・」
「そうだね、楽しいよ」

その頃の一護達は・・・?


第8話へつづく





09/07/24作 
最近影の薄い朔を書いてみました。
幾望の水筒は赤ちゃん用のストローが付いたやつです。
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