題「新婚旅行」
 「おい一護!今度旅行に行くぞ!」
いきなり訪ねてきた白が楽しそうに一護に言った。
「へあ?旅行?なぁに?いきなり」
「春水がよ、新婚旅行ってのに行きたいって言い出してな。一護も良いなら行くって言ったら誘えってよ」
「ふ〜ん。でも俺だけ行くわけにはいかないよ」
「ああ、旦那もガキも一緒だ!後、あの何とかメンバー?あいつらもな」
「ホントに?じゃあ俺、剣八に聞いてくる!」
「おお!後で俺んち来いよ」
「うん!分かったぁ!」

 隊首室。
「剣八!剣八!」
「あん?何だよ、嬉しそうだな」
「うん!あのね、さっきにぃにが来てね?一緒に旅行に行こうって誘ってくれたの!」
「旅行だぁ?」
「うん、新婚旅行だって!ね?行こ!剣八!」
「あん?俺も?」
「うん!剣八も、朔も十六夜も!乱菊さん達も行くって!」
「なんだそりゃ?」
「駄目?剣八・・・」
眉を下げ、上目遣いに見上げてくる一護。
「う・・、しゃあねえな。俺らも一緒なら良い。で、何処に行くんだよ?」
「あ、聞いてないや。剣八一緒に聞きに行こ」
「ああ」

 京楽邸。
「にぃにー!来たよー」
「おう、来たかよ。なんだ旦那もかよ」
「ふん、で、何処に行くんだよ?」
「うみだってよ」
「海?」
「剣八、うみって何?」
「でっかい塩っ辛い水たまりだって春水が言ってたぞ。そこでイカやらマグロやらが捕れるんだってよ!」
「へえ!そうなんだ!すっごーい!」
「水たまりか?あれが。言っとくけどよ、瀞霊廷よりでかいぞ・・・」
「「えっ!」」
二人が驚いている。
「水たまりのでかさじゃねえぞ!」
「ほんとだねぇ」
「お前ら海見たことねえのかよ?」
「ないよー。山から出たこと無かったもん」
「なあ」
「ふうん。まあガキ共の勉強にもいいか。いつ行くんだ?」
「ああ、今日春水が休みの申請?とか言うやつするから明日にゃ分かる」
「そうかよ、じゃあ明日また来いよ」
「お、おう。じゃあな一護」
「うん!楽しみね!にぃに」
「そうだな」
そう言って帰っていった。

 子供達に教えると、
「かか様、うみってどんな所?」
「俺も行ったこと無いから分かんないんだ」
「へえ!でも楽しみ〜!水着とか買うの?かか様!」
「水着?要るのか?」
「要るんじゃないの?可愛いのが欲しいなー」
「おい、あんま肌出すんじゃねえぞ・・・」
「あ、うん。分かった」
「とと様ってばヤキモチ妬きー!」
「うるせ」

 翌朝の隊首会で京楽を捕まえた剣八。
「おい、新婚旅行に行くんだってな?」
「うん。一護君から聞いたの?」
「ああ、それとお前んとこの嫁にな。お前ちゃんと海がどういうとこか教えとけよ・・・。水たまりはねえだろ」
「あはは。何か気に入っちゃってねぇ。で、来るの?」
「ああ、ガキ共の勉強にも良いだろ」
「うんそうだね。三日後に出発するからね、ちゃんと水着買いに行かせなよ?」
「わあってるよ」

昼になると、女性メンバーが一護と白、十六夜を現世に買い物へと誘いに来た。
「一護も白も、まだまだ女の子の身体なんだから!ちゃんと可愛いの選びましょ!」
「う、うん」
「わーい!あたし現世なんて初めて!朔にぃも一緒に行こうよ」
「そうね。一人残っても寂しいでしょ?」
「ううん、幾望が居るし、僕は留守番してるよ。かか様大変でしょ?」
「いい子ね〜!ちゃんとお土産買ってくるからね!」
乱菊に頭を撫でられている。
「白、朝月は?」
「ん?連れて行くけど?」
「水着買うの?」
「そうだな、欲しがったらな」
「ふーん、ま、いいわ。早く行きましょ!」
女性メンバーと現世へと行った一護達。
「やっと静かになったな。朔お前は行かなかったのかよ?」
「あ、とと様。はい幾望が居るし、女の人ばっかりだったし・・・」
「ま、そうだな。今日はゆっくりしとけや」
そう言って自分の胡坐の中に朔と幾望を納めた。
「わ・・・、久し振りです、とと様の足の中・・・」
「そうだな、胡坐って言えよ。昼寝でもしとけ」
「はい・・・」
ちりりん、と風鈴の音が聞こえてきた。
「隊長ーって、ああ、すんません・・・」
「なんだよ?」
「いえ、隊長が旅行中俺らの仕事どうしようかと」
「書類片付けるだけで良いんじゃねえの。山じいも来るみたいだぞ」
「マジっすか?」
「あー、ガキ共と遊びたいんだと」
「一護の事は孫みたいに可愛がってましたけど、今度はひ孫ですね」
「だな・・・」
自分の胡坐の中ですう、すう、眠る二人の息子の髪を撫でてやった。
「お前らも来たきゃ来ればいいんじゃねえか?」
「良いんすか?」
「一泊二日だ。構わねえよ」
「んじゃ、行くっす」
弓親も誘われ行く事となった。

 現世のデパート。
「ほら!一護ちゃんと選びなさいよ?更木隊長魅了しちゃいなさい!」
「乱菊さんってば!」
「かか様、魅了ってなーに?」
「え、えっと・・・」
「男の人を惚れさせるってことよ」
「ふうん。だったらとと様はもうかか様にみりょーされてるわ」
「十六夜!」
「なになに?」
「だぁって、毎日一緒にお風呂入ってるんだもん」
「わあ!わー!わー!」
顔を真っ赤に染める一護。
「あらぁ、仲が良いのね〜」
「うう、乱菊さんの意地悪」
「はいはい、あんたも選びなさい?」
「はあい」

 白は白でマイペースに選んでは試着していた。
「あの子も物怖じしない子ねー、白!何か気に入ったのあった?」
「あ〜、今んとこコレ」
と見せて来たのは、コバルトブルーのビキニだった。肩紐は太目で首の後ろで結ぶタイプだ。
「あらー、良いじゃない!」
「ほんとだ。おっきなリボンになるね」
「下のリボンも気に入ったんだ」
「あんた白いからよく映えるわ。朝月は?」
「朝月も青が良いってよ。子ども用のトコに行くわ」
「はいはい、遠慮せずにいっぱい見なさいよー」
「へいへい」
「一護、あんたは?」
「んーとね、これが綺麗だなって思って」
白地に向日葵の花がたくさん描かれた水着だった。
「素敵じゃないの。でもワンピースで良いの?」
「うん、剣八があんまりお肌出すなって」
「あらら、本当に魅了されてるわね」
「ねー!」
「十六夜、あんたは?」
「あたしもビキニが良いけど、とと様が駄目だって。だからこれ!」
十六夜は白地に濃いピンクの花びらの先が尖っているチューリップの絵のワンピースだった。
「あらぁ、十六夜によく似合ってるわぁ。そうだ!あっちにあったんだけど髪飾りも合わせたら?」
「うん!そうする!」
「狛村隊長は行かないって言ってるわよ?」
「えー!なんで!」
「護廷で隊長格が大勢いなくなるのは危険だからって。ね?だから髪飾りだけでも見せてあげなさいよ。海の様子は写真に撮ってあげるから」
「え、あ、うん!」
頬を染めて駆け出す十六夜。
「なんで知ってるの?乱菊さん」
「見てれば分かるわよぉ。男は鈍いからね。特に狛村隊長はね」
「そうですか」
「苦労しそうね、あの子。まあ、想いが実れば良い夫婦にはなると思うけどね」
「狛村さんは優しいから」
「かか様―ぁ!これどお?」
「んー?ああ、いいんじゃないか?おんなじチューリップで赤いのもお前に似合ってるよ」
「えへへ、これは朝月に似合いそう」
と青いユリの髪飾りを見せた。
「うん、似合いそうだな。見せてきてやれよ」
「うん!朝月ー!」
白と朝月が居る方へ走っていった。
「なぁに?いっちゃん」
「あのね、これ髪飾りなんだけど、朝月に似合うと思って。後これは白にぃに」
「俺に?」
朝月には青いユリを、白には青いバラの髪飾りを見せた。
「わぁ、綺麗!かかたま似合う?」
「ああ、可愛いぞ。で、なんで俺にはバラなんだ?」
「え?だってきょーらく隊長バラが好きなんでしょ?だったら白にぃがバラの髪飾りを付けたらもっとみりょー出来ると思って!」
「へえ、あいつバラが好きなのかよ。ありがとな、十六夜」
「えへへ!あたしはね、コレ!チューリップなの。水着とお揃い!」
「はは、似合う似合う」
「ほんと!かわいい!」
「朝月も可愛いよ、水着は決まったの?」
「うん、これなの!」
青いワンピース、肩紐と足のところにフリルが付いていて可愛らしい。
「わ!可愛い!これでポニーテールにしたら言う事ナシね!」
「そうだな。後は春水の水着だな」
と黒い長めのトランクスタイプの水着を持っていった。
十六夜が、
「ねえかか様、うちのとと様の水着は買わないの?」
「剣八の?うん、要らないって言ってたよ」
「なーんだ、つまんないの」
「ほら、朔の水着選ぼうよ」
「うん!」
二人して選んだのは青地に魚の絵の水着だった。
「乱菊さん達のはいいの?」
「あらぁ、もう買ったわよ?あんた達はそれでいいの?」
「うん!にぃには?」
「おー、俺のとこも決まった」
「んじゃ、会計済ませて帰りましょ」
「はあい!」
初めて海へ行く一護達の水着を買って、瀞霊廷へと帰る一行だった。


第2話へ続く





09/06/12作 第95作目です。また連載形式です。
死神達の夏休みみたいだな。


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