題「四月の愚者〜吐いて良い嘘、悪い嘘〜」7
 口付けを解くと一護が、
「ね、この格好苦しいんだけど・・・」
と言って足を下ろさせた。
「ふう・・・」
「おい、これで終わったと思ってんじゃねえだろうな?言っとくがまだ終わんねえぞ」
「そう・・・、好きにして良いって言ったじゃねえか」
「そうだったな・・・」
ぐちゅり、と腰を動かすと鼻にかかった声をあげる一護。
「ふうん!」
「お前ん中ぐちゃぐちゃに蕩けてんな・・・。そんなに気持ち良いかよ・・・?」
「うん、だって剣八だもん・・・。剣八にしか感じない・・・」
「一護・・・、可愛い事言うじゃねえか・・・」
「え?なにが?」
剣八は一護の足の膝裏に手を入れると抱えあげ、立ち上がった。
「わぁ!ひゃあん!あっ、あっ、だっ、だめぇ・・・!そ、そんな奥まで・・・!」
「なんだ?行くとこまで行ったか?」
「し、知らない・・・、こ、こんなの初めて、だもん・・・!」
ひっ、ひっ、と嗚咽の様な呼吸で答えた一護は剣八にしがみ付いた。
「おら、足もちゃんと腰に絡めとかねぇと落ちちまうぜ?」
とわざと手を離した。必然的に繋がった所に全体重が掛かり、更に深い所まで繋がった。
「ひゃあぁ!らっ、らめぇ!やあぁあ!」
仰け反り、達してしまった一護。その強い締め付けに持って行かれた剣八。
「くっ、こいつ・・・!」
「んあぁ・・・もっとぉ・・・、出し、て」
まるで搾り取る様にきゅうきゅうと締め付けた。
「くっそ!煽りやがって!」
剣八は一護を壁に押し付けると、力任せに奥を穿った。
「あっ!あう!あぅっ!善いっあ!ああっ!剣八!剣八ッ!んっ!ンンーッ!」
剣八が口付けてきた。舌を吸い上げながら、一護の命まで吸い取りかねないほどの口付けだった。
ぎしぎし、ガタガタと部屋中が悲鳴をあげていた。口付けを解かれた一護は首を打ち振りながら啼いた。
「あぁあー!やあぁ!もっ!もう!ダメぇっ!おっ!おかしくなるぅ!あああん!」
「駄目だ!まだ終わらねえ!おかしくなっちまえ!毀れちまえ!」
「いやっ!いやああー!」
剣八の背に爪を立てながらイッた一護の中に注ぎ込む剣八。
「ああう!熱い!ああ・・・」
くたり、と剣八の肩に頭を預ける一護がぽつりと、
「剣八・・・、あいしてゴメン・・・」
と呟いた。
「一護?おい!寝るんじゃねえ!」
「ん、あ、寝てないよ・・・。背中、痛い・・・」
「ああ、蒲団に戻るぞ」
蒲団の上で対面座位で座る二人。一護の中から抜こうとすると、
「嫌、抜かないで、行かないで、ココに居て。痛くしても良いから、血が出ても良いから!・・・置いて行かないで・・・」
ギュッと抱き付いてくる一護。
「一護・・・」
その声にビクッとして顔をあげると、
「ゴメンなさい・・・、忘れて・・・」
と呟いた。
「謝んな・・・」
「ご、ごめ、ン、あ」
言い終わる前に唇を塞がれた。ちゅっ、と音を立て離れると剣八が、
「一護、別れるなんざ嘘だ。だから」
と言い出した。
「うそ・・・?」
一護は聞き返した。
「ああ、そうだ!」
一護は剣八の唇に指を当てると、
「ふふ、そんな事・・・、それこそ悪い嘘だよ」
「嘘じゃねえ!一護!聞けよ!」
「無理しないで・・・、俺の事なんか忘れていいよ」
一護はそう言うと自分から剣八の楔を抜き、腕から出た。
「最後に抱いてくれてありがとう。嬉しかった」
「一護・・・、行かせねぇ、行かせねえぞ」
「もうお終いだよ、初恋があんたで良かった」
「一護」
「サヨナラ」
寝巻きを着て帰ろうとする一護の足首を掴んで引き摺り戻す剣八。
「あう!痛い、離して!」
「誰が離すかよ・・・。一護、お前は俺と別れたいのか?俺と別れても平気なのか?」
みしみしと骨が音を立てるが剣八は一護の足首から手を離さない。まるで居なくなるのを恐れているかの様に・・・。
「な、何言ってるの?別れたいのは剣八だろ?」
「確かに別れを切り出したのは俺だがよ、ありゃ嘘だって言ってんだろ?エイプリル・フールか?そう言う遊びだって一角が言ってたぞ」
「エイプリル・フール?あそび?」
「ああ、だから真に受けんな」
一護の頭の中で何かがグルグル回り始めた。

「うう、あ・・・」
「一護?」
「あああああ!知らない!知らない!そんなものシラナイッ!」
「落ち着け!一護!」
「イヤダ!イヤダ!イヤダ!ハナセ!ハナセ!離せぇ!」
「一護!」
ビクリと強張る一護の身体。ゆっくり首を横に振ると、
「イヤ・・・、離して、離して・・・、怖い、怖いよ。また大事な人を喪くすの?」
「一護・・・」
「ゆるして、許して、もうあんな思いは嫌。俺は独りで良いから、ずっと、一生、だからどうかアナタは幸せになって」

「迷惑掛けてたんでしょ?他に好きな人が出来たんじゃないの?だから俺は・・・」
「だから身を引くってか?随分聞き分けが良くなったもんだなぁ」
「だって・・・!俺は厭らしい人間だ、いつだって嫉妬にまみれてる。次にお前がその目に映すのは誰・・・?そいつをお前が見る前にお前の両目を抉ってやりたい!そいつの名前を呼べない様に喉を潰してやりたい!
今の俺はどれだけ醜い?お前の傍になんて居られないよ・・・」
「お前は俺を美化しすぎだ・・・」
「惚れた相手を過少評価は出来ねえな・・・」
「俺だってお前に惚れてんだよ!なんで聞こうとしねえんだ!」
一護の両肩を掴んで射竦めるような目で見つめながら叫んだ剣八。
「だ、だって・・・、いいの?好きなままでも、その、愛しても、いい・・・?」
「ああ!一護、あんまり言わねえから聞き逃すなよ?」
「なに?」
「俺も、お前を愛してる」
「え、あ、ああ・・・」
ぼろぼろと涙を流す一護。
「泣くんじゃねえよ・・・」
「だ、だって、うれしい・・・」
いつまでも泣きやまない一護に、
「おい、風呂行くぞ」
と言った。
「う、うん・・・」
涙で前が見えない一護を抱き上げ、風呂へと連れていった剣八。

風呂場で事後処理をして、身体を洗ってやった。
二人で湯船に浸かっていると、
「俺、死ぬより死なれる方が怖い・・・」
ぽつりと一護が呟いた。
「そうかよ・・・。安心しろ、俺は死なねえからよ」
「・・・絶対?」
泣きそうに眉を歪めて子供の様な事を聞いてきた一護。
「ああ、絶対だ」
子供の口約束の様なものに一護は、心底安心した様な満面の笑みを咲かせた。
「お前はずっと、いや、俺の前じゃその顔で居ろ・・・」
俺以外に見せるにゃ勿体ねえくらい綺麗な笑顔。誰にも見せたくねえな。
ふと気付けば一護はいつの間にか眠っていた。
「一護、おい!」
身体を揺らしても反応は返って来なかった。ただ赤子の様に安心して身を委ねて眠る一護が居た。
風呂からあがり、身体を拭いてやって、寝巻きを着せた。自分も着替えて部屋へと帰った。

起きた時、一護の記憶はどうなっているのだろうか・・・。
剣八の不安はそれだけだった。同じ蒲団で眠った二人。

「ん・・・、あ、ここは?」
早朝、目が覚めた一護。隣りで眠る男を見て、
「あ、剣八だ・・・」
と呟いた。
暫くボーッとしていたが昨日の事を思い出して、一人で顔を真っ赤にした。
恥ずかしくて恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
それでも、とても嬉しいことを言ってくれた。

静かに蒲団から出ると庭に出た。朝の空気が火照った顔を冷やしてくれて気持ち良かった。
「ん・・・?」
一護は庭の片隅に咲く小さな青い花を見つけた。
「勿忘草か・・・」
一護は二本手折ると部屋に戻った。剣八はまだ寝ている。良かった。
起きて顔を合わせるのが恥ずかしかった一護は、自分の枕に花を一本置いて四番隊に帰った。

昼近くに漸く起きた剣八が見たものは誰も居ない自分の片側の蒲団と枕の上の小さな青い花だった。
「・・・。一護!」
慌てて起きた剣八は私服に着替えて四番隊へと向かった。


第8話へ続く。





09/06/09作 またもやエロです。記憶は戻ってるのかな?原因は精神的なものだからな・・・。



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