題「馴れ初め」7 | |
「ん・・・、んん?」 隣りでもそもそ動く気配で目が覚めた京楽。 「白君・・・、どうしたの?」 びくっと背を震わせ黙ったままの白。 「白君?お腹でも痛いの?」 心配になって肩に手を置くと、こちらに見上げた。怯えたように涙を浮かべた目で見つめてきた。 「どうしたんだい?ん?」 優しく髪を梳いてやると漸く話し始めた。 「あの、ない・・・んだ・・・」 「何が?」 「だから、ここの・・・」 白は京楽の手を股間に当てた。 「し、白君!ってアレ?」 ガバッと起き上がり、白を座らせた。 「悪いけど、見るよ?」 「ん・・・」 こくん、と頷く白の裾を割って確かめる。無い・・・。代わりに女性化していた。 上も肌蹴ると、ふっくらとした膨らみがあった。 「な、なあ・・・、なんだこれ?病気なのか?俺って」 「いや、恐らく違うと思うよ・・・」 そこへ地獄蝶がひらひらと舞いこんで来た。 「おや、卯ノ花隊長からだよ」 「なんて・・・?」 「うん、定期健診に来なさいだって。丁度良いね。診てもらおう」 「でも・・・」 「大丈夫だよ、もし一護君に見つかったら、飲み友達になったって言えば良いからさ」 「・・・うん」 着替えると早速四番隊へ向かった。 四番隊。 「どうですか?その後の調子は?」 「・・・」 「白君?」 「あの、俺、体が・・・」 しどろもどろの白に変わって京楽が、 「あのねぇ、白君の身体が女の子になっちゃったんだよね」 「まぁ、そうですか。それは良かった。無事に安定期に入りましたね、おめでとうございます!」 「それじゃ、病気じゃねえのか?」 「ええ、一護君もそうなりましたよ。安心なさってください」 にっこりと笑って安心させ診察に移った。 卯ノ花隊長の診察を終え、経過を聞かれた。 「食欲の方はどうですか?」 「ある、よ」 「そうですか、では夜の方は?どうですか?痛かったり、気分が悪くなったりだとかは?」 「な、ない!よ・・・」 「そうですか、ではこれを渡しておきますね。一護君にも渡してあります、母子手帳です」 「なにすんだ?これで」 「その日に何を食べたか、気分は悪くなかったか、何か気付いた事があれば書いて下さいな」 「うん・・・」 母子手帳と書かれた表紙に指を這わせて頷いた白。 「いい子ですね。ではまた一週間後にでも来て下さいな」 「う、うん」 「ああ、京楽隊長、ちょっと・・・」 「なあに?」 「安定期に入ってお子さんも順調ですので、どんどん頑張ってください。後これを・・・」 「何これ?」 「精力剤です、更木隊長は持ち前の霊圧で何とかなりましたが、普通の隊長格では少し辛いでしょうから」 「ありがたく貰っとくよ」 渡された箱の中身はドリンクと丸薬だった。思わず苦笑を洩らした京楽。 「もう激しくなさっても大丈夫ですよ。それからお腹もどんどん大きくなりますからね」 二人で診察室を出ると、京楽が、 「白君、卯ノ花さんには大人しいね?なんで?」 「え?ん〜、なんか、かか様に似てる気がする・・から・・・」 「そうかぁ」 「すっかり春らしくなったねぇ・・・」 「ん、桜もだいぶ咲いたな。あのさ・・・」 「ん?なんだい、白君」 「こ、子供の名前、あんたが考えてくんないか?」 「いいのかい?そんな大事な事を僕に任せて・・・」 「ん・・・」 「分かったよ、うんと良い名前を考えるからね」 笑いながら応えてくれた。 「おや、一護君だ」 「え?あ・・・」 さっと木陰に隠れる白。遠くの方に一護が居た。もうお腹は膨らんでいた。胸に書類を持ってすぐに見えなくなった。 「もう出ておいで」 「う、うん」 「早く帰ろうか・・・?」 「ん・・・」 「お、怒ってるか?」 「ん〜?なんで?」 「あ、その隠れた、から」 「しょうがないよ、知られたくないんでしょう?」 「う・・・」 「ちゃんと待つよ・・・、気にしなさんな」 柔らかくなった髪を撫で、屋敷へと戻った二人。 「なんだか身体も小さくなったねぇ」 「そうか?分かんねえけど・・・」 「可愛い事に変わりはないけどね」 「うっせえ!」 「ふふ、遅くなったけどご飯食べよう」 「ん」 「今日は朝からバタバタしちゃったから、ゆっくり出来ないねぇ。またお昼に帰ってくるからね」 ご飯を食べながら京楽が言うと、 「今日はしないのかよ」 幾分不機嫌な白の声音に内心にやけながら、 「時間無いんだよ、ゴメンね。夜はその分頑張るからさ」 明日は非番のはずだ。 「む〜、ならいい・・・」 か〜わいいねぇ、うちのお姫様は・・・。 「何ニヤけてんだよ?」 「何でもないよ、じゃ、行ってくるよ」 「ん、昼にな」 「うん」 お土産はアレにしようっと。にこにこ笑いながら仕事に向かう京楽。 「ヒマ・・・、ヒマ、ひま、閑、暇!」 ころころ寝がえりを打ちながら独り言を言う白。 「何か面白いもんないのかよ!」 「あるよ〜」 「わあ!」 「んふふ、びっくりした?」 「あ、当たり前だ!いつも気配なんか消さないクセに!」 「だぁってあんまり可愛いんだもん。それに驚かしたかったんだ」 「むぅ、可愛いって言うなって言ってんだろ!・・・何持ってんだ?」 「お土産だよ、君に似合うと思ってね」 「ふうん・・・?」 紙に包まれたそれを開けると中から女物の着物が出てきた。 朱色の地に金糸、銀糸で刺繍が施されていた、見た目にも高価な物。 「な!コレ!こんな高価いモン貰えねえよ!」 「なんで?君によく似合うと思うよ?そんなこと言わずに着てくれないか?」 「でも・・・。着方分かんねぇし、俺なんかに似合う訳ねえ・・・」 「似合うよ。まだ分かんない?君はとても綺麗なんだよ?そうだ!髪飾りも買ったんだよ。君の白い髪に映えるような紅玉が美しいよ」 「でも・・・」 「着方が分からないなら僕が教えてあげるから。ね?」 「分かったよ!早く着せろよ!」 半ば自棄気味に言うと、早速着替えさせる京楽。 腰巻、襦袢、と着せていって最後に着物を着せ、櫛を髪に飾った。 「ああ・・・、綺麗だよ白君。このまま離れたくないよ・・・」 後ろからぎゅっと抱き締めながら耳元で囁く京楽。 「おい、俺はまだ見てねえぞ・・・」 「ああ、ごめんね、姿見の前に行こうか」 「これが俺・・・?」 「そうだよ、綺麗だろう?今度はお化粧して外に遊びに行こうか」 「けしょう?」 「そう。きっと誰にも分かんないよ!一護君にもね。美味しい甘味処があるんだ、君と行きたいな」 「あ、う、す、好きにすれば良いだろ!」 「うん、約束ね。さ、お昼食べよ」 始終にこにこ顔でお昼を食べる京楽に目を合わせられない白が居た。 (くそ、夜になったら覚えとけよ) 第8話へ続く 09/04/19作 今回もほのぼのしましたね。次は夜の様子です。 |
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