題「嫉妬する子猫」3
狛村隊長の所で、世話になる様になった一護。表面上は普段と変わらなかったが、夜になると一人泣いていた。
「みゃぁぁ、みゃぁぁ、みゃぁぅ、みぃぃ・・・」
毎晩、毎晩それが続くので流石に他の隊士から、どうにかしてくれと言われてしまった狛村。
「ふむ、仕方がないのう」
狛村は縁側で昼寝をしている一護のところへ行った。
「黒崎、黒崎・・・」
なるべく静かに起こした。
「ん・・・?」
丸くなって眠っていた一護の目が開く。
「起きたか?すまんが頼みがあるのだが・・・」
「んに?」
言い難そうにしている。
「その、お主が毎晩泣いている事でな、隊士からどうにかならぬかと・・・」
ああ、そういう事か。と一護はすまなさそうに笑って、
「んにゃー・・・」
ごめんね、と謝った。
「いや、こちらこそ、お主を預かっているのに何も出来ていない・・・」
ふるふると首を振り、散歩に行くと言って隊舎を後にした。
それから一護は、食事に時間以外は隊舎から極力離れるようにした。
朝ご飯の後の昼寝は縁側でしていたが、身を守る様に丸く、丸くなって眠っていた。

弓親が、七番隊の書類を持ってやって来た。
「こんにちは、書類をお持ちしました」
「うむ、御苦労」
「あの・・・、一護君の様子はどうですか?」
「うん?普通であるが?どうした」
「いえ、ならいいんです、今の時間はお昼寝ですね」
「うむ、縁側で丸くなっておる」
「丸く?一護君が?」
違和感を感じた弓親。
「あの、ちょっと見ても良いですか?」
「良いと思うが・・・?」
縁側に案内された弓親。そこで眠る一護は今まで見たこと無いほど、身を固めていた。
「・・・あんな一護君、初めて見ましたよ・・・」
「そうなのか?いつもはどんな格好で寝ているのだ?」
「どうって、仰向けで寝たり、普通に横向きで寝たりですよ・・・」
「そうなのか・・・」
二人の話声に起きたのか、目を開けた一護。
「あ・・・、う・・・」
ふるふる、と首を横に振り、部屋に隠れてしまった。
「やっぱり、根が深いですね・・・。隊長も、一護君を壊したくないって言うなら加減すれば良かったのに、遊郭に行くから・・・」
「裏切りではないのか」
「違うんですよ・・・、ここのところ討伐が無くて体力が有り余ってたんですよ。それを全部一護君にぶつけると壊れそうで怖かったらしいですよ。それが、こうなっちゃって・・・」
「ふうむ、恋人というものは難しいものだな・・・」
「そうですね、一護君しか見えてないくせに、京楽隊長にも責任はあると思いますけどね」
「うん?どういう事だ?」
「京楽隊長が最初に誘ったんですよ、ま、早く仲直りしてくれないとこっちも困るんですよね。協力してくれませんか、狛村隊長」
「そうであるな、毎晩泣いておるしな・・・」
「そうなんですか・・・、うちは稽古が厳しい上に、お酒がひどいんですよ」
「それでは、草鹿も心配であろう?明日あたり来るように伝えてくれ」
「はい、お願いします」

十一番隊。
「隊長、お願いがあります」
「なんでぇ、藪から棒に」
「今日明日と、お酒を飲まないで下さい」
「あ?なんだそりゃあ?」
「お願いします!後、朝風呂に入ってお酒の匂いを消してほしいんです」
「注文が多いな、おい」
「今日明日だけです。どうかお願いします!」
「わあったよ、もう寝るからな!」
「はい」
そのまま大人しく眠った剣八。

その頃の一護は、どうにか寝ないように頑張っていた。
眠ってしまうと夢を見てしまう。夢には必ず剣八が出てきた。優しく髪を撫でくれる、笑ってくれる。
目を覚ませば、どこにも居ない。その現実に泣きたくなる。なら、夢なんか見ないように起きていればいい・・・。
何日寝ていないのか、食欲もない。

ああ、なんだか疲れたな・・・。剣八は今も遊廓に行ってるのかな?もういいか・・・。


翌日、縁側でうつらうつらしている一護が居た。もう限界だ。ぱたり、と横になると夢も見ないくらい深い眠りに就いた。

弓親が、剣八を無理矢理七番隊へと連れ出していた。
「早くして下さい!隊長!時間がないんですってば!」
「うっせぇな、ここに何の用があんだよ」
「良いですから!」
門の前に立つとすぐに開けられた。
「狛村隊長、すいません。無理なお願いを・・・」
「いいや、黒崎も、もう限界だろう・・・」
「あん?一護がどうかしたのか?」
「更木よ、なるべく霊圧を下げて、黒崎の傍へ行ってやれ。静かにな」
「はあ?」
「隊長・・・」
「ちっ・・・」
縁側を見ると、横たわる一護が居た。髪も、耳も、尻尾もツヤが無くパサパサしていた。
「一護・・・」
傍に行き、跪くと一護の髪を優しく撫でた。一護が、フンフンと鼻を鳴らして何かを探していた。
薄っすらと目を開くと、剣八の指に吸い付いた。ちゅう、ちゅう、と吸っては、手の平に鼻を押し当て、匂いを嗅いでいた。
そのうち、目が覚めてきたのか、
「あ・・・、や、いにゃぁ!」
逃げようとする一護を抱き竦めると、耳元で、
「一護、俺が悪かった・・・!悪かったから、帰って来てくれ・・・!」
「い、みゃあ?にゃあう」
「お前が嫌いになった訳でも、飽きたわけでもねえ!ただ、壊しそうで怖かっただけだ・・・」
「ふみぃ?」
「取りあえず、うちに帰るぞ」
「あう・・・」
「文句ねえだろ」
「儂は無いが、黒崎に任せる」
「みィ・・・」
「そうか、また遊びにおいで」
「みぁ・・・」
「帰るんですか?一護君」
「うむ」
弓親が、頭を下げ、一護もお礼を言った。

隊舎には、京楽隊長が来ていた。
「ゴメンね〜、一護君。剣八さんを誘惑して〜」
「・・・み!」
「おい、一護、機嫌直せよ・・・」
ぷくっと頬を膨らませながら、尻尾で剣八の身体を叩いている一護。
「おら、機嫌直せって・・・」
ちゅっ、ちゅっとキスの雨を降らせる剣八。
「ん、ん、みゅ、みぁ・・・」
「一護・・・」
深く口付けて、尻尾や耳を撫でさすると一護が、
「んあ、んにゃぁあぁん」
と甘い声を上げた。剣八は、まだそこに京楽隊長がいるにも関わらず一護を押し倒した。
「あの〜?剣八さん?僕まだ居るよ?」
「ふん、折角だ・・・、あそこの女共とどんだけ扱いが違うかみていけよ・・・」
鋭い目で睨みつけられた京楽は、
「しょうがないねぇ・・・」
こうなれば、何を言っても無駄だと分かっていた。
「あ、いにゃあぁ・・・」
「一護、俺がどんだけお前を特別に扱ってるか見て貰えよ・・・」
衣服を脱がしながら、囁いた。
ちゅ、ちゅ、と首筋に吸い付いて赤い跡を残しながら、大きな手の平で胸を、腹を、背を撫でまわされた。
「は、あん・・・、みぃ、みぃ、んあ!」
一護の中心を掴んで、緩く扱くと口へと含んだ。
「いにゃ!ああ!あっ!あっ!やっ!ああっ!」
背を撓らせ、ビクッビクッと震えながら剣八の口の中で吐精した一護。
「濃いな・・・、またやって無かったな」
「あ、あうう・・・」
眦から一粒の涙が零れた。
「泣くな、可愛がったてやるからよ・・・」


第4話へ続く




09/04/06作 ようやくの仲直り?京楽隊長ってば当て馬?




文章倉庫へ戻る