題「鬼事」5 | |
一護を羽織りで包んで抱き上げ、案内させた川で身体を洗ってやった。 先程に比べて顔色が少し良くなっているようだ。 「気分は・・・、どうだ一護?」 膝に一護を抱いて、手拭いで身体を撫でながら剣八が訊いてきた。 「ん・・・、なんかあったかい・・・」 「そうか・・・」 満月の光が水で濡れた一護の身体を照らして、キラキラ光っていた。 「一護、綺麗だ・・・」 ちゅっちゅっと一護の胸に口付ける剣八。 「ん、あ、そんなこと、ないよ・・・」 「綺麗だ、お前が一番綺麗だ・・・」 一護の髪を梳きながら耳元で呟いた。 「もっと抱いていいか?一護」 「うん、いいよ、あの日から今まで足りなかった分抱いていいよ・・・」 「一護・・・!一護、一護、ああ一護の匂いだ・・・」 一護の首筋に顔を擦り付けながら剣八が呟いた。 「剣八・・・」 一護はその頭をきゅっと抱き締めた。 「俺はここにいるよ・・・、心臓の音も聞こえるでしょ?」 「ああ・・・、聞こえる・・・!もっとお前の声聞かせてくれ・・・!」 「剣八、抱いて?もっと繋がりたいの、お願い・・・」 「一護」 剣八は向かい合わせになる様に抱きあい既に回復している自身を宛がった。 「あ・・んあ!あぁあぁあ!」 「一護、ああ、あったけぇ、お前はいつもあったけえな・・・」 「はぁ、はぁ、剣八はいつもあついよ・・・」 「く!動くぜ・・・」 「うん・・・」 一護の膝裏に手を入れ身体を持ち上げる剣八、すぐに奥まで貫いた。 「んあっ!ああっ!ああっ!剣っ!八!いい!気持ち良いよぅ!」 がくがく震える身体。水面を蹴る足。縋るように潤んだ目。全てに煽られる。 「一護、一護、帰るよな?俺達の家に、ガキ共の所に、俺の横に!」 「あう!あう!剣八!も、駄目、イク!イッちゃうぅ!」 「帰るって言うまでイかせねえぞ」 「ひく、だって、にぃにが・・・、一人ぼっちになっちゃう・・・」 「お前が生きてりゃあ、一人じゃねえ!勝手に逢いに来りゃあいい!」 「剣八!か、帰りたい・・・、皆の所に帰りたいの!」 「帰って来い!お前の帰る場所は俺だと言っただろ、祝言の夜も、その前も!」 「あう!ああ!剣八愛してるよぅ!」 「俺もだ!おら、イけ!俺もイク!」 「んあ!ああぅっ!あっ!あっ!ひぃ!いいっあ!ああっあーー!」 「くうぅ!」 一護の中に精を注ぎ込んだ剣八。抜き取って処理しようとすると、 「いや、もうちょっとこのままでいて・・・」 「一護・・・」 剣八に抱き付き、口付けを強請る一護。 それを見ていた白。 「一護・・・」 もう無理か・・・。もうこの手には戻らないな・・・。と覚悟を決めた。 一護と剣八が漸く離れ、一護に死覇装の上を着せ、自分も着替えた剣八。そこへ白が現れた。 「一護」 「あ・・・、にぃに・・・」 少し気不味い空気が流れた。 「一護は帰してやる。けどな、これだけは覚えとけよ。一護を、ガキを不幸にしたら、その首撥ねてやるからな!覚悟しとけ!」 「にぃには?来ないの?」 「当たり前だろうが!」 「ここに居るの?ずっと居てくれる?俺遊びに来ても良い?」 「〜!勝手にしろ!」 「良かったぁ、にぃにも遊びに来てね?俺の家族なんだもん。ね、剣八」 「ああ、好きにしろ」 「・・・そのうちな・・・」 「にぃに、大好きだよ、これだけは信じて?でも今の俺には大事な物がたくさん増えたの」 「・・・分かってるよ、俺もお前が大事だよ」 一護は白の頬にちゅ、とキスを贈った。 「またね、にぃに」 「ああ・・・、またな一護・・・」 「おい、一護、お前身体平気なのか?」 剣八が気になっていた事を聞いた。 「え?あれ?平気だ、なんで?」 「まあ良い、帰ったら卯ノ花に診てもらえ」 「うん、分かった」 剣八は、一護を担ぐと白に、 「気が向いたら遊びにきやがれ」 と言った。 「剣八、ありがとう、にぃにきっと来てね?」 「ああ・・・」 そう言うと二人は瞬歩で消えた。後に残された白は寂しさは感じたが、絶望は感じなかった。 一護の中に自分がちゃんと居ると感じたから、剣八は一護を愛して大切にしていると分かったから・・・。 「ちっ、今度邪魔しに行ってやる・・・」 悔し紛れに呟きながら巣穴に帰り、眠りに落ちた。 瞬歩で走りながら剣八が、 「ガキ共がよ・・・、お前を取り返しにココに来やがったんだ。俺は諦めて何も出来なかったのにな・・・」 「剣八・・・、でも来てくれた、すごく嬉しいよ俺・・・」 「おら、着いたぜ」 瀞霊廷に着いた。 門の前には、卯ノ花隊長や、怖い顔をした乱菊達が揃って立っていた。 「一護!」 「怒ってる・・・」 「だろうな・・・」 卯ノ花の前に行くと下ろされた一護。 「一護君、体調が優れないと聞きましたが?」 「あ、うん。あのね食べ物が食べれなくなったの、口に入れるとオエッてなるの・・・」 「・・・、そうですか、すぐ診察しましょう、更木隊長もどうぞ」 「おう」 診察を終え、戻ってくると剣八と子供達が待っていた。 「かか様!」 「かか様!」 「朔!十六夜!ごめんな、離れて!」 「う、うわぁあ〜ん!かか様、かか様!」 「わぁああん!かか様ぁ!」 ぎゅうう、と抱き締め合う一護と子供達。 「一護君、宜しいですか?」 「あ、ハイ」 「更木隊長、一護君の体調不良の原因が分かりました」 「何だよ、性質の悪い病気か?」 「いいえ、つわりです。つまり妊娠しています、おめでとうございます」 にっこりと、慈愛の籠った笑顔で告げられた。 「あ?妊娠?」 「ハイ、2週間目辺りかと・・・、新月のあたりに発情期を迎えましたか?」 「あ、ああ、あれか・・・」 呟く剣八の隣りで真っ赤になって俯く一護。 「かかしゃま?妊娠って?」 「えっと、お前たちに、新しく弟か妹が出来たんだよ・・・」 「・・・、ホントに!嘘じゃない?あたしね、あたしね!弟が良い!」 「えっと、僕は、僕はね!どっちでも良い!」 「あたし、やち姉に教えてくる!」 「僕も!」 子供達が飛び出していった。 「あん時か・・・、まぁ、あんだけやりゃあなぁ・・・」 「・・・産んでも、いい?」 「あ?」 「子供・・・、俺、産んでも・・・」 「当たり前だ!言っただろうが、孕んじまえってな。また可愛がってやるよ」 ぎゅうぎゅうと抱き締める剣八。 「ありがとう、剣八」 「一護君、悪阻はもうそろそろ治まるでしょうから、ご飯も沢山食べて下さいね」 言外に、剣八との営みの事を言われた。 「あ、はい・・・」 「いっちー!赤ちゃん出来たってホント!」 いきなり飛び込んできたやちるに聞かれて、 「うん、卯ノ花さんがそう言ってる」 「おめでとう!いっちー!お帰りなさい!いっちー!」 「ただいま!やちる!」 「一護!」 ドドドッと、外に居た皆が雪崩込んで来た。 「お帰り、一護!もう!相談ぐらいしてよ!」 乱菊が泣きそうな顔で言った後、 「おめでとう、3人目!今度はどんな子が生まれるのかしらね」 一護はお腹に手をやり、 「どんな子でも、剣八の子だから幸せ・・・」 「ですって、更木隊長、良かったですね」 「うっせぇ・・・、帰るぞ一護、寝るぞ」 「あ、うん」 「また、明日ね!一護!」 「うん!」 寝室。 既に敷かれてある蒲団に押し倒される一護。 「あれから、碌に寝てねえんだ・・・、寝るぞ」 「ん、分かった。子供達は?」 「今は俺だ」 「ふふ、お唄歌おうか?」 「いい、このままでいい・・・」 きゅっと抱き締め、胸一杯に一護の匂いを嗅いで、心臓の音を聞いて、温かさを感じながら眠りに落ちていった剣八。 一護も同じ様に眠った。 もぞもぞとした感触に目を覚ました一護と剣八が見たものは、二人の間に挟まって眠る朔と十六夜、そしてやちるだった。 「久し振りだね、子供達と一緒に寝るの」 「そうだな、明日は子供らと遊んどけ」 「うん・・・、おやすみ、旦那様・・・」 少し驚いた顔をした後、口許で笑い、一護の髪を梳きながら、 「次は無えぞ・・・、次は鎖で繋いででもココに縛り付ける」 「ん・・・」 その言葉に、身が震えるほどの幸福を感じた一護。 「剣八、手・・・繋いで?」 「ああ・・・」 手を繋いで朝まで眠った二人。 第6話に続く。 09/04/05作 妊娠発覚と剣八の不眠症解消。 |
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