題「鬼事」6 | |
翌日、朝早く起きた一護は、朝食の用意に励んだ。 玉ねぎと溶き卵の味噌汁に、焼き鮭、卵焼き。子供達には甘めの味付けを、剣八と自分には普通の味付け。 「よし!出来た!」 全員の分を居間へと運んで、皆を起こしに行く。 「おはよう、みんなご飯だぞ」 「ん、かか様?」 「かか様、おはよ〜」 「おはよう、朝ごはん出来てるぞ」 「はぁ〜い!」 パタパタと子供達が居間へと走っていく。 「やちる、剣八、起きて?冷めちゃうよ」 「む〜、あ、いっちー、おはよ〜」 「おはよ、ご飯出来てるよ」 「うん、分かった〜」 目をこしこしと擦りながら、やちるも居間へと向かう。 「剣八、後は剣八だけだよ?早く起きて」 ゆさゆさと大きな体を揺さ振るが起きる気配がない。 「もう!ご飯冷めちゃうよ!」 む〜、と唇を突き出して言うも起きては来ない剣八。 「剣八の分俺が食べちゃうからね!赤ちゃんの分にしちゃうから!」 部屋から出ようと背を向けた瞬間、後ろから抱き竦められた。 「きゃ・・・」 「飯ぐらい良いけどよ・・・、もうちょっとここに居ろよ・・・」 「う〜、でもせっかく美味しく出来たのに・・・」 ぷうっと頬を膨らます一護に苦笑する剣八。 「しょうがねえな・・・」 ポンポンと頭を撫でる剣八に向きなおり、頬にちゅ、とキスをした一護。 「おはよう・・・、剣八、早くご飯食べよ」 「煽んなよ、このままやっちまうぞ?」 「今は、だめ。後でね」 「てめえ・・・」 スルリ、と腕から抜け出る一護の手を取り、 「一緒に行く・・・」 「ん・・・」 二人仲良く、食卓へと向かった。 「遅いよ!剣ちゃん!あたしお腹ペコペコだよ!」 「あたしもー」 「僕も」 「悪かったな、喰うぞ」 一護が皆にご飯を渡して、食べ始める。 「ねぇ、ねぇ、かか様、今日のお昼はおにぎりにして欲しいんだけど・・・」 「おにぎり・・・、まだ作ったこと無いなぁ。なんで?」 「えっと、かか様のおにぎりが食べてみたいの!ねっ!」 「う、うん!」 「そっか、じゃあさ、とと様の非番の日に皆で出掛けよう?それまでに練習しとくからさ」 「うん!絶対ね!」 「約束です!」 「うん、剣八は、いける?」 「ああ、構わねえよ」 「あたしは遠慮しとくー」 「え、何で?やちるも来ればいいのに」 「あたしも忙しいもん」 「そうなんだ、残念」 「かか様、おかわり!」 「おかわり!」 「ハイ、たくさん食べろよ」 「うん!かか様のご飯美味しい!」 「はい!干し肉とかソーセージだけとかはもう嫌です」 「?食堂、使ってなかったのか?」 「ううん、ご飯は弓親が作ってくれたり、食堂で食べたりしたけど・・・」 「けど?なんだ?」 「んっと、かか様を探しに山に入った時にね、ご飯、弓親に作ってもらったおにぎりと、干し肉とかソーセージとかだったの」 「うん、日持ちするのがいいかなって、干し魚とか、乾パンとか・・・」 「そっか、ごめんな。俺のせいで・・・」 「違うの!あたしと朔にぃが決めたことなの!かか様は悪くないの!」 「そうです!もうどこにも行かないで下さい!かか様はとと様のです!かか様は僕らのかか様です!」 「うん、でも、白にぃには俺のお兄ちゃんなんだよ。嫌いにならないでほしいな・・・」 「かか様をあたし達から奪わなきゃ嫌いになんかならないわ。家族なんだったらここで暮らせばいいのよ」 「十六夜・・・」 「だって、そうでしょ!かか様は、もうとと様のモノなのに!ずるい!ずるい!」 ずるいと言って泣きだした十六夜をあやす一護。 「もうそんな事しないよって言ってたよ。俺とお前たちが幸せなら良いって、とと様に返してくれたんだ」 「ほんとに・・・?」 「うん、だからさ、今度遊びに来るって。その時は・・・」 「うん、仲良くする・・・」 「僕も・・・」 「ありがとう、嬉しいよ・・・」 「・・・一護・・・、飯、お前も喰え。ガキが腹ん中にいるんだろうが」 「あ、うん。後で聞かせてくれな」 「うん!」 「はい!」 縁側にて。 「それでね、皆すごく静かになったの」 「怖かったです・・・」 「朔にぃが、かか様を探そうって言ったの、あたしはそんなの出来るの?って泣いてたの、そしたらね、『僕一人でも行くから、いっちゃんはとと様をよろしくね』って」 「だって、かか様言ってたでしょ?お兄ちゃんは妹を護るんだって」 少し恥ずかしそうにしている朔。 「それでね、色々聞き出して、食糧も集めて山に入ったの」 「初めは良かったんですけど、草鞋が足に食い込んで血が出たりして痛かったです」 「後ね、夜寝る時は木の上で寝たの!怖くなかったわ!」 「そうか・・・」 一護は優しく二人の頭を撫で続けていた。 「朔はきっと、途中で起きて十六夜を抱きよせたりしたんだろうなぁ」 「なんで知ってるんですか!?かか様」 「やっぱり、剣八の子だもん。分かるよ」 ふんわり笑う一護。見惚れる子供達。 「朔にぃそうなの?」 「え?う、うん。落っこちない様にって。後、寒くないように」 「おにいちゃんだもんな、偉かったな朔。十六夜も強くなったんだな・・・」 「う、うん、それでね、朝になって、ひく!ご飯、食べてから、えく!歩いたんだけど、あ、あたしコケちゃって・・・!」 「それで、お薬塗って、お休みしようって僕が、ふぇ!言って、休んでたら、っく!いつの間にか寝ちゃって、とと様に見つかって!」 「「うわあぁあ〜ん!!」」 「怖かったよう!ホントは、怖かったの〜!」 「僕も〜!怖かったよう〜!わああん!かか様ぁ〜!」 「かか様ぁ〜!」 泣き続ける子供達を、あやしながらも止める事はしなかった一護。 泣き疲れて、眠ってしまうまで泣かせた。 すん、すん、と鼻を鳴らしながらも一護の膝で眠る子供達。 「何してんだ、一護?隊舎中に響いてやがったぞ」 「ん・・・、俺がいない間、溜まってたモノ吐き出させようと思って・・・」 さらさらと、子供達の髪を撫でる一護。 「ふうーん・・・」 一護の横にしゃがみ込む剣八。 「な、なに?」 一護の後頭部を掴むと口付けする剣八。 「ん・・・、ふ、ぅあ・・・」 「夜にな・・・」 それだけ言うと離れた。残された一護は顔を赤くして、 「ばか・・・」 と一言だけ呟いた。 夜、子供達を寝かしつけて、剣八の横に座る一護。 「なに緊張してんだ、一護?」 「し、してないよ」 「昼間あんな事言ったからか?」 「知らない!」 くっくっと笑うと一護をやんわりと押し倒す。 「あ・・・?ん、ふあ、ん、ん、ふぅ・・・」 「ガキの分まで注いでやる、太っちまえ・・・」 口付けを解いて、一護の首筋に吸い付きながら囁いた。 「あん・・・、ばか・・・」 「あっ!あっ!いあっ!剣、八!もう!」 「イクのか?なら俺もイッテやる!」 「ひっ!んあぁあーー!」 きゅううぅと締め付ける一護の中に注ぎ込む剣八。 「ああ、お腹、あつぅい・・・」 琥珀色の目がとろけた蜂蜜の様に揺らめいて、煽られる剣八。 「くく、一護、俺ぁまだ足んねえなぁ・・・」 ズグッと奥を突くと甘い声で啼く一護。 「あぁん!剣八、もっとぉ・・・」 揺らめく腰を掴んで奥を気遣いながらも腰を打ちつけた。 「はぁん!善い!あっ!あっ!あんッ!あんッ!」 「一護、一護、耳と尻尾、出てんぞ?」 はむっと大きな耳を唇で食んでやると、きゅっと締まる。 「あんん・・・」 ぐいっと腕を引いて向き合う形で抱き締め合う。 「くうんっ!ふかぁい・・・!」 「今日はこれで終いだ・・・」 「あ!あ!んん!いい!剣八!ああっ!イクッ!イクッ!んあっ!あっあーー!」 「くう!」 白い首を限界まで反らせる一護を抱き締める剣八。 廊下から、トタタタタ、と足音が聞こえてきたと思ったら襖がスパーン!と開けられた。 「かか様ぁ、何してるのぉ・・・」 「とと様ぁ・・・?かか様と裸・・・?」 「ふあ・・・?あ・・・、あ!これは・・・」 「あん?今とと様とかか様は愛し合ってる所だ、ガキは寝てろ」 「ふぅん?何で裸なのぉ?」 「大人だからな・・・・」 「かか様、耳と尻尾キレイです・・・」 「あ、ありがと・・・」 動くに動けない一護。もじもじとしながら、耳を動かす。 「く!動くなよ、一護」 「だって・・・」 母の耳と尻尾を初めて見た子供達は興味津々だった。 そうっと手を伸ばし触れてくる。 「ひあっ!」 きゅっと締め付けられ呻く剣八。 「ぐ・・・」 「あ、明日、見せてあげるから!今日はもうお休みなさい、しなさい」 「ホント!じゃあおやすみなさい!」 「おやすみなさい!」 子供達が去ってホッとしたのも束の間、中で剣八が大きくなっていた。 「け、剣八?」 「あんだけ煽っといて唯で済むわけねえだろ?」 「そんな・・・!あん!」 ふるっ、ふるっ、と震える一護。 「心配すんなよ、これで終いだからよ・・・」 「あう・・・、ばかぁ・・・」 宣言通り終わり、一護を洗い清めて、二人で眠る。 翌日、弓親と話をしている子供達。 「あのね、かか様の耳とお尻尾すごくキレイなんだよ!」 「そうなのかい?僕はまだ見たこと無いなぁ」 「あれ?弓親はかか様の狐姿見たことあるんでしょ?」 「でも、人型でって言うのはないね」 「そうなんだ。後ね、とと様裸だった!」 「ぶっ!」 「かか様も裸だったよね、あいしあってたんだって!」 「そ、そう・・・。あのね、お外でそれ言っちゃ駄目だよ?」 「なんで?」 「大人には色々あるんだよ・・・、君達にもあるでしょ?」 「ん〜?うん!分かった!」 「わかった!」 「良かった・・・」 「今日、見せてもらうの、弓親も見せてもらう?」 「いや・・・、遠慮しとくよ(隊長が怖い)」 「ふーん、あっ、かか様!」 「かか様!」 「ここに居たのか」 「尻尾見せて!」 「耳も!」 「仕方ないなぁ」 ポンッと、耳と尻尾を出す一護。 「わあ〜、綺麗、綺麗!」 「ふわふわだ〜」 触られる度に固まる一護。 「弓親も触る?」 「えっ!」 流石に反応を返す一護。 その後ろに剣八が立っていた。 「何、してんだ?一護・・・?」 「あの、朔と十六夜が、耳と尻尾が見たいって・・・」 「ふうん、もう見ただろ。隠せ、見せもんじゃねえだろ」 「はい・・・」 「とと様、何で昨日かか様と裸で抱き合ってたの?」 「いざっ!」 「あん?子作りだ、子作り。お前らにゃまだ無理だから忘れろ」 「え〜、でもかか様すごくきれいだったのに〜」 「見せるもんじゃねえんだよ」 一護は真っ赤になって聞いていた。 「ん?」 「どうした、一護」 「にぃにが来た」 「ああ?」 「一護」 「にぃに、良く入って来れたね」 「まあな、それより、身体の調子は?どうなんだ?大丈夫なのか?」 「うん、大丈夫だよ、病気じゃないって!安心して?」 「そうか・・・」 ホッと息を吐く白。 「あ、そうだ、紹介するね、にぃに。俺の子供、こっちが朔で、こっちが十六夜」 「ふうん・・・」 「挨拶は?」 「こんにちは・・・?」 「こんにちは・・・」 「白だ、・・・宜しくな・・・」 じーっと見つめる四つの目。 「な、何だよ・・・」 「お尻尾と耳出せる?」 「あん?」 「さっき、かか様の耳と尻尾見せてもらってたの」 「ああ、出せるけどよ」 ポンッと出す。 「あっ!白い!」 「かか様と違う!」 「へえ〜!へえ〜!」 「色々だ、色々だ!いっちゃんは黒!僕は栗色!」 「かか様は金色!色々!色々!」 キャッキャッとはしゃぐ子供達に毒気を抜かれる白に剣八。 「ねえ、ねえ、白にぃはここで暮らさないの?」 十六夜が聞いた。 「俺は、狐だからな・・・」 「あら、かか様だって狐よ?おんなじじゃない」 「〜。俺にゃ番いの相手が居ねえからな」 「つがい?」 「旦那とか、嫁だ」 「じゃあ、早く見つければ良いのに、白にぃもここに居れば寂しくなんかないわ」 「別に寂しくねえよ」 「そうなの?あたし達は寂しかった。かか様が居なくなってすごく寂しかったわ、白にぃは?今寂しくなぁい?」 「大人、だから大丈夫だ・・・」 「とと様、眠れなくなるくらい寂しかったのに、白にぃ強いのね」 「ふん・・・、俺ぁもう帰るぜ」 「あ、うん。来てくれてありがとね、白にぃに」 「またね!白にぃ!」 「またね!えっと、白にぃ」 「おう・・・」 風の様に消えた白。 「おい、一護。妊娠の事言わないで良かったのか?」 「あっ!忘れてた!」 「まあ、いい、今度来たら言えよ」 「うん」 瀞霊廷を一人歩く白。ほどなくして声を掛けられた。 「あっれ〜?一護君そっくりだねぇ。誰?」 京楽春水。 「テメェこそ誰だよ。気安く話掛けんな」 「一護君のお兄ちゃんかな?もしかして」 「だったらなんだよ!」 「この後ヒマかい?一緒に飲まないかい」 「はあぁ?」 「嬉しそうだな?一護」 「ん、にぃにが来てくれたから・・・」 「そうか・・・」 くしゃくしゃと髪を掻き混ぜてくれた。 「今度、花見でもしようや。弁当持ってよ」 「おにぎりで?」 「お前が作ったんなら何でもいいさ」 「うん、頑張って作るね」 「おう」 月の満ち欠けの様に心は揺らぐけれど、ちゃんとそこにある存在に支えられる自分が居るから、いつか兄にもそんな存在が現れることを祈りながら一護は今の幸せを噛みしめる。 終 09/04/07作 京楽さん後の作品で絡んできます。お花見も書きます。 |
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