題「子狐の恋」9
 翌朝、一護は起きてからずっとそわそわしていた。
周りの者は微笑ましいその姿に笑みを零していた。
「浮竹さん、浮竹さん、今、何時?」
「さっきも聞いたじゃないか、まだ10時半だよ」
苦笑しながらも答えてやった。
「いつ?剣八いつ帰ってくるの」
「さあ?場所によるからね、ちょっと分からないなぁ」
「ふうん、早く帰って来ないかな」
縁側で寝っ転がってもすぐに起きては、きょろきょろしていた。
「少し落ち着きなさい、一護君」
「あ、ごめんなさい」
「ここでじっとしているより散歩でもしている方がいいんじゃないかい」
「うん、そうする」
ぽてぽて歩きながら一護は、花束の事を思い出した。
(そうだ、帰ってきたら、我が儘言ったからって渡せばいいや)
一護は十一番隊の剣八と寝起きしている部屋に行き、弓親がくれたがまぐち財布を取り出した。中を確かめる。
(これだけあれば良いかなぁ・・・)
それを懐に入れて、乱菊の所へ行った。
「あの、すいません、乱菊さん居ますか?」
「はい、ちょっと待ってて下さいね」
「はい」

「一護!なぁに?どうしたの?」
「乱菊さん、あのね、今お仕事してる?」
「まあ、してると言えばしてるけど、何?」
「あのね、お花・・・買いに行こうと思ったんだけど、どこに行けばいいか分かんなくて。それにどんなお花が良いのか聞こうと思ったの」
「ああ、花束ね。ちょっと待っててね一護」
「? うん」

「お待たせ、隊長に許可貰ったから一緒に行きましょ」
「いいの!良かったぁホントは心細かったの」
「可愛い!で?どれ位のにするの?」
一緒に歩きながら話す。
「えっとね、これでどれくらい買えるの?」
一護は、がまぐちを出して中を見せた。
「どうしたの?このお金」
「毎日弓親がお昼代にってくれたお金、余ったやつ貯めてたの。足りる?」
上目遣いに見つめてくる一護に母性本能がくすぐられる乱菊。
「足りるわよ、物すごく大きな花束が出来るくらいよ」
「ほんと!わぁ、嬉しいなぁ」
二人でニコニコ笑いながら歩いて、花屋に着いた。
「わあ・・・!綺麗!お花がいっぱいある!いい匂いだねぇ、乱菊さん」
「そうねえ、さっ、一緒に選びましょ、一護は何の花が好き?」
「俺ねぇ、俺ねぇ、この花がいい!」
一護が選んだのは、ピンクとオレンジ色のカーネーションとピンクのチューリップだった。
「あら、スプレーカーネーションなんて入ったのね」
「ええ、入荷したばっかりなんですよ、一番乗りだね、ボク」
「えへへ」
「それじゃあ、後はかすみ草も入れて、バラも入れましょ。華やかになるわ」
「うん、いい匂いね!あっ!これも綺麗、かわいい!」
ガーベラや、スイートピーを指差した。
「それも入れる?」
「うん!」
それらをラッピングしてもらう頃にはお昼になっていた。
「大きいねぇ。綺麗だねぇ、喜んでくれるかなぁ」
「大丈夫よ!こんなに可愛い子がこんなに綺麗な花束をくれるのよ!?喜ばないはずないじゃない」
「そうかなあ」
ひと抱えもある大きな花束を持って一護は少しはにかんだ。
「いつ帰ってくるかな?お花、萎れる前だといいな」
「そうねえ、冷たい水に付けとくのも良いけど」
喋りながら歩いていると、四番隊の方が騒がしかった。
「どうしたのかしら?怪我人でも出たのかしら?」
「ん・・・」
一護の鼻は血と剣八の匂いを嗅ぎ取った。
「剣八だ・・・!」
「え?一護、ちょっと待ちなさい!」
乱菊の制止も聞かず四番隊に飛び込んだ一護。

 消毒薬の匂いで分かりにくかったが剣八の匂いを懸命に辿り、剣八の居る病室を探し当てた。
「剣八!」
「きゃっ!一護君、どうしてここに?」
「ここに剣八いるでしょ?平気?」
「一護?何やってる・・・」
「剣、八・・・」
そこに居た剣八は包帯を巻かれ、血だらけの隊長羽織を肩から羽織った姿だった。
「あ・・・、あ・・・」
一護は手に抱えた花束を落とし、髪を掻きむしりながら悲鳴を上げた。
「ひぃやあぁあーーっ!!いやあぁああーーっ!」
髪はブチブチと抜けていた。一護の脳裏には、斬られた母の姿や、記憶の奥底の父の姿がフラッシュバックしていた。
「うぐっ!うう」
口を押さえ飛び出した。一護は水道を見つけるとそこで吐いた。
「げえっ!げえっ!うえぇっ!げほっ!なんでぇ・・・?なんでみんな居なくなるのぉ・・・?」
ぼろぼろ涙を零しながら泣いた。
「大丈夫ですか?一護君」
「卯ノ花、さん・・・」
「更木隊長なら大丈夫ですよ、かすり傷です」
「うそ、うそ、あんなに包帯巻いてたのに?」
「念の為です、さ、会いに行っても良いですよ」
「う、うん・・・」
震える身体を叱咤してもう一度剣八の病室に行った。
「け、剣八?」
「おう、いきなりなんだ?叫びやがって」
「う、ごめんなさい、怪我・・・、大丈夫なの?」
「かすり傷だ、気にすんな」
とててて、と近付いて間近で見てみると腹のあたりの包帯から血が滲んでいた。
「やだあ!剣八!剣八!お腹が!お腹が!死んじゃやだぁ!」
「落ち着け・・・」
「いやいやいや!怖い!怖い!怖い!」
「卯ノ花・・・」
後ろに居た卯ノ花隊長が鎮静剤で一護を眠らせた。
「あ・・・?い、や・・・」
「更木隊長、傷を治しますので包帯を取って下さい」
「珍しいな、鬼道を使うなんざ」
「一護君の為です、ああ、それとこれを。恐らくご入り用になると思いますので」
「何だそりゃ?」
「潤滑剤です、微量ですが痛み止めも入ってますので一護君の負担も軽くなるのでは?」
「うるせえ、大きなお世話だ」
言いながらも受け取った剣八。

 同じベッドに寝かされる一護。治療が終わり二人きりになると、一護の髪を梳いてやる剣八。
「う、んん・・・?」
「起きたか?一護」
「剣八!怪我は?平気なの?」
起き上がり聞いてくる。
「もう治った」
「良かった!剣八、やちるは?弓親は?一角は?みんなも平気?」
「ああ、全員ぴんぴんしてらぁ」
「良かったぁ、やっと帰れるんだね、十一番隊の隊舎に・・・」
すりすりと顔を擦り付けて、
「あぁ、剣八の匂いだ・・・、剣八、逢いたかった、逢いたかった!」
「一護・・・」
一護は、剣八の腹のうっすら残る傷跡に唇を寄せ、舐め始めた。
「剣八、もう怪我しないで・・・」
「やめろ・・・、勘違いすんぞ一護?俺が好きだってな」
一護の中で抑えていた感情が溢れて止まらなくなった。
「好き・・・、剣八が好き、俺は剣八が好きなの・・・、ごめんなさい」
はらはらと涙を流し想いを告げてしまった。ああ、もう一緒に居られない。
涙が落ちた。それをぺろぺろと舐め取るが後から後から溢れてくるので追い付かない。
「一護・・・」
剣八の手が優しく一護の顔を掬いあげると、触れるだけの口付けをした。
「剣八?ん、ん、あ」
「初めてか?」
「う、ん、なあにコレ?」
「口付けだ、気持ち悪いか?」
「ううん、気持ちいい・・・、もっとして」
ちゅ、ちゅ、と繰り返す。
「あ、ふ、ん、ん」
「一護、少し口開けろ」
「?こう?」
「ああ・・・」
その隙間から舌を滑り込ませた剣八。最初は優しく絡めては吸った。
「んん、ふぅ、んく、ぁふ」
自分から腕を絡ませ、身体を擦り寄せる一護。
くちゅっと音をさせ離れると互いの唇を銀糸が伝っていた。
「あ、ん、なんか変な感じがする・・・」
「続きは部屋に帰ってからだ、一護」
「え?あ、うん」
床に落とした花束は、看護師によって棚の上に置かれていた。それを持って一緒に帰る一護と剣八。

「先に風呂にでも入るか・・・」
「うん、久し振りだね」
一護が先に風呂場へ行っている内に弓親に人払いをさせる剣八。

「遅かったね、お腹の傷痛いの?」
「いいや、何でもねえ」
お互い、自分の身体を洗い清めた。ゆっくりと湯船に浸かる。
「もう上がるぞ、一護」
「うん」
手早く着替える剣八とのんびりしている一護。
「早くしろよ、ホレ」
ガシガシと髪を乾かしてやった。
「わっぷ、あ、ありがと」

 部屋に行くと蒲団が敷かれていた。
「?もう寝るの?」
「いや、お前を抱く」
「へ?」
「へ?じゃねえよ、お前言ったよな、俺が好きだって」
耳まで赤くなってしまった一護は、
「い、言ったけど?」
「どう云う意味で好きなんだ?少なくとも俺はお前とこうしたい意味で好きだが?」
「剣八も?俺が好き?」
「ああ、良くここまで我慢出来たって自分に驚いてるくらいだ」
「嬉しい、嬉しい!俺だけかと思ってた・・・!だから言わないでおこうって・・・」
その言葉だけでも十分だと思った。
「泣き過ぎだ、お前初めてだな?」
「うん、誰かを好きになったのも剣八が初めて・・・」
「そうか・・・、あのな一護、かなり痛いぞ?それでも・・・」
「いいよ、剣八に抱かれたい・・・」
「一護・・・!」
先程の口付けとは打って変わって貪る様な激しい口付けだった。
「んん!んあ!ふっうっ!んくん!」
混じり合った互いの唾液を飲み干した一護。はあ、はあ、と息も荒い。
「剣八、剣八・・・」
「一護、一護・・・」
白い首筋に顔を埋め、跡を付けていく。ちりりとした痛みに声を上げる一護。
「あぅっ、なにしてるの?剣八」
「お前が俺のモンだって“印”付けてんだよ・・・」
「あぁ・・・、たくさん付けて・・・」
「ああ・・・」
ちゅっちゅっと音を立てては跡を付けていく剣八。首筋を舐めて鎖骨を甘噛みした。
「ああっ!変な感じ・・・」
むずむずとした疼きが下肢に集まるのが分かる・・・。
剣八が胸の飾りを口に含んだ。
「あうんっ!」
舌で転がしては押しつぶした。もう片方は指で摘んでは捏ねた。
「やあぁん、だめぇ!お、おかしくなっちゃうよぅ」
「なっちまえよ・・・、一護」
カリッと歯を立てられた。
「ああぁん!だめ、お腹が、変なの・・・」
「あ?ああ・・・、これか」
そう言うと剣八は一護自身を掴んだ。
「ひっ!だめだよ!剣八」
「だめじゃねえ・・・」
有無を言わせずそれを口に含んでしまった。
「やぁぁ、だめ!汚いよ!出して!」
聞く耳持たず、口淫を施す剣八。一護は剣八の髪を鷲掴み震えながら、
「やああ、らめなのぉ・・・、剣八ぃ・・・、あっ!あっ!出る!出ちゃうの!」
強く吸い上げられ、堪らず吐精してしまった一護。一滴残さず飲んだ剣八。
「はぁっ!はぁっ!あ、ああう・・・」
ビクッビクッとしている。
「濃いな・・・、自分じゃやんねえのか?」
「な、にを?」
「こないだ教えただろ?」
「しないよ、腫れないもん・・・剣八居なかったし」
「お前・・・」
ある意味すごいことを告白している一護。
「後ろ向け」
「こう?」
素直に身体を反転させる一護、その腰を掴み持ち上げる剣八。
「暴れんなよ・・・」
「え?あ、なに!」
剣八が一護の蕾に舌を這わせていた。流石にもがき始める一護。
「暴れんな、ここ慣らさなきゃ意味ねえだろ」
「でも、汚い・・・」
「汚かねえよ、お前は全部が綺麗だ・・・」
「そ、んなことな・・・!」
ぴちゃぴちゃと音が聞こえて一護の羞恥心は煽られた。
「やあぁ・・・、も、だめ・・・」
ひくひくとヒクついてきた。一護の内腿は唾液と先走りでぐちゃぐちゃだった。
「もうちょっと我慢しろよ・・・」
「う、うん・・・ぁっ」
指が一本入ってきた。
「うう・・・」
ぎゅうぎゅうに締め付けてくる。
「痛いか・・・?」
首を横に振る一護。
「い、痛くないけど・・・、変・・・」
「もうちょっとだからよ・・・」
剣八は卯ノ花から貰った潤滑剤を手の平で温め、ソコへ塗りたくった。
「ひあ!なに?なに?ぬるぬるしてる!」
「増やすぞ、一護」
二本に増やされた指にも慣れ、指は三本に増やされていた。
「あ、あう、け、剣八・・・」
くちゃくちゃと音を立てるそこに剣八の指が入っていると思うと締め付けてしまった。
「っと、感度が良いな、じゃあココはどうだ?」
「ふえ?」
くりっと中にあるしこりを押した。
「ひゃぁっ!あ、あ、な、何?今の?」
「前立腺だ、ここがお前のイイ所だ・・・」
ヌチュッと指を抜くと剣八は、
「一護・・・、お前の中に這入るぞ・・・」
「うん・・・」
ひくひくとしているそこへ熱く滾った自分のモノを宛がった。
「あ、あつい・・・」
「いくぞ・・・」
ゆっくりと腰を押し進めた。充分に解していてもやはりきつかった。
「やあ!いっ!痛ぁいっ!痛いよ!剣八!」
「が、我慢しろ、ここが這入ったら、後は楽だ・・・」
「いやぁ、痛ぁい・・・」
「一護、息はしろ、少しは楽だ・・・」
「あ、はっ、はっ、はっ・・・」
ずずっと一番太い所が這入った。
「ああっ!」
「くっ!締め付けすぎだ、一護・・・!」
潤滑剤の助けも借りて後はスムーズに這入った。
「全部入ったぞ・・・、一、護・・・!」
次の瞬間、剣八の目に入ったものは、大きな耳と立派な尻尾の生えた一護の姿だった。
身体はがくがくと小刻みに震えていた。目の焦点も合ってないようだ・・・。
「ああ、ふっ、ふうう・・・」
こいつは?狐・・・か?
「剣八、剣八・・・」
面白ぇ・・・、あん時の子狐か?
「ああ・・・、剣八、奥が変、なの、むずむず、するよ・・・」
自分じゃ分かってねえみたいだな。可愛いモンだな。
「動くぞ?」
「うん、うん・・・」
揺れる腰を掴み直し、動きだした。
「ああ、あ、ああ、あ、ん、やあんん、出る、出ちゃう、また!」
一護は剣八を締め付けて達した。
「ああんっ!」
「一護・・・」
剣八はそのおおきな耳に舌を這わせ、吸いついた。
「やああん!ダメぇ!」
「今度は激しくいくぞ」
「え?あっ!ああんっ!」
剣八はぎりぎりまで抜くと奥深くを穿った。
「ひいぃんっ!やあぁっ!奥まで!奥まで剣八がいるよぅ!」
「気持ち良いか?」
「うん!うん!気持ちいい!ああっ!ああっ!いやっ!またっ!」
「一護、そういう時はイクって言うんだ・・・」
「ああっ!イ、イク!ああっあーー!」
「くう・・・!」
剣八も最奥に精を放った。
「やあぁ・・・あつぅい・・・」
どくっどくっと最後まで注いだ。
「一護?」
一護は気絶していた。
「くくっ、可愛いモンだな」
剣八はその獣の耳や尻尾を触った。
「あうんっ」
一護は気絶しているにも関わらず声を上げ、剣八を締め付けた。
「くっ、おっと・・・」
剣八は一護が獣である事に嫌悪感を感じないことに少し驚いていた。
「惚れちまったかね・・・」
一護が気絶している間にまた風呂に入れ清めたやった。
いつものように隣りで眠った。朝には耳も尻尾も無くなっていた。その晩から剣八は一護を抱いた。

 次の日の朝、一護は恥ずかしくて剣八の顔が見れなかった。
「起きろ、一護」
「あ、後で行くから!」
蒲団に潜って出てこない。はぁ、と息を吐き蒲団を剥ぎ取る剣八。
「わあ!」
「顔、見せろ」
「やだ、はずかしい・・・」
「何がだ?」
「だって、あ、あんなこと!」
「別に恥ずかしいこっちゃねえだろ?恋人なら誰でもやることだ」
「こ、ここ恋人?」
「?ああ」
「そ、それにお尻痛い・・・」
「早く言え・・・、今日は寝てろ」
「うん、ゴメンね」
「後でメシ持って来てやる」
「ありがとう、剣八」
文机の上の花束に気付いた一護。萎れてない。良かった。
「一護。入んぞ」
「うん」
「飯だ、俺もここで食う。なんだそりゃ?」
「花束、好きなヒトにって買ったの」
「ふうん・・・」
膳を置いていく。
「剣八・・・」
「あん?」
「はい、受け取って・・・、くれる?」
「一護・・・」
花束ごと抱き締めて口付けた。
「ん・・・」
「貰っとく・・・」
でけえ花束だなと呟いた。


第10話へ続く





09/02/06作 フラッシュバックと、祝!初エッチなお話。実はまだ続きます。



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