題「子狐の恋」10
 一護が剣八と想い想われる仲になって一週間が過ぎた。
あの晩から剣八は、一度たりとも遊郭に行っていない。一護を抱いて一緒に眠る。
一護はとても幸せだった。

 最初の頃はやはり痛みが先立つようで、いざ繋がると耳と尻尾が出ていたが最近では気絶する間際ぐらいだ。
やはり一護自身は気が付いていない。剣八はその姿も気に入っているので何とも思わない。

「あっ、あっ、んっ、剣八!ふあっ!あぁんっ!イクッ!イクッ!んあ、ああっあーー!」
「くっ・・・!」
二人同時に達した。
「はぁん・・・、剣八、好き、好き」
「お前なぁ・・・、そんな事言ってるとお前の身が持たねえぞ?」
くっくっくっと低く笑った。
「なんで・・・?」
「俺の歯止めが効かねえからだ・・・」
こめかみにキスしてやった。
「ん、気持ち良い・・・、俺ね、剣八の口付けも好きだよ」
まだ中に這入ったままのモノを動かした。
「ひっ!ああ・・・」
敏感になっている一護はそれだけで声を上げた。
「誘ってんのか?なら遠慮なく乗るぜ?」
「ん・・・、きて?」
組み敷いて、強弱をつけて奥を突いてやった。
「ああん!あん!剣八!あう!あう!ううん!」
「くっ!一護きついぞ、締めすぎだ」
「ああ!だって!ひくっ!ひっ!あぁんっ!ああっ、あっあっーー!」
剣八の背中に爪を立てる一護。
「くっ、こいつ!」
一拍遅れて中に出す剣八。
「ふあん・・・、お腹の中、あつい・・・」
そう呟くと意識を手放す一護。
「また爪立てやがって・・・」
気絶している一護見下ろして言った。最近剣八の身体は生傷だらけだ。一護が達する時やそれを耐える時に爪を立てられたり、噛まれているのだ。今日も歯型が肩にくっきり付いているし、恐らく背中は傷だらけだろう。
「朝にゃあ消えてるが、風呂の時染みんだよな・・・」
一護の髪を梳いて呟いた。
「ん・・・」
風呂に入れるか・・・。一護を風呂に入れ洗い清める。大概目覚めない。処理の時に起こしてやろうかと思うほど鼻に掛った声を出す一護。
今日も起きなかったのでそのまま蒲団に戻った。
剣八も眠くなってきたので寝た。

 一護は、剣八と恋仲になった事を乱菊には教えた。抱かれた次の日は動けなかったので、その次の日には言った。
それでも、前の晩に抱かれたので痛かったが・・・。
「乱菊さん、あのね、その、俺・・・」
「なあに、早く言いなさいよ一護・・・?」
「うん、俺、剣八とね、恋人になった・・・よ」
「・・・。本当なのそれ!」
「う、うん、一昨日にね、言っちゃったの、好きって・・・」
耳まで赤くなって俯いてしまった一護。
「血だらけの羽織と包帯巻かれた剣八見たら怖くなっちゃったの。それでね、俺だけだと思ってたら、剣八も俺のことが好きって言ったくれたの」
「おめでとう一護!良かったわね、で?デートはもうしたの?」
「デート?なぁにそれ」
「恋人が一緒に買い物行ったり、食事したりするのよ。二人きりでね」
「ふうん?でも食堂には行ったよ、それに夜になったらずっと二人きりだもん」
「一護、食堂はデートじゃないわ。て言うか全部すっ飛ばしていきなりソコに行ったのね・・・、流石更木隊長・・・」
「でね乱菊さんにはお礼が言いたかったの、色々聞いてくれてありがとうね」
「良いのよ、ちゃんと幸せになんなさいよ?」
「俺、今がすごく幸せ・・・」
にっこり笑った。

 そして一週間経った今日。一護は朝から身体が疼いていた。
「んん、何これ?おかしいよ・・・?今まで無かったのに・・・」
怖い・・・、どうしよう・・・、ここで俺の正体を知っているのは狛村隊長だけだ。相談してみよう・・・。

 七番隊。
「あの、すいません・・・、狛村隊長居ますか・・・?」
「居ますよ、少し待っててね」
「はい・・・」

「どうした?一護?」
「あ、狛村隊長!あのね、俺ね・・・」
「待て、ここではなんだ、隊首室へ行くぞ」
「あ、うん・・・」
一護の身体から剣八の匂いの濃さを嗅ぎ取った狛村は事情を察した。
「で、どうした?」
「うん、あのね、今日起きたらね、身体が変なの・・・、身体の奥がうずうずって言うかむずむずって言うか変なの・・・」
「そうか・・・、一護、あまり人のこういう事は聞かぬ方が良いのだが・・・お主、更木と気持ちを通わせたか?」
「あ・・・!あの、ごめんなさい・・・」
「いや、別に怒っている訳ではない。お主らが良ければ儂が何を言う事もない。それで質問だがな一護。それは発情期だ」
「はつじょうき・・・」
「うむ、番いとなる雌を求め子を生す時期の事だ。大人になったのだな。もうそんな季節か・・・」
「病気じゃ、ないんだね」
「うむ、だが他の者に発情期だとは言わぬ方が良いぞ。発情期は動物だけだ、ヒトは年中していると言うがな」
「うん、分かった」

 隊舎に戻ると剣八が、
「どこ行ってた・・・?一護?」
不機嫌そうに聞いてきた。ここ数日、一護が母の着物か死覇装以外、つまりは誰か他の男のお下がりを着ているだけでも機嫌が悪い。
「? 狛村隊長のトコ。聞きたい事あったから」
「ふうん・・・」
「どうかした?」
「あんま、仕事以外でよその男のトコに行くんじゃねえ」
「良く分かんないけど、分かった」
剣八が近くに来ると疼きが強くなった。
「あ・・・!」
「どうした?一護」
肩に触れるとビクンと震えて、
「やっ!は、あ・・・」
と声を出してしまった。剣八が驚いているが、一護も驚いている。
「なんだあ?どうした?一護」
「ん、なんか分かんないけど、剣八の匂い嗅いだらむずむずした・・・」
「・・・ふうん、お前それまだ捨てて無かったのか?」
「まだ着れるから・・・?」
「・・・今から新しいの買いに行くぞ」
「え?良いよ別に」
「俺が嫌なんだよ」
有無を言わさず、呉服屋に連れて行かれた。

「五着もありゃ当座はいいだろ?」
「そんなに?」
「どんなのにする?反物選べよ」
「え?ここに着物あるよ?」
「そんなんでいいのかよ?」
「綺麗だよ、これでいい・・・」
「ふーん、じゃあ選べ」
「うん」
戸惑いながらも五着選んだ一護。
「あらぁ!一護と更木隊長じゃないの」
買い物に来ていた乱菊が二人を見つけ声を掛けた。
一護の耳元で、
「デート?」
と聞いた。
「え!あ、そうなのかな?分かんない」
「なんだ?」
「いえいえ、一護の着物ですか?」
「ああ、いつまでも他の野郎のお下がりもな・・・」
「良かったわね、一護」
「うん、嬉しい!」
「じゃあ後は二人で甘味処でも行けばバッチリね」
「ら、乱菊さん」
赤くなって俯く一護に、ああ、と思い到った剣八。
「おら、行くぞ一護」
包まれた着物を剣八が持って顎をしゃくって促す。
「あ、うん。またね乱菊さん」
「バーイ」

「剣八、着物持つよ?」
「いい、そこの茶屋に入んぞ」
「へ?」
「甘いもん好きなんだろ?」
「うん、好きだけど・・・」
茶屋に入ってあんみつを食べて二人で過ごした。
「おいしい・・・」
「デートがしたきゃそう言えよ」
「えっ、あの、いいの?」
「ああ、今度の非番の日にどっか連れてってやる」
「楽しみだなぁ、でも今もデートみたいで嬉しい」
「そうか、あんこ付いてんぞ」
「ん・・・」
ぺろり、と舐められた。
「あ・・・」
「ん・・・?なんだ、一護」
「剣八、帰ろ・・・?」
熱っぽく潤んだ瞳で見つめてきた。
「・・・!ああ・・・」
勘定を済ませ隊舎に帰る。
帰り道手を繋いでくれた。どきどきと動悸が収まらなかった。大きな満月が地平線から昇っていた。

 二人で風呂に入った。一護が先に部屋に帰った。
蒲団の上で座って待つが、身体が奥の方から疼いて仕方なかった。
「待たせたな、一護・・・!」
「あう、剣八、お、遅いよ・・・」
ぷるぷる震えて見上げて来た。
「一護・・・!」
持っていた水差しを枕元に置くと深く口付けて押し倒した。
「ん、ぅふ、あ、んく」
ちゅっと離れると一護が、
「早くきて・・・?我慢できないの・・・!」
「どうした?一護、自分から誘うなんてよ?」
「あ、分かんない・・・、朝から身体疼いてたの・・・」
「ほう・・・、じゃあ満足させなきゃな・・・」
首筋に顔を埋め跡を付けつつ、舌を這わせた。
「ああ、ん、あうっ!」
鎖骨に跡が付くほど噛みついた。今の一護にはそれすら快感だった。
「剣八、剣八・・・」
首に腕を絡めて擦り付いた。
「一護・・・」
耳元で囁かれたと思ったら耳を舐めあげられた。
「ひっ、やぁ、ぁ、ん」
軽く歯を立て、耳穴に舌を差し込んで思う存分味わい尽くした。同時に胸の飾りを摘まんだ。
「ぁっ、あう!やあん!剣八ぃ、だめ、おかしくなる・・・」
ちゅっと耳から離れると、胸に顔を埋めた。
「なっちまえ・・・」
カリッと噛んでは舐めた。
「あうんっ!」
一護自身は既に硬くなって震えていた。剣八はそれを手に包むと上下に扱きあげた。
「あっ!あっ!やあっ!だめ!だめ!イクッ!」
一護が剣八の手に白濁を吐き出した。
「あ、あぁぅ・・・」
剣八はそれを一護の蕾に塗り付け、解した。
「ああ、ああ、剣八、も、もうきて・・・」
ヒクヒクと誘うそこに滾った自身を宛がい押し込んだ。
「ん、ああ!あー!」
「くっ、締め付け過ぎだ・・・、一護、緩めろ・・・」
「ああう、剣八ぃ・・・、熱いよ、中が・・・」
「お前の中は蕩けてるがな・・・」
「やあん・・・、び、びくびくしてる・・・」
「動くぞ・・・」
「うん、あ!ああっ!いい!剣八!好き!好き!もっときて・・・!」
「珍しいつーか、初めてだな?んな乱れるなんざ」
「う、疼くの・・・、ああっ!気持ちいい!剣八の気持ち良い!」
きゅううと締め付けてきた。
「あ、あ、ん、はむ、うう、うう、ん!」
また噛んできた。もうすぐか・・・。
「あっ!ああっ!んあっあーー!」
一護が先に達して、剣八も中に出した。
「くふん・・・、剣八ぃ・・・、もっと・・・」
「ああ、今度はお前が上になれ」
「どうやって・・・?」
「俺が仰向けに寝るから、その上で動けばいい」
言いながら体位を変える。繋がったまま騎乗位の体勢になる。
「んあぁっ!」
敏感な所を擦られて声が上がる。剣八の腹に手をついて息を整える。
「ほら、じぶんで動いてみろ?」
「うん、こう?」
少し腰を上げて沈める。
「ああん・・・!」
「そんなんで満足できんのかよ?」
下から腰を突きあげた。
「ひああんッ!あ、あ・・・」
「こんぐらいしてみろ・・・」
「う、んあぁ・・・」
一護はギリギリまで抜いて一気に沈めた。背中を電気が走ったように感じた。何度も繰り返し、
「だめぇ!もう!イクッ!イクゥ!」
自分と剣八の腹に白濁を撒き散らした一護が、その胸に倒れ込んできた。
「もう、だめぇ・・・、う、動けないよ」
「しょうがねえな・・・、もっと見たかったがな」
「ばかぁ・・・」
はふはふと荒い呼吸で言い返す一護。
「じゃあ・・・、やめるか?」
一護の背中のラインをなぞりつつ囁いた。
「やっ、やだ、もっと・・・」
「そうだな、お前のここは絡み付いてるからな・・・」
くいっと腰を動かした。
「あぁんっ」
プルプル震える一護に、
「やらしいな・・・」
と呟く剣八。
「あ・・・、俺やらしい?やらしい子は嫌い?なら我慢するよ・・・?」
自分の耳元で囁く一護を抱え向かい合って座る剣八。
「いいや、むしろ好きだぜ、ほら来いよ」
「んん、う、動けないの」
腰が抜けているようだ。剣八が一護の膝裏に手を入れて、
「俺が動いてやるよ・・・」
と言って一護を持ち上げた。抜けるギリギリまで持ち上げその体重だけで貫いた。
「あ、ああ、あっー!剣八!剣八!いい!あっ!気持ち良いよう!んああ!」
「ああ、そうかよ・・・!」
「うん!うん!ああっ!またイクッ!ダメ!イッ、イクッ!んあぁぁー!」
「くうっ!」
その最奥に熱の塊を放出した剣八。くたりと自分の肩に凭れている一護に、
「もう終わりか?」
「まだ・・・、欲しい・・・、疼く、から・・・」
目の端に尻尾が見えた。頭を見ると耳も出ていた。
「一護、後ろからやるから足つけ・・・」
「あ、うん・・・」
尻尾が出ていると座りが悪いのか、無意識に動かしているのを見たのだ。
身体を反転させ、腰を掴みずぶりと埋めていく。
「はあぁああんん・・・」
「はっ!ぐずぐずだな、お前のここ」
「やらぁ、ゆ、ゆわないでぇ・・・」
ヒクヒクとヒクついては絡み付いてきた。
「くくっ、なんだ?恥ずかしいか?一護」
こくこくと頷く一護。
一護の背中に覆いかぶさり尻尾を身体で挟んで、抜き差しを始めた。
「ひっ?やっ!やら!らめっ!らめぇっ!」
頭を振って、泣き叫んだ。
「なんだ?いつより啼くなぁ?そんなに尻尾は感じるか?」
「えっ!今、何て・・・?」
恐る恐る振り向く一護。
「ああん?尻尾が感じんのか?」
その手に尻尾を掴んで見せる。
「んあっ!いやっ!嘘だ!嘘だ!」
バレた、バレた、バレた!もう暮らせない!
「何がだよ、感じてんじゃねえか」
ずぐっと、奥を突いた。
「うああん!」
強く奥を突いてくる剣八に頭が回らない。考えなきゃいけないのに・・・。
「ああっ!ああっ!あぁんっ!ひあっ!」
剣八が一護の耳にじゅっと吸い付いた。
「ひぃんっ!やぁっ!ああっ!ひっ!ああっあっあっーー!」
カリ、と耳を噛んだ剣八はまた中に注ぎ込んだ。
「んあぁ・・・」
意識を飛ばす一護。

「・・・いつから気付いてたの・・・?」
「なんだ、起きたのか?風呂行くぞ」
「え?!」
抱きあげられ風呂に連れて行かれる。
「何するの・・・?」
「中の処理だよ・・・」
「中って・・・」
背中から抱き込まれ、中を掻きだされる一護。
「やっ!やだぁ!やめっ!」
「こら、暴れんな、いつもやってんだよ!」
「うそ・・・。んあ!」
「いつもそんな声出してんぜ」
「はっ、はあ!んん!」
「また立ってきたな」
「え?あ!」
隠すより早く剣八の手に捕まえられた。そのままイカされた。
「湯に入るぞ」
はあ、はあ、と息の荒い一護は何も言えなかった。

 部屋に帰ると一緒に眠る剣八に眠れない一護。
ばれてた・・・。そんな・・・、早く出て行かなきゃ・・・。ごめんなさい、ごめんなさい・・・。

 一護は隣りの部屋に行くと手紙を書いた。
生まれて初めての手紙・・・。
愛しい、愛しいあのヒトへ・・・。


第11話へ続く





09/02/08作 発情期で火照る身体を持て余す一護と楽しむ剣八。そして正体がバレてたと知った一護・・・。
どうなる?今後の展開。
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