題「子狐の恋」16
「ふわぁっ!ふわぁっ!」
「ほあぁっ!ほあぁっ!」
夜中に泣き声で起こされる一護。
「ああ・・・、おっぱいか・・・」
眠い目を擦りながらむくりと起きると、すぐ隣に人影があった。
「誰だっ!」
「静かにしろよ・・・」
「剣八・・・?なんでここに・・・」
「・・・、ガキの声が聞こえた」
くすっと笑って一護は、
「大丈夫だよ、おっぱいの時間だから」

 子供を抱き上げて、二人一度に乳をやる。
一心不乱に吸い付く子供。それをじっと見守る剣八。
ちゅっちゅっ、ちゅうちゅう。
「剣八、今何時?」
「あ?3時だ」
手帳に何やら書きこんでいる。
「次ゲップだな、はい、ゲップ」
とんとん。ケプっ!
剣八もやる。とんとん。けぷっ!
「あぅ〜、う〜う〜」
「むぅ〜、うう〜?」
子供達の髪を撫でる一護。
「何書いてたんだ?さっき」
十六夜を抱きながら訊いてくる剣八。
「ん?育児ノートだって、何時に飲んだとか、おむつ替えたとか書くんだって」
「面倒くせえな、そんなんしなくっても元気じゃねえか?」
「ん〜、でも病気になった時に何か分かるみたいだけど・・・」
「ふうん、一護こっち来い」
「ん・・・」
一護を抱きよせ、その胸に顔を埋める剣八。
「剣八?何かあったの?」
「いいや・・・」
その口元には、優しい笑みが乗っていた。
「剣八、少し余ってるけど飲むか?」
くいっと胸を持ちあげる。
「くく!俺にか?」
するり、と袷から手を入れて乳房を取り出した。
「相変わらず、白いな・・・」
ちゅ・・・と吸い付いた。
「ん・・・」
剣八の髪を梳きながら、乳をやっていると剣八の手が背中に回った。
「あ・・・?どうしたの?」
返事は無く、代わりにきゅっと力が加えられた。
「剣八・・・」
一護も剣八を抱いて子守唄を歌った。

―かわいい坊や、愛しい坊や、お日様の光はあったかい、お月さまの光はやさしい光・・・
かわいい坊や、愛しい坊や、星の光のその数よりも愛おしや・・・。―

「一護・・・」
「なぁに?」
「二度と、消えないでくれ・・・」
「うん、ごめんね・・・?」
暫く剣八の頭を抱いていた一護が、
「明日、もう今日だけど退院出来るって、待っててね」
と言った。
「ああ、もう帰る・・・このままだと襲っちまう」
「うん、おやすみ気を付けてね」
一護の額にちゅ、とキスをして帰っていった。
子供達を寝かしつけ、眠る一護。

「おはようございます、一護君」
「あ、おはようございます・・・、卯ノ花さん」
目をこすりながら、目を覚ます一護。身体を起こすと気付いた子供達が目を覚まし乳を欲しがった。
「ああ、今あげるから」
いくらか慣れた手つきで乳をやり始める一護。
「随分慣れましたね」
「はい、なんとか。でもまだおむつが分かんないです」
げっぷをさせ、ノートに書いてゆく。
「では今日はおむつの替え方を覚えましょうか?」
「はい!」

「こう、おむつを外して、あら、大きい方をしてますね。優しく拭きとってあげて下さい」
「こ、こうですか?」
「そうです、綺麗になったら、かぶれない様にベビーパウダーをはたいてくださいな」
ぱふぱふ、と子供のお尻にパウダーをはたく一護。
「良く出来ました。一護君は良いお母さんになれますね」
「え、えへへ嬉しいなぁ」
「さ、手を洗って朝ご飯にしましょう。その後はお風呂の入れ方です」
「はい!」
ベビーベッドに戻された子供達はわきゃわきゃと手足を動かして遊んでいた。
にこにこしながら眺めている卯ノ花と一護。
「失礼します、お食事をお持ちしました」
「どうぞ」
卯ノ花が立って扉を開けに行った。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ、さ、たくさん食べないとお乳が出ませんよ?」
「あ、いただきます」
ぱくぱく食べる一護は、ちゃんとおかわりもした。
「ご馳走様でした、美味しかった、お腹一杯!」
「良かったこと、後で更木隊長がいらっしゃいますから、その時にお風呂に入れましょうね」
「はい」
子供達の尻尾を触りながら頷く一護。

「一護、入るぞ」
「はい」
着流し姿の剣八がやちると一角、弓親を連れて来ていた。
「こいつ等がガキが見てぇって騒ぎやがるから連れてきた」
「だって、あたしちょっとしか見てないもん!」
「俺はまだです」
「僕もだよ、良く頑張ったね、一護君」
「ありがとう、みんな」
ベビーベッドに寝かされている子供達を覗き込む3人。
「おお、ちっちぇえな」
指先で触る一角。
「柔らかいねぇ、なんだか怖いよ」
と言いながら抱き上げている弓親。
「弓親が抱いてるのが、十六夜で女の子だよ」
「十六夜、美しい名前だね」
「ありがとう、名前は剣八が付けてくれたんだ」
「おい、一護こっちは?」
「そっちは朔で男の子だよ」
「ふーん、一護そっくりだな」
「うん、十六夜は剣八似なんだ」
少し誇らしげに言う一護の頭をガシガシ撫でる剣八。
「飯は食ったのか?」
「うん、食べたよ。この後子供達をお風呂に入れるの」
扉がノックされた。
「一護君、お風呂の準備が出来ましたよ、行きましょうか」
「はい」
ベッドの上の朔を抱き上げ、十六夜を剣八が抱いた。
「ありがとう」
「ん・・・」

 あとの3人も見たいと言うので付いてきた。
風呂場に、小さい盥が二つあった。
「さ、子供達の服を脱がして下さい」
「あ、はい」
服と言っても産着を巻いているだけに等しいのですぐに裸だ。
ふっさふっさと尻尾を横に振る姿に弓親が歓声をあげた。
「うるせえぞ」
「だって、可愛いんですもん!」
「風邪ひいちゃうよ」
一護が早くと促す。
盥のお湯は熱すぎない適温だった。
「さ、この晒しで優しく撫でてあげて下さい」
ぱちゃ、ぱちゃ、と撫でると気持ち良いのか、
「くふん」
と鼻を鳴らした。
「あら、更木隊長お上手ですね」
ふと見ると剣八が十六夜を丁寧に風呂に入れていた。なんだか嬉しくなってしまった一護。
「うれしい?いっちー」
「うん、すごく・・・」
大切な人の子を産んで、その子が愛されて慈しまれて、とても嬉しい。
「あたしも嬉しいな、いっちーが幸せそうで」
「ありがとう、やちる」
そんな話をしている内に風呂の時間は終わった。
タオルで身体を拭き、パウダーをはたき産着を着せる。
「一通りこなせましたね、あと、3〜4時間毎にお乳を欲しがりますからね、夜も泣きますから。頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
「ああ、更木隊長、こちらへ・・・」
「あん?」
一護達と離れ、二人で何か話している。
「どうしたのかな?」
「さあ?でもほんとに可愛いね、尻尾は小さいんだね」
「もう少ししたらもっと大きくなるよ、むくむくの尻尾になるの」
「いっちーもそんな尻尾だったねぇ」
「うん、でももう大人の尻尾だよ」
そんな話をしている時、卯ノ花と剣八は、
「今日で無事退院です、それで夜の営みなんですが・・・」
「なんでぇ、駄目なのか」
「いえ、恐らくそれも栄養源になるでしょうから推奨しますが、あまり激しくなさらないでくださいね?時間的に邪魔も入るでしょうが怒らない様に」
「邪魔だ?誰が邪魔すんだよ?」
「貴方の子供達です、3〜4時間毎にお乳を欲しがって泣きますから、その間に終わらせて下さいな」
「卯ノ花・・・、結構言うんだなお前・・・」
「ほほ、一護君と子供達のためですわ」
「で、霊力は濃い方が良いのか?」
「そうですね、その方がより一護君の産後の肥立ちには良いですね」
「ふうん・・・」
少し痩せた一護を見て頷いた。

 退院と言っても、何か荷物があるわけでもないので子供達を抱いて十一番隊隊舎に戻った一護。
「ねえ、俺の部屋、剣八と一緒でいいの?」
「あん?当たり前だろうが。何言ってんだ?」
「いやだって、夜泣きとかするし、朝早い日とかしんどくないか?」
「気にすんな、泣くのはガキの仕事だろうが・・・」
「それにみんなも起きちゃう、よ?」
「ああ、そうだな。じゃ結界でも張っとけばいいじゃねえか、音も声も漏れねえぞ」
「結界・・・。そうなの?でもどうやって?」
「あ〜、自分の霊力とか札とか色々あるからよ、気にすんな」
「うん・・・、帰ってきたね・・・、たった2日だったのにすごく長く離れてたみたいだ・・・」
そんな一護の横顔を見てるうちにムラムラしてきた剣八が抱き寄せると、
「え、なぁに?剣八」
「抱かせろ、一護・・・」
「ま、まだお昼だよ・・・」
頬を赤らめる一護に、
「構わねえよ、それにお前の産後の肥立ちにも良いんだってよ。乳吸わせる度に痩せてんじゃねえかよ」
「そ、だけど・・・」
次の瞬間火が付いたように泣きだす子供達。
「あぁああん!あぁあん!」
「あぁあん!あぁあん!」
「何だ!?」
「あ、お乳だ・・・」
いそいそと子供達の傍へ行く一護が胸の袷を開くと乳首を含ませた。
「んっ!んっ!んっく!んっく!んっちゅう!ちゅうちゅう」
「んっく!んっく!ちゅう、ちゅう、んっく!んくんく」
「・・・すげえ勢いだな・・・」
「うん、すごい力で吸ってるよ」
微笑みながら答える一護。
満足して口を離す子供達のげっぷを促す一護。
「次はおむつだな、あ〜、いっぱいしたなあ」
二人のおむつを替えて蒲団に寝かせる。
「手ぇ洗ってくるね」
「ああ・・・」
ぱたぱた走り去る一護を見送って子供の蒲団の隣りに横になり、指であやす剣八。
「んぷ〜」
と声を出して指を掴もうとする十六夜。朔はもうまどろんでいた。
「ただいま、剣八?」
子供の横で目を瞑っている剣八がいた。
「風邪ひくよ?」
「じゃあお前があっためてくれよ?」
一護を引きよせ、口付けた。
「ん、んふ、ぁ、んくん」
「子供が見てんな・・・」
「え!」
久し振りとも思える口付けの余韻に浸っていた一護が振り返るとそこには子供達の蒲団があった。
「あ、やだ、よ剣八・・・」
「隣の部屋にするか?」
胸の袷から手を入れ、胸を揉んでくる。
「あ、ん大丈夫、なの?」
「あのベビーベッドに寝かせときゃ大丈夫だ」
「は、ん分かった・・・」
そう言うと剣八が子供達を隣りの部屋に連れて行って何事か話していた。一護には聞こえなかったが、
「お前らのメシが済んだから、これからお前らのかか様のメシにする、いい子で邪魔すんじゃねえぞ」
「ぷう!」
「ぷぅ!」
「良し、いい子だ、寝ろ」
そう言って頭を優しく撫でるとすぐに眠ったいい子の双子。

「何してたの?」
「なぁに、寝かしつけてただけだ」
「ふうん、あん」
「それより、これからお前のメシだ・・・」

「あっ・・・あっ、あっ、やだ!そこばっか・・・ぁ」
「ここがお前のいいとこだって教えたろ?」
腰を突き入れると、
「ひゃああん!も、だめ、イク、イッチャう!ああっ!あっー!」
一護がイク時の締め付けで達した剣八が中に出した。
「んあぁん、熱いよぅ・・・」
「くく!足りねえか、一護?きゅうきゅう締め付けてくんぞ」
腰を揺らす剣八。
「やあぁん、も・・・っ」
「も?なんだ?もっとか」
「うん、もっとちょうだい?剣八の熱いの大好き・・・」
剣八の首筋を流れる汗を舐めとって強請る一護。
「くっくっ、いい子だな俺の女房はよ」
ずるりと引き抜くと、ズチュッ!と奥まで突いた。
「ああん!剣八ぃ!い、善い!善い!気持ち良いよぅ!ひっ!ひぃ!ああ!んっ!んんっ!」
また剣八の肩を噛んでいる。苦笑しながら、
「こら・・、また噛んでんぞ・・・」
律動は止めぬままに一護の歯を剥がした。
悩ましげに寄せられた眉も涙で揺れる目も全てが愛おしかった。
「!一護!一護!」
「ん、ふうん!んっ、んっ!」
口づけられながら一護は絶頂を迎えた。
「んんっ!んんっんーー!」
「く!」
最後まで注ぎ込む剣八。
「は、はあ、はあ、お、お腹、いっぱい・・・」
くたりと気を失った一護。
一護の中から引き抜くといつもと違う事に気付いた。中から溢れて来ないのだ。
「なんだぁ?」
指を入れてみても出てこない。これが言いたかったのか?卯ノ花は・・・。
今の一護は剣八の出した精を自分の霊力に変えて吸収しているようだ。
「なら、風呂だけでいいな」
あっさりと受け流し一護を風呂に連れて行く剣八。

 湯船に浸かっていると、心なしか乳房が張っているように思えた。
少し揉んでみるとすぐに乳が溢れてきた。
「うをっと・・・」
ぺろりと舐めると、
「んん・・・」
と鼻にかかった声を出して目を覚ます一護。
「あ・・・、剣八、何してるの?」
「お前の乳が溢れてきたから飲んでんだよ」
「え、あん・・・」
きゅうと吸えば甘い声を出す。
「時間か?」
「多分」
風呂からあがるとすぐ身体を拭いて、着替えた。髪はよく乾かせ、と言われたので乾かして部屋に戻ると、
気が付いたのか催促するように泣き始める子供達。
「ふうああん!まんま!まんま!」
「あぁあん!あぁん!まんま!まんまー!」

「え?今何か喋った?」
「ああ・・・、まんま、って言ったよな?」
「ああん!まんまー」
「まー!」
やっぱり聞き間違いじゃない。慌てて乳をやる一護。
「うっうっ、んっく!んっく!チュッチュッ!ちゅくちゅく!」
「んっんっ、んっく!んっく!ちゅうちゅう!ちゅっくちゅっく!」
「なんか、昨日とかさっきより出てる・・・」
「あんだけやりゃあな・・・」
満足して落ち着いた子供の背を叩いてげっぷをさせる二人。
とんとん!げぷっ!
とんとん!げぷっ!
「まぁー、あー?」
「あー、あー?」
両手で顔を触ろうとする双子を見て、
「偶然かなぁ、やっぱり」
「さあな」
「あー?かー」
「うう〜?とー」
「んん?」
「ええ?」
驚く二人が面白いのかキャッキャッと笑う子供達。
「卯ノ花さんに聞いてみる?」
「だな・・・」
生まれて二日半で片言は早すぎないか・・・?


第17話へ続く




09/02/20作  子供達のお世話を教わって退院して、お家で過ごした一護夫婦。
この子たちの成長は早いですよ。



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