題「記憶喪失」第3話 | |
食べ終わり、後片付けをしていると弓親に隊首室へと呼ばれた。 「何ですか?」 「うん、書類整理の仕方と席を教えておこうと思って」 「あ、はい」 一護の席は隊首席の一番近くで書類は、これでもかと言うくらい積み上がっていた。 「何でこんなに溜まってるんですか?」 「何でって言われてもねぇ。隊長こう言うの苦手だから・・・」 「得手不得手があるのは分かりますがこれはひどくないですか?」 雪の様に積もる埃を吹き飛ばしながら呟く。 「皆さんもこれじゃあ大変なんじゃあ?」 「まあね、主に一角と僕が片付けるんだけど追いつかなくて、だから一護君が入ってくれて助かるよ」 「そんな。助けになれるなら嬉しいですけど・・・、書類分けるぐらいしか出来ませんよ?」 「それでも時間短縮には助かるよ」 「そうですか、じゃあ早速始めましょう。教えて下さい」 「厳しくいくからね」 「臨むところですよ」 ああ、こう言うところは変わらないんだな。とその場にいた全員が思った。 一護は飲み込みが早く、午後には自分のリズムで書類を分けて行った。まずサインの有る無しで全部分けてから、日付順で分けて行った。 隊首会を終えた剣八が、やちるを背中に乗せ帰ってきた。 「お帰りなさい、隊長。一護君仕事早くて助かりますよ」 「そうかよ」 「お疲れ様です。更木隊長、・・・やちる、ちゃん」 「おう・・・」 「ただいま!いっちー!」 名前で呼ばれてご機嫌になったやちる。 「ねーねー、お腹空いたよ、いっちー何か作って?」 「何が良いですか?」 「いっちーが作ってくれた物ならなんでも良いよ!」 「あはは、じゃあオムライスでも作りましょうか?」 「おむらいす?なぁにそれ、現世の食べ物?」 「まあ、そうですね。隊長はどうされますか?」 「・・・俺はいい・・・」 「そうですか、じゃあ作って来ますから待ってて下さいね」 ふわりとやちるの頭を撫で、台所へ向かった。 「あれからどうだ?」 「変化は見られませんね。体調もいいみたいですし」 「そうか」 20分程で戻ってきた一護の両手には二つの皿が乗った盆があった。 「お待たせしました。ハイ、やちるちゃん」 「ありがと!わぁ!名前書いてくれたんだ!」 卵で巻かれたオムライスにケチャップで「やちる」と書かれていた。一護の分には「いちご」と書かれていた。 「喜んでもらえて嬉しいです。一緒に食べましょう」 「うん!やったぁ!えへへ〜、良いでしょ〜?剣ちゃん」 「さっさと食っちまえ、まだ仕事残ってんだろうが」 「あ、はい。すいません」 「ぶー、剣ちゃんの意地悪」 「冷めないうちに食べましょう、やちるちゃん」 「うん!・・・美味しい!いっちーこれすごく美味しいよ!」 「ありがとう、良かった」 自分も食べていると、剣八がのそっと近付いてきて、一護のスプーンに乗った一口分のオムライスを横から食べた。 「あ・・・の・・・」 「ふん、甘ぇ・・・」 一言言うと出て行った。ぽかんとする一護。 「なんだ剣ちゃんも食べたかったんじゃん」 「そ・うなんですか?作った方が良かったですね」 「いいよ、要らないって言ったの剣ちゃんだもん。明日もいっちーのご飯食べたいな」 「じゃあ、明日は隊長の分も作りますね。チャーハンとかでも良いのかな?」 「良いよ!やったぁ!嬉しいな」 「やちるちゃん、ほっぺにお弁当付いてるよ」 ついっと取って自分の口に運ぶ。 「ありがと!美味しかったー!ご馳走様でした」 「はい、お粗末様でした。じゃあ片付けて仕事の続きしますね」 「無理しないでね?いっちー」 「ダイジョウブですよ」 片付けて残りの仕事に取り掛かる。 午後3時、やっと半分片付いた。剣八もなんやかんやで仕事をしていた。 「御苦労さま。休憩にしようか?」 「あ、はい」 一護はぐぅーっと伸びをして、部屋から出て行った。戻ってきた一護は四人分のお茶とお菓子を持って来ていた。 「わあ、ありがと嬉しいな」 「おお、気が利くな、あんがとよ」 「どうぞ、更木隊長」 隊首席に湯呑みとお菓子を置いた。 「おう」 一護は自分の席に戻ると、整理し終わった書類を片付けた。 「あの、コレ後はサイン貰うだけの分です。よろしくお願いします」 「多いな、めんどくせえ」 「だからって後回しにするとこんな部屋になるんですよ、きりきり判子押して下さい。討伐の仕事減らされますよ?」 「ちっ!そこに来たか」 「ありがとう一護君。今日はもう上がっていいよ」 「あ、はいじゃあこの書類を一番隊に持って行って終りにします」 「御苦労さま」 「いえ、お疲れ様です」 そう言って一番隊に向かう一護。書類を提出し終えて、帰ってくると眠かったので日当たりのいい縁側で昼寝をした。 すう、すう、と寝ていると、やちるが傍にやって来て一護の顔を覗き込んでいた。 「ん・・・?やちる・・・?一緒に寝るか?」 「!うん!」 一護の腕を枕に一緒に寝るやちる。 「いっちー、思い出したの?」 その問いかけに答えは帰って来なかった。 「何だぁ?」 剣八が二人を見つけた。気持ち良さそうに眠る二人。一護の髪を梳いた。薄っすらと目が開いた。 「お・・・」 「剣、ぱち?ごめんな・・・、邪魔して・・・、邪魔者は、消えるから・・・、安心・・、して・・・」 「一護?」 笑ってそんな事を言った。 何言ってんだ?邪魔者?何の事だ?て言うか今名前呼んだよな?思い出したのか? 「起きろ!一護!」 ビクッとして目を覚ます一護。暫くぼーっとしていたが目の前の男に気付くと、 「あっ!更木隊長!すいません、何か御用ですか?」 と言った。 「おい、お前・・・」 「いっちー、思い出したんじゃないの?あたしの事、名前で呼んでくれたよ?」 「え・・・?すいません、覚えてないです・・・」 申し訳なさそうな顔をして謝った。 「夢を見てたのは覚えてるんですが・・・」 「どんな夢なの?」 「あの、なんか景色が赤くて、誰かが俺の名前呼んでるんです。その声にすごく安心して目を開けるんですけど、霞みがかって何も見えないんです。最近この夢ばかり見てるんです。手を伸ばすのに届かない所で終わって・・・」 自分の手の平を見る。 「誰なんでしょうね、あの人」 それはあの日の、討伐の日の夢。 「一護・・・」 「はい?何ですか?」 「いや、何でもねえ・・・」 「そうですか・・・。?」 夕飯も済み、後は風呂だけだ。 「あの、弓親さんお願いがあるんですけど・・・、良いですか?」 「何だい?改まって」 「お風呂なんですけど、俺が一番最後に入って終わりにしたいんですけど・・・」 「どうして?一緒に入ればいいじゃない」 「いえあの、風呂場洗うのに、丁度良いんですよ、お願いできますか?」 「そんな気を使わなくても・・・」 「お願いします・・・!」 なんだか必死になって頼んでくる。 「ふぅ・・・、分かったよ。皆にはそう言っておくから」 「ありがとうございます」 理由はあるが言える訳が無かった。四番隊に居る時から自覚していた身体の疼き・・・。熱を吐き出したくて仕方ないのに、内側から疼いてどうしようもなかった。 「ん、あ、はあ、くっ、んんっ!あ・・・、はあ、はあ・・・」 一番最後の風呂に入っている一護は、声を殺して自慰をしていた。毎晩のように持て余している熱を吐き出すために。 快感なんか感じなかった。ただただ苦痛だった・・・。 「くそっ!気持ちワリィ、何なんだよ・・・、これ・・・」 身体を洗って湯に浸かる。自分だって思春期なんだから当たり前だと思いたかったが、余りにも体が、奥が疼くので怖かった。 風呂から上がって廊下を歩いていると、弓親とすれ違った。 「やあ、一護君」 「あ、弓親さん、もう風呂場洗っちゃいましたけど良かったですか?」 「うん、助かるよ。それでね、お願いがあるんだけど、明日から隊長を起こすの一護君に頼んでも良いかな?」 「え?別に構いませんけど・・・」 「ああ良かった、じゃあお願いね」 「はい」 自分の部屋に帰った一護は明日に備えて早々に眠った。 朝5時に起きるのが丁度良いと、分かったので5時に起きて掃除を済まして、朝ご飯の用意を済まして剣八を起こしに、部屋に向かった。 「隊長、おはようございます。入りますよ?」 案の定、起きている様子はなく蒲団にくるまっていた。 「隊長!起きて下さいってば!昨日みたいに遅くなっても知りませんよ!」 揺さぶりながら、耳元で大声で言った。 「うるせえな・・・、起きりゃいいんだろ・・・」 むくりと起き上がる。昼間と違い下ろされている髪に思わず一護が手を伸ばす。 「なんだ・・・」 「あ、いえ、昨日も思ったんですが、髪を下ろしてる隊長ってかっこいいなって思って」 サラサラと指から滑り落ちて行く髪の毛・・・。 「一護・・・」 その声にハッとした一護が、 「すいません!変な事言って!あの朝ご飯出来てますから!」 慌てて部屋から出ていった。残された剣八は触られた髪を握った。 「馬鹿野郎が・・・」 煽りやがって・・・。でも今の一護に手を出すわけにはいかない。 「くそっ・・・」 着替えて、髪をセットして食堂に行くと、やはり一護しか居なかった。 「隊長・・・、もしかして髪をセットするのに時間掛ってるんですか?」 「悪いかよ」 「いえ別に・・・、さっ、冷めない内に食べて下さい」 豆腐とわかめの味噌汁に、鯵の開き。 「昨日俺が言った通りの具だな・・・」 「はい、お口に合えば良いんですが・・・」 「合うだろ?昨日美味いって言っただろ」 「・・・そうでした」 はにかんだ笑みを浮かべる一護。 食べ終えて稽古をつけるべく道場に行った剣八。一護は片付けをして書類の仕事をする。 「何だぁ?えらく片付いてねえか?」 「あ、隊長。そうなんですよ、床もすごくきれいなんですよ、木刀も」 嬉しそうな弓親。 「爽やかで、稽古にも身が入るって言うか」 「そうだな」 一方、一護は書類の中に回覧板があったので中身を見ると、かなり前の物だった。 「あちゃあ・・・、あ、これも隊長のサインが要るんだ・・・」 しょうがないと道場に行く一護。 「すいません、更木隊長。これにサイン下さい」 「あん?なんだ回覧板か」 中も見ずにさらさらとサインする剣八に、 「良いんですか?内容確認しなくて?」 「良いんだよ、どうせ下らねえ内容だろう?勝手に出しとけ」 「はあ・・・」 一護が内容を読むと備品発注の締切だった。ぎりぎり今日だ。 「弓親さん!すいません来て下さい!」 「何だい?一護君」 「これ、備品発注書なんですけど、何か発注する物ってあるんじゃないですか?」 「あ〜、そうだね、じゃあ執務室で調べよう」 「すいません稽古中に・・・」 「良いよ、これも大事な事だからね」 執務室に戻って要る物を書き込んでいった。 「あの、ここって救急箱ってあるんですか?」 「ん?そういや無かったかな、どうして?」 「いえ、隊士の皆さんのちょっとした怪我とかなら自分たちで処置した方が早いんじゃないかなと思ったんで」 「ああ、そうだね、喧嘩もしなくて済むものね」 救急箱中身入りを追加した。 「これぐらいだね」 「そうですね、じゃあこれ一番隊に持って行きますね」 「うん、お願いね」 「はい」 そうして弓親は道場に戻った。 一護は、後に木刀も追加しておいた。昨日今日と見て分かったがかなり傷んでいた。いつ折れるか分からない、それが原因で怪我なんかしたくはないだろうから。 一番隊。 「すいません、十一番隊ですけど、発注書の回覧板持ってきました」 「あっ、はい承ります」 中身を確かめる受付の人。 「ん?救急箱と木刀?」 「あ、それ、ちょっとした怪我ならわざわざ四番隊の人に迷惑掛けないようにって思って。後、木刀は傷んでる物が多くあったんで・・・、お願いできますか?」 「はい、結構ですよ」 「良かった、稽古中に怪我なんて嫌だろうし皆」 お願いしますと頭を下げて帰る一護。 帰る道すがら、ふと目にした楓に釘付けになった。 「あ・・・、なんか夢に・・・、似たような物が・・・」 赤色ととがった形。思わず手を伸ばす。一枚の葉をちぎって持って帰る。 縁側に座ってソレを眺める。陽に翳したりしていると稽古を終えた剣八とやちるが通りかかった。 「何してんの?いっちー」 「あ、やちるちゃん、うんコレなんか夢に似たようなのが出てきたなと思って・・・」 「・・・ふうん、なんか剣ちゃんの髪型に似てるね!」 「え?あ、ほんとですね」 ふふっと笑った。 「ねえ!お腹空いたよ、いっちー。お昼ご飯作って!」 「あ、はいはい、今すぐ、隊長も待ってて下さいね」 ぱたぱたと台所に向かった。 「余計な事言うんじゃねえ・・・」 「だって、夢に見てるのって剣ちゃんのことでしょ?」 20分程経って一護が執務室に現れた。 「お待たせしました。はい、やちるちゃんの分には旗付けといたよ」 「わぁっ!かわいい、うれしいな!ありがといっちー」 「どういたしまして、隊長、どうぞ」 「・・・おう」 それぞれにチャーハンと朝の味噌汁と水を渡した。 「いっちー、一緒に食べよ」 「はい、良いですよ」 食べていると、ぽろぽろと零しているのに気付いた一護が、 「やちるちゃん、零してるよ」 袴の上に零れた飯粒を取ってやり、手拭いを広げてやった。 「えへへ、ごめんね、ありがと」 「いいよ、おいしい?」 「うん!すっごく!ねっ、剣ちゃん?」 「ん?ああ」 「良かったです」 「明日は俺が奢ってやるよ」 「えっ!そんな良いですよ!」 慌てて首を振る一護。 「良いから言う事聞け。奢られろ」 「はい」 午後の仕事は、ほとんど剣八に判子を貰う書類ばかりだった。 「かったりぃ・・・」 「駄目ですよ?さぼっちゃあ。あぁそうだ、さっき一番隊で聞いたんですけど、明日は討伐だそうですよ。コレ片付けたら、討伐に集中できるじゃないですか」 にっこり笑って言う一護に、 「ちっ、しょうがねぇな」 ぽんぽん判子を押していく剣八。 「ああ、俺ぁ今日の晩遅くなるぜ」 「え、お仕事ですか?お風呂とかどうしますか?」 「いらねえ、お前らは先に寝てろ。ただの野暮用だ」 「そうですか。でも朝は早いのでお気をつけて下さいね」 何も分かって無い一護がそう言った。その場にいた全員が気付いていた、ああ、遊郭だなと。 その晩も最後の風呂に入っていた一護。その風呂場の外を通り掛った遊郭帰りの剣八。 「ん・・・、ふぅ・・・、く・・・」 くぐもった声が聞こえたので、なんだ?と思い中を覗いた。 そこには苦しそうな顔で己を慰めている一護の姿があった。 「うっ・・・くっ、あっ!はっ!はー、はー・・・、痛ぇ・・・」 泣きそう顔で身体を流し、洗ってから湯に浸かりに行く一護。見つからない内にそこから離れた剣八。 くそっ、あんなもん見ちまったら遊郭に行った意味ねぇじゃねえか・・・。 「寝れねえ・・・」 一晩悶々と過ごした剣八。朝5時過ぎに一護が起きて活動を始めた。 それに気付いた剣八が声を掛けようとしたがすぐに道場に入っていったので出来なかった。 すぐ出てきて神棚の榊の水を替えては、桶に水を入れ道場に戻った一護。まさか・・・。剣八が道場を覗くと床を磨く一護が目に入った。その後に木刀を磨いて、何やら選別していた。紐で選別した木刀を縛ると、神棚に柏手を打ち、 「本日、討伐に向かう皆さんが無事で帰って来てくれますように・・・」 と祈っていた。さて帰るかと、出口に顔を向けるとそこに剣八が立っていた。 「わあ!びっくりした、いつから居たんですか?」 「それより、お前毎日こんな事やってたのか?」 「あ、はい。お世話になるんだし、これくらいはと思って」 「・・・そうかよ」 「あ、朝ごはん今から作るんで、もう少し待って下さいね」 今日はシジミの味噌汁ですよと笑って言った。 「待て、それ持ってやる」 木刀を指差した。 「え、ダイジョウブですよ」 「いいから、寄こせ」 「はい」 「なんで木刀なんか選ってた?」 「結構傷んでるんで。ヒビとかすごいでしょ?今度新しいのが入るんで混ざらない様にと思って」 これってお風呂の炊き付けとかに使えますかね?と聞いてた。 剣八は昨日の事を思い出した。 「さあな」 と答えて裏に持っていった。 「隊長、折角早く起きたんだし髪のセットやっちゃった方がいいんじゃないですか?」 「そうだな・・・」 台所から良い匂いがしてきた。今日はさんまの開きのようだ。 あの人数分を用意するのは大変だろうと思っていると弓親が起きてきて手伝っていた。 「お邪魔でしたか?隊長?」 「うるせえ・・・」 弓親は剣八が遊郭に行った次の日は機嫌が悪い。 いくら一護に頻繁に逢えないからとは言え、裏切ってると感じるそうだ。 珍しく食堂に居る剣八のおかげで静かな食事になった。 討伐は精鋭を選んで10人で向かった。一角、弓親も入っている。一護は隊舎の外まで見送りに来て、 「いってらっしゃいませ」 と頭を下げた。 「いってきまーす!いっちー、今日も美味しいご飯ありがとー」 ぶんぶん手を振るやちるに振り返す一護。剣八が、 「昼までに済ます」 と言った。何だかひどく安心した一護はにっこり笑って返事を返した。 「はい、ご武運を」 皆が見えなくなるまで見送って隊舎に戻った。お昼までに書類を分けておこう。確か今日は備品が届く日だ。 黙々と片していると、呼ばれたので行ってみると備品が届いていた。 「書類と確認してサイン下さい」 と言われた。声に出して確認していった。救急箱の中身も確かめる。新しい木刀もあった。 「ハイ、全部ありました。御苦労さまです」 「いえ、それでは」 執務室に運び込むと、木刀を道場に運んだ。神棚の下に置いておいた。 後は弓親と手分けしなければ分からない物もあったので、午後に回した。 正午近くになってがやがやと、討伐に出ていた剣八達が帰ってきた。本当にお昼までに済ませたんだ・・・。 お風呂用意しといて良かったと思いながら出迎えた。 「お帰りなさい!」 全員無事のようだ。疲れたと口々に言っているが楽しそうだった。 「お風呂の用意出来てますから、どうぞ」 「気が利くな・・・」 剣八が血に塗れた顔で笑った。その顔を見た一護が一瞬固まった。 「一護?」 震えながら手を伸ばし、剣八の唇に指を這わした。 「あかい・・・」 そう呟いた。 「おい、一護何か思い出したのか?」 ハッとして、血の付いた自分の指を見て、それを舐めた。 「誰の血?」 「俺のじゃねえ、虚だろ。吐き出せ!」 一護の口に指を突っ込んで、吐き出させ袖で拭った。 「んん・・・」 ぴくんと身体を揺らす一護。 「隊長、お風呂どうぞ?」 「ああ・・・、お前も一緒に入るか?」 ひどく魅力的に聞こえた。 「いいえ、まだやる事がありますから・・・」 そう言って執務室に消えた。 「一護君、お風呂ありがとう。気持ち良かったよ」 「良かった、あ、今日備品が届きましたんで。書類にサインしときました。で後はここにある物をどこに置くかなんですけど」 「ああ、僕がやっておくよ。今日は隊長とお昼でしょ?」 「そうなんですよ」 嬉しそうに答えた。そこに、 「おう、待たせたな一護。行くぞ」 と私服姿の剣八が迎えに来た。 第4話に続く 08/12/28作 見られちゃいました、一人H。気付いてませんけど。浮気相手の女が出ますよ。 |
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