題「子供の記憶」 |
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一護は今、一番隊の隊舎に居る。周りには各隊長が並び、一護は、総隊長の前で椅子に座って周りを見回して足をブラブラさせていた。 「さて、皆呼ばれた理由と此処に居る者の態度の違いの理由が知りたいじゃろうから報告を始める」 と総隊長が言うと横の副隊長が書類を読み上げた。 その内容は、昨日の事、道端で倒れていた一護を四番隊総合詰所に運び、目を覚ますと子供の様に話し我々の事を覚えて無く、その内泣き始めた。自分の事を聞かれると名前と年を答えたという内容だった。 「ふむ、ではもう一度聞こうかのぅ、こりゃ童、おぬしの名前と年を教えてくれんか?」 「はい!くろさき いちご!9さいです!」 元気良く答えた。 「おじいちゃんは?」 「儂か?儂は山本元柳斎重國じゃ」 「やまもとげんりゅー?」 首を傾げる。 「良い良い、おじいちゃんと呼ぶが良い」 「うん!」 「それでのう、昨日の事が訊きたいんじゃが、一護何か分かるかの?」 「え〜とね、え〜と昨日は変な顔したおじちゃんとすごく綺麗なお姉ちゃんが、お菓子くれたの。それ食べたらすごく眠くなって、起きたら病院だった」 そのセリフにそこに居た全員がマユリを見た。 「フン、何だネ文句でもあるのかネ?」 「文句ってアンタ・・・、これどうするの?」 京楽隊長が一護を指差した。一護は見た目は変わらず16歳だが記憶が9歳まで退行しているのだ。 これでは戦う事も出来ないだろう。 「フン、そんなもの時間が経てば元に戻るヨ。まぁ、何日掛かるか分からんガネ」 「ほう、まぁ心配は要らん様じゃな。度々こういう事が重ならない様、気を付けよ」 マユリに向って無言の圧力をかける。 「ねえ!おじいちゃん俺いつ帰れるの?お母さん待ってると思うから早く帰りたいな」 あどけなく聞いてきた。その質問に卯ノ花隊長が、 「一護君は今、ご病気ですから、治ったら帰れますよ」 と優しく宥めた。 「でも、烈お姉ちゃん俺元気だよ?どこも痛くないし、しんどくないよ?」 「それでも、です。我慢して下さいね?」 一護は沈んだ顔で頷いた。 「それにお母様には、連絡しましたよ。治ったら迎えに行くと仰っていましたから、頑張って治しましょうね」 「本当に?じゃあ我慢する!」 昨日から、一護は卯ノ花隊長を、烈お姉ちゃんと呼んでいる。一番多く接しているのと、何処となく母に似ているからか良く懐いている。それでも母親に逢えない事と、知らない(覚えてない)人だらけで、目に涙が溢れて来た。隣にいた砕蜂が、 「泣くな!男だろうが!」 と叱咤した。一護は、目に溢れた涙を乱暴に拭うと、 「泣いてない!俺は男の子で、お兄ちゃんだから泣いてないもん!」 と言い返した。 「俺は強くなって、母ちゃんと妹達を護るんだ!だから泣いてない!」 なおも言い募る一護を卯ノ花隊長が、 「女の子にそんな乱暴な話し方をしたら、お母様は喜びませんよ、一護君」 と窘めた。一護が卯ノ花隊長の方を見て、 「・・・母ちゃん、怒る?悲しい?おれ・・・それやだ」 しばらく黙ってから、砕蜂の方に向くと、 「ごめんなさい!」 勢い良く頭を下げて謝った。 「む・・、いや私も大人げなかった」 砕蜂も、一護を見て言った。 「一護君には妹さんがいるのですか?」 卯ノ花隊長が尋ねた。 「うん!二人いるの!双子でね、いっぺんにうちに来たの。まだ小ちゃいからお兄ちゃんの俺が護るんだ、母ちゃんも護る! 俺の名前は何か一つのものを護れるようにって意味だから!空手も習ってるよ!」 胸を張って答えた。 「そうですか、良い名前ですね。では一護君、詰所に帰って少し検査をしてお休みしましょうか」 「・・・注射するの?」 「あら、一護君は注射が怖いですか?」 「こ、怖くないもん、家も病院だから大丈夫、だよ」 「では、行きましょう」 卯ノ花隊長が一護を促し、先に立って待っていた。 「うん、じゃあね、おじいちゃん!」 そう言って卯ノ花隊長の後を追う。 「ねえ、烈お姉ちゃん手、繋いでもいい?」 「えぇ、いいですよ」 「えへへ、烈お姉ちゃん、母ちゃんみたいだ」 笑いながら言った。 隊舎の外に出て、道を歩いていると皆が見ているようで、 「ねぇ、烈お姉ちゃん俺なんか変?みんな見てる気がする」 「そんな事ありませんよ」 「じゃあ俺が道の外側歩く!烈お姉ちゃんも俺が護る!」 「まぁ、頼もしい」 ニコニコ笑いながら言った。 四番隊に着くと検査が始まった。血圧を測り、採血した。一護は涙目になって頑張った。 「目立った変化はないですね、今日はもうお終いです。遊んで来て良いですよ」 卯ノ花隊長に言われ、一護はどこで遊べば良いか分からないまま、隊舎の外をぼんやり歩いていた。 その頃、一番隊隊舎では、一護の様子の違いで騒いでいた。 「一護君て、あんなに笑ったり、泣いたりしたんだねぇ」 「いつも眉間に皺寄せて仏頂面なのに」 「子供だからだろう」 そこに小さなノックと共に一護が顔を覗かせた。 「どうした?一護」 「うん、あのね烈お姉ちゃんが遊んで来てもいいって言うから。でもどこ行って良いか分かんないから、おじいちゃんとこ来たの。入ってもいい?」 「おぉ良いとも、そうじゃ此処に居るものを全員紹介しとこうかの」 そう言い全員に自己紹介させた。一護は、狛村隊長に好奇心を刺激され、質問攻めにした。 「何で被り物着てるの?」 「本物なの?いぬ?オオカミ!カッコいい!」 「触ってもいい?」 狛村隊長は困った顔で頷いた。 「わぁ!ふかふかだ!ふわふわ〜」 耳の後ろを掻くようにすると気持ち良さげに目を細めたが、我に返って頭を振って逃れた。 「え〜、もうお終い?もっと遊ぼ!」 隣りで剣八がピリピリしていた。 「おい、じいさん!俺ぁ帰るぞ!ったく下らねえ!」 そう言うと隊舎を後にした。 それから一護のお気に入りは狛村隊長になった。隊舎裏で飼っている犬の五郎とも仲良くなった。 「狛ムー、あそぼ〜!」 元気に呼ぶと、副隊長の射場鉄左衛門が出て、 「悪いのぅ一護、今日は隊長仕事じゃけぇ。遊べんわ」 と言われてしまい、遊ぶ相手が居なくなった落胆を隠さず、それでも大人しく、 「それじゃあ、お仕事頑張ってね」 と言って隊舎を後にした。 じゃあ何処に行こうかな、やちるちゃんってどこに居るんだろう? こないだ仲良くなった少女を想い出していると声を掛けられた。 「あー、浮竹のお兄ちゃん!きょーらくのおじちゃん!」 「浮竹はお兄ちゃんで僕はおじちゃんなんだ・・・」 「どうしたんだい?一人で」 「え〜、んとね、狛ムーのトコ行ったら仕事だから邪魔しちゃダメだから帰って来たの」 「そうか、偉いな一護君は!じゃあ俺の所で遊んで行きなさい。お菓子もたくさんあるぞ?」 「うん!」 浮竹がいつも使っている離れに一護を招き入れ菓子とお茶を貰い、ニコニコ笑いながら話をする一護に浮竹が、 「一護君は、どうして狛村が仕事だって言った時怒らなかったんだい?」 「え?うちも父ちゃんが仕事の時忙しいから、狛ムーも忙しいのかなって」 「そうか、偉いな」 クシャクシャと頭を撫でられ、ニコニコ笑顔の一護を見た。 「ねえねえ、一護君。なんで僕はおじちゃんなの?」 「しつこいぞ。京楽」 「おヒゲ生えてるから。俺の父ちゃんも生えてるよ」 「ふ〜ん、そうなんだ・・・」 分かりやすい。 「浮竹のお兄ちゃんは、やちるちゃんがどこに居るか知ってる?」 一護が聞いてきた。 「うん?多分十一番隊じゃないかな?彼女はあそこの・・・」 「ほんと!」 話を途中で大きな声で遮った。歳近い者のほうがいいのだろう。一護にお菓子の詰め合わせとやちる専用に金平糖を大量に持たせて、道順を教えてやった。一護は顔いっぱいの笑顔を乗せて礼を言うと十一番隊に行った。 十一番隊に着くと隊舎の前で、 「やちるちゃん、遊ぼー!」 と言った。扉が開いたがそこにはやちるの姿はなく、頭を剃った男が立っていた。一護が、 「あの、やちるちゃんいますか?」 と聞くと、 「今は、居ねえよ」 と言う答えが返って来た。しょんぼりして、帰ろうとした一護に、 「じきに戻ってくっから中で待てよ」 そう言われて、 「いいの!」 「あぁ」 「うわぁ、良かったぁ、ありがとう!おにいちゃん!」 見た事もない笑顔で言われて、一角は少し驚いた。中に入って道場の縁側に座って、お菓子の荷物を下ろす。 「おい一護、コレ誰に貰ったんだ?」 「ん〜?浮竹のお兄ちゃん!」 「そ、そうか、良かったな」 「うん!」 縁側で足をブラブラさせている一護と、いつもの一護とはかなり差が激しい。 「うるせえな、誰だぁ」 後ろから不機嫌な声がして振り向くと剣八が立っていた。 「こんにちは!剣八のおじちゃん!」 ニコニコ笑いながら言う一護を一瞥して、 「何だ、何しに来た?」 「やちるちゃんと遊ぼうと思って来たの、でも今居ないから待たせてもらってるの」 一護が言うと、 「で、その大量の菓子は浮竹か?」 「すごいなぁ!どうして分かったの?」 「そんな大量に菓子持ってんのあいつだけだ」 「ふーん、物知りだねぇ」 「阿呆か、誰でも知ってるに決まってんだろ」 「でも物知りだね」 一護の隣りに胡坐をかくと 「なんか思い出したのか?一護」 と訊いた。 「ううん、早く治らないかな。早く母ちゃんに逢いたい」 ほんの少し悲しそうな顔をした一護に、 「手前ぇの母ちゃんも同じ様に逢いたがってるだろ、さっさと治せ」 剣八にそう言われ笑顔で、 「うん!」 と頷いた。弓親がお茶を持ってきた。 「はい、一護君、隊長」 「ありがとう、え〜と、お姉ちゃん?お兄ちゃん?」 「僕は男だから、お兄ちゃんだよ」 「そうなんだ、きれいだから分かんなかった」 「ふふっ、ありがと。じゃまたね」 「うん」 その内剣八の胡坐をかいた足の上に座った。 「なんか落ち着く・・・、狛ムーも、烈お姉ちゃんも優しいけど、剣八のおじちゃんは何か違うね。何だろー?」 気持ち良い・・・。 と呟くと寝息を立てていた。 「しょうがねぇ、俺も寝るか」 言うと寝た。暫くして、やちるが帰って来て、剣ちゃんといっちーばっかズルイとうるさかったが、金平糖をやると大人しくなって飲むように食べた。しきりに一護が感心していた。 そこへネムがやって来た。何を言うのかと思っていたのに、喋ろうとしないネム。剣八がイラつき始めた頃一護が、 「お姉ちゃんのお名前何て言うの?」 と質問した。 「あ、ネムと申します」 「それは誰に貰ったの?お母さん?お父さん?」 「マユリ様です」 「ふ〜ん、その人の事、大切?」 「はい」 「ネムお姉ちゃんは、どうして俺にお菓子をくれたの?」 「それは・・・」 「ねぇ、コレあげる」 一護が差し出したのは、浮竹に貰った菓子の中の饅頭だった。 「・・・」 「いらない?」 「いただきます」 一護の手から受け取って、口に運ぶ。柔らかな甘さが口に広がり消えていった。 「おいしかった?」 「はい、とても」 その言葉を聞くと一護は、 「じゃあ、許してあげる」 「は?」 「だってネムお姉ちゃん、謝りにきたんでしょ?だから」 「あの、でも、」 「それにね、おいしかったら笑うんだよ?」 「え?」 「だってネムお姉ちゃん、綺麗なのに全然笑わない。笑えばもっと綺麗なのにもったいないよ」 「・・・」 「俺の母ちゃんは、いつも笑ってるよ。だから父ちゃんも、妹も、俺も、母ちゃんが大好きなんだ」 「ほら、口の端を持ち上げて、ニッって」 ぎこちない動きで、笑顔を作ったネムに、 「うん、やっぱり綺麗だ」 一護が満面の笑みで頷いた。そこへ四番隊の隊士が一護を迎えに来た。 「じゃあまたね、やちるちゃん、剣八のおじちゃん、ネムお姉ちゃん」 そう言って、、四番隊に帰った。剣八は久しぶりに一護を腕に抱けて少し気分が良かった。だから、一護が思い出す、哀しい記憶の事など思いもよらなかった。 その日の深夜に一護は叫び声を上げて、ベッドの上で震えていた。駆け付けた卯ノ花隊長も、目に入らない状態で、両手で自分の身体を抱きかかえて爪が食い込み血が滲んでいた。その目は限界まで開けられ、涙が溢れて止まる事は無かった・・・。 「か、母ちゃんが・・・うああぁあ!」 極度の興奮状態であった為、麻酔で眠らせた。その朝、すぐに総隊長に連絡した。一護はまだ目覚めない・・・。 「いかが致しましょうか?」 「ふむ、まぁ無理に起こさんでも、自然に目覚めるじゃろ。その時に・・・」 言い終わらない内に一護の目が細く開いた。 「一護君!」 卯ノ花隊長の呼びかけに、ゆっくりと視線を移すと微かに笑ってまた閉じられた。 「精神的ショックが大きかった様です、すごい声でしたから・・・」 その日は結局一護は目覚めなかった。入れ替わり立ちかわり、見舞う死神は後を絶たなかった。 涙を流し、うわ言を言っている事もあった。 次の日には、目が覚めてベッドの上に座っていた。やはりその目には、誰も映っていなかった。何の表情もない顔をした一護。 あんなにも楽しそうに笑う一護は、もう居なかった。その日の夕方に歩いている一護を何人かの死神が見た。 少し歩いては座り込む、という風に歩いていた。卯ノ花隊長が、呼び止め病室に送って行った。 ベッドに一護を寝かせると卯ノ花隊長が、 「何をしていたのですか?一護君」 と聞いた。 「居ない・・・あの子、どこにも、どうして・・・?」 呟いて一護は眠った。 次の日、隊首会が開かれた。卯ノ花隊長の後ろから離れようとしない一護が痛々しかった。 卯ノ花隊長と総隊長の前に出た一護は、怯えきっていた。 「それでは、今日は何を思い出したか、聞こうかのう?一護」 「・・・・・・」 視線を下に落として喋らない。 「一護君・・・?」 卯ノ花隊長が優しく声を掛ける。 「母ちゃんが死んだ時の事・・・」 絞り出す様に話しだした。卯ノ花隊長の羽織の袖を握り締め、 「雨が降ってた、俺は、あの子が気になって、どうして・・・?母ちゃんが止めるのも聞かないで、飛び出して、気が付いたら・・・、母ちゃんが・・・俺の上で・・・うっ動かなく、なって、うあぁ、あぁあぁあ!俺は、俺がっ母ちゃんを!」 目を見開き、ガクガクと震えながら言うとその場に座り込んだ。両手で頭を抱え込み、 「どうしよう、お袋が大好きだったのに!みんなの中心なのに!俺が、俺が、全部壊した!護りたかった!一番に護りたかったのに!俺が、こ、ろ、し、た・・・?」 「一護君・・・」 卯ノ花隊長が優しく声を掛ける。そこで堰を切ったかの様に泣きだした。 「うあ!うああぁあぁん!どうして!どうして!みんな零れ落ちるの?みんなすり抜けるの?お母さん助けて、お母さんを助けて!俺は何も要らないから!お願い!お願い!お願い・・・!」 卯ノ花隊長が優しく抱き寄せ、 「それは貴方のせいではありませんよ一護君」 「嘘だ!俺があの時あの子を追わなかったら!お袋の言う事聞いてたら!」 「それでも貴方のせいではありません」 「でも・・・もう帰って こ な い ん だ・・・。さびしいね・・・」 「一護君・・・」 一護はもう泣いていなかった。自分で顔を拭って涙を消すと、その目に哀しい光と新しい決意を宿していた。 「何時までも泣いていられない。まだ妹を護るんだから、立ち止まってられないんだ。今度、こそ・・・」 一護の頭がグラリと揺れて、気を失っていた。まだ卯ノ花隊長は一護を抱いていた。 「なんて・・・強い子でしょう・・・」 「そうじゃの・・・。辛い事を思い出させたのう・・・、誰か医務室へ、早く運んでやってくれ」 「ずっと自分を責めて来たんでしょうね・・・、歯を食いしばって、眉間に皺を作りながら・・・、だからあんなにも朽木さんを助けたかったんですね・・・」 卯ノ花隊長が呟いた。 自分のせいで。 だから助けたい。 なんて単純で、なんて純粋な感情。 担架に乗せられ、医務室へ行く一護の姿をそこに居た全員が見つめていた。 医務室で、目を覚ました一護。 「う、ん、何処だ?ココ・・・」 「四番隊総合詰所ですよ一護君」 「わあっ!びっくりした、卯ノ花さん脅かさないで下さいよ!ん?何で俺四番隊に?怪我したっけ?」 「一護君・・・?貴方覚えてないの?」 「え、何をスか?」 一護は16歳に戻っていた。一護は最初に倒れてからの、出来事全てを覚えていなかった。その方が良かった、あんな辛い思いを付き出されたままでは、この少年があまりにも可哀相。卯ノ花隊長が後で総隊長に連絡して、格隊長にも伝わった。 「いえ、数日前から、眠ったままだったのですよ一護君」 「えっ!俺が、なんで?」 「十二番隊隊長の悪戯です。もう大丈夫ですよ」 一護の頭を撫でながら言った。不意に一筋の涙を流した一護。 「あ?何だコレ」 慌てて拭った。何だかガキの頃に戻ったみたいだ、と苦笑した一護を慈愛を込めて見つめた。 「何か、卯ノ花隊長って、俺のお袋に感じが似てる」 照れたように笑いながら、ベッドに潜り込んだ。 「一護君、明日には退院出来ますよ」 シーツから顔を出して、 「本当スか!」 と聞いて来た。 「ええ、ですから今日は良く寝て下さいね」 微笑みながら告げた。言われた通り、一護は大人しく眠った。 次の日の朝、目覚めた一護は検査を受けて、問題無いという事で無事退院出来た。 退院した一護はいつも寝起きしている十一番隊に帰った。 「オ〜ッス!久し振り!」 「あー!いっちーもう大丈夫なの?」 「おう、問題無いってよ。しっかし何日寝てたんだ?俺」 「・・・一週間ぐらいだって」 「ふ〜ん、何がしたいんだ?あそこの隊は?」 「さあ・・・?」 縁側の方まで一緒に歩く。 「あっ、剣ちゃんだ!おーい、いっちーが帰ってきたよ〜」 「よう」 「・・・おう」 いつになく大人しい返事に一護は、 「何だ?元気ねえな、風邪か?」 「別に、お前は、もう平気なのか」 「何が?卯ノ花隊長のお墨付きだ、大丈夫だよ」 「そうかよ・・・」 本当に何も覚えてないようだ。ごろりと横になり目を瞑る。 「何だよ、昼寝か?」 「ああ・・・」 「そうか・・・」 暫く静かな時間が流れた。剣八が薄眼を開けて一護を見ると、やけに儚げな横顔に思わず抱き寄せていた。 「なんだよ・・・、いきなり・・・」 言いながらされるがままの一護。 「うるせえ、しばらくこうしてろ・・・」 「うん・・・、安心する、けど見られんの嫌なんだけど・・・」 「ふん、じゃあ俺の部屋に行くか?言っとくが逃げ場なんて無えぞ?」 「知ってる・・・、連れってって、何か変だ、離れたくない、から・・・」 きゅうっとしがみ付いて剣八の肩口に顔を埋めた。 「ああ、離してやんねえよ・・・」 一護を抱き上げ、自室に連れて行った剣八。一週間ぶりの逢瀬に二人ともお互いを求めた。 互いの境界線など無いと言いたげに貪り合った。 「剣八、剣八・・・、居なくならないで、ココに居て・・・!」 「一護、一護・・・、お前が生きてる限り離さねえ・・・!覚悟しろ・・・!」 「嬉しい・・・、うれしい・・・」 ああ・・・、もっと、深くまで繋がる事が出来たら良いのに・・・。 オマケに続く 終 08/12/06作 第40作目です。やってしまいましたね。5月に書いて放置してました。反応が怖い・・・。 喋り方が9歳じゃないよ。これ・・・。 |
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