題「子供の記憶」とある1コマ、1コマ
一護の記憶が子供になってから、四番隊で世話になっていた。
「ねえ烈お姉ちゃん?俺って邪魔じゃない?」
「なんですか?急に。そんな事ありませんよ、どうしたんですか?」
「あのね、俺でも何か出来る事ってなあい?そんなに具合も悪くないし、ずっとお世話になってるし・・・」
「まあ、そんな事気にする事では無いですよ。」
「でも・・・、みんなやさしいし、忙しそう・・・」
ああ、誰も構えない時が寂しいのだなと、理解した卯ノ花隊長。
「そうですね、では今からこれを六番隊の朽木隊長へ渡して来て下さいな」
「くちき?ルキアお姉ちゃん?」
「いえ、そのお兄様ですよ。場所は分かりますか?」
「・・・良く分かんない・・・」
自分で言っておきながら最初からこれでは先が思いやられると一護が思っていると、
「それではこの字が書いてある建物に行って下さい。そこが六番隊です」
紙に「六番隊」と書いて、書類と一緒に渡した。
「うん!分かった!ちゃんとするね!」
満面の笑みで頷く一護。周りから黄色い声がした。いまやアイドルだ。
「じゃあ、いってきます!」
「気を付けて」
六番隊にて。
 にこにこ笑いながら、紙を見ながら道を歩いて六番隊を目指した。やっと見つけた。
「すいません、四番隊から来ました。朽木隊長居ますか?」
「あ、黒崎さん。何か用ですか?」
「あの烈お姉ちゃんからコレを朽木隊長に渡してって」
「ああ、ではこちらで渡しますので、受け取ります」
「あの、でも朽木隊長にって言われたから・・・、自分で渡す・・・」
可愛い・・・、必死になって言う一護が可愛くて仕方がないのか、
「一護君、お饅頭食べる?隊長にって思ったんだけど要らないって。あんまり甘くないからイケると思ったんだけどなぁ」
「でも、おつかいの途中だから・・・」
気になりながらも、断ると、
「じゃあ、渡すから帰ってから食べると良いよ」
ニコッと笑ってその隊士は饅頭の入った袋を一護に渡した。
「あ、あの、ありがとう!」
一護も笑ってお礼を言った。隊首室まで案内してもらい声を掛ける。
「朽木隊長いますかぁー、四番隊から来ました、黒崎一護です」
「・・・入れ」
「はい!」
よいしょっと両手に書類と饅頭を抱えて入ってきた一護。
「なんだそりゃあ?」
「えっとね、これが烈お姉ちゃんからと、これはさっき貰ったの。ちゃんとお礼言ったよ」
「そうかよ、で?何の書類だ?」
「知らない。持って行ってって言われたから」
お仕事貰ったんだよと少し誇らしげだ。
その内じーっと白哉の顔を見つめる一護。
「・・・何だ」
「綺麗だなぁって思って。ここって綺麗な人が多いから覚えにくいや」
白哉の眉がピクッと動いた。が次の言葉で顔が上がった。
「でもお兄ちゃんはルキアお姉ちゃんと似てるからすぐ分かるや。いつもお話してくれるもん」
「ルキアがか・・・?」
「他に誰かいるの?」
「へえ、どんな話してんだ?あいつ」
「えッとね、お兄ちゃんがどんだけ強いかとか、優しいかとか、ずっと言ってる」
「ふうん・・・」
「あっ、そうだ、これね、お饅頭食べる?」
「・・・甘いものは好かぬのだ」
「・・・」
少し悲しそうな顔をしたが、差し出した手を引っ込めず、
「でもあんまり甘くないって、それに甘いものは疲れを取るって母ちゃんも言ってるよ。お兄ちゃん疲れたお顔してる」
ふう、と溜め息をつくと、
「恋次、茶の用意を」
「え、はい」
「ありがたく頂こう、黒崎一護」
「えへへ、良かったぁ、みんな心配してたから。ルキアお姉ちゃんも」
恋次が3人分のお茶を淹れて戻ってきた。
「はい、お兄ちゃんにもあげるね」
「お、おうありがとよ」
「みんなで食べるとおいしいねえ」
はむっと饅頭を食べる一護。確かに甘みが強くないので白哉にも食べれた。
こくりとお茶を飲んで話し掛ける。
「ねえ、お兄ちゃんは強いの?すごく強いの?」
「おま!なんちゅー失礼な!」
「え?え?聞いちゃダメだったの?」
「強いなんてもんじゃねえよ」
「へえ〜、すごいなあ。それなのに優しいんでしょ?俺もなれるかなぁ?俺も強くて優しいお兄ちゃんになれると思う?」
「そういえば兄にも妹が二人いたのだったな。護りたいなら、なれるかではなく、なってみせよ。妹の為に」
白哉が一護の頭を撫でて言った。驚く恋次。
「うん!頑張る!ありがとう!」
見た事もない笑顔で礼を言う一護に二人とも少し驚いた。
「あ、もう帰らないと、じゃあね、えーと?」
「あ〜、恋次だ」
「じゃあね、恋次お兄ちゃん、白哉お兄ちゃん!」
「白哉・・お兄ちゃん?」
存外悪い気はしないな。手に残った饅頭を口へ運ぶ白哉。ふっと微かに笑ったのを恋次は見なかったフリをした。
帰り道にて。
 一護は一仕事終えた満足感に足取りも軽く歩いていると、前を狛村隊長と射場鉄衛門が歩いていた。
「狛ムー!」
ぶんぶんと腕を振りながら、走り寄る。
「こんにちは!射場さんも、こんにちは!お仕事の帰り?」
「うむ、お主はどうしたのだ?」
「えへへ、俺もお仕事の帰りだよ!烈お姉ちゃんにおつかい頼まれたの!ちゃんとやったよ!」
「そうか、えらいな」
狛村の大きな手で頭を撫でられた。
「わっぷ!狛ムーの手ぇおっきい」
きゃっきゃっと喜ぶ一護。
「あー!いっちーだ!何してんの?」
「おつかいの帰りだよ」
「へえ〜」
やちるはいつもの特等席に乗っている。一護は小さな声で、
「いいなぁ・・・」
と呟いた。耳の良い狛村が、
「肩車がか?何なら儂がしてやるが?」
「ホント!」
目をキラキラと輝かせてこちらを見て来た。ぐいっと一護を持ち上げて肩に乗せてやった。
「わあ〜!すごい高い!すごい!すごい!父ちゃんより大きい!」
中身は9歳、やはり親に甘えたい盛りなのだろう。
「黒崎の父上は何をやっているのだ?」
「え〜と、お医者さんだよ。烈お姉ちゃん達みたいに大怪我した人たちは治せないけど、すごいんだよ!」
「そうか、偉いお医者なのだな。良かったな」
「うん、でもテンション高いの、しんどいよ」
「ふふふ、そうか」
「あっ!白哉お兄ちゃんだ!」
「む、何をしているのだ?兄は」
「肩車!久し振り、父ちゃん患者さん診た後、母ちゃんを見なきゃいけないから・・・」
「そうか、良かったな。そこからの景色はどうだ?」
「うん!すごくいいよ!すごく遠くまで見える!お兄ちゃんも見る?」
「いや、遠慮しておこう」
「そう?特等席だよ?」
「良い。それより久し振りなのだろう?ゆっくり味わうといい」
「うん、えへへ、此処の人達はみんなやさしいね。髪の色でいじめたりしないもん」
「黒崎?」「兄?」
「なぁ〜んでもないよ」
「あ!烈お姉ちゃんだ!狛ムー、ありがと、もう下ろして?」
「ふむ」
「一護君、帰りが遅いので迎えに来ましたよ。おつかいは出来ましたか?」
「うん!出来たよ!お菓子貰ったよ。白哉お兄ちゃんもいっぱいおしゃべりしてくれた!今狛ムーが肩車してくれてたの!」
頬を染め、興奮気味に報告する一護。
「まあ、良かったですね。もうすぐ夕飯ですから帰りましょう」
「うん!じゃあまたね、狛ムー、射場さん、やちるちゃん、剣八のおじちゃん、白哉お兄ちゃん!」
卯ノ花と手を繋ぎ帰っていった。






08/12/06作 オマケです。何か急に書きたくなったので・・・。多分一番構いたいのは剣八か、重じいです。


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