題「とある日常」2 | |
朝、一護が起きた時には剣八はもう起きて蒲団に居なかった。 「ヤバイ!寝過ぎたか?」 キッチンに行くとまだ居た。 「良かった。寝過ごしたかと思った」 「別にまだ寝ときゃいいのによ」 食後のお茶を啜りながら剣八が言った。 「そういう訳にもいかねえよ、まだウルが寝てんだから」 昨日作った粥をぬくめながら言うと、 「・・・子煩悩・・・」 と言われた。 「お互い様だ」 まだ、やちるもグリも起きてない。 「剣八・・・」 「ん?」 ちゅっと音を立ててキスをした。 「・・・一護?」 「その、昨日、してないから・・・」 頬を染めながら言う一護の後頭部に大きな手を回すとより深い口付けを与えた。 「ん、んん、あ、んふぅ」 2人の間を銀糸が繋がってぷつりと切れた。 「ん、はあ」 「これ以上は我慢が効かなくなるからな、お互いよ」 くくくと低く笑う剣八。濡れた唇を親指で拭ってやった。 「・・・ウル、診てくる」 水と粥を持ってウルキオラの部屋に行く。 「ウル、起きてるか?」 返事が無かったが水差しを交換するために部屋に入った。 「あ、お母さん。おはようございます」 「おはよう、メシ食えるか?粥持って来たけど」 「はい、いただきます」 「良かった・・・、今日も食べれなかったら大変だからな」 粥を茶碗に入れて匙で食べさせる。 「あの、自分で食べれますから」 「そうか?大丈夫か?重くないか?」 「大丈夫ですよ」 微かに笑いながら食べて行く。 「ああ、今日2時頃にグリの友達が来るってさ、静かにって言ってあるけど騒がしくなるかもな」 「本当に呼んだんですね・・・、すいません」 「何でお前が謝るんだよ?気にすんな、今は身体の事だけ考えてろ」 くしゃくしゃと頭を撫でた。 「はい、わかりました」 粥を食べ、薬も飲み終えて着替えてから、また眠る。 「だいぶ寝汗掻いたな、冷却シート新しいの貼っとくぞ」 「はい・・・」 ウトウトしながら答えた。一護は出来るだけ静かに出ていった。 キッチンにはやちるが起きてきていた。 「おはよう、やちる」 「おはよー、いっちー!」 「飯は?食ったのか」 「うん、剣ちゃんが作ってくれたから、もう食べ終わったよ」 「へえ、じゃあ遅刻しなくて済んだな」 「うん、ねえウル兄の具合どう?」 「うん、だいぶ良くなってるよ、粥食ったしな」 「良かったぁ!」 迎えが来た。 「行ってらっしゃい、気をつけてな」 「おう」 「行ってきまーす!」 「さてと、洗濯、洗濯」 昨日からの洗濯物をやってしまおう、もうすぐ替えのパジャマも無くなるだろう。 良い天気だ。これならすぐ乾くだろう。 全ての洗濯を済ませるとお昼近くになっていた。 「飯でも食うか、グリのやつ起きて来ねえな」 グリを起こしに部屋に行く。 「おい、起きろ、グリ」 ベッドの蒲団の中で丸くなって寝ていた。 猫みてぇ・・・。思わず頭を撫でていた。 「む〜?お袋?何だよ・・・」 「いや、もうお昼だから。今日友達来るんだろ?早く起きろよ」 「ん〜、分かった・・・」 「じゃあ、俺はウルと飯食ってっからな」 「ん〜」 まったく・・・。ほっといたら何時までも寝てるな、アイツは。 「ウル、起きれるか?お昼だけど食えるか?」 「あ、はい頂きます」 「俺もここで食おっと、グリの奴起きて来ねえ。どうすんのかね時間」 「さあ、放っておけば良いのでは?」 「まっ、ギリギリまで寝るんだろうな」 二人で粥を食べて、薬を飲ませ寝かせる。 「後はゆっくり寝とけ。何か欲しいもんあるか?」 「いえ、今は」 「そうか、じゃ、おやすみ」 冷却シートを替え、髪を梳いてやった。 ぱたぱたと足音が遠ざかって行く。ふわふわした風邪の時特有の感覚を楽しんでいる内に眠ってしまったウルキオラ。 ピンポーン。 「はーい、どちら様?」 玄関には、金髪の少年が二人立っていた。一人は長髪、もう一人は短髪だった。 「こんにちは、グリムジョーの友達かな」 「こんにちは、イールフォルトです。よろしく」 「よろしく」 「こんちわ、俺、ディ・ロイ、ロイって呼んで!」 「よろしく、ロイ、俺は一護で良いよ。さっ、上がって」 にこやかに招き入れる。 「あっ!あいつまだ起きてねえ!ったく」 キッチンにて待ってて貰う。 「起きろグリ!もう友達来てんぞ!」 「むー・・・、早え・・・」 「もう2時だ!」 引きずる様にキッチンに連れて行く。 「ほら!もうだらしねぇな!メシは!」 「・・・食う・・・」 まだ船を漕いでいる。 「ああ、ごめんな、適当に座ってくれ」 「はあ・・・」 「トーストで良いか?ジャムは?」 「お袋が作ったやつ・・・」 「はいはい、卵はスクランブルで良いな」 「むー・・・」 「まったく、ちゃんと起きて食え!」 香ばしいコーヒーの香りとパンの焼ける匂い、木イチゴのジャムを塗ってやり、スクランブル・エッグを出してやる。 「ほれ、喰え!」 「んー」 「いい加減に起きねえと殴るぞ」 パリッとトーストを齧る。 二人の分のコーヒーを渡して、お茶受けにビスケットを出した。 「悪いな、こいつ寝起き悪いんだよ」 「へ〜、こんなグリムジョー、見た事ねえ・・・」 「初めてかもな」 「へえ、ああもう、口の端に付いてんじゃねえか」 一護はグリの口の端に付いた卵を取って食べた。 「さんきゅ」 「いいから、早く喰え、待ってるぞ」 「あー、うん」 「洗いもの終わるまでに起きないと悪戯するからな」 「んー・・・」 フライパンや朝の食器を洗う、終わってもまだ寝惚けていた。 「よし!悪戯決定!」 「良いのかなぁ、ここに居て・・・?」 「後が怖いな・・・」 ふんふーんと鼻歌交じりで、グリの髪をいじりだす一護。おでこの上でくくってやった。 「あは、かわいい、かわいい」 撫で撫ですると気持ち良さそうにしていた。 「うわっ!すごいモン見ちゃったよ」 「大丈夫、起きない方が悪い」 まだ起きない。トーストは全部食べたが卵が一口分、残っていた。 「こら、グリ!起きろ!」 びくっとしてやっと目が覚めたようだ。 「ほら、最後の一口、食っちまえよ」 一護が口許に持っていった。素直に口を開けて食べるグリ。 「よしよし、やっと片付いた。で、なんか俺にお茶の淹れ方教わりたいんだって?」 「あ、はい」 「えーと、イールフォルトだっけ?」 「イールでいいです」 「そか?なんでおれな訳?」 「前に弁当に紅茶持ってたろ?そん時にえらい感動してた」 伸びをしながら、グリが説明する。 「ふーん、お前は顔洗って来い」 「へーいへーい」 かちゃかちゃと片付けを始める一護。 「なあなあ、一護は俺らと同い年だよな?」 「まあ、16だけど?何?」 「なんで、グリムジョーとウルキオラのお母さんやってんの?」 「直球だな。何でって言われてもな、子供欲しかったし」 「でも、もっとちいせえのでも良かったじゃん?」 「色々あるんだよ、家庭には」 「ふーん、聞きたいな、だめ?」 「聞いても面白くねえよ」 手を拭きながら答える。 「そんなん俺が決めるよ、なー。なー」 「あのさ、今うちに病人居るから静かにしてもらえるかな」 「すいません」 とイール。 「うん、俺も言うの遅かったけど」 「なー、だめ?」 「お前は聞きたいか?グリ」 「別に・・・、言いたく無いんならいい・・・」 「聞きたいんじゃねえか。ったく」 紅茶を淹れながら、 「俺が前に剣八と同じ仕事してたのは言ったっけ?」 「いや、聞いてねえ。そうなのか?」 「うん、見習いみたいなもんだったけどな」 淹れたての紅茶を人数分並べる。 「まあ、紆余曲折であいつと一緒になった訳だけど、いつ死ぬか分かんねえ仕事だからよ。あんまり小せえと、大人になるまで俺ら生きてるかなって話になってさ。じゃあ、俺と年が近かったら最悪二人とも死んじまっても独り立ちは出来るだろうって」 「じゃあ、初めから子供引き取らなきゃいいじゃん」 「俺は、どうしても欲しかったんだ・・・、ただの我が儘だし、いい迷惑かも知んねえけどな。生きた証つーか、愛した証つーかさ、まあ、今はこうやって専業主夫させてもらってるけどさ。今も剣八とやちるは命懸けで戦って、帰ってきてくれる。すごい幸せだ」 「ワリィ、お袋。迷惑じゃねえから!あいつもそうだよ」 「あいつって?」 「うるせえ」 グリの頬に手を当て、一護が、 「うん、俺もお前らと出会えて良かった。毎日騒がしくて、忙しくて、楽しくて幸せな毎日だよ」 「お前らが独り立ちしても、この髪の色で、あの瞳の色で、思い出せるよ。お前の髪と眼は空色だし、ウルの眼は葉っぱの色だ。すぐそこにある。きっと寂しくないよ。俺は、よくタンポポだって言われるしな」 笑いながら、髪を撫でた。 「ま、そんな訳だ。面白くなかったろ?」 「良いなぁ」 「はあ?」 「羨ましい、なんで?血とか繋がって無いんだろ?なのにさあ、ずるいよ」 「何が?あっと洗濯物湿気る。グリ手伝ってくれ」 「おう」 「馬鹿が・・・!」 「だってさ・・・、ずるい」 「まぁ、分かるがな」 庭の二人を見ながら呟いた。 「サンキュ―、ああそうだ、夕飯どうする?食ってくか?食ってくならギョーザにするんだけど」 「えっ、良いの!やった!」 「まあ、その代わり手伝いはしてもらうけどな」 「げー」 「子供みてえだな」 洗濯物を畳みながら、笑う一護。 「すいません、お母さん・・・」 「ん?どうしたウル?」 「喉が渇いたので・・・」 「歩けるのか?無理すんなよ?」 「大丈夫です」 スポーツドリンクをコップに入れてやりストローをさしてやった。 コクコクと飲み終えると、 「ウル、今日ギョーザにするけど大丈夫か?まだ粥の方がいいか?」 「だいぶ、お腹も空く様になりましたし、大丈夫だと思います」 「そか、良かった、ほら早く蒲団に入らなきゃ」 乾いたばかりのパジャマを持ってウルの部屋に行く。 「で?どうすんだよ、晩飯」 「良いのか?迷惑だろう?」 「いやあ、あれは素で言ってる、まあ、手伝いは本当にさせられるけどな」 「何をするんだ?」 「肉捏ねたり、皮に包んだりだよ」 「面白そうじゃん」 「ふむ、ではご馳走になるか」 「っていうか、病人てウルキオラのことだったんだ」 「ああ」 「おう、で決まったかー。食ってくか」 「食ってくってよ」 「じゃあ、買いもん行くか、ついてくるか?」 「また荷物持ちかよ?」 「そのための要員でもある」 「ウルキオラは?」 「寝たよ、まだ熱下がりきってねえもん」 「何で起きて来たんだ?」 「騒がしいのが気になったんだろ、後水分補給」 「ふうん」 4人で買い物に行く。 第3話へ続く 08/12/30作 |
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