題「とある日常」
まず、ウルの部屋に行った。
「ウル?入るぞ?」
「はい・・・」
「起きてたか、今から夕飯の買い出し行ってくるから、ちゃんと寝とけよ?」
「はい、行ってらっしゃいお母さん」
「ん、行ってくる」

「グリ、これマフラー、出来たぞ」
ふわりと首に巻かれた。
「お、おう!サンキュー」
ふわふわの感触にどぎまぎした。
「えっ、これって一護が編んだの?すげー!」
「簡単だよ、模様編みって訳じゃないし、色は?気にいったか?グリ」
「ん?おお、気に入った」
マフラーの端の房の部分をいじりながら答えた。
「良かった、じゃ行くか」
自分のオレンジのマフラーを巻いて家を出る。

近所のスーパーでちょっとした注目を集めた。グリの友達がいわゆるイケメンだからだ。
「で、お前ら結構食うのか?」
「えー、普通じゃね?」
「そうか、じゃあ結構買わなきゃな・・・」
「何言ってんの?普通って言ってんじゃん」
「うちに普通じゃないのが居るんだよ・・・」
「誰?まさかウルキオラとか?」
「旦那と娘」
食いっぱぐれんなよ?と一護は言った。
豚ミンチとニラとキャベツと、
「鶏ミンチはどうする?入れるか?」
「いつもは入れるんですか?」
イールが聞いてきた。
「いや、豚と野菜だけ」
「じゃあ、いいと思います。いつものってやつが食べてみたいです」
「そか?なぁ、イール?同い年だし別に敬語とか使わなくて良いぞ」
「あ、はい・・・」
「うん、後は皮と、味噌汁の具かあ・・・、何にしよ?なあ何がいい?」
「え〜とね、俺何で良いよ!」
「じゃ、長ねぎと油揚げな」
「げっ!」
「なんでもいいんだろ?」
くすくす笑いながらポイポイかごの中に入れて行く。
ぶーっと不貞腐れているロイ。
「いやなら、好きなの言えば良かったんだよ」
会計に進む。
「なあ、こんだけ買って大丈夫なの?」
「何が?」
袋に詰めて行く一護とグリ。
「余んないの?」
「「それはねーわ」」
思わずハモった。
「だって、なあ?」
「無い無い、ありえねえ」
4つの袋を一つずつ持つ。
「そんなに食べるのか?一護の旦那は」
「あー、すげぇよ、まっ、作る方としちゃ嬉しいけどな」
ふんふんと鼻歌を歌う。
「そんなもんかな?」
「みてえだぜ?笑いながら見てっからな」
「ふーん、分かんないや」

途中、実家に寄って支払いを済ませる。

家に着くと、荷物をキッチンに置くと全員に手洗い、うがいをさせる。勿論自分もする。
「客にこんなんさせるなんて思わなかった・・・」
ロイが呟く。
「風邪引きたくねえだろ?おまけに今からギョーザ作るのに」
とたとた歩いて、ウルの様子を見に部屋へ向かう。扉をノックして声を掛ける。
「ウル、入るぞ」
「お帰りなさい、お母さん」
にこりと笑った。
「ただいま。留守中大丈夫だったか?」
髪を撫でる。熱はだいぶ下がってる。
「はい、お陰さまで随分楽です」
「そうか、良かった、念のため冷却シート替えとくか」
「はい」
シートを替えて、着替えも終わらせた。
「じゃあ、夕飯にまた来るな」
ちゅっと頭の天辺にキスした。
「なっ!はっ、かあ!なにを!」
驚いて意味不明の言葉を発してしまったウルキオラ。
「いい子で居たご褒美」
ぽんぽんと頭を撫でて部屋から出て行った。少し熱が上がったウルキオラ。

「うっし!作るかー!」
「おー!俺ギョーザ作んの初めて!」
「俺もだ」
「へえ、簡単だから大丈夫だよ。ああ、肌とか弱いか?」
「俺へーき!」
「俺は、弱いかな」
「んじゃ、はいコレ」
ビニール手袋。
「それはめてやるといいよ」
「ん・・・」
ニラとキャベツを刻んで塩を振り掛けて水気を絞る。それに肉と調味料を入れて混ぜていく。
「おーし、力の限り混ぜろ〜」
「うわっ、変なの〜。気持ち悪い」
と言いながら楽しそうなロイ。
「巧く混ざらん・・・」
とイール。
「ああ、握りつぶす感じでやってみ、そうそう、巧い巧い」
グリはさっさと包むところまで行っている。
「うわっ、グリムジョーってば早!ずっりー!」
「何がだよ、何回も手伝わされてんだよ。当たり前だ」
「へえぇ、意外」
「ほら、もう良いぞ、包もう」
「どうやンの?」
「こうやって、真ん中に、こんぐらい、で淵を水で濡らしてくっつける。難しかったらヒダは要らないぞ」
「えっと、こ・・うかな?」
「そうそう」
「む、一護これくらいか?」
「うん、それで、そうやって、ああ、巧いじゃねーか」

キッチンには店でもやんの?というくらいのギョーザの山があった。
「さて、後は焼くだけなんだけどな、剣八いつ帰るかな?」
手を洗って、呟いた。
「なー、なー、俺ら今日役に立った?」
「ん?うん、助かったよ。あんがとな」
イールとロイの頭を撫でてやった。一瞬ポカンとした顔をした。
「どした?二人とも」
「何でもねえよ」
とグリが後ろから言った。

「帰ったぞ」
「たっだいまー!いっちー!」
「お帰り、剣八、やちる」
「おう」
手を洗いに行く二人。さて焼くかね。
「おーい、グリ、皿出してー」
「ほいよ」
大きめの皿を3枚出した。

ギョーザを焼いて行く。一皿目が焼けた。
「良いにおーい!今日はギョーザだあ!」
「へえ、で一護、こいつ等は?」
「グリの友達、髪の長いのがイールで、短いのがロイ」
「お邪魔してます・・・」
「・・・お邪魔してます・・・」
「おう、メシ喰ってくんだろ?遠慮してっと喰いっぱぐれんぞ」
「わあ、グリ、皿!皿!」
「おお!はい!」
「あ、焦げた・・・」
「良いんじゃね?生焼けよりは」
「それもそうか」
最後も焼き終わり、ウルを起こしに行く。
「ウール、起きてるか?夕飯だぞ?入るぞ」
ベッドの上で座っているウルが居た。
「今、行こうと思ってたんですが・・・」
「しんどいか?」
「いえ、大丈夫です、行きます」
「ん、一緒に行こうぜ」
手を握る。熱いな。
「まだ熱あるみたいだな」
「いえ、そんな・・・」
「どれ?」
おでことおでこをくっつけて測ってみる。いきなりのアップにドキドキするウルキオラ。
「んーあんま、ねえな。食欲は?」
「ふっ、普通です」
「そうか、良かった」
食卓に着くと、
「あっ、来た!ウル兄平気?」
「ああ・・・」
「ふーん、顔色は戻ったな」
「はい」
「さっさと喰え、血が足んねえんだよ、お前は」
「はい、いただきます」
「ほら、お前らも食えよ、折角作ったんだから」
「うん」
「ああ」
全員にご飯と味噌汁を配って一護が「いただきます」
というと他の3人もそれに倣って「いただきます」と言い食べ始めた。
「い、いただきます」
「いただきます」
パリッと焼けたギョーザが美味しかった。
「美味しい!一護ー、俺こんなん初めて喰ったー」
ロイがパクパク食べている。
「そっか、良かったな。イールは?口に合うか?」
「ん、美味い。何でだ?」
「さあ?愛情の賜物?」
どんどん食えよ、無くなっちまうぞ。と笑った。一番食べてないのは一護なのに・・・。
「いっちー、ご飯おかわりー」
「俺も」
「はいよ」
「ウル、味噌汁いけるか?」
「はい、おかわりを」
「良し!後は?」
「あ、俺もー」
ロイだ。
「なんだ?きらいじゃなかったのかよ?」
渡しながら一護がからかう。
「だって、一護の味噌汁おいしいもん」
すごく嬉しそうに笑う一護。
「そうだよー!いっちーのご飯はね、世界一なの!」
やちるが自慢する。
「大きくでたな、やちる」
「その割にゃ、焦げてんな」
「うっせーよ、剣八!一言多いの!おかわりは?」
「ん」
とお椀を差し出す。
「はい」
受け取りながら、
「お前も喰えよ、さっきから喰ってんのか?」
と言いながら一護の皿にぽいぽい入れてくる。
「く、食ってるよ!心配症」
「へっ!そりゃどーも」
「ウルは?食えてるか?」
「はい、大丈夫ですよ」
と茶碗の中身は空だった。
「おかわりは?まだあんぞ?」
「いえ、もういいです」
味噌汁を飲み終え、
「ご馳走様でした、部屋に帰ります」
「一人で大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
部屋に帰るウルキオラ。
「お前らおかわりは?イール、ロイ?」
「あ、貰うー」
「俺も・・・」
にっこり笑って受け取ると、山盛り盛ってやった。
「うわっ、すげ、食えっかな?」
「食える、食える、男の子なんだから。はい、イール」
「うおっと、すごいな」
「お袋、俺も」
「ほい」
これまた山盛り。
普通に食べるグリに剣八。案外食べれた二人。
「ふー、もう入んない!ご馳走様、一護」
「ご馳走様でした」
全員食べ終わった。
「はい、お粗末様でした。なっ、残んなかっただろ?」
「ほんとだ、すげえ」
剣八とやちるに食後のお茶を出し、三人にコーヒーを出した。
「良く喰うガキだな、おもしれえ」
ずずっとお茶を啜りながら言う剣八。
「なんで?」
「あん?たいがいの奴はうちに来ても喰わねえからな。一護も張り合いねえんだよ」
「ふうん、じゃあ食べて良かったんだ」
ニッと笑うと欠けた歯が見えた。
「まあ、喰わねえ奴よりゃ俺は好きだね」
「いっちーは?」
「ウルキオラんとこ行った」
とグリ。
「妹?名前は?」
「あたし?やちるだよ!」
「俺はロイ。よろしくな」
「イールフォルトだ、イールと呼んでくれ」
「うん、よろしくね!」
「小さいのも居んじゃん」
「最初から居たぞ」
「あたしはねー、剣ちゃんに拾って貰ったんだよ!」
「え、そうなの」
「うん」
「へえ、初耳だ」
「言ってねえからな、どうでもいいし」
「そんなもんなの?」
「ああ」
「何の話だー?」
一護が戻ってきた。
「ああ、やちるを拾った話だ」
「ああ、まだしてなかったっけ?まあいいや」
「軽っ!何それ」
「ん?良いんじゃね?もう家族なんだし」
開いた口が塞がらない二人。
「それより帰んなくて大丈夫なのか?遅いと親御さん心配するだろ?」
「あ・・・、うん」
「そうだな、お暇するか・・・」
「玄関まで送るよ」

「そういやぁ、お茶の淹れ方教えて無いな、また暇な時にでも来いよ、連絡は入れろよ?」
「ああ・・・」
玄関に着いた。
「じゃ、またな一護」
「またな、ロイ」
「また、来るぞ、一護」
「ああ、気をつけて帰れよ?今日は楽しかったよ、美味しそうに食べてくれて嬉しかった」
「いや俺らこそ、ご馳走になって」
「じゃあな」
「バイバイ」
「バイバイ」
手を振り、送り出す。見えなくなるまで見送って、扉を閉めて鍵を閉めた。

「ふー!騒がしい奴らだな」
「学校でもあんなだよ」
「ふふっ、元気でなにより、おやすみ、さて片付けるか」
グリは部屋に帰った。
キッチンは片付いていた。
「誰だ?剣八か?」
「ああ、さっさとやった」
「サンキュ、明日、仕事は?」
「非番だ・・・」
にやりと笑った。やばい気がする。
「ガキも休みだろ?丁度いいだろ」
「何が・・・」
「お前が寝坊しても誰も困んねえだろうが、ん?」
「やっぱりかー!」
「とは言っても、俺も鬼じゃねえからよ」
「?な、何だよ?」
「隊舎に行くぞ。人払いも済んでるしな♪」
「ふざけんな!子供だけになっちまうじゃねーか!」
「やちるがいんだろうが、見られていいなら俺は別に構わねえぞ?手加減しねえし」
「ぐっ!キッタネぇ!」
「何とでも言え、おあずけばっか喰らわせやがって・・・、覚悟しろよ」
一護・・・。と耳元で囁かれた。







09/01/13作
この後「非番の日」に続きますヨ。エロ親父



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