題「とある日常」
朝食後、一護がグリムジョーに言った。
「そういやぁ、お前こないだ友達連れてきたいとか言ってなかったか?」
「ん?あぁ、言ったけどよ」
「明日から、土、日だし連れて来いよ」
「お母さん、病み上がりなんですから無理しないで下さい」
ウルキオラが窘める。
「もう大丈夫だよ、心配症だなぁウルは」
そう言って笑った。

「では、行ってきます」
「いってきゃーす」
「ああ、ウルちょっと待て」
「はい」
ふわっと首に巻かれたのは、毛糸のマフラーだった。ビリジアン・グリーンと薄いベージュのストライプ模様だ。
「帽子もあるんだけど・・・」
「あの、もしかして、手編みですか?」
「ん、不格好かな?嫌ならいいんだけど」
「とんでもない!嬉しいです!」
「そか!良かった!」
いつの間にか帽子も被っている。
「きつくないか?」
「丁度いいです。ありがとうございます、お母さん」
お礼を言うとくすぐったそうに笑った。ウルの隣りのグリが仏頂面で見てくる。
「グリのは今編んでんだ。心配すんなよ」
「なっ、してねえよ!馬鹿にすんな!」
「してねえよ。二人とも気を付けてな」
「はい」
「ふん」
やれやれと一護は一緒に渡せば良かったなぁと思った。

「おい、グリムジョー。お前は本当にあの2人を家に、母様に会わせるのか?」
「あん、文句あっか?」
「大ありだ。どういう事になるのか分からんのか?」
「何言ってんだ」
「はあ・・・、あの2人と俺達には共通点が合っただろうが・・・。認めたくないがな」
「共通点?なんだよ」
「馬鹿が・・・、俺達は、孤児だが、アイツ等は家族が居ても、あまり愛されていないだろう?」
「あ・・・」
「やっと気が付いたか?そんな奴らがあの人に会ったらどうなる?間違いなく入り浸るぞ」
責任持てよ。と言うと自分の席に着いた。
「ヤべえ・・かな?」
お袋は分け隔てなく接するからな、勘違いするかもな。
俺も、多分あいつも初めてお袋に会って、愛されて(自惚れじゃないよな)、離したくなくなった。無くすのが怖くなった。
誰にも取られたくねえ・・・。でももう、お袋は、親父のもんだ。
「まっ、いいか、何とかなんだろ」
イールの方に行き、話し掛ける。
「おい、イール、お前うちに来たがってたな?」
「ああ、まあな」
「お袋が、土・日のどっちかに来いってよ」
「ほお、では明日にでも行こう。土産はケーキで良いな」
「お前そんなに紅茶好きなんだな」
「ん。まあな」
「なになに、何の話?」
ロイが混ざる。
「イールが明日うちに来るって話と紅茶好きだって話だよ」
「俺も行く!俺も俺も!」
「うるさい、耳元で騒ぐな、カスが!」
「来たきゃ勝手に来いよ、2時ごろで良いだろ?」
「ああ、丁度良いだろう」
遠くの方からウルキオラが睨んでいた。

「ただいま帰りました」
「ただいま」
「おう、お帰り!二人とも・・、ん?ウルどうした?」
「はい・・?」
「顔赤いぞ」
「どこが?いつもと変わりねーじゃん」
「どれ」
一護がウルの額と首筋に手をやり、熱を測る。
「やっぱ、ちょっと熱っぽいな。ほら二人とも手洗い、うがい!1,2,3!」
ふたりの上着を受け取って洗面所にせっつく。
グリムジョーが見ても全然分からなかったウルの顔色を一目で見抜いた母一護に改めて脱帽した。
「なんだ、さっきから」
「別に、何でもねえよ」
「ならじろじろ見るな気持ち悪い」
「このやろっ!」
「あっ、ウル。食欲の方はどうだ?何か食えそうか?」
「あまり無いので・・・。このまま寝ます」
「だ〜め〜だ!何でも良いから少しでも腹に入れてから薬飲め、リンゴの摩り下ろしたやつ食えるか?」
「あ、ハイ、すいません」
「じゃあ後で、部屋に持って行くから」
「ありがとうございます」
「良いって、こんな事で礼なんか言うなよ」
ウルの頭を撫でながら言った。
「あのよ、お袋明日、連れが来るけど良いか?」
「ん?良いけど、静かにな?ウルがあれだから」
「・・・分かった」
「よし!良い子だな、グリは」
くしゃくしゃと髪を撫でられた。一護がキッチンに行き、リンゴを半分摩り下ろした。蜂蜜とレモンも加える。
「ん〜、こんなモンかな?」
かき混ぜながら味を見る。お盆にソレと、水と薬を乗せてウルキオラの部屋に行く。扉をノックして、
「入るぞ?ウル」
「はい」
「おっ、ちゃんとパジャマに着替えてたな。偉い偉い、替えのパジャマも出しときたいんだけど良いか?」
「はい、すいません・・・」
「だ〜か〜ら、こんな事で謝んなよ、子供なんだから、こんな時は甘えとけ」
よしよしと頭を撫でてやり、
「起きれるか?」
「何とか・・・」
上半身を起こす。
「水と薬も持ってきたから、飲んだら寝ろな?」
「・・・はい」
「ほら、あーん」
「なっ、い、いいです!自分で食べれます」
「いいから、ほら?」
押し切られ、口を開く。甘すぎず、優しい味のするリンゴだった。
「どうだ?食べれるか?」
「はい、とても美味しいです」
「良かった。兎に角何か食べて薬飲まないとな」
次の一口を運んでやり、全部食べれた事を一護は喜んだ。
「次は薬な。粉薬だけど、飲めるか?」
「小さい子供ではないですよ」
くすっと笑いながら受け取り飲み下した。一護がタオルをウルの首に巻きながら、
「汗が出るからな、冷えるといけないし。水差し持ってくるな」
と言って部屋を出て行った。ベッドに潜り込んだウルは、病気なのにあんまり心細くないのは初めてだな、と思った。
キッチンに行くとグリが居た。
「何やってんだ?こんなとこで」
「お袋こそ、今まであいつんとこで何してたんだよ」
「何って、薬飲ませてたけど・・・」
「ああ、そうかよ」
「何だよ?で、明日何時ごろに来るんだ?お前の友達」
「あー、2時頃つってた」
「ふうん、晩飯は剣八達、今日は定時だから帰ってから一緒に食おう」
「おう・・・」
水差しに水を入れ、ウルの部屋に持って行く。
「入るぞ、ウル」
「は、い」
「ああ、ワリィ、寝入り端だったか」
「ふ、ぁ、いえ」
「無理すんなよ、寝るまで此処に居て良いか?」
「え?あの、そんな、忙しいでしょう?」
「飯の用意はもう終わってるよ。後は剣八達が帰って来るのを待つだけだ」
「そ、うですか、ではお願いします。俺も嬉しいです・・・」
「そうか、良かった」
一護はベッドの脇に椅子を持ってくるとソコに座って編み物を始めた。
「それは、グリムジョーのマフラーですか?」
「ん?ああ、本当は出来上がって一緒に渡そうかと思ったんだけどな、お前昨日咳してたろ?」
「そうでしたか?」
「うん、だから先にと思ってさ」
「ありがとうございます」
「良いって」
笑いながらも手は休めない。毛糸の色は、白と水色と黒のマーブルだ。
「水色だけだと寒い感じがするからな、良いのがあって良かった」
「そうですね・・・」
もうウトウトして話が続けられない。一護は鼻歌を歌いながら、編み続けた。

剣八達が帰ってきた。
「おう、帰ったぞ。一護?」
「いっちー?」
「あ、帰ってきた」
「あ、ねえ、グリ兄いっちーはぁ?」
「ウルキオラの部屋に入り浸り」
「あん?なんだそりゃ」
「熱出したから」
「ああ、なるほどな」
「じゃあ、しょうがないねぇ」
そこに一護が現れて、
「お帰り、剣八、やちる。悪い出迎え遅れて」
「いい。で、ガキの調子はどうなんだ?」
「ん〜、今んとこ、熱だけなんだけど、リンゴ食べたから薬飲ませて寝かせてる」
「そうかよ」
「で、お前らは、手洗い、うがいはしたのか?」
「・・・今からだ」
「早くしろ、すぐ飯にするから」
「おう」
「分かったー」
「ったく、あんがとなグリ」
「なにが?」
「説明しといてくれて」
「別に・・・」
「グリ、お前帽子はどうする?何色が良い?」
「へっ?帽子って・・・。ああ、要らねえ、マフラーだけで良い。俺帽子嫌いだから」
「そうなのか?」
「髪がぐしゃぐしゃになるからな」
「ああー、なるほどな。その割に俺が触っても怒んねえな、今度から気を付けるか」
「別に、良いよ。そういうのはすぐ直んだろ?」
何故か慌てて言うグリに、
「そっか!良かった!」
と笑い返した。
「何やってんだ?こんなとこで」
「お腹空いたよ、いっちー今日のご飯なあに?」
「寒いからな、鍋にした。しゃぶしゃぶだけど良かったか?」
「うん!美味しそう!」
「ほお、酒はあんのかよ?」
「はいはい、燗するのか?」
「そのままでいい」
「了解、ほらグリ、飯喰おうぜ」
「ん、アイツは?いいのか」
「ウルか?胃にきてるみたいだから、後で何かお粥でも作るよ」
「・・・ふうん」
「どうした?気になるのか」
「べっつにー」
「ははぁん、一護、こいつ自分が倒れた時の事忘れてるぞ」
「はん?ああ、来てすぐの時の」
「・・・俺倒れた事あんのかよ?」
「やっぱり忘れてやがる・・・。まあいい酒の肴に話してやらぁ」
ニヤッと笑って剣八はグリが倒れた時の事を酒を飲みながら話した。
「嘘だろ・・・」
自分が倒れた事自体忘れていたのに・・・。
「ほんとだよ。俺が一晩中傍で診てた」
くいっと酒を飲んで剣八が、
「ちょっとでも一護が傍を離れたら泣きだしやがって」
くくっと笑いながら言った。
「ぜってー嘘だぁ!」
「ほんとだよお」
「おい、あんまいじめんなよ。あんなに熱出してたんだから、しょうがねえだろ」
「熱だったのか?」
「ああ、40度は超えてたぞ。意識もあやふやんなるだろ」
「それからだ。外から帰ったら手洗い、うがいって喧しくなったなぁ」
「当たり前だ、自分の子供がそんな事になったんだぞ!うるさくもなるわ」
「ワリィ、お袋・・・。忘れてて・・・」
「なにが?良いよ別に。でも手洗い、うがいは忘れんなよ。それと明日は静かにな」
「・・・ん」
「明日何かあんのー?」
「グリの友達が来るんだよ」
「へー、初めてだねぇ」
「ん」
食事の後、一護はウルの部屋に行き、水を飲ませた。
「折角寝てたのに悪いな、食欲は?どうだ?」
「いえ、まだ・・・。先程は何か楽しそうでしたが」
「ああ、グリが倒れた時の事を剣八がからかってな」
着替えを手伝い背中の汗を拭いてやる。全部の着替えを終え、蒲団に戻る。
「まだ、熱いな。苦しいか?」
「いえ、それほどは・・・、お母さんが居ると安心します」
「ふふ、嬉しい事言ってくれるな。でもすぐに治してくれよ?元気な姿の方が何倍も嬉しいからな」
「はい」
汗で額に張り付いた髪を梳いてやり、冷却シートを貼ってやる。ふっと立つと、くいっと袖を引かれた。
「洗濯物、持って行くだけだ。すぐ戻るよ」
優しく笑って、頬を撫でてやった。ほっとした様に手を離すウルキオラ。パタパタと足音が遠のいていく。
「剣八、明日って卯ノ花さん呼べるか?」
「あぁ、無理かもな。結構忙しそうにしてたぜ。向こうも怪我人やら出たからな」
「そうか、じゃあしょうがねぇな。うちの親父に来てもらうか・・・」
「嫌そうだな、確かにテンションは高ぇが腕は確かだろ?」
「まあな、後で電話しとくよ」
一護が実家に電話をかけた。
「はい、黒崎医院です」
「あ、遊子か?俺一護だけど・・・」
「あ〜!お兄ちゃん!どうしたの?久し振りだね、元気にしてた?」
「おう、俺は元気だよ。それより親父居るか?」
「え?いるけど。どうしたの?」
「うん、うちの子供が熱出してさ。明日往診に来てもらえるか、聞こうと思って」
「分かった。ちょっと待っててね。『お父さーん、お兄ちゃんから電話だよ』」
『何ぃ!?』
どたどたと足音がして、いきなり大音量で、
「いっちごー!元気だったかー!父さんは、心配で心配で夜も眠れんかったぞー!」
「嘘付け!つうかうるせえ!話を聞けえ!」
「む?そういや何か用か?こんな時間に」
「ああ、うちの息子が熱出したんだけど、明日往診頼めるか?」
「息子が熱?あの水色のか?」
「いやもう一人の方。今は意識はっきりしてるけど、食欲無くてリンゴ摩り下ろしたやつ食わせて薬飲ませたけど」
「そうか、別に今からでも構わんぞ。父さんは。遊子も夏梨もお前に会いたがってるしな」
「そっか、頼めるんなら頼む」
「じゃあ、今から行くから、旦那さんによろしく言っといてくれ」
「一言多いんだよ!頼んだからな!」
電話を切り、剣八に報告する。
「今から来てくれるって、じゃあ、俺ウルの部屋にいるから来たら呼んでくれ」
「分かった」

「ウル、入るぞ?」
ウルキオラは眠っていた。その傍に座ると額や顔の汗を拭いてやった。
「俺が出来る事って少ないよなぁ・・・」
そう呟いてウルキオラの髪を梳いていると呼び鈴が鳴った。
「来たか?」
がらら、と戸が開いて何やら喋っている。コンコンとウルの部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
「入るぞ、一護。患者はどこだ」
「ここ、今寝てる」
「ああ、この子か。それにしてもお前良く分かったな」
「何が?」
「こういうタイプは内に熱が籠りやすいから倒れるまで本人も分からん場合が多いんだ」
「へえ、でもグリは?あいつもいきなり倒れたぞ?」
「あれは、一気に出るタイプだな。まぁ、お前も親になって来たんだなぁ。父さんは嬉しいぞ!一護ー!」
「うるせえ!ヒゲダルマ!病人の前だろ!早く治療しろ!」
「う・・・、おかあさん?その、ひとたちは?」
「あ、目ぇ覚ましたか?うちの親父と妹。医者やってっから来てもらった」
「すいません、おれの、せいで」
「いいんだよ、病気の時ぐらい我が儘言えよ」
一護が頭を撫でる。
「はいはい、じゃあ診察始めるから出てった出てった」
「分かったよ、後は頼むな。親父」
「まっかせなさーい!」
パタンと扉を閉めて廊下で待つ一護。
「何やってんだ?一護」
「診察だって追い出された」
「ねぇ、いっちー?大丈夫だよ、グリ兄の時だって診てくれたじゃん」
「うん。でもそれでも心配なんだよ。いつもお前らの心配もしてるよ。帰ってくるまで心配だよ」
「なんだ、信用ねえな、そんなに不安かよ?」
「そういうんじゃないよ、これは。信用はしてるし、絶対帰ってくるって信じてる。それでもやっぱり心配は尽きないんだよ」
「ふ〜ん、そういうもんかね」
「いっちーは、それだけあたし達が大事って事?」
「うん。大事だよ。自分よりも大事。だから・・・」
「ああ、分かった。悪かったよ」
「わかりゃいい・・・」
部屋の中。
「おーおー、いちゃついてるねぇ」
「夏梨ちゃん!」
「さてと、食欲がないって話だけど、点滴とかどうする?1時間分だけしとくか?熱で奪われたエネルギーは摂取できるぞ」
「お願いします」
「しっかし、極端な兄弟だなぁ。いくら血の繋がりが無いにしても真逆も良いとこだな」
「?、はあ?」
「性格に、体質、喋り方、唯一同じなのは一護を信用してるとこだな」
「・・・母ですから」
「そんな一言で済ませらんねぇだろ?お前らの感情はよ。お前は弁えてるけど水色がなぁ。まっ、あの旦那じゃ無理だがな」
「それに一兄も気付いてないよ、アレは」
「母は、母です。俺は傍に居られれば、それでいいです」
「幸せモンだな、アイツは」
「それは俺も同じ事です、アイツも。あの人の家族になって漸く俺達は人になれた気がします。あの人を産んでくれた方に、育ててくれた方にお礼が言いたい」
「いや、おい・・・」
ウルキオラは一心と双子の妹に向きなおり、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「・・・点滴の針刺すから、寝てくれ」
「はい」
手早く針を刺すと一心は、
「ありがとうな、あんなガキを慕ってくれて。俺もお前らのお祖父ちゃんに昇格してえな」
「そう思っても宜しいのでしたら、喜んで。あの人といると家族が増えて嬉しいです」
「そうか、よかったな。叔母さんも二人増えたぞ」
「ええ、でもまだお若いから、姪のようです・・・」
すうすうと寝息が聞こえ始めた。
「良かったな、お前らのお兄ちゃんは幸せだし、他の人も幸せにしてる」
「うん、良かった・・・」
「まあね・・・、叔母さんねえ、言ってくれんじゃん?ヒゲダルマ・・・」
「いやだって戸籍の上じゃそうじゃん?」
「まあいいや。うちら泊まってこうかな」
「父さんも!」
「ヒゲは病院があるだろ!」
ギャーギャー騒いでたら、ドアが開けられた。
「おい、診察終わったのかよ?そんなに騒いでっと体に触るだろ?」
「一兄、今日泊まっても良い?」
「え?別に良いけど?病院は?」
「ヒゲは帰るって」
「ずるいぞ!夏梨ちゃん!パパだって久し振りに一護と遊びたい!」
「やかましい!診察終わったんなら部屋から出てから騒げ!」
「は〜い」
全員でキッチンに移動。妹にココアを父親にコーヒーを出した。
「で、どうだった?ウルの様子は」
「ん?ああ大丈夫だろ。今点滴してるから一時間たったら終わるからよ」
「そうか、ありがと助かった。いくらだ?」
「明日計算して電話する」
「分かった」
「なんだ甘い匂いだな」
「あ、グリ」
「お袋、誰だそいつら」
「俺の親父と妹だ、医者やってっから来て貰った。因みにお前が倒れた時にも来てもらってるぞ」
「そうなのか」
「久し振りだな、え〜と・・・」
「グリムジョーだよ」
「ああそうだ!元気そうでなによりだ」
「どうも・・・」
妹の方を見る。二人とも何が面白いのかニコニコしてやがる。
「何か可笑しい話でもしてたのか?」
「いや?なんで?」
「こいつらこっち見て笑ってるから」
「ああ、俺の息子だから興味あるんだろ、こないだは寝込んでたしな」
「ふーん・・・、そんなもんか?ガキにゃ泣かれる事が多いから分かんねえ」
自分の席に座る。
「あ、そうだ泊まるの良いけど着替えは?あんのか?」
「あ、忘れてた〜、ちぇ、つまんないの」
「冬休みになったら来いよ、このお兄ちゃん達に遊んでもらえ」
「ほんと!やったぁ!やったね、遊子!」
「うん!夏梨ちゃん!」
ピピッ、ピピッ!と機械音がした。
「お、もう1時間経ったか」
「俺も行く」
ウルキオラの部屋に行き、終わった点滴を取り外す。
「良く眠ってるな・・・」
「ああ、明日にはだいぶ良くなってるだろ。今夜はこのまま寝かせとけ」
「そか。良かった」
ウルの髪を撫でながら、
「俺がこいつ等に出来る事って少ないよなぁ・・・」
ポツリと呟いた。
「一護・・・、良いか、親ってのはそこに居るってだけでも子供にとっちゃ支えになるんだ。だからそんな事言うんじゃねえ」
「親父・・・、そうだよな、不安にさせちゃ駄目だよな」
「そうだ、お前にはまだ甘えられる旦那が居るんだから、疲れたら甘えとけ」
「・・・おう・・・」
「じゃあな、ああ、金はいつでも良いぞ」
「そういう訳にいかねえよ、でも明日はちょっと遅くなるかもしんねえ。客来るから」
「そうか、じゃあな、一護」
「じゃあね、一兄」
「おやすみ、お兄ちゃん」
「おやすみ、気をつけてな」

「さて、俺らも寝ますかね」
キッチンに行くと、洗い物が片付けられていた。
「あれ?誰がやってくれたんだ?」
「俺だ」
「剣八が?ワリィ、疲れてんのに・・・」
「あほ、お前のが疲れてんだろ。今のうちに風呂入れ」
「うん、ありがと」
風呂に入り、疲れを取る。
「ふ〜〜、気持ち良かった」
寝室に帰ると剣八に引き寄せられた。
「うおっと」
「ちゃんと髪乾かせ、風邪引くぞ」
ガシガシと髪の水気を取られた。
「わっぷ、あ、んがと」
「ほれ、寝ろ」
「ん・・・」
もううつらうつらしている一護を腕に抱き、自分も眠る剣八。

第2話へ続く




08/12/30作 39作目です。ちまちま書いてて時間掛っちゃいました。

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