題「変化」第6話 | |
俺は今、閉じ込められている。どうやら地下室みたいだ。明かり取り用の窓以外に外の様子が分かる物はナイ。 地下である以外は普通の部屋だ。風呂もあるしトイレもある。 俺を此処に連れて来たのは当然、剣八。原因は別れようとしたから。すごく怒って自室に連れて行かれて、気絶するまで犯された。 それから何日経つのか詳しく分からない。カレンダーも時計も無い。時間を知る手立ては、飯と、太陽の角度と、月の満ち欠け。それと剣八の訪れる時間、何故かキッチリ同じ時間だ。一緒に夕食を食べて、風呂に入る。あれ以来ひどい事はしない。 体調が悪いと言えば、無理に抱かないで添い寝して髪を撫でてくれる。今日あった事とか教えてくれるし、抱く時も優しい。 「なぁ剣八、カレンダーとか、くれないか?」 「日にちが分からねえと不安か?」 「少しな、お前が居ないと俺一人だろ?」 「・・・明日持って来てやる」 「ありがと」 「帰ったぞ」 「ん、おかえり」 「何やってんだ、そんなとこで?」 俺は明かり取りの窓の下で大の字に寝転んでいた。 「んー?月・見てた」 「ふーん、おい一護、言われてたカレンダー持って来てやったぞ」 起き上がって剣八の元に行き、 「ありがと」 と言ってキスをする。 「おう、飯だ」 と言って膳を運んだ。食事が済んで風呂に入って、後は蒲団に入る。 「一護、来い」 「ん」 ちゃんと優しい口付けから始まる。 「ん、んふ、ぁん、剣八・・・」 チュ、と音を立て離れる。 「一護・・・」 まるで壊れやすい物でも扱うように優しい。 「なんか、最近剣八、優しいな・・・」 「俺はいつも優しいだろうが」 「そういや、そうだな。ん・・・、気持ちいい・・・」 「お前は感じやすくなったな、痛がってたのによ。前と後ろどっちが好きだ」 「う〜」 「ほれ、言えよ、一護?」 「う・・・、どっちもって言ったら・・、怒る?」 上目遣いに見上げて聞いてみた。 「別に怒んねえけどよ・・」 「けど・・?何だよ?」 「満足させるのが大変だと思ってな」 くくくと低く笑った。 「なっ!しょうがねぇだろ!どっちもお前が開発したくせに!」 「ああ、そうだったな。ワリィワリィ」 まだ笑ってる・・・。 「淫乱な方が好き?なら頑張るけど・・・」 「一護?」 一護は剣八自身に口付け様としたが止められた。 「待て待て、嬉しいけどよ無理だろ」 「だって・・・」 「だってじゃねえよ、追々覚えて行けよ」 親指の腹で唇を撫でられる。 「ん、んん!」 それだけでぞくぞくした。あぁ、やっぱり俺は・・・。 「それと、淫乱なんて言うんじゃねえ、いいな」 「だって、俺」 「俺だけに感じてんだろうが、惚れた奴に感じるのが淫乱かよ?」 「う、お前が言ったんだろ?大体自分で言うか、惚れた奴って」 「んだよ。違うのか」 不貞腐れる剣八が可愛いと思ってしまった。危ねえ。俺は笑って、 「調べてみろよ・・・?俺の身体、お前がさ・・・」 ふふっと笑うと、 「上等だ」 って俺の弱いトコばっかり攻めてきて何にも分かんなくなった。 「あ、あふ、け、剣八、駄目、もう、イ、イク!」 「ああ、イケよ、俺もイクからよ・・」 「うん、うん、んあっ、ああっ!ああぁー!」 びくびくと締め付ける。奥に剣八の熱が出された。 「んああ、熱い、気持ちいい・・・」 「くう・・・」 最後の一滴まで中に注いだ。 はあ、はあ、とお互いの息も荒い。一護はうとうとしかけていた。髪を梳く剣八の手が気持ち良い・・・。 こんなに気持ち良さそうな顔するクセにやめろとか言うしよ・・・。剣八は一護に、 「一護、他に何か欲しいモンはねえのか?」 「ん〜・・・、子供・・・」 「・・・」 「冗談だよ。今は物は無いから、時間が欲しいな・・・」 「一護・・・」 剣八は一護の左手を取ると、薬指の付け根まで咥えて噛んだ。 「痛っ!なにする・・」 「次はお前だ。一護」 自分の左手を口許に持っていく。躊躇する一護に、 「早くしろ」 と薬指を入れた。 「ん・・・」 思わず舌を這わせてしまった一護が慌てて噛んだ。 「もっと強く噛めよ。後が消えない様にな」 自分の指もかなりの強さで噛まれたのを思い出してこれくらいか?と噛んでやった。 「よし、もう良いぞ」 引き抜くと一護が舐めてきた。苦笑しながら剣八は一護の左手を取って説明した。 「指輪なんてガラじゃねえからな、これで勘弁しろよ」 「へ?指輪?ってもしかして・・・」 みるみる赤くなる一護の顔。指を見る。くっきりと跡が残っている。剣八の薬指に口付けた。 「嬉しいよ・・・。ありがと」 剣八の耳元で小さく、 「旦那様」 と囁いた。途端に抱き締められた。 「風呂入るぞ・・・」 「うん・・・」 身体を洗い終わって湯船に浸かる。いつものように後ろから抱きかかえる形で入る。 「少し重くなったな」 「そうか?」 「ああ、心配ばっか掛けんだからよ、俺の女房はよ」 こめかみにキスしながら言った。一護は首まで赤くなりながら、 「ごめん・・・」 「まぁいいさ、この手に居りゃあな」 一護の腰に回した手に力を込めた。 「なあ、もう出よう、のぼせる」 「そうだな、寝るか」 「ん・・」 二人で一緒の蒲団で眠る。 朝、起きて、飯を食ったら剣八は出勤。ここまでっていう所まで一緒に行って見送る。 「剣八、いってらっしゃい」 「おう」 その後は一人きり。何をするでもない時間だけが過ぎて行く。たまには俺が飯でも作ろうかなとか考えてたら、雨が降ってきた。 一人きりで雨の音を聞くのは嫌だったから、窓を閉めた。部屋には、水と土と草の匂いが混ざった空気が満ちていた。 ああ・・・、嫌だ。この部屋に居たくない!でもどこに行けばいいのか分からない。その内雷が鳴り出した。最悪だ。 俺は、蒲団を出してきて、それに包(くる)まって廊下で丸くなった。幾らかマシで眠くなった。 俺は揺さぶられて起こされた。 「誰・・・だ?」 「俺らだよ」 一角と弓親だ。なんでここに? 「お前何してんだ?こんなとこで?」 「別に良いだろ・・・、お前らこそなんでここに居る?」 「隊長に言われて様子見に来たんだよ、一護君雨に弱いって、心配してたから」 「ん、あんがと。剣八は?」 「まだだよ。少し遅くなるかも知れない」 「・・・なんで?」 「ちょっとね、野暮用だよ」 「なに?なんか隠してる?」 「隊長が見合い断ったから総隊長から説教食らってんだよ」 「え・・・?断った・・・?」 「ああ」 「な・ん・で・・?」 「はあ?お前が居んのになんで他の女と一緒になるんだよ?バーカ」 「おれのせい?」 「あ?」 「おれのせいで、おこられてるの?」 「一護?」 「おれがわるいの?剣八・は?どこ?」 「だから・・・」 「剣八・・・?いや、どこ?置いてかないで!どこにも行かないって言ったのに・・・、離さないって言った!剣八!」 「おい!落ち着け一護!」 一角が押さえつける。 「いや!いや!剣八!触らないで!剣八!」 「何してんだ、一角」 「隊長!」 「剣八・・・!」 「よもや俺の女房に手ぇ出したんじゃねえだろうな?」 「違・い・ま・す!興奮してたんで落ち着かせようとしただけです!ったく」 「けんぱち・・・、怖いよ、ここに来て・・・」 剣八は一護の前まで行くと蒲団に包まれたままの状態で抱き上げた。居間に行って胡坐の中に一護を納める。 「雨が怖かったのか?」 「うん・・・、音も・・・、匂いも嫌・・。剣八の匂いだけで良い・・・」 「あのー、俺ら帰って良いんスよね?」 「ああ?折角だゆっくりして行け。一護もお前らに久し振りに会ったんだ、話ぐらいしたいだろ?」 「うん、聞きたい。外はどんな風になってるの?やちるは?元気?」 剣八が帰って来て、落ち着いた様に見える一護。だが違和感を感じた二人。 「あ、ああ、元気だよ。あの人は。お前に会いたがってるな」 「ふうん、ねえ、剣八、会っちゃダメ?」 「んん?会いたいのか?」 「ん〜、やちるは会いたいみたいだから・・・でも剣八が駄目っていうなら・・・、あっ、そうだ、お帰り、剣八」 「おう」 チュッとキスをする二人。以前は人前じゃこんな事しなかったはずだ・・・。 「何か飲む?お酒あった?」 「いいから、ここに居ろ」 「でも、お客さん・・・」 お客さん? 「良いつってんだろ?」 一護の唇に親指を押しつける。 「ん・・・」 大人しくなる一護。 「外じゃ結構騒ぎにはなったぜ。お前居なくなるしよ・・・、大丈夫かよ?お前」 「何が?普通だよ。普通に幸せ」 「幸せって・・・」 「一角・・・」 弓親が首を横に振る。今の一護の眼には何も映って無いだろう。歪んだ世界と幸せ以外は・・・。 その空虚に実を埋める事が出来るのは剣八だけだ。それでも、埋めても埋めても空(から)になるのだ・・・。 「僕らは帰ります。明日は非番ですので、ごゆっくり休んで下さい」 「ほんと!剣八、お休み?」 「ああ、1日一緒だな一護」 「わあ、嬉しいなぁ、何するの?何して遊ぶ?本読むの?わぁ、楽しみだなぁ」 子供の様にはしゃぐ一護に、ぞくっとした一角。 「お前・・・」 「なあに?一角も遊ぶの?」 首を傾げて聞いてきた。 「い、いや、邪魔しちゃワリィから遠慮する」 「そう」 「いい心掛けだ、一角」 「はい・・・」 ああ、分かってるんだ、隊長も。一護が壊れかけてる・・・。見えないヒビで埋め尽くされていく一護。なのに笑うのだ。 「お前ら、ここの事誰にも言うなよ・・・」 「分かってますよ・・・」 そう言って帰っていく二人。 「またね」 一護が声を掛ける。痛々しいとしか言えない。 「俺らじゃ、何にも出来ねえんだな・・・」 「うん、隊長に任せるしかないんだね・・・」 二人は同時に溜め息をついた。 「珍しいね、今日はお客さんが来た」 「そうだな、飯にするか。腹へってるか?一護」 「うん、食べる」 その後いつもと同じ様に風呂に入り、床に就いた。 「あん、ふふ、やちるみたいにいい子が出来れば良いのにな・・・」 「一護・・・、良いじゃねえか、やちるが居るんだ」 「うん、でもごめんな、見合い断ったんだってな」 「ああ、端っから受ける気はなかったがな」 「ふうん、でも怒られたんでしょ?俺のせいで・・・」 「別にお前のせいじゃねえ、気にすんな」 「でも・・・」 「そんなことより、ほれ指の跡消えてきた。噛めよ」 「ん・・、俺のも噛んで?」 「ああ」 二人同時に噛んでは跡を付けた。うっとりと眺める一護。 「ふふ、どんな宝石よりうれしいよ」 「あん?なんでだ?」 「だって、石は買えるし、誰からでも貰える。でもこの跡はお前からしか貰えないから」 「そうか、嬉しい事いうな、もう寝ろ。疲れただろ?」 「ん・・・、眠い・・・」 剣八の胸に擦り寄って眠りに就く一護。髪を梳きながらその寝息を聞いた。 ふと冷たい風に目が覚めた剣八。一護が風邪をひかない様に蒲団を掛けようとしたが、隣に一護が居なかった。 「一護?」 周りを見回すと、明かり取りの下で月の光に照らされていた。それは、ぞっとするほど美しかった。 「ん?起きたのか剣八」 「ああ・・・、何やってんだ?この寒いのに」 「月見てた、今日満月なんだな。覚えてるか、この身体でお前に抱かれた夜も満月だった」 「ああ、あん時もお前綺麗だったな」 「ふふっ、そんな事言ってたな」 目線を月に戻した一護。首を伸ばして見入るその姿は檻から出たがる鳥の様にも見えた。 「おら、身体冷えんぞ。こっち戻れ」 「ん・・・、もうちょっと・・・」 「駄目だ、来い」 「あん・・・」 強引に蒲団に引きずり込まれた。 「もう・・・、そんな事しなくても俺は逃げないよ?」 「そうだな」 「俺の家はここでしょ?」 「・・・ああ」 「居ても良いんでしょ?」 「当たり前だ」 「良かったぁ・・・」 居心地のいい世界。 温かいしあわせ。 愛しい人はここに居る。 ならば、離れることは無い。 死が 二人を 別つまでは・・・。 第7話へ続く 08/11/11作 壊れてきました一護。元に戻るのか?貴族の女また出ます。 |
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