題「鳥〜とり〜」前半
この日一護は定期報告日で瀞霊廷にやって来ていた。いつもの様に報告を終え、十一番隊に顔を出した。
一角を捕まえ稽古をして、やちると遊んだり甘味処に寄ったりしていたら、夕方になっていた。
「もう帰るか、やちる」
「うん、ねぇいっちー、やっぱり明日には帰っちゃうの?」
「ん〜?ふっふっふ、実はよ、向こうじゃ3連休だから3日は居れるんだ」
「ほんと!やったぁ!じゃあ明日もいっちー居るんだ!」
「おう、明日も遊べるぞ」
はしゃぐやちるは一護と手をつなぎながら、ピョンピョン飛び跳ねた。妹の小さい時を想い出し柔らかく笑う一護。
隊舎へ帰る道すがら、遠くに剣八、一角その他隊士たちが歩いていた。全員私服だ。珍しいなと思ってやちるに、
「剣八達がどこに行くか付いてってみよっか?」
「ほんとだ〜、面白そう、行こう、行こう!」
気付かれないギリギリの距離で、見失わない様についてった。
「あれ?そういや弓親がいねえな?」
やちるはそこで気付くべきだった。彼らがどこへ行こうとしているのか。
「ほんとだ、いつもつるりんと一緒なのに」
嫌な予感がしてきたやちる。もしかして・・・?段々いかがわしい雰囲気の場所に来た。やちるが、
「もう帰ろ!お腹空いたよ。いっちー!」
どこに行くのか気付いたやちるが、一護を止めるが少々遅かった。一団が遊郭に入っていくのを見てしまった。
しばし立ち尽くしていたが、踵を返し隊舎に帰る一護。胸にやちるを抱え、一刻も早くここから離れたかった。

 隊舎に着いてもやちるを離さなかった一護は、
「苦しいよ、いっちー」
と、胸を叩かれ漸く我に返った。
「ワリィ、大丈夫か?」
「うん、いっちーは?」
「俺は、大丈夫だよ、弓親ー、居るか?」
「あ、お帰り遅かったね」
「やちるが、腹減ったってさ。早く食わせてやってくれ」
「ふふ、分かったよ、一護君は?」
振りかえった時、そこには一護の姿は無かった。やちるが、困ったような顔をしていたので聞いてみた。
一護が剣八達が遊郭に入る所を目撃したのだと説明した。
「あ〜あ、隊長も運が悪いと言おうか、自業自得と言おうか」
一応やる事はやってるはずだから、どうなる事やら・・・。

 一護は先程、剣八が入っていった店の二階を見上げていた。何も無い事を祈りながら、きっと酒を飲んでるだけだ。
そのうち、二階の窓が開き出窓の所に剣八が顔を出した。髪は下ろされ、白い襦袢を肩から掛けているだけだった。
気怠い情事後の雰囲気を漂わせ、夜風に当たっていた。後ろから遊女が手を伸ばし、抱き付き頬にキスをしていた。
剣八は嫌がるでもなく、淡々と受け入れていた。
「― っ!!」
それ以上見ていられなくてその場から逃げだした。
「ん?」
剣八は視界の端に橙色の頭を捉えたが、こんな所に一護が居るわけないと思考から追いやった。
隊舎に戻った一護の顔色を見た弓親が、
「大、丈夫?一護君?顔色が真っ白だよ」
心配してくれた。
「平気・・・、もう寝る」
よろよろと歩いて部屋に行く一護を見て、現場を押えられたかな?と思った弓親。

 部屋で寝巻きに着替え、蒲団の中に入ると身体が震えて止まらなかった。
(別に・・・、俺じゃなくても良かったんだ・・・、それよりも俺が負担掛けてたかも知れねえんだ・・・、バカだな、俺・・・)
知らず知らず流れる涙に呆れながらも眠りに落ちていった。
翌朝、剣八が隊首会に行ってる間に縁側で、やちるを抱っこしながら、弓親と話をしていた。
不意に一護が二人に質問した。
「なぁ、二人は剣八を動物に例えるなら、何だ?」
「う〜ん、僕はやっぱり肉食動物で虎・・かなあ」
「あたしも、カッコイイもん」
「ふうん、そうか・・・」
「いっちーは?剣ちゃんのことどう例えるの?」
「俺は・・・、鳥、かな。知ってるか?燕って鳥籠に入れられると死んじまうんだってよ・・・」
「へえ、初めて聞いたよ。でも隊長は燕って感じじゃないなぁ、どっちかって言うと猛禽類だよ」
「そうだな、でもやっぱ鳥は空を飛ばなきゃな・・・」
離してやらなきゃ・・・。空を見上げながら一護が呟いた。
「いっちー?どうしたの?」
「ああ、そうだ。やちる。約束してたヤツ出来たから、ほら」
小さな手に乗せられたピンクの包み。
「開けても良い?」
「ああ」
包みを開けると出てきたのは、銀色に光るネームプレートを模したペンダントだった。表に『やちる』の文字、
裏には四葉のクローバーの絵が彫ってあった。
「それ、俺が彫ったんだ。だからちょっと不格好だけど・・・」
「そんな事ないよ!すごく嬉しいよ!あたしコレ宝物にする!」
「大袈裟だなぁ」
苦笑しながらも一護も嬉しそうにやちるの頭を撫でた。
「あ、でもいっちー、剣ちゃんの・・・」
全部言い終わらない内に人差し指でナイショのポーズを取る一護。やちるにだけ聞こえるように、
「もう渡せねえよ・・・」
と自分の胸元を掴んで呟いた。
「いっちー・・・」
弓親はなんとなくだが、剣八の分も用意してたんだなと察した。
「一護君・・・」
そこへ隊首会から帰った剣八が通りかかった。
「何だ一護、来てたのか?」
「ああ昨日から泊まらせて貰ってるよ」
やちるにペンダントを付けてやりながら答えた。
「へえ・・・。気付かなかったがな」
「ああ。お前居なかったし、俺はすぐに寝たからな」
やちるの頭を撫でながら喋り続ける。
「ふーん、そんなもんかよ」
こちらを見ない一護に若干の苛立ちを覚えつつ隊首室に向かう剣八。それを気配だけで追う一護。
「じゃ、僕はこれで隊長の周りの事しないといけないから」
「ああ、御苦労さん、弓親」
「うん、じゃあね」
さて、どう切り出すか。二人きりだと不安だし、隊首室に誰かいる時が良いか・・・。
「いっちー・・・」
やちるが不安そうに見上げていた。
「どうした?やちる」
「ううん、なんでもないよ、あたしコレみんなに見せてくる!」
「そうか、気をつけてな」
手を振って見送る一護。やちるの姿が見えなくなってから隊首室へ向かった。
隊首室の扉をノックして返事を待つ。
「入れ」
扉を開けて中に入ると、一角と弓親が書類整理をして、剣八は隊首席で何やら書いていた。
サラサラと澱みなく動くその指先を見ては、それがつい先日まで自分だけの物だと勘違いしていた己を自嘲した。
「何の用だ?今忙しいんだよ」
剣八に言われて、ハッと我に返る。
「ああ、そんなに時間取らせねえよ」
「ふん?で、なんだ」
一護を見ず、書類を見ながら喋る剣八。
「別れよ。俺達」
まるで今日はいい天気だな、と言われたかのような口調に漸く顔を上げた剣八が見た物は、今まで見た事の無い
優しい笑顔の一護の顔だった。悲しみと慈愛が入り混じった何とも言えない顔。
「何言ってんだ?お前」
「聞こえなかったか?別れようって・・」
「それは聞こえた。理由は何だ」
「そ・・・れは、お前別に俺じゃなくても良いんじゃねぇか。なら、俺がお前を地面に縛り付ける事もねえなって思ってよ」
「はあ?何言ってやがる、意味が分かんねえよ」
いつの間にか目の前にいた剣八が手を一護の頬に当て、
「分かるように言え」
一護はその手に自分の手を重ね、眼を閉じ温かさに身を委ねた。
「俺はさ、その、遊女じゃねえから割り切って考えらんねえんだ。まだガキだしさ、俺、お前の邪魔したくねえしさ。それに一角や弓親にも迷惑・・、掛けずに済むしな・・・」
言葉を選びながら、頬に伸ばされた手をきゅっと握ると、
「あんたが、好きだったよ・・・、でも抱き枕の変わりなら他を探してくれ。性欲処理も他を当たってくれ・・・。
俺にはもう・・・、無理だよ・・・」

あんたの大きな鳥の翼みてえな手が、好きだったよ・・・。でも鳥は、空を飛ばなくちゃ・・・。

さよなら・・・、剣八。

自分の頬の手を放すと何も言わず固まっているらしい剣八に、にっこりと笑って別れを告げ出て行こうとすると、
「待てよ!お前何言ってんだよ!」
一角が気色ばんで立ち上がった。
「一角!」
弓親が止める。一護は、笑みを湛えたまま、出ていった。
「何で止めたんだよ!弓親!」
「君、昨日どこに行ったか覚えてる?」
「ああ?どこって、女の・・あっ!まさか」
「そのまさか。見られてたよ、全員ね。多分だけど、現場らしきとこまで見ちゃったんじゃないかな・・・。顔面蒼白で、
帰って来てすぐ寝ちゃったもの」
「まじかよ・・・、やべぇじゃねえか。どうします?隊長」
剣八は黙ったまま、放された手を見つめていた。一護の手の温もりが消えていく・・・。
(別れる?・・・あいつが俺から離れていく?・・・許さない、それだけは・・・)
「許さねえ・・・」
地を這いずる様な低い声と膨れ上がる霊圧に汗が噴き出す一角と弓親。
「た、隊長!落ち着いて下さい。一護君は・・・」
「ああ?何だ」
弓親は先程の縁側での話を聞かせた。一護が自分が枷になっているのではないか?と悩んでいること、ならば身を引こう。
そう考えているのだろうと、
「け!俺はそんな事考えた事もねえぞ、馬鹿じゃねえのか、あいつ」
「隊長・・・、自分の好きな人が自分以外を抱いてるなんて知ったら、普通は嫉妬しますよ。でも彼まだ16歳でしょ?僕らとの歳の差や、隊長の立場とか色んな物が嫉妬とぐちゃぐちゃになって出た答えがアレだったんじゃないですか?」
そう説明されても一護を離す気など毛ほども考えてない剣八の怒りは確実に上がっていった。隊首室を出て一護を
探しに行く剣八。残された一角と弓親が書類に目を落として溜め息を吐く。
「何で、昨日隊長誘ったのさ?一護君来てるの知ってたでしょ」
「う、忘れてたんだよ。そん時は」
バツが悪い一角。それより一護の身が心配だ。壊されないだろうか?

一護を探していた剣八はようやく一護を見つけた。雨乾堂の池に佇む一護の姿を目にし声を掛けようとした時、
一護が首から光る物を外し、懐から水色の包みを取り出し開けていた。中から同じ様な光る物が出てきた。
それを手に乗せるともう一つで二つを巻き付けた。離れない様に・・・。それを握りしめ、まるで祈るような格好で、
泣いていた。声は殺しているのか聞こえなかった。銀色に光るそれに涙が伝い、地面に落ちる。肩が揺れている。
一護が顔を上げ、袖で目のあたりを拭った。そしてその銀に光る物を池に落とした。
細い鎖が手の平を滑り、離れていく。音を立て水面に落ち、沈んでいった・・・。その音に雨乾堂の主が顔を出した。
「一護君じゃないか、何してるんだい?」
「あ、浮竹さん。別に・・・、ただの散歩です」
浮竹は少し呆れたように、小さな溜息をつき苦笑しながら、
「散歩は泣きながらするものじゃあないなぁ」
一護は、頬に手をやると、なるほど涙で濡れていた。
「こっちおいで、お茶でも飲んで落ち着きなさい」
「ありがとうございます・・・でも」
浮竹は剣八の姿を見つけていた。
「そんな顔、誰にも見られたくないだろう?さっ、おいで」
その言葉に甘えた一護。池に面する回廊でいきなり核心を突く質問をされた。
「泣いていたのは、剣八のせいかい?」
「え?いえ、関係ないですよ?」
関係無い。自分で口にした言葉が予想以上にココロを抉り取った。堪えていたモノが堰を切って溢れ出した。
「う、うああああ、うわあぁああああっ!」
その場に崩れ落ちて泣きじゃくった。こんな一護の様子は見た事が無い。戦いの最中でさえ見たことが無い。
剣八をきつく睨み付ける浮竹。
「さ、中に入りなさい。一護君」
手拭いを渡しながら中に促した。
嗚咽を零しながら、手拭いで顔を隠す一護。
その隙間から垣間見えた一護の泣き顔に剣八は、自分の行動があんな顔をさせたのか・・・。と改めて気付いた。
しかしそれでも一護を誰にも渡したくはない。
自分より浮竹の部屋に入った一護に理不尽な怒りが新たに湧き上がった。踵を返し隊舎に戻る剣八。
その霊圧を感じ取り、苦笑する浮竹は一護が泣き止むまで誰も入れず、頭を撫で続けた。

 隊舎に戻るとやちるが剣八の机に座って待っていた。
「お帰り!剣ちゃん!ねぇ、見て見て!コレいっちーに貰ったんだ〜。い〜でしょ〜」
首から下げている、ネックレスを見せびらかす。
「何だそりゃ。自分の名前彫ってあんのか」
「うん。ねーむぷれーとって言うんだって!裏にはね。いっちーが絵を彫ってくれたんだ〜」
うふふ、と誇らしげに見せるやちる。
「ふ〜ん、良かったじゃねえか」
席に着いて頬に片肘をついてつまらなさそうに答えた。
「あれ?剣ちゃんの分は?」
「ああ?俺の?」
「うん、いっちー、あたしのと一緒に剣ちゃんのも作るって言ってたよ。これで3人お揃いだね!」
「3人?」
「いっちーも、持ってるよ。本当はいっちーが最初に持ってたの。あたしが良いなぁって言ったら作ってやるって言ってくれたの。
いっちーのはね。一護の『護』で、裏に鈴の絵が彫ってあったよ」
「鈴・・・」
チリンと自分の頭の鈴が鳴った。勢い良く立ち上がると隊舎から出る剣八。行先は雨乾堂だ。
「副隊長、もしかしてワザとですか?」
弓親が聞く。
「うん。まあね」
自分の名前が刻まれた特別な贈り物。とても嬉しかった。もしそれが特別な人から贈られたらもっと嬉しいだろう。
特別な人に贈れたら、やっぱり嬉しいだろう。そう思った。なのに特別な2人は別れ話。渡る橋が壊れたら治さなくちゃ。
やちるはそう言った。
「そうですね・・・」
やちるの頭を撫でながら呟く弓親。一角も意外に考えてんだなと思ったが黙っていた。さて特別な2人は?

 雨乾堂に来た剣八は、いきなり奥に踏み込んだ。
「一護!」
「やあ、剣八。一護君ならとっくに帰ったよ」
「ちっ!入れ違いかよ、邪魔したな」
「剣八、恋人を泣かすのは感心しないぞ」
「うるせえ!てめえに関係ねえだろうが」
「関係無い。か・・・。一護君もそう言って泣きだしたよ。見てたろ?それから一護君は隊舎に帰ったよ」
「・・・ふん!」
それだけ言うと外に出て池に飛び込んで、一護が沈めたモノを拾い上げた。手の中のそれに目をやると、一つはなるほど、やちるが言ったとおりに『護』の一文字に裏に鈴の絵。もう一つは『剣』の一文字に裏にはやはり鈴の絵が彫ってあった。
「・・・あの・・・、馬鹿・・・」
「何してるんだ?剣八。水浴びには季節が早いぞ?」
「うるせえ・・・」
馬鹿は自分も同じか・・・。
また自分の隊に帰る剣八。
 隊舎に戻ると一護が風呂から上がったとこだった。
「あ、お帰り。遅かったんだな」
「あ〜、まぁな。もう風呂入ったのか?早えな」
「ああ。今日はやちると寝るからな、早めにしたんだ。てゆうか何だお前のその格好?みっともねえな、風邪ひく前に早く風呂に入れよ」
「・・・ああ。お前こそ珍しいなやちると寝るなんてよ」
いつも自分としか寝ないのに、言外に皮肉るが効かない。
「ああ、強請られたからなぁ。珍しいよな、3日居れるって言ったら一緒に寝てみたいってさ」
優しい笑顔で説明する一護。何でだ?何で笑ってられる?俺はお前にとってその程度なのか?ふつふつと訳の分からない怒りが込み上げてきた。
「じゃあな、風邪ひくなよ」
言ってる所へやちるが帰って来た。
「たっだいま〜、いっちー!あれ、剣ちゃん何で濡れてんの?風邪ひくよ?早くお風呂入って温まんなきゃ」
「そういうお前こそ髪の毛びしゃびしゃだぞ。ちゃんと拭け」
一護はそう言うと痛くない様にやちるの髪を拭いてやった。
「わっぷっ、ありがといっちー」
「いいよ別に一緒の布団で寝るんだし、濡れると困るしな」
ドライヤーで乾かすか?と聞いた。
「ううん、もう良いよ、それよか早く寝よ?」
「そうだな、寝るか。おい剣八、いつまで突っ立てんだ?」
「・・・ああ、そうだな」
縁側から入ると足袋も脱がずに歩いて風呂場に向かう。
「変な奴・・・」
「いっちー、ハイこれ、頼まれたヤツ。でも良いの?絶対怒るよ?剣ちゃん」
「良いよ、別に・・・。何で怒るのか謎だけどよ」
「いっちー・・・」
部屋に入り、やちるに貰った札を部屋の四隅に貼る。これで結界が張れた。外からの侵入は出来なくなった。

 風呂では、剣八がペンダントを見ながら、あいつはどう思ってこれを俺に渡そうとしたんだ?
何を思いながら、コレを沈めたんだろうか。分からねえ。何で笑顔を俺にまだ向けるんだ?お前を裏切ったも同然なのによ・・・。

ふと、風呂上りに一護の部屋の様子を覗こうとして障子に手を掛ける。びくともしない。結界を張られた。完全に拒絶された気がした。そこへ二人の会話が耳に入った。
「ねぇ、いっちーは剣ちゃんが嫌いになっちゃったからお別れするの?」
「・・・いいや、逆。好きだからだよ・・・。好きだから別れるんだ」
「何で?好きなら一緒に居るんじゃないの?」
「そうだなぁ・・・、一緒に居たいなぁ、でもあいつの傍にいるべきはきっと俺なんかじゃなくて、キレイな女の人が良いんだよ。その方があいつの為だ・・・」
「剣ちゃんがそう言ったの?」
「いいや、でももういいんだ・・・。もう、いいんだ。さっ、寝よう」
一護はやちるが眠るまで背中をぽんぽん叩きながら、子守唄を歌ってやった。
すう、すうと規則正しい寝息に一護もつられて眠った。剣八だけが取り残された。
「剣ちゃん、居るんでしょ。いっちー、泣かせたら駄目だからね!」
やちるにそう言われて自室に帰る剣八。それでも拒絶された事は尾を引いた。
「おっはよう!いっちー」
「おはよう、やちる昨日はよく眠れたか?」
「うん!いっちーのお歌気持ち良かったぁ」
「そうか、良かった」
「じゃあ、あたし自分の部屋に戻るね」
「ああ、じゃあな」
障子を開けて飛び出す少女。微笑を浮かべながら閉めようと伸ばした手が急に掴まれた。
「うわあっ!」
「朝から、うるせえ」
「びっくりした、あんたか。なんか用か?」
「用がなきゃ、いちいち顔も見れねえのかよ?偉くなったもんだなあ、一護」
「何、性質(たち)の悪い冗談言ってんだよ、着替えるから出てくれよ」
「そのまま着替えれば良いじゃねえか、お前の裸なんて見飽きてんだからよ・・・」
「見飽きてんなら、尚更だ。出てけ」
「嫌だね、さっさとしろよ。なんなら手伝ってやろうか?」
「結構だ、ったく何なんだよ。あんたは」
ぶつぶつ言いながら蒲団から出ると帯に手を掛けた所で、
「へえ、ほんとにやるとはな・・・、お前結構誰でも良いんだなあ?」
「はっ?」
意味が分からない。困惑してると蒲団に押し倒された。
「ぐっ!何すんだよ、どけっ!」
「嫌だね。お前が俺から離れねえっていうまではここから帰さねえよ」
「はあ?何言ってんだ!離せ!」
暴れる一護に舌打ちすると帯で両手を拘束した。素早く下着も引き剥がす。
「やっ!痛っ!離せよっ!」
自分の身体の下でもがく一護に、
「そんなに暴れるとみんな見えちまうぜ?」
くっくっと低く喉の奥で嗤った。
「えっ、あっ!」
身体を動かす度に見え隠れする胸の飾りや下肢が目に入り恥ずかしくなる。
「何だよ、もう終わりか?つまらねえな」
胸に手を這わせながら呟いた。
「は・・・、やだ、やめろ、触るな!」
言ったとたん、バシッと頬を打たれた。
「うるせえよ、さっきから。黙って犯されてろ」
「〜!嫌だっ!離せ!」
今度は反対の頬を打たれた。口の端から血が滲む。剣八を睨み付ける一護。歪んだ笑みを浮かべ、血を舐めとり、
噛み付く様な口付けをしてきた。
「っ!ぐっ!テメエ」
一護が剣八の舌に噛み付いた。同じ様に血が滲む。ふんっと鼻を鳴らす一護。
「上等だ・・・、覚悟しろよ」
血の滲む舌が、同じく血が滲む口の中を蹂躙する。痛みと息苦しさで顔を歪ます一護。
「んん!つぅ、んは、はあ」
ようやく解放された時には身体に力が入らなかった。それでも剣八から逃げようとする一護は、
「やだぁ・・・、離せよぉ・・・、遊ぶんなら、ほか、当たれよぉ・・・」
涙声で抵抗する。今度は拳で殴られた。
「ぐうっ!」
「もう黙ってろ・・・。イラつくからよ」
怒気を孕んだ低い声に怯えた一護。後はもう為すがままだった。

剣八の唇が一護の胸の飾りを玩ぶ。
「はっあっん!いっや・・・、あっんん!」
「いやだ、いやだ言う割に声がでけえなあ。一護」
肌に触れるか触れないかの距離で囁く。熱い吐息が掛かり一護の身体が震えた。
思い切り乳首に歯を立てた。
「ああっう!」
身体が跳ねる。血が滲むソレを舌先で転がし、もう片方を押し潰したり、摘んで捏ねた。
「ふっ、ん、ああん」
びくびく揺れる身体。痺れるような快感が下肢に集まっていくのが分かる。
「何だ、口吸いと胸だけで随分感じるんだな。もう立ってんぜ」
剣八の視線がどこにあるのか分かった一護は必死で身を捩る。
「無駄な事してんじゃねえよ、大人しくしてたらいつも通り気持ち良いんだからよ・・・」
ひくりと身体が震えた。いつもどおり・・・。そんなものはもう無いのに・・・。身体から力が抜けていった・・・。
そんな変化を見逃さず、一護の首筋に跡を付ける。舌で辿り、鎖骨までくると、歯型を付けた。生々しく骨の軋む音が
歯に伝わった。一護は首を仰け反らせ、唇を震わせた。
「あ、ああ、い、痛・・・」
まるでケモノに食われているようだ、なら欠片も残さず喰って欲しい。
「けんぱち・・・」
一言だけ呟いた。愛しい想いを込めて・・・。その響きにぞくりとした剣八は一護自身を口に含んだ。
「ひ!や!ダメ・・・だ、そんな」
ふるふる震えながらも逆らえず、あっけなく吐精した。それを手に吐き出して蕾に塗り込んでいく。
「あっ、ああっ、け、剣八」
指が入ってきては、慣らしていく。その動きがいつもより優しい気がした。

後半へ続く





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