題「一族・長の資格」1
真央霊術学院学長室。
その日、朽木白哉は死覇装を着た白と弓親、一角を伴って訪れていた。白に子供達の学園での様子を見学させるためだ。白と一護の子供達は、この春、死神になるために真央霊術学院に入学したのだ。

「これはこれは、朽木隊長。ようこそおいで下さいました」
「畏まらずとも良い。本日は朽木家当主としてとお願いに参った」
「朽木家当主として、ですか?」
「うむ。ここにいる者に学園の授業の見学を許可して頂きたい」
「こちらの方は?」
「この者は白と申す。八番隊隊長の京楽隊長の奥方でもある」
白哉の紹介で軽く会釈をする白。
「京楽隊長の・・・お噂はかねがね。して、如何なる理由でございましょう?ここは神聖なる学院ですので、いかに護廷十三隊の隊長の奥方とはいえ、一般の見学は許可いたし兼ねます」
「そこは承知致しておる。この者は私が烏帽子子(よぼしこ)にと望んだ者ゆえ広く見識を広めて欲しいと願っておる。ご存知かと思われるが、この者は護廷には疎いゆえこちらで見識を広めて頂きいのだ」
「朽木家御当主が・・・!で、そちらの方々は?」
「こちらでの授業での引率は、本日は十一番隊と聞いておるゆえ、白の警護も兼ねて引率の交代をさせて頂いた」
「十一番隊三席、斑目一角だ」
「同じく十一番隊五席、綾瀬川弓親です」
「わざわざ席官のご同行とは!判りました。見学を許可いたしましょう」
普段でなくとも派遣されることの無い上位席官の同伴と言うこともあり白の授業見学が許可され、一行は授業に向けて学院内を移動した。

「おい、白哉。さっきのあれ、何なんだ?」
白が白哉の羽織を摘まんで訊ねた。
「烏帽子子の事か?」
「そうだよ。その話はいつも断ってるだろ?」
「気にするな。ただの口実に過ぎぬ。そなたも子等の様子が気になるであろう?これを機に子等の様子でも見てくるが良い」
「それは嬉しいけどよ。・・・いいのかよ?」
「気にするなと言ったであろう。朽木家の名なぞこういう時にしか役に立たぬからな」
未だ納得していない様子の白。
「朽木隊長がそう仰るんだから、甘えれば良いんじゃないの?白さん」
「そうそう。俺らだって学院なんざ滅多に来ねぇんだ。学院にしたって席官が来るとなれば御の字だろうしよ。楽しめば良いさ」
「う〜ん。でも、何だかなぁ・・・」
「子供達の修行の成果を見るつもりで気楽に行けばいいよ」
見兼ねた弓親と一角、二人に窘められた。
「みんながそう言うなら・・・」
もとより子供達の事が気になっていた白はそれ以上は言わなかった。

昨日、白は学院に行く事を一護に教えた。
「一護!一護!」
「なあに?にぃに」
「俺な、明日学院の見学に行く事になった!」
「え!すごい!良いなぁ!朝月やウルに会えるんだね!にぃに!」
「おう!十六夜や朔にグリにノイにも会えるからな!お前の分もちゃんと見てやるぞ!」
「うん!お願いね!怪我とかしてないか、病気はしてないか、どんな風に立派になってるか教えてね、にぃに!」
「ああ!悪い虫が付いてないかも見て来てやるかんな!」
と二人ではしゃいでいた。


その日の授業はかの戦闘集団十一番隊の上位席官2名が同行するとあって、特別に流魂街の外れにて虚退治の実戦見学となった。
「本日は十一番隊より斑目三席と綾瀬川五席がおいで下さった。従って本日の授業はこの御二方による実戦見学を行う。なお八番隊隊長の奥方も見学に来られておる。皆、気を引き締めて授業に臨むように!」
「はいっ!」
授業は合同授業で行われる事となり、朝月やウルキオラ、十六夜、朔、グリムジョーやノイトラの顔が見えた。
「あー、こりゃ絶対朽木隊長の差し金だな」
「多分ね」
「あの人も大概、白には甘めぇよな」
「ふふ、そうだね」
「おーい、ひよこ共!遅れるんじゃねえぞっ!!」
一角は大声で生徒達に声をかけると生徒達を先導した。弓親も一緒だ。

白は先導する2人から離れて朝月達の傍にいた。
「かか様、大丈夫なの?」
「ん?何がだ?ここに来る事なら白哉がとと様をねじ伏せてたから、怒られねーって」
「そういう問題では無いのですが・・・」
「そうじゃなくて!虚退治なんて危険じゃない。かか様、危ないわ」
「大丈夫だって。弱い虚しか出ねぇって言ってたし、それに俺も弱くはねぇよ」
「でも・・・」
「これでもとと様と逢うまでは一人で戦って生きてきたんだ。心配すんな」
心配する朝月に、白はにこやかに笑ってその頭を撫でた。
「ウルも心配すんな。何かあったら朝月を護ってやってくれ」
「はい。母上」
白の言葉にしっかりと返事をするウルキオラ。白からの信頼が何よりも嬉しかった。




流魂街の外れまで来ると、ちらほらと虚が出現してきた。さしたる強さも無い虚を2人の席官は難なく倒していく。そしてその度に生徒達から歓声や拍手が巻き起こっていた。
「おい、弓親・・・」
「ああ・・・」
虚を倒しながら2人の間には言いようの無い緊張感が漂い始めていた。いくら弱いとはいえ虚の出現率が高いのだ。流魂街の外れだとしても、そうそう虚が出現するのはおかしかった。白も2人の様子を敏感に感じ取っていた。白は歓声を上げる生徒達に向かって大声を上げた。
「おい、お前ら!もう充分に見ただろ!?そろそろ学院に帰るぞ!」
「ええ〜〜ッ!」
「ええ〜、じゃねぇ!おら、急いで帰るぞ!」
「かか様?」
「嫌な予感がする・・・朝月、ウル、お前たちも急ぐんだ」
「分りました。朝月、行くぞ」
「ええ」
「お前らもぐずぐずしてねぇで帰るんだ!」
白は大声で生徒達に学院へ早く戻るようにと促した。不満を口にしながらも帰ろうと生徒達が移動しようとした時だった。

ヴぉおおおおぉぉぉ・・・!!

空間が裂け地面の底から湧き出るような叫び声が聞こえたかと思うと、大虚が出現した。
「な・・・ッ!?」
「大虚だと!?」
「お前らッ!逃げろっ!急げっ!!」
一角と弓親は斬魄刀を構え、白は悲鳴をあげ逃げ惑う生徒達を誘導する。

大虚の出現により生徒達はパニックに陥っていた。当然であった。一般には大虚など教本でしか見ることの無い稀有な存在なのだ。弓親と一角は生徒達を護る様に大虚に立ちはだかる。
「大虚は弓親たちが足止めしてくれるっ!お前たちは急いで逃げるんだ!!」
「かか様っ!」
「朝月!ウル!お前達も早く逃げろっ!」
突然、大虚が虚閃を放った。虚閃は生徒達の居た所から離れた所に打ち込まれたが、その衝撃と爆風で生徒達が吹き飛ばされた。
その中に朝月の姿を見た白。地面に叩きつけられ倒れた朝月。衝撃の中、ウルキオラが駆けつけ朝月を助け起こしていた。

どくん!

白の中で何かが脈打った。

・・・とと様・・・

どくん!

・・・かか様・・・

どくん!

・・・いやだ・・・

・・・置いていかれる・・・

どくん!

・・・また・・・

・・・置いていかれるっ!!

どくん!

「うわぁああああああぁぁぁ!!」

叫び声と共に白の霊圧が爆発した。

どぉぉぉぉおおおおぉぉん

大気と大地を震わせ、竜巻のような凄まじい霊圧の渦が白を取り巻いた。その霊圧の渦が納まり、その中から姿を見せた白の手には細身の白い刀が握られていた。纏う衣装も死覇装とは形も違う白いそれ。無造作に刀を手にし、ただ佇んでいるのように見えた白が、ふ・・と大虚に目をやった。
「かか様・・・」
「母上・・・」
白の表情を見た朝月は思わず息を呑んだ。白の顔からは一切の表情が消え、大虚を見据える目は何処までも冷たかった。
「朝月・・・大丈夫か?」
「ええ。でも、私・・・なんだかかか様が怖い。ウルは、怖くないの?」
「怖くは無い。母上は母上だ」
ウルキオラに助け起され、母への畏怖の念を隠しきれない朝月。だがウルキオラの表情には恐怖も不安も無かった。ウルキオラは白の姿を真っ直ぐに見ていた。



だんっ!と跳躍し、すかさず斬撃を繰り出す白。霊圧で足場を作り大虚の攻撃を避け跳躍を続けながら、白は巨大で重い斬撃を立て続けに繰り出していった。
「なんつー戦い方をしやがるんだ。メチャクチャじゃねーか!」
「そうだね。あれじゃ、白さんが持たない」
白の凄まじいまでの霊圧は隊長格を遙かに凌いでいた。その霊圧を抑えるでもなく、一瞬も立ち止まることなく跳躍を続け、巨大な斬撃を繰り出し続けていたのでは、如何に霊力があろうとすぐに限界が来るだろう。弓親と一角も斬魄刀を開放し白の加勢に向かった。

一方、生徒達は自分達の置かれた状況も忘れ、その戦いを見ていた。どこか余裕すら見せていた先程までとは違う、戦意を露にした席官達の戦い。全身から感じ取れる殺気、途切れることの無い集中と緩められることの無い霊圧。これが『戦う』と言うことなのだ。歓声や拍手を送っていた、さっきまでのあの状況とは全く違うのだと思い知らされた。そして突然豹変した白の姿に目を奪われていた。大虚を見据え、戦いの中で一瞬たりともその視線を外すことなく戦う白。近付いただけで切り刻まれそうな、鋭く研ぎ澄まされた刃のようなその霊圧に恐怖すら感じた。しかし・・
恐怖すら感じた白の戦いは、また美しくもあった。大虚の攻撃を紙一重でひらりと躱し、一瞬で距離を取ったかと思えば瞬時に反撃に転じている。白い衣装の裾を翻し戦うその姿は、さながら戦場の女神の様でもあった。

ずず・・・

大虚が再び虚閃を放とうとした。大虚の霊圧が集約していく。
「まずい!このままじゃ生徒達が!」
「ちくしょうっ!」
パニックになった挙げ句、白達の戦いに見入っていた生徒達は動かない。動けない。虚閃は生徒達に向けられている。このままでは生徒達が全滅してしまう。すると白が大虚の前に立ちはだかった。
「白さん!?」
「白!?何をするつもりだ!?」
立ちはだかる白の白い刀に霊圧が集まる。白が刀を構えた瞬間、大虚が虚閃を放った。

「月牙天衝っ!」

それまでとは比べ物にならない白の斬撃が虚閃に向かう。巨大な霊圧がぶつかり合う。が、白の斬撃に押し負けた虚閃が2つに分かれ生徒達からかなり離れた場所に落ちた。
「すげぇ!白のヤツ虚閃をはじきやがった!」
「でも、もう白さんが持たない!」
見れば既に息が上がってしまっている白。額からは汗が流れ落ち肩でぜぇぜぇと息をしていた。

「散れ、千本桜」

突然、暴風のような桜吹雪が大虚を襲った。それと同時に狂喜にも似た殺気を纏った『戦鬼』が大虚目掛けて斬りかかっていた。
「朽木隊長!?」
「隊長!」

白の戦闘に釘付けになっていた生徒達はあまりの展開に戸惑ってしまっていた。白い羽織を着た「隊長」二人が白達の戦いに加勢し、大虚を圧倒していく。見れば黒髪の女性の隊長と、女物の着物を羽織った隊長までも居た。
白い羽織には「四」「六」「十一」と書かれている。学生の身では目に掛かることすら叶わぬであろう隊長が四人も駈け付け、さらにその戦闘を目にすることが出来たその奇跡にただただ呆然とするしかなかった。


第2話へ続く

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白ちゃん覚醒イベント。戦闘シーンが無いと言う罠・・・・
しかも思ってたより短い・・・

覚醒シーン書いたw
「月牙天衝」叫ばせてみましたw
白様が飛ばしてる斬撃は月牙です(叫んでないケド)



12/01/29にアップしました。
妖さん曰く「金魚様の『狐のおうち』から金魚様の許可を頂いて書かせて頂きました。白ちゃんの一族捏造話です☆」です。
私なんぞの拙文からお話を考えて頂いてっ!
このお話は、妖さんと私の共作になるのかな。エロと剣一と他に加筆修正を私がします。
今回は白哉と白の会話の所に加筆。一護と白のやり取りを書かせて頂きました。
楽しんで頂ければ幸いです。



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