題「白猫といっしょ!」1
 ある日、一護が学校から帰ってくると家の診療所の前に灰色の猫がいた。
前脚を怪我しているのか一護が近付いても逃げようとせず、手を伸ばすとバシッ!と叩かれた。
「イテッ!お前怪我してんだろう?良い子だから大人しくしてくれよ」
と言いながら喉を撫で、慣れた所を抱き上げた。
「にゃう!」
「あ、わりい」
痛いと言われた気がして謝る一護。家の中に入ると遊子がキッチンから顔を覗かせた。
「おかえりなさい!お兄ちゃん!その猫どうしたの?」
「ああ、家の前に居たんだけど、足怪我してるみたいでな」
「わ、ほんとだね。この子お風呂に入れた方が良いんじゃないかな?お兄ちゃん」
「ん?そうか?」
「だって白い子なのに、灰色になってるよ」
と言われ良く見れば、なるほど、腹側の毛は白い。
「じゃあ着替えとか用意してくるから、コイツ風呂場に連れてっとくか」
「うん。あ、お兄ちゃんタオルは多い方がいいよ」
「サンキュ!遊子」
一護は制服を脱ぎ、部屋着に着替えると、数枚のタオルを持って風呂場へ向かった。

「良い子で待ってたか?大人しくしててくれよ〜」
と服を脱ぎパンツ一枚になって猫を抱きあげ風呂場の中に入っていった。
「シャンプーって人と一緒で良いのかな・・・」
と言いつつ猫の毛皮を濡らしていく一護。猫は暴れもしないで大人しかった。
「へえ、珍しいな。猫って洗われるの嫌いって聞くけど」
手早く洗い終わり猫が身体を震わせ水を切る。
「っと、よし後はタオルで拭いてドライヤーだな」
ガシガシと拭くがすぐに使いモノにならなくなった。
3枚のタオルを使って漸く生乾きになった。
「次はドライヤーだけど、怖くないからな〜」
と熱風で毛皮を乾かしていく。
「おお〜、綺麗だなぁ、お前」
ふわふわの毛皮は輝かんばかりに白く輝いていた。
「さ!遊子達にお披露目だな!」
と着替えて猫を抱きあげると、妹達に見せにいった。
「わ〜!綺麗になったねぇ!」
「へえ!カッコいいじゃん!バリニーズ?」
「なんだそれ」
「猫の種類だよ。あ、でもこの子雑種かな、目が金色だもん」
「ふうん、でも綺麗だから良いじゃねえか、怪我の治療手伝ってくれよ」
「はーい!」
前脚の怪我はほとんど塞がっていてカサブタが出来ている感じだが触ると痛いのか、唸ってくる。
「で、お兄ちゃんこの子飼うの?」
「あ〜、でもうち病院だからな・・・、親父と相談かな」
と一護の膝の上で寛いでいる猫の頭を撫でながら言う。
「でも、家だけならいいんじゃないかな」
と遊子が言う。
「ま、親父に言ってからだな」
と家長である一心の帰りを待つ3人だった。

帰って来た一心に猫を飼っても良いかと一護が聞くと、
「駄目!うちは病院だぞ!動物は飼えないの!」
案の定反対された。やっぱりな、と思いつつも食いさがった。
「でもコイツ怪我してるしさ」
「駄目なものは駄目!治るまでって飼って情が移ったらどうするんだ!知り合いの獣医さんに頼んで里親探してもらうから」
「でもさ・・・」
「一護!お前ももう高校生だろうが!妹達が居るんだから我儘言うんじゃねえ!」
「う・・・」
「大体猫飼うってどれくらい金掛かるか分かっていってるか?えさ代は?予防接種だっているんだぞ!保険なんか無いんだからべラボーに高いぞ!」
一護は猫をぎゅ、と抱きしめて、
「じゃあ全部俺の金から出すよ!月の小遣いもこいつに回す!それで良いだろ!」
「そう言うことじゃねえ!」
と大喧嘩になり、最終的に一護は猫と一緒に部屋に籠ってしまった。
「あ〜あ、可哀想〜、一兄」
「お父さんひどい!」
「え、パパ悪者なの?」
「病院だからって分かるけどさ、一兄があそこまで言うのって初めてじゃないの?」
「だよね・・・」
と二人の娘から地味に責められる一心。
「でも、ほら、衛生面がね・・・」
「お兄ちゃんの部屋とこの家の敷地から出なきゃ大丈夫なんじゃない?」
と言われて渋々飼う事を許した一心だった。

その頃の一護。
「親父の分からず屋・・・」
とベッドの上で不貞寝していた。その一護の顔や頭を豊な毛並みの尻尾で撫で続ける猫。
それが気持ち良くて、つい眠ってしまった一護。
「お兄ちゃーん!ご飯だよ〜!」
と遊子が呼びかけに目が覚めた。
「あ、もうそんな時間か、お前も腹減ってるだろ?俺の分けてやるからな」
と抱きあげてリビングに降りた。
「お兄ちゃん、はい。猫ちゃんはこっちの椅子ね」
と一護の隣りに置かれた椅子に餌が置かれた。
「良いのかよ・・・」
「うん」
「あ〜・・・、一護」
「何・・・」
取りつく暇もない。こちらを見ようともしない一護に困り果て、隣の猫を見ると・・・。

睨まれた。

そしてそのままで許した事を告げられず仕舞いだった。

「にゃう」
「あ、食い終わったか?じゃあ帰るか」
と部屋に戻る一護。
「御馳走さん、美味しかったぞ遊子」
「はーい、お兄ちゃん、もう寝るの?」
「いや?勉強あるしな」
「そう、頑張ってね」
「ああ」
そうして部屋に帰る一護。
その日の予習を終え、風呂に入りベッドにもぐり込んだ。


こうして新しい家族との生活が始まった。


第2話へ続く





10/06/26作 この後、どうなりますやら?





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