「あーっ、美味しかった」





座椅子に寄りかかりながら、は幸せそうにそう呟いた。
向かいのテーブルで同じように夕食を済ませた航河は、満足そうなを見て微笑んでいて。


小奇麗な室内に広がる暖色の灯に、真新しい畳の香り
和風旅館ならではの厳粛さに、モダンな雰囲気が加わった部屋には偉く興奮した。


ここを選んで正解だったな。
航河は楽しそうなに、心の中でそう思いながら小さく笑う。



タイミングよく膳を下げに来た着物姿の仲居に、愛想良く話しかける
先程入った大浴場の事に、今食べた夕食の事、仲居もまた嬉しそうに返事をする。


「こちらのお部屋のお風呂も最高ですから、是非後で入ってみてくださいね」


はい、もちろん。
そう頷くに、小さくお辞儀をして部屋を出て行く仲居に、航河も軽く頭を下げた。


部屋に訪れた静寂を破るように、はテーブルに手をついてゆっくりと立ち上がる。


「ねぇ、航河。さっきロビーの近くに売店があったでしょ?」

「ああ。行きたいのか?」


航河がそう言って顔を見上げると、パッと表情を輝かせ頷くが映る。


「少し休んでからにしたらどうだ?」

「でも、9時までって書いてあったから」


まるで子供のように目をキラキラさせるに苦笑しながら
『じゃあ、行くか』と言えばは嬉しそうにバッグから財布を取り出そうとする。

鼻歌まで歌い出しそうな雰囲気に笑いを堪えながら、航河はを優しく見つめていた。
財布を探し出して立ち上がるの姿に、ふと視線が止まる。

クリーム地の浴衣に描かれた花の模様を辿るように、柔らかなの体のラインに見惚れながら
航河は何かを思いついたように薄い笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。





そう静かに名前を呼んで、の側へ寄り、細い腰に巻きつけられた帯に手を伸ばして


「…下着の線が目立つから、行くなら脱いで行け」


同時に、シュルリと帯が解ける音が部屋の中を支配した。

















Naked desire






















、足…開いてみろ」



薄暗い部屋に戻ると既に布団が敷かれていて、今の航河の言葉とそれがの体を硬くした。



下着の線が目立つなら、服に着替えるとごねるを上手くやり過ごして
航河はの体から上下ともの下着を剥ぎ取ると、畳の上に落ちた浴衣を羽織らせて。
は否応なしに浴衣を着る事になる。

頼りなげな布を着付けただけの感触に戸惑っていると、航河はの手を引いて外へと出て行く。

恥ずかしさが体中を襲ってお土産を見るどころではない上
そんなをからかうように、航河は誰もいないエレベーターの中で唇を重ねてきたり体に触れてきたり

気にしないようにすればするほど、周りにいる人の視線に見透かされているようで
気にしないようにすればするほど、見つめられる航河の瞳から逃げるように俯いて

それはまるで、気にしています。と言っているようなもの。




「そんなに恥ずかしかったのか?」



部屋の灯りもつけず、航河はの背中を押して部屋の中へと歩き出す。

ここ数週間、航河と会うタイミングがなく、そういった行為から離れていたは酷く緊張していた。

まして初めての旅行となれば、それは尚更の事。

ドキドキと高速で脈打つ心臓が、これから起こる事の序章を見事に演出しており
枕元に置かれたランプだけが、部屋の輪郭をうっすらと浮かべていた。


「ち…違う、航河」


上擦った言葉を遮るように、航河はの背中を抱き締める。


「……違う?」


耳元で囁く航河は唇をゆっくりとの耳に触れさせて、そのまま首筋へと落としていく。
二人きりの夜が始まったのだと、感じずにはいられない。


「…売店に行っても何も買えないくらい意識してたのに?」

「…っ…ん…そうさせたのは…航河でしょ」

「フッ…。下着の線なんて最初から見えてなかったって言ったらどうする?」


「嘘…っ。こう…が…狡い…んっ…待っ…て」


抱き締めてくる航河の逞しい腕にしがみついて、躊躇ってみてもまるで抵抗にならなくて。
襟元から侵入してくる大きな手が、胸元から肩までをはだけさせ
露になったのそこに、航河が唇を這わせた。


「…待てる訳ないだろ。さっきからお前…どんな顔してるか分かってるか?」

「そ…そんなの…ぁ…ん」

「……俺を誘っているようにしか、見えない」


その上、裾を掻き分けて侵入してくる航河のもう片方の手が、直接太腿に触れれば
は羞恥に堪えきれず、敷かれた布団の上に倒れ込んでしまう事になり、もう逃げられなくなる。

ゆっくりと膝をつく航河がを覆い、深い口付けを落とした。
苦しさにもがこうにも、腕を押し返そうにも、熱い舌が自分の口内で執拗に絡まって
それはの力も意識も吸い取ってしまうようで、ただ扇情的に映るだけだった。



「…足、開けよ…



再び聞こえてきた航河の囁き。
固く閉じたはずのの膝は力なく震え、広げる航河の手にまるで従っているように抵抗なく開いてしまう。

いつの間にか緩まってしまった帯の所為で、いとも簡単にの秘所は露になった。
立てた両膝の間に入り込む航河は、艶を含んだ表情で仰向けのままのを見下ろしてすかさず中心へ指を進めた。


「ひっ…やぁっん…ああっ…」


指を動かすたびに聞こえる嫌らしい水音と同時に、体を跳ね上げて嬌声を上げる
自分の予想を遥かに超えたその状況にほくそ笑んで、航河は躊躇う事なく濡れた中心に指を挿し入れた。

の喘ぎがより一層激しくなった。

熱くなったそこを指で掻き混ぜる度に、溢れ出る愛液が奏でる淫らな音が耳に入り
航河は興奮した様子で『凄いな』と、快感に翻弄されるに追い討ちを掛ける。


体をくねらせ善がる所為で露になってしまっているの胸に
もう片方の手を伸ばして、航河は膨らみを弄ぶように愛撫し始めた。


の顔に目を向ければ、艶かしく開かれた唇、快感に酔いしれる瞳があった。



しばらくそんなひとみ様子を楽しむと、愛撫する航河の手が離れ


「…悪い、もう我慢できない。…入れるぞ」


切羽詰った航河の声が、ひとみの耳に届く。





「……うん」


は震えた声で小さく返事をして、ぼんやりと航河の姿を見つめながら頷いた。


シュルリと帯を解く音。

ハタリと浴衣が下へ落ちる音。


薄暗い中でそんな小さな音までも耳に入ってきて、を緊張させる。

温かい航河の手に膝の裏を持ち上げられて、の胸がドキリと大きく鳴った。





次の瞬間、反り立つ航河のソレが中へと押し入ってきて、は意識を手放しそうになる。



「……っく…まだ…最初はキツイか?」


シーツをギュッと握り締めて必死に何かに耐えるは、眉間にしわを寄せながら首を横に振る。

経験がないに等しいの体は、航河によって少しずつ開発されていても
それでも、強く押し込まなければ全て入りきらないほど狭いの中はきつい。

そのままの体勢で、航河は片手をの蕾へと伸ばし、指を擦りつけた。


「ああっ…こうっ…がぁ…やっ…そんな…はぁんっ…」


その刺激に堪らず腰を浮かせば、フッと優しく笑う航河の体がゆっくりと引き抜かれていく。



「けどもう、…苦しいだけじゃないだろ?」


ギリギリまで引き抜いた自身を、再びゆっくりとの中へ押し入れて


「……、そんな声出すな。…メチャクチャにしたくなる」


破裂しそうな感情を押さえ込むような声で、航河はを辱める。
焦らす事を楽しむようにゆっくりとした、その航河の動きは休まる事はなく
に歯痒い刺激を与え続けた。


「はぁ…ん…いいの。…航河になら…あぁ…ん…メチャクチャに…された…い…」


だから、お願い。

もっと、もっと、して。


いつの間にか快楽に囚われたは、半ば判別できないほどの震えた声でそう零す。

そんなに愛しさが込み上げて、航河はの唇を貪れば
無意識のうちには航河の背中に手を巻きつけた。

腰を打ち付ける刺激と深く絡める口付けの所為で、隙間から漏らすの啼き声に
航河は興奮を抑えられず、夢中での中を掻き乱し快感を求めずにはいられなくなる。


唇を離して律動だけに集中すれば、の体は見る見るうちに強張って声色が高くなった。
出し入れする中も次第に航河を締め付けて、背中に回した手で爪を立ててしまう。


「……こうがっ…もう…ああっ…私…だめ…」

「…ああ。…一度…くっ…イッておけ」




今までの中で一番高い声をあげると、は航河の言葉に従うように背を反らし果てた。


ドクン


それと同時に荒い息を吐き出す航河も、根元までの中へ突き刺して欲望を放つ。








ゆっくりとから体を離しながら、航河は虚ろな目で快感に酔うの頭を優しく撫でた。
背中に回したの手が、力尽きてハタリと布団に沈んでいく。

そんなの隣へ横になり、航河は自分の腕にの頭を乗せる。
密着した肌が心地よくて、嬉しそうに微笑むに軽く口付けをして


「大丈夫か?」


そう優しく呟く航河にすり寄って、が『うん』と返事をすれば

嬉しそうに、幸せそうに、にだけに見せる優しい表情で微笑んだ。



けれど、戯れるように口付けを繰り返す航河は


「…久しぶりだからな…まだたっぷりと楽しませてもらうぞ」




悪戯っぽくそう囁いて



を困らせるのが楽しくてしょうがないといった様子で笑ってみせた。







あとがき
カウンタ25000を踏んでくださったしかのすけさんへ捧げます。
とりあえず一回逝って終わってみました。
せっかくの旅館でにょほほんだし他にもすべき事がありますよねー(ニヤリ)
てなわけで、お話はまだ続きます。
それはそうと航河ってこんなの無理よっ!っつーくらい凄そうですよね。
え?何がって?
……えー、はい。後編へ続きます。

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