いつの間にか眠ってしまったのか、ふと気がついた時には自分の目が閉じているのに気がついた。 右の頬に感じる人の体温がとても心地よくて、はゆっくりと目を開ける。 薄暗いぼんやりとした輪郭の中に、航河の寝顔が映った。 仰向けの体をもぞもぞと航河の方へ向けると 少し汗ばんだ体が布団のシーツに絡まって、何も身に着けていないという事を思い出させる。 それがなんとも艶めかしくて、の胸までもシーツに絡められてしまったようにそれ以上動く事が躊躇われた。 「起きたか?」 ゆっくりと目を開けた航河は、そんなにそう静かに声を掛ける。 低い声は、乾いた土を潤すように体に染み込んできて、とても安心する。 「…私、寝ちゃってた」 「…だな」 「今、何時くらいだろ?」 「そんなには経ってない」 頭の下に置かれた航河の腕が動いたと思うと、回されたその手がの頭をゆっくりと包んで グイと引き寄せられれば、の体と航河の体が触れ合った。 吸い付くように馴染む肌が、熱いくらいに伝わる体温が、の胸を揺らす。 羞恥より愛しさが勝って、離れたくないと思うようになったのはいつからだろう。 引き締まった胸元に頬を当てれば、静かな暗闇も幸せな空間になる。 目を閉じて耳を澄まして、が航河だけを感じようとすると、額に温かく湿った感触。 それが唇だと理解する頃には、唇が開かれては航河の舌に翻弄されて。 体が、先程感じたあの快感を思い出して疼き出してしまう。 「…体、平気か?」 「……うん…航、河…」 唇を離して満足そうに笑う航河は、の枕にしていた自身の腕をゆっくりと引き抜いて上半身を起こした。 「風呂、行くか?」 そして、唐突な言葉。 『へ?』と間の抜けた返事をするを余所に、航河は楽しそうな笑みを浮かべる。 膝を立てたかと思えば、を覆い隠す布団を引き剥がして軽々と抱き上げて 「…部屋にある温泉」 そう零して、戸惑うを半ばからかうように浴室へと向かった――。 扉を開けばそこはヒノキ造りの浴室で、爽やかな香りがを包み込む。 待って、待って、待って。 頭の中で必死に落ち着きを取り戻そうと、がどんなに思っても たやすく抱き上げてしまう逞しさや、無邪気な笑顔が心を掻き乱してしょうがない。 恥ずかしさに断る言葉をいくつも思いついてみても、言いくるめられそうな雰囲気に思わず飲み込んでしまう。 そんな事を繰り返していくうちに航河の右足が、左足が、乳白色のお湯の中へと進んで姿を消した。 抱えられた手がゆっくりと下ろされて、もまた航河と同じように足を浸けた。 「もう…信じられないっ」 恥ずかしさを誤魔化すようにそう吐き捨てると、は慌ててその場にしゃがみ込む。 全身を包み込むお湯の熱さが一気に体中を駆け巡り、体を隠しても尚、心拍数は上昇し続ける。 「せっかく風呂付きの部屋にしたんだ、入らないのはもったいないだろ?」 反応を面白がるように呟く航河が、ゆっくりと体を沈めるのを 背を向けたは、揺れるお湯が作り上げる波紋で感じ取り、体を硬くした。 もう、お互いの様子をうかがいながら言葉を、行動を探るような関係ではないけれど 彼のテリトリーに入る事を許されて見せてくれるようになった、無邪気だったりヤンチャだったりする姿に ダイレクトに伝わる航河の感情に、嬉しいような困ったような。 バシャンと、お湯の跳ねる音がしたと思えば、の背中を航河は抱き締めて バランスを崩して文句を言うを、それでも楽しそうに抱きかかえて航河は笑う。 「もう観念しろ、」 悪戯っぽくそう呟く航河の声にが振り返れば、大きな手が頬へ添えられ 慈しむ航河の眼差しが、ゆっくりと近づけられて唇が重なった。 むせ返りそうなほど立ち上る湯気のせいなのか、湿度を増したその感触がやけに熱い。 熱いのに、のぼせてしまいそうなのに、航河の唇から離れたいとは思えないくらい翻弄される。 「二人で、こうやって旅行するのも…いいもんだな」 口付けの合間に零された航河の言葉に返事も出来ずに はただ心を奪われてしまったかのように、目の前の航河の瞳に吸い込まれていく。 抱き締める航河の腕の力が弱まって、の体のラインをなぞり出す。 「こっ…航河、こんな所で…だめ…」 「……何がだ?」 そ知らぬ口調と、胸を包むように触れてくる航河の両手。 その不均衡さが余計にの羞恥を煽っている事に、きっと航河は気がついている。 先端を刺激されて跳ね上がる体を、熱い息を吐き出して耐えて は浴槽の中で抱えられた体を、逃げるように膝を立てて縁へとしがみ付く。 「逃げるなよ、」 「あっ…やぁ…だって…こんな…」 耳元から聞こえてくる艶めいた航河の声に、まるで力を吸い取られている気さえする。 啼き出してしまいそうな声を懸命に抑えていれば、航河の右手がお腹から太腿までなぞるように落ちて 両足の隙間に侵入してくる指が、の秘部へ到達するのはすぐの事。 縁に掴まって膝を立てている逃げていたはずの自分の格好が まるでソコに触れてもらうのを待っていたみたいに思えて、淫らな感情がを襲った。 「さっきの俺のが、まだ残ってるな」 「やっ…待って…なに…す…っ…」 お湯ではない粘着質な感触が、秘部を撫でる航河の指のせいで感じ取れる。 きっとコレは、先程吐き出された航河の欲望のせいだけじゃない。 「中もきちんと洗っておかないと、気持ち悪いだろ?」 分かっているくせに、意地悪くそう呟いて航河の指がの中を突き立てた。 「ああっ…やぁっ…お湯が…はいっ…ん…っ」 駆け上がるような快感と反比例して、どこまでも堕ちてしまいそうな精神が全てを受け入れようと 恥ずかしいという気持ちも、理性も、脱ぎ捨てようとしてしまう。 ゴツゴツとした長い航河の指が、ソコを掻き混ぜる度には恥らう事を忘れて声を上げた。 不透明なお湯の中での行為が、頭の中でより淫らに想像する事になり 耐えきれず身を捩るを余所に、航河の指がより滑らかに動き回っていく。 「…凄いな。そんなにいいのか?」 「…ふぅ…っ…ち…がう…はぁ…っ」 「違わないだろ。…誘うような声出して…」 「いやぁ…あぁっ…こう…がぁ…」 「…こうすると…いいんだろ?」 航河の指が確かめるように動き出して、内壁の一部を擦るように執拗に責めた。 「あぁっ…ん…っ…あぁっ!」 それと同時にの体が弓なりに反れて、ほくそ笑みながら航河は露になったの首筋に唇をつけた。 快感に締め付けてくるの中から、指が抜き取られる。 脱力しながらも航河の余韻に耐えるが、荒い呼吸を数回繰り返しほっとしたのも束の間 抱き締めながらも愛撫をする航河の反対の手が、の腰を押さえて 既に硬く腫れ上がった自身を、の入り口へとあてがった。 「…っ…イヤらしいな」 航河の唇が耳に掠めるほどの距離で、そう切羽詰ったように囁く。 次の瞬間には、抵抗する間もなくの中に、興奮したそれが埋め込まれた。 「…っう…はぁぁん…っ!」 遠慮なしに最奥までも貫く圧力に、は堪らず声にならない声を上げる。 ゆっくりとギリギリまで引き抜かれては、再び根元まで突き刺さる航河のソレが 先程、指で執拗に責められていた部分をより強く刺激して、の全身を甘く痺れさせた。 立ち上る湯気のように、の頭の中にも霞がかかって思考が停止する。 もう、航河以外のものを感じる事が出来なくなってしまったように。 「…っく……。お前のその声聞いてると、それだけでイキそうになる」 だんだんと熱のこもる声に、お湯の抵抗が煩わしくなって 航河は自身を引き抜いたかと思うと立ち上がり、の腰を支えながら同じように立つ事を促した。 ふらつきながらも立ち上がるが、掴んでいた浴槽の縁から手を離そうとしたのだけれど 『そのままでいい』という掠れた声と同時に、前のめりになった航河の体に押し付けられ お湯から露になったの中心へ、航河はそのまま背後から再び自身を挿入した。 体に纏わりついた滴が、その衝撃でピチャンとお湯の中に滴り落ちる。 「いっ…はぁっん…やぁ…こ…うが…立ってられ…ないよ…」 「…支えててやる…っく…から、大丈夫だろ?」 突き立てる航河のそれが、さっきよりも深い場所を刺激して、の膝が力なく震えるけれど 航河は崩れる事を許さないように、自身を咥え込むを眺めながらその腰を押さえつけた。 しっとりとお湯で濡れた体が、いつもよりもぴったりと引っ付く。 溢れて流れる温泉の音に混じって繋がった部分が奏でる水音と ピチャリと肌と肌がぶつかり合う淫猥な音が、航河から与えられる快感に相乗してしまう。 「こうっ…がぁ…。やっ…もう…ダメェ…」 「……嫌、じゃないだろ?…お前の中…っく、凄い締って…っ良過ぎる…」 お湯よりも熱くなった航河のソレが、より高まって性急な抜き差しを始めた。 熱く溶かされて そこから全身の輪郭がなくなってしまうような感覚と 貪欲な快楽がもっと、もっと、と高みへと上り詰めて、縁を掴む手に力が入る。 今にも破裂しそうな程、腫れ上がった航河が、締め付けるの中をより圧迫して。 何度も何度もギリギリまで引き抜いては貫いて、ソレが内壁を擦りつけてくる度に 『自分の中に再び航河の欲望が注ぎ込まれる』 頭の中がそれでいっぱいになれば、はそんな不道徳さに支配された体をゾクリと震わせた。 腰を押さえつけてくる航河の手の力も強められて、は恥ずかしげもなくただ喘ぐ。 「ああっ…航河ぁ…っ…だめ…ぇ…はぁっ…私…もう…」 「……もう少し、我慢しろって…っ…言ったら?」 「やっ…そんなの…っ…ああっ…こ…が…激し…そんなに…はぁん…動いたら…ぁっ!」 「…フッ、イヤらしいな。…好きなだけ…くっ…イけよ」 意地悪くそう呟いてみせる航河自身も、既に限界に近いのだけれど まだ足りないと全てを欲しがるような、征服欲を、支配欲を無性ににぶつけたくなる。 お前は俺のものだ という独占的な感情に囚われて尚、悦ぶの体は 荒い息を吐きながら速度を速め腰を打ち付けてくる、むき出しの欲情を表した航河に 最奥を貫かれたと同時に、嬌声を上げながら絶頂を向かえた。 締め付けられるままに貫いた航河のソレも、ヒクつくの中で同時に欲望を吐き出して 力の抜けたを支えながら、ゆっくりと浴槽の中へと体を沈ませた――――。 「大丈夫か?」 優しい言葉とは裏腹に、くつくつと笑いながらのその口調がの頬をより紅潮させる。 気がついたら、小鳥のさえずりが耳に届いて 目蓋に感じる眩しさに、目を開ければ既に朝だった。 その上、チェックアウトの時刻まで、あと一時間を切っていて 朝食を取る間もなく、慌てて気だるさの残る体を起こして、帰りの準備をしている最中にその言葉だ。 「携帯の目覚ましを止めて、二度寝したのはだろ」 「お、起こしてくれればいいのに…」 「夜、お前が激しかったから、疲れてると思ったんだ」 「……はっ激しかったのは航河でしょ!?…っもう!」 ワザと意地悪く突っ掛かってくる航河に耐えきれず、はバッグに詰めようとしたタオルを航河めがけて投げつける。 楽しそうに笑いながら航河はそれをキャッチすれば、『早く片付けろ』とタオルを返すという名目でに近づいて しょんぼりとタオルを受け取るを、慈しむように腕の中へ閉じ込めた。 スッポリと包み込む大きな体に、抱き締める強い力に 昨夜の名残が、性懲りもなくジンと甘く痺れ出して は航河の腕に陶酔してしまわぬように 「老舗旅館こだわりの朝食ビュッフェがぁ…」 そう呟いて、落ち込んでみせる。 「また連れてきてやるから、っくく…そんなに拗ねるな」 優しい航河の声が、まるで時を忘れてしまいそうなくらいの中へ響くと の全てを知り得ているような温かい大きな手が、柔らかなの髪を撫で 「……約束、だからね」 は敵わないと悟って、恥ずかしそうにそう小さく呟いた。 『ああ』と短く返事をする航河の笑顔が、だんだんと近づいて 爽やかな朝に似合うのか似合わぬのか、二人はゆっくりと優しい口づけを交わした――――。 あとがき 大変お待たせいたしました。 カウンタ25000を踏んでくださった、しかのすけさんに捧げるお話後編です(´Д`;)ハァハァ もう、イチャコライチャコラ航河タンとベッタベッタなお話に仕上がっちゃいました。 いかがでしょうか? 最後まで読んでいただきありがとうございました^^ あ、ちなみに 良い子のみんなは、温泉の中でこんな事をしちゃだめだぞっ。 ←BACK |