4月20日22時47分
さんごめん。マシンにトラブルがおきちゃって直すのに時間がかかるんだ。
今の状況を見ると、24日は休むのは無理そうで…。
約束守れなくて本当にごめん。落ち着いたらまた電話するね。






開いた携帯に映る文字を見て、落胆せずにはいられなかった。






和浩と最後に会ったのは一体いつだっただろうか。

部屋にかけられたカレンダーに目をやって

彼と会えない日々を数えてみたが、なんだか途中で空しくなってやめた。



よりによって



よりによって24日…

和浩の誕生日に会えないなんて…。

神様、私何か悪い事しました!?そう叫びたかった。



今まで必死で耐えていた全てのものが一斉に崩れ出して

私の胸の中はその破片が突き刺さったように、そこら中痛くてしょうがない。





4月20日23時13分
いつもお疲れ様、大変そうだね、大丈夫?
クラッシュとかそういうのじゃないんだよね?
忙しいかもしれないけど、無理しすぎないでね。
24日の件は了解しました。
残念だけど次の機会にカズさんに会えるのを楽しみに待ってるから。







今、自分が送ったメールが本音なのか建前なのかもう訳が分からない。

会いたいという想いをいくら募らせても

和浩の温もりに触れたいと、過去のそれに思いをはせても

目を開ければ私は独り。

余計な現実がただ突き出されただけだった。





「カズさんの…バカ。」





やり場のない悲しみに任せて携帯に向かって悪態をつく。

自分の理不尽な言葉に情けなさが強調されただけで、気分はいっこうに晴れそうにない。


好きだからこそ


会いたいからこそ


理解できてしまうからこそ


和浩が憎らしかった。




仕事を投げてまで会いに来て欲しいわけじゃない。

だけど、淋しいの。

会いたくて、会いたくて…、苦しいの。



和浩のもとへ行きたい。

それならば…、サーキット場まで行ってしまおうか?

そんな考えが頭を一瞬よぎって、希望の明かりを灯そうとしたけれど

今、忙しいのよ?だからカズさんは会えないって言っているんじゃない。

もう一人の自分がそんな浅はかな考えを、希望の灯りごと吹き飛ばしてしまった。


この世の終わりが来たわけでもないのに、どん底気分のままベットに倒れこむ。

頭の中なのか、胸の中なのか、それとも体中なのか

自分の感情がどこかにとどめの一撃を加えたようで、不意に涙がこぼれた。


いくら歯を食いしばっても止められそうになくて

シーツを強く握りしめ、枕に顔を押し付ける。

暗闇の中で浮かんでくるのは和浩の笑顔。

恋とか愛とか、そんな簡単な言葉で片付けられないほど生易しいものじゃない。


そして私は、疲れて眠りに落ちるまでいつまでも泣き続けた。

朝が来れば、この気持ちも少しは楽になっているだろうか――。










今回、お話を分けてみました。
一話は主人公視点、誕生日前の悲しい出来事…、次回にご期待ください(笑)。

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