いつかそういう日が来るかもしれない、と諭良が告げていたことは事実だ。その一方で昴星は、「そんな日が来ることはないだろう」とも思っていた。いかな諭良が卒業後この学校の面々と縁が切れ、二度と会うことがないに等しい別れを迎えるにしても。
諭良が、学校でオシッコを漏らすことなど。
「せ……、んせい……」
周囲の児童たちは、……少し離れた席の昴星も才斗も含め、諭良のことを信じられない思いで見ていた。金曜の午後、この週の最後の授業は算数で、その授業の残り時間が十分を切ったところだった。震えながら立ち上がった諭良は、普段は白い頬を紅く染め、
「ごめんなさい……、トイレに……、トイレ……」
震えながら、うわごとのように呟き、そのジーンズの股間から止めどなく雨を降らせていた。
諭良=ファン・デル=エルレンバルトは転校してきて以来、容姿の美しさと穏和で聡明な内面によって女子から強い支持を得た。昴星と才斗に受け容れられて以降は男子からも一目置かれる存在となり、口数は少なくともクラスの中では信頼されていた。
そんな男子児童が、教室で幼児のような醜態を晒したのだ。これが他の誰かなら、どういう事態になっていたか。例えば昴星が二年生のときに教室で失禁された直後は、他の児童からのいじめの対象になりかけた。それを護ってくれたのは才斗であり、今となってはほとんど誰もそのことを覚えてはいないはずだが、諭良が保健室に連れて行かれ、学校主事の手によって諭良の作った水たまりが拭き清められてなお、事態を言葉にするだけの余裕は誰の中にもなかった。
教室で諭良の嗜好性を知るのは、昴星と才斗だけである。
「……おまえ、何か言ったのか、あいつに」
帰りの会が終わり、掃除の時間。強張った才斗にそう問われても、
「確かにあいつ、いつかするかもしれないって言ってた。おまえもそれ知ってんだろ」
昴星に出来るのは才斗にそう返すことぐらいだ。
「毎日おまえ、あいつと一緒に帰ってるだろう。何か言ってなかったか」
「全然、なんも」
厳密に言えば、諭良が教室で失禁するのはこれが初めてのことではない。しかしそれはいずれも、ズボンの中にオムツを装着するという準備をした上でのこと。今日の諭良はあの通り、盛大にジーンズを濡らしたということからも判る通り、オムツはしていなかった。ホウキを動かす手を止めて、
「……明日、って言ってたな」
教室の床、諭良の水溜りがあった辺りに目をやって、才斗が呟く。
「それに先駆けて、ああいうことをした……、という風に考えることは出来ないか」
明日土曜日、女子三人と遊ぶ日。諭良があの日を待たずに、あるいは待てずに、自分の失態を披露したのだとすれば。……しかし、何のために? それは昴星には判らないし、昴星よりずっと頭のいいはずの才斗にも想像が付かないようだった。
もちろん昴星と諭良は才斗のことも誘ったが、才斗は断固として「絶対行かない」という態度を崩さなかった。才斗は昴星がどこで何をしようと勝手だと言う一方、「おにーさん」やリリィと交流することには消極的なのだ。
「……おれ、保健室寄ってから帰るよ。あいつに何考えてたのか訊いてみる。その……、あいつのことだから考えづらいけど、ひょっとしたらマジでただのオモラシだったかもしんねーし」
昴星の言葉に、才斗は頷いた。諭良が今、どんな気持ちでいるのか、……昴星には掴めなかった。露出狂でありマゾヒストであり、「教室でオモラシ」などという事態に自分を置いて、ひたすらに幸せになっているのかどうか、……しかし、その後のことをどうするつもりなのか。もちろん――かつて才斗に救われたことのある昴星は――万が一にもこの件を理由に諭良を悪く言う者が現れたなら、飛び蹴りの制裁を下すつもりでいる。
掃除を終えて保健室に向かうため廊下に出た昴星に、
「鮒原」
音楽室の掃除担当を終えた女子に呼び止められた。葵と砂南と那月、明日、時間を共にする三人である。
「諭良くんとこ行くんでしょ? ……その……」
口籠った葵に、
「葵ちゃんがね、心配だから会いに行こうってー」
砂南が言葉を継ぐ。
「びっくりしたけど、落ち込んでたら可哀想だし……。それに……、ねえ」
普段はぱっぱかと物を言う那月も歯切れ悪く、三人は視線を交わしてから昴星を見た。昴星としては二人きりで事情を訊きたいと思っていたが、一方で少なくともこの三人が諭良の失禁を悪く言うつもりはないということは、安堵すべき材料かも知れない。
自分の鞄と、教室に残されていた諭良の鞄、更に金曜日なので体操服も二人分抱える昴星を見かねて、三人は手分けして持ってくれた。階段を降りる途中で、
「市川がね、諭良くんのこと馬鹿にするようなこと言った」
と教えてくれた。市川は諭良のことが転校直後から気に食わないでいたらしい。その態度は昴星と才斗が諭良と仲良くなって以降も、あまり変化していない。女子にモテる諭良に嫉妬しているのだろう。
やはり、そういう事態を招いた。昴星が暗い気持ちになり掛けたところ、
「そしたらねー、なっちゃんが……」
「そうそう、後ろから市川に、ホウキで思いっきりカンチョーしたんだよ!」
びっくりして那月を振り返ると、諭良の体操服をぶら提げた彼女は「市川が悪いんだよ」と唇を尖らせる。
「オモラシしたぐらいでそんなの言うの、馬鹿みたいだし」
「鮒原にも見せたかったなー、市川転げ回ってべそかいてんだもん!」
昴星は、冷たくなりかけた心が温かくなるのを覚えた。この三人は本気で諭良を護ろうとしている。……いや、この三人だけではないのだろう。市川のような者が今後現れたとして、そういうことを言う者こそ責められるべきという正常な感覚がこのクラスの中にあるのなら。
「オモラシなんて、恥ずかしいことじゃないよね」
砂南が言った。「おトイレ行きたくても行けないのって、しょうがないことだと思うもん」
一階に着いた。廊下の奥に保健室が見えて来た。昴星たちがドアを開けようとしたタイミングで、内側からドアが開き、養護教諭が顔を覗かせた。「真智子先生」と呼ばれて、全校児童から親しまれる先生である。
「ああ、ちょうど六年生の誰かを呼びに行こうと思ってたところなの。あの子の着替え、持って来てもらおうと思って」
「真智子先生、諭良くんは?」
那月が心配そうな顔で訊く。真智子教諭はにっこりと微笑んで、「大丈夫」と頷いた。その言葉がどういう意味を持つのかは、昴星にも女子三人にも判らなかった。
「先生、ちょっと職員室に行って来るから……、お話するといいわ」
言い残して、真智子教諭は四人を置いて廊下に消えた。顔を見合わせる三人の代わりに、
「諭良、無事かー?」
意を決して、努めて普段と同じ声で、昴星は保健室を覗いた。諭良の姿は見えない。ただ、ベッドを覆うように閉められたクリーム色のカーテンがむぐむぐ動いて、
「無事だよ」
隙間から、諭良が顔を覗かせた。「昴星……、それにみんな……」諭良の表情は、暗くはなかった。三人がそれを見て、安堵したのが背中に伝わって来る。同時に昴星は、やはり諭良の失禁が意図的なものだったのだという考えを濃くする。
「ったく……、心配掛けんなよな」
昴星の言葉に、「ごめんね」と謝る。どう訊こうかと昴星が迷っているうちに、
「よかった、元気そうだね」
葵が言った。
「心配かけちゃって、ごめんね……。でも、ぼくは大丈夫だよ」
諭良は微笑んでカーテンを開ける。失禁を見られた直後だからか、それともただ単に見せたかったからか、諭良はカーテンを解いた。上は教室で見たままの格好だが、下はブリーフしか身に着けていない。三人はそれを見ても、何も言わなかったが、昴星は少し違和感を覚える。もちろん、失禁した際に身に着けていたものではないに決まっているが、
「……なんかそれ、ちっちゃくねーか?」
昴星の呈した疑問に、諭良は照れ臭そうに「うん」と頷いた。
「その……、ぼくぐらいの男子の替えのパンツ、なくって……、先生にそこのタンスの中の『好きなの穿いて』って言われたんだ、だから一番大きなのにした」
諭良は六年生の男子児童のなかでも背が高い方だ。これほどの体格の男子が失禁することは、学校側も想定していなかったのかも知れない。とはいえ、今回の件を経て、今後は備え付けられるようになるだろう。
「へー……、保健室ってパンツの替え、用意してあるんだ……?」
那月が新鮮そうにタンスに目をやる。
「砂南は知ってたよー、だって保健委員だもん。ね」
最後の言葉は昴星に向けられた。昴星はそこにあるブリーフを、二年生のときに穿いた。
「ほんとだ、男子のはえーと、これだと三年生とか四年生ぐらい? 全部ブリーフだ」
「女子のはもっと上まであるけど、ダサイのばっか」
那月と葵は勝手にタンスを開けて中から下着を引っ張り出す。昴星としては女子の下着を、穿いているものではないにせよ見るのは何だかむずむずとした気持ちになるもので。
「なんで女子はでかいのまであるんだ?」
素朴な疑問を口にしたが、三人から返答はなかった。ブリーフのままベッドに腰を下ろした諭良は、
「色々、事情があるんだよ。……それに、聴いたことがあるんだけど、……男子より女子の方が、大人になってからもオモラシしちゃう人の割合が多いって」
「マジ? そうなの?」
那月が「ダサい」と称した白一色の女児下着を手に、葵が振り返った。
「うん、……その、膀胱と、出て来るところが近いから、男子よりも、って。……ぼくは本当ならガマンちゃんと出来るはずだったんだけど……」
少し恥ずかしさがぶり返したように、ブリーフの膨らみに目をやる。一瞬流れた沈黙は、諭良自身によって破られた。
「……さっきの、本当はぼく、オモラシじゃないんだ」
「あん?」
昴星が問う。あれはどうしたってオモラシじゃねーか、と。
「ぼく……、昨夜ちょっと、夜更かししちゃって、それで眠くて眠くて……、普通だったらトイレ行きたいってちゃんと言ってた。でも……」
「えー、ってことはつまり……」
葵が言葉を探す。
「さっきのは、オモラシじゃなくって……、オネショ、ってこと?」
言葉に辿り着いた那月に、「うん」と照れ臭そうに諭良は頷いた。
「その……、本当はね、ぼく、……ときどき、オネショしちゃうんだ、家で……」
昴星は唖然とする。それは「明日」言うのだと思っていたのだが。諭良は砂南の手から体操着袋を取り出し、紺色の半ズボンに足を通した。
「だから、……これは、みんなにはナイショだよ? ぼく、寝るときはオムツして寝てる。でも、学校だからもちろんそんなのしてなくて、でも、寝ちゃって……」
「そう……、そうだったんだ……」
「うん。だから……、その、パンツが濡れたところで気が付いて、トイレに行こうって思ったんだけど、もう……」
あの「トイレ」という発言にはそういう意味があったということだ。ということは、……昴星はまた判らなくなる。諭良が意図的に漏らしたのか、それとも純粋に、アクシデントとして漏らすことになってしまったのか……。
「だいじょぶだよ」
砂南がのんびりとした声で言う。「今日のことで、諭良くんがイヤな思いすることなんてないと思う。オネショするのなんて、おかしなことじゃないよー。ね」
砂南の声に「そうそう」「そうだよ」葵と那月が頷き、同意を求めるように昴星に目を向けた。当たり前だ、そもそも昴星は諭良がそういうことが好きであるということは知っているし、自分自身もオネショが治らない。
「オネショするのなんて、別に恥ずかしいことじゃねーよ」
だから、そういう自然な言葉を口にするのみだ。諭良は美しく微笑んで、「ありがとう、昴星」と頷いた。
「こんな……、ぼくだけど、……明日はみんな、一緒に遊んでくれる?」
諭良の問いに、三人はもちろん頷いた。この三人がどれだけ諭良のことを大事に思っているのか、改めて知らされた気がする。確かに諭良は美しく優しい少年ではあるけれど、今日の事件は更に、彼女たちに諭良を愛する理由を与えたかもしれない。「完璧な美少年」であるよりは、一つや二つ恥ずかしい秘密があった方がいいに決まっている。
オシッコで濡れたジーンズやブリーフが密封された袋をぶら提げ、上はきちんと着ているのに下は体操着のズボン、という姿の諭良が、それだけで愛するに足るものだということは昴星も思うのだ。校門まで五人で一緒に出て、
「じゃあ、また明日ね」
と言って別れるときには、少なくとも彼らにとって今日の出来事は「事件」でも何でもなかったと思えるようになる。
「……で?」
三人と別れたところで、昴星は訊いてみた。「どっちなんだよ」
「どっち、って?」
「だからー、さっきの……、オネショだったのか、それともオモラシだったのか……」
諭良はくすっと微笑んで、「オモラシ」と応える。彼の足は自然な流れで城址公園の方へと向いている。失禁して立ち上がったときの諭良の赤い頬を、昴星は思い出した。あれがオネショではなくオモラシだったとしたら、羞恥心でああなったのではないことは明らかだ。あのあとすぐに担任に保健室へ連れて行かれ、真智子先生が側に付いていたとなれば、諭良が出来たのは濡れた下半身の衣類を脱ぎ、拭き、新しいブリーフを穿くまでのこと。長い間考え続けた行為を実行に移して、未だ欲を解放していないということにもなる。
いつもの秘密基地に着くなり、諭良は尿に濡れた衣類を取り出す。鼻を衝く匂いと、濃い黄色、
「みんなの前で、しっこ漏らしちゃったんだ……、本当に、頭がくらくらしたよ。すっごいドキドキして、緊張して、でも、……しっこだけじゃなくて、別なのも出ちゃったんじゃないかって思うぐらい、気持ちよかった……」
諭良は蕩けた微笑みを浮かべて言う。もう半ズボンの中の窮屈なブリーフが、一層きつくなっているに違いなかった。
「ったく、マジでおれ結構心配したんだぞ、おまえがいじめられたりしたらイヤだし……」
「ぼくは本当は、いじめられたってよかったんだよ? みんなの前でフルチンにされたって平気だもの。……でも、昴星がそう言ってくれるなら、ありがとう。あの三人も、本当に優しくっていい子たちだね」
「っと」
昴星を抱き締めて、額にキスをして、諭良は言う。好きだから優しくしたくなる、心配だってする、そういう思いは諭良にきちんと伝わっているらしかった。
「……っつーか、おまえ、いまめっちゃしたいんだろ」
ん、と諭良が幼く頷いた。まだ全く乾いておらず、その分だけ強い悪臭を放つブリーフを広げて、
「これ、穿いてもいい?」
と強請った。
「好きにすりゃいーだろ」
「うん……、ありがとう。……ねえ、昴星? ぼくのこのパンツ、……学校でオモラシした、記念のパンツ、昴星のパンツと交換してくれない?」
えー……、と昴星はたじろぐ。諭良のオモラシブリーフが欲しくない訳ではない。ないのだが、
「……そんなん、おれがもらっちゃっていいのかよ」
と思うのである。諭良にとっても今日の一件は特別も特別、二度と味わうことのできない時間だったに違いない。その記録となるブリーフは、手元に置いておきたく思うのが自然ではないか。
「ううん。昴星に持ってて欲しいんだ」
力を篭めて、諭良は言った。諭良の「記念」すべき日に立ち合い、ある種の責任だって感じている昴星であるから、確かにそのブリーフの持ち主としては相応しいのかも知れない。
「……あー、そうだ」
今思い出したような顔で、昴星は言った。通学鞄の奥、ジッパー付きのビニールで二重に密閉したのは、今朝の失敗ブリーフである。
「これ、やる」
嬉しそうに微笑んで「ありがとう」と受け取った諭良は、早速袋を開ける。開けた瞬間、諭良も昴星も、その強烈な臭気に圧されたようにのけぞった。まだ乾いていない諭良のブリーフも相当なものだが、乾き切った昴星のブリーフはそれ以上、いっそ暴力的と言っていいほどの強い臭いでその場を支配した。
「すっごい……、すっごいね、これ……、オネショ?」
「見りゃ判んだろ……、っつーか、マジ臭いなこれ……!」
「おにーさん」や諭良にプレゼントするこういったブリーフは、もちろん洗わないで持って来る。経験上、水をたくさん飲んでしまったときよりも、溜まりに溜まって放出したときの方がより濃く臭いことは知っている昴星だったが、今朝のは相当なハイレベルである。色も、濃い。
「ねえ……、昴星……?」
オネショブリーフを広げて、諭良が目を輝かせている。何を欲しているのかは、時間は短くとも深いつながりのある相手だ、もう判っている。昴星はむうっと唇を尖らせて、「好きにしろよ、ったく」不貞腐れたように腰を突き出す。諭良は嬉しそうに頷いて、昴星のハーフパンツを下ろし、足から抜く。続けて、まだほとんど汚れていない白ブリーフも下ろした。まだ下を向いて垂れている昴星の短茎と陰嚢の裏を、風が潜り抜けた。
「じゃあ……、昴星」
右足から上げて、諭良の手に拠って穿かされる。下半身から立ち上って来る臭いが、本当の自分のものであるとは信じられないが、諭良は既にそれを悪い物とは感じていない様子だ。太腿までブリーフを上げたところで、
「可愛い……、ここから出たしっこで、昴星のパンツ、こんなにいい匂いになっちゃうんだね……」
昴星の柔らかなペニスに鼻を当てて、それからぱくんと一口に収める。びくっと震えた昴星を見上げて、「ふふ……、いまはおりこうさんの味がするのに、オネショしちゃうなんていけないちんちんだね」微笑んでから、ブリーフを腰まで上げた。
「お、おまえだって、ちんこそんな変態だなんてあいつら知らねーのに、おりこうさんのフリしてんじゃん……」
「うん、だから今日は、おりこうさんじゃないところ見せちゃった」
そういうところも、あの三人は諭良の可愛いところだと思うだろうか。いや、「可愛い」とまで思うかは判らないが、少なくとも何ら減点材料にはなっていないらしいことはもう間違いない。
「昴星」
諭良が、自分のブリーフを昴星に差し出し、自ら体操着のズボンと窮屈なブリーフを脱ぎ捨てた。のみならず、上も全て脱いでしまう。もちろん勃起していた諭良のペニスは、寒風にさらされることで一層勢いづいたようにも見える。
「オモラシパンツ、穿くのうれしそうにしやがって……」
「嬉しいよ。……昴星たちが来るまで穿いたままでいようかなって思ったぐらい。先生がいたから出来なかったけど……。あ、でもね、先生が、学校の洗濯機で洗ってくれるって言ったのは止めたんだ、持って帰って自分で洗うって言って……。洗っちゃったら記念のブリーフじゃなくなっちゃうから」
冷たいブリーフを太腿まで上げてやったところで、諭良の真似をして、勃起に鼻を近づける。……心なしか、いつもより臭い気がする。拭いたはずなのにと思ったが、諭良のことだ、わざと汚れを残すような拭き方をしたに違いなかった。包皮の先端に指を突っ込んでみると、指に腺液が絡み付いて糸を引いた。
「さっきね、……替えのパンツ、一瞬、女の子の穿いちゃおうかって思ったんだ」
「……あの、引き出しにあったやつ?」
ブリーフを腰まで上げてやると、その冷たさに諭良がぞくぞくとした震えを身体に走らせた。
「……ん、そう。でも、迷ってるうちに昴星たち来ちゃったから。やっぱりぼくは勇気が足りないね」
いや、おまえは十分すぎるぐらい勇気あるだろ。
昴星は言わず、汚れたブリーフ同士で立ち上がった。諭良だけ上半身裸であるというのも妙な気がして、真似して上を脱ぎ、土の上に広げた。
「ん」
と指差すだけで諭良は察しよく横たわる。その顔面に尻を押し付けるように身を重ねてやるだけで、諭良の吐息がブリーフの中へ染み込んで来た。
「ああ……、昴星の……、しっこ……、すっごい臭い……、いい匂い……!」
諭良は掴むように両手で昴星の尻を撫ぜ、ブリーフの含む不潔な臭いに、自身も尿臭を放つブリーフの中でペニスを震わせていた。
「お、おまえのだって、くせーよ、バカ……」
湿り気を帯びた膨らみに鼻を当てると、鼻の頭に匂いが染み付いて取れなくなるような気持ちになった。いつでも諭良のオシッコの臭いを嗅いでいられるならば、それは昴星にとって幸せなことだ。
「……月曜と、一昨日と、今日……、一週間で三枚も、昴星のパンツもらえるなんて……」
諭良は昴星の尻穴の窪みに鼻を突っ込むようにして嗅ぎながら言う。「ひょっとして、昴星……、今週、毎日オネショしちゃったの……?」
「おにーさん」のアドバイスや昴星自身の努力によって、昴星が起きたとき布団を乾いたまま保っていられることが多くなったことは、諭良も知っている。一方で二枚に一枚は諭良にプレゼントすることにしているのだから、この五日で三枚の黄色いブリーフを贈られた諭良は、月曜から金曜まで一日たりとも昴星がオネショせずにはいられなかったことを当然理解する訳だ。
「……怖い夢を、見たりした?」
昴星はずっと、あの夢の続きを見ていた。勇者となって夜の旅、しかしその道中で、あの三人の見ている前で毎回、屈辱的と言うほかない失禁をする夢。
そのくせ、起きたときには苦しいぐらいに勃起していて、……今朝は布団その他を洗うより先にベッドの上でブリーフの窓から引っ張り出して、オナニーをした。昨日の朝も、浴室まで汚れ物を抱えて入ったところで我慢が出来なくなって、全裸になるなり扱いてしまった。夢の中身はエスカレートしていく。それに伴って、昴星の欲のリミットも甘くなっている。
「……ずっと……、同じ夢、同じじゃねーけど……、なんか、毎回……、オシッコ、漏らす夢……」
「そうなの……?」
「ん……、その……、あいつら……、あの三人が、夢に出て来て……」
自分の夢の話を人にする、というのは何となく気恥ずかしいものだ。しかもそれが、自分の失態に至るプロセスであるならばなおのこと。
しかし諭良ならば、聴いてくれる。
「……あのな、……その、……夢の中でさ、おれ、いっつも、何か、『勇者』なんだ」
「ゆうしゃ? ……ゲームとかの?」
「そう……。そんで、……その、ゲームとかだと、パーティー組むじゃん、魔法使いとか、僧侶とかと」
「あんまりぼくやったことないけど、何となくは判るよ。……昴星は夢の中で勇者で、あの三人とパーティーを組んでるってこと?」
小さく頷いただけだが、諭良には伝わったはずだ。諭良は続けて、「その夢の中で、昴星は彼女たちの見てる前でオモラシをしちゃうんだね?」と訊いた。同じように、昴星は頷く。
「そうなんだ……。こんなにいっぱいしっこしちゃうぐらいまでガマンしてるのに起きられないってことは、きっと昴星にとってその夢は、いい夢なんだね」
それは、認めがたい気がする。
しかしその一方で、認めなければいけない気もする。
「今日は、どんな夢を見たの? ……昴星がこのパンツ、こんないい匂いにしてくれた夢の話、聴いてみたい」
「お、おまえ、ちんこしたいんじゃねーのかよ」
「うん、したい……、けど、昴星の話を聴いてからでも遅くないと思うよ」
今宵の夢、これほどの黄ばみと臭いを、諭良に贈ることになった顛末。
……魔王の城へと繋がる、長い長い迷宮を、もちろん今夜もブリーフ一枚で踏破した勇者・昴星とその仲間三人を、「神の像」が出迎えた。
「紙の象?」
「……わかんねーけど、その、石でできてる女神さま」
「ああ、『神様の像』ね」
その女神像は、「そなたがまことのゆうしゃであるならば ゆうしゃとしての あかし をたててみせなさい」と、昴星たちの脳内に直接語り掛けて来た。夢であるから、このことの論理的な説明は諭良も求めなかった。夢の中での昴星だって、そういうもんか、としか思わなかったぐらいだ。
ただ、女神像は昴星たちを魔法の力で異空間へとワープさせた。転送されたさきは、剣と魔法、勇者と仲間たち……、そんな世界観とは全くそぐわない場所。
「……教室、だった」
「教室。学校の?」
「……ん」
パンツ一丁の昴星が突如として教室に現れたのだ。しかし――夢の中であるから――パニックにはならなかった。
砂南が、
「女神さま、鮒原に勇気のあるとこ見せろって言ってたね」
と言った。
「鮒原の勇気のあるとこなんてある? 魔物にびびってオモラシするような情けない『勇者さま』じゃん」
葵が心無い言葉を昴星にぶつけた。昴星のブリーフにはこのときも、黄色いシミが浮かんでいた。
「でもー」
砂南はにこにこ微笑んで言う。「砂南は、鮒原くんすごく勇気あると思う。恥ずかしいことガマンして、オシッコ漏らしちゃってもちゃんと『勇者さま』でいるし、おちんちん出しても平気なのって、すごいことだと思うよー」
平気でも何でもない。そういう反駁を試みようとしたとき、昴星は既に、砂南の魔法に拠ってか、あるいは女神の何か説明しがたい力に拠ってか、宙に身体を浮かべられていた。
「昴星は、みんなの前でどんなポーズになったの?」
諭良が訊く。
「え、っと……、だから、なんかこう、浮かんで……」
実際に人の身体が浮き上がることなどあるはずもないが、昴星はごろんと横たわって、
「こう……」
膝を曲げ、股を大きく開いた。
「ちんちんとかお尻の穴まで丸見えだね。でもパンツ穿いてるんだっけ」
「そ、そう……」
「それで、昴星はどうやって『勇気のあるところ』をみんなに見せたの?」
夢の中で、
「ほら、そんなポーズだけじゃ意味ないでしょ」
葵が命じるように促す。「せっかくみんな見てるんだから、サービスしなさいよね!」
「……サービスって?」
諭良が素朴な疑問を呟く。
「おれに訊くなよ!」
「じゃあ、こう訊けばいいかな……。昴星は夢の中で、どうしたの?」
「そ、それはー……」
砂南が言ったのだ。
「このあいだの、鮒原くんが気持ちよくなりながらオモラシするところみんなに見せてあげるのがいいんじゃないかなー」
と。こんな風に砂南に拘束されながら、少量ずつ尿を零しているうちに昴星のペニスが勃起し、最終的にその勃起したペニスから噴水のように失禁したときのことを、彼女は言っているのだ。
「ああ、あれ見せられたら『勇気ある』ってことになるかもね」
無責任に那月も同意した。
「じゃあ、そのまま昴星はみんなの見てる前で勃起したちんちんでオモラシしたんだ?」
諭良の問いに、昴星は首を振った。
「だ、だってさ、だって……、みんな見てんだぞ? みんなの見てる前で、オモラシなんて、そんなの……」
「気持ちよかったけどなあ……」
「おまえはな!」
実際、夢の中でも外でも昴星にはそんな勇気はどうしたって湧いてこない。
「でも、どうするの? オモラシして『勇気』のあるとこ見せないと、世界に平和は訪れないんだよね?」
「それは……、そうだけどー……」
昴星は相当に頑張ったと自負している。尿意は徐々にこみ上げて来て、じっと耐えることなどとうに出来なくなり、僅かに自由な両手で股間をぎゅうっと押さえることでしのごうとした。そうすることで、三人の促した通り、昴星のペニスは勃起してしまったし、尿意は堪えようもなく強まった。夢の中の昴星は、破裂しそうな膀胱と羞恥心に駆られて、それでも目を覚ますことは出来なかった。
「頭ン中、真っ白になって……、何も、マジでぜんぜん、何も考えられなくなって……」
実際、昴星はオシッコの我慢が下手だ。「おにーさん」に助けられながら訓練をするようになってから少しずつ長時間の我慢も効くように放ったが、ダムの堰はなかなか高くならない。そんな中、睡眠という拘束の中にあってさえ、あれほど強い尿意を堪え続けたことはなかったように思う。
「昴星」
諭良が、ごそごそと自分の鞄を漁る。奥から出て来たのは白いブリーフだ。「こっちの、穿いて」
「え……?」
まもなく昴星は諭良の取り出したそのブリーフが、先日諭良のところに泊まった日に忘れて行ったものだということに気付く。ほんのりと内側が黄ばんではいるが、失禁したわけではない。部屋に着いてすぐ二人ですっぽんぽんになって、浴室でオシッコの引っ掛けあいをして遊んだ。それで二度も気持ちよくなったのに飽き足らず、水をたらふく飲んでオムツをしてから、リリィを部屋に呼んで、二人で赤ちゃんになった日……、だから、ブリーフを汚すことはなかったのだ。
「昴星が見た夢、ぼくにも見せて欲しいな。……ダメ?」
諭良にそう言われると、何となく、断りづらい。
「わ、わかったよ……」
起き上がり、立ち上がった昴星の前に跪いて、諭良は嬉しそうに昴星の汚れたブリーフを下ろす。それから両手で新しいブリーフを広げたところで、
「……ふふ、『夢』のこと思い出しただけで興奮しちゃった?」
諭良が、指摘した。
昴星の股間で、丸いペニスが上を向いている。その反応を、昴星自身は全く自覚していなかった。
「ち、……ちげーよ、これは……、その……」
きっと、オモラシブリーフを穿いていたからだ。オモラシするのが好きだし、濡れたブリーフを穿くのも好きだから、身体が知らないうちに反応してしまったのだとしたら、そっちに決まっている。
「そう? でも、ちょうど『夢』と同じになるね」
諭良の手によってブリーフを穿かされる。ささやかだが硬い膨らみが、股間に浮き出る薄い汚れを主張する様子は、確かに今朝の夢と、寸分違わぬものだった。
「それで、昴星はそのままオモラシしちゃったの?」
勃起が収まらない。尿意も募っている。諭良の言葉に、乳首を撫ぜられたときとおなじ身体が震える。寒いはずなのに、身体の表面は夏の日差しを浴びているように熱かった。
「今日のぼくみたいに……」
諭良がクスクス笑う。「六年生にもなって、しっこガマン出来なくなって、パンツびちょびちょにしちゃったんだ……? みんなの見てる前で……。でもきっと昴星、それですごく気持ちよくなったんだね。オモラシして気持ちよくなるところ、クラスのみんなの前で見せて、それでますます気持ちよくなっちゃったんだ」
ふるふる、首を振るのが関の山。しかし諭良の指摘した通りの事象が、昴星の夢の中では起こった。いや……、諭良の想像以上の事象、と言うべきだろう。
「お……、おれ……っ」
勇気を見せろ、と言われた。
それはつまり、「必要」なことだ。昴星の性嗜好がどんなものであれ、もはやオモラシをしないでは世界は救われない。
逆に言えば昴星はそれを理由に、自分の欲望を満たすことだって出来るということだ。
「お……、シッコ、でるっ……、オシッコ、出るっオシッコ……、オモラシっ、オモラシしちゃうの、見てっ、……」
仰向けで肩をつけたまま、尻を浮かせる。それはただ、自分の醜態を晒したい、クラスメイトたちに見てもらいたいという欲の勢いのままに。
「おれっ、おれのちんこ、おれのっ、赤ちゃんみたいなちんちんっ、オモラシっ、パンツの中でいっぱいオシッコしてっ、気持ちよくなるとこ見てぇ……!」
腰を振る。ブリーフを持ち上げる短茎の先から、絞り出すように尿が沸き、それはブリーフの黄ばみに新しい濡れ染みを作る。
「あ、あっ、おひっこ出て来たっ、おれの、ヘンタイちんぽ、オシッコしてるっ、オシッコしてるよっ」
「すごい、変態だって自分で言ったんだ?」
「んっ、おれ……、おれオモラシすんの好きっ、オモラシっ、見てもらえんのうれひくって、ちんぽガチガチっ、ひひっ、ガチガチのちんぽでオモラシすんのぉ……っ」
事実、それがどんなに恥ずかしいことだったとしても、昴星は結局はこの夢で気持ちよくなったのだ。クラスの全員に見られながら勃起状態で失禁したところで目が覚めた、……いや、失禁はまだ止まっていなかった。夢と現の境目を捉えることもできないまま、昴星は夢の中のポーズ、つまり今まさにしているポーズでブリーフの中を自らのオシッコで満たすことに飽き足らず、放尿を続けるペニスを全て晒し、金色の噴水を撒き散らしながら達した。オシッコをしながら全身から力が抜け、水溜りの上に背中を落すと同時に全身を痙攣させ、白い粘液を自分の顔に届くほど勢いよく噴き出させてしまったのだ。
いまは、そこまでには至らない。しかし放尿に伴って巻き起こる強烈な快感に、思考は止まる。もっともっともっとオシッコしたい! 願いのまま力を篭める。
「昴星、すっごく可愛い」
諭良が欲のままにブリーフを脱がせてくれていなければ、今日の朝食かそれとも給食か、どちらか判らないが、身体の中に一旦溜まって昴星の中に数時間は収まっていたものが、パンツの中に出てしまっているところだった。本来は尿意への最後の堰となる勃起をした状態で無理に放尿しようとすれば、ベクトルの似た別のものが出て来てしまうのも無理からぬことだったかもしれない。
「ああ……、昴星、うんち出て来ちゃった。もったいない……」
諭良が素早く昴星のブリーフをずり下げた。もとより昴星が尻を浮かせていたから、それは容易だ。ブリーフの中でオシッコをして気持ちよくなる「ヘンタイちんぽ」が空に晒される、クラスメイトに余すところなく……。諭良はそのまま仰向けの昴星の身体を丸めると、
「いいよ、昴星、そのままいっぱい、いっぱいオシッコして。気持ちよくなるとこ見てもらおう。おまけにこんな太いうんちしちゃってる昴星を、みんなに」
そう囁く。今の昴星にとって諭良一人の視線はクラスの二十数名の視線の代わりになる。平均的なものよりやや水分含有量が少なく、それでも健康的でボリューム感のある便、排泄にはえもいわれぬ快楽が伴った。昴星は後先など考えないまま、天に向けて一気に茶色いものを放出する。顔に自分のオシッコを浴び、無意識のうちにその味を舐りながら、……ただ頭の中は「きもちいい」だけで満たされる。
「んみゅぅううっ」
全てを出し切って、肛門を引き絞った瞬間、昴星の陰茎から勢いよく精液が射ち出された。ほとんど真上に飛んだそれは、昴星自身の陰茎に落ちて水音を立てる。ブリーフの中でオシッコをして興奮する「ヘンタイちんぽ」が、一縷の隙もなくそうであることを証明するかのように。
「あ……、はぁ……、ああぁ……」
ガクガクと震えながら腰を、尻を落とした。オモラシしちゃった、みんなの見てる前で、オモラシして、うんこして、……いっちゃった……、……という、強烈な背徳感が薄まって行く。それが自分の妄想に過ぎず、現実はただ、諭良一人が見ている前で自分の夢を再現しただけなのだと理解が進むにつれて、昴星はそれに安堵しながら残念がるという二律背反にしばし呆然とする。
それから昴星は気が付く。尻から出してしまったものはどうなったのだろう。何も考えずに尻を落としてしまったが、そこには昴星自身の便が落ちていたはず……、しかるに尻に、脱糞――こちらは昴星もするべきではないと判っている――したときのような感覚はない。
「すっきりしたでしょう、昴星。しっこもうんちも精液も、こんなにたくさん出したんだもん」
諭良が優しい声で言う。彼の手には、コンドームに詰め込まれた昴星の便があった。先程昴星が興奮のうちに出し始めてしまったものを素早くその中に仕舞うという処置をしてくれたらしかった。いつもながら、そして我ながら、よくそんなに太いものを身体の中に入れて平気で過ごせるものだと思ってしまうほど立派で逞しい一本糞である。
「ぜんぶ出た? それともまだちょっと残ってるのかな」
「あ……、う……」
すぐには返答出来なかった。すっきりした、と言えばしたような気がする。しかしいつも一本では済まない。射精に伴って一気に括約筋を締めてちょん切ってしまったから、まだ出口あるいは入り口のあたりにわだかまりが残っているような気もする。
「立てる?」
ゴムを手にした諭良に促されて、立ち上がる。先程の快感が想定していたよりもずいぶん強くて、足元がふらついた。
「昴星の夢の中、すごく気持ちいいところなんだろうなあって思ったよ。でもぼくはきっと、昴星にもっと気持ちいい、夢より幸せなことしてあげられると思うんだ」
「え……?」
諭良の視線の先には、この秘密基地が「秘密」である所以、周囲から覆い隠す木々のうち一本に向いている。昴星の頭上、背伸びをすれば手が届くほどの高さに、幹から張り出す太い枝があった。
「そこにぶら下がって、ぼくによく見えるようにうんちして欲しいな」
それは命令ではない、ただの要望、それは判っている。
「昴星、先に一人で気持ちよくなっちゃうんだもん。それぐらいのワガママ聞いてくれてもいいんじゃない?」
筋の通らないことを言われている、とは思う。しかし一方で、……昴星は常に新しい方法を探して来たのだ、ということも事実。オモラシをして、外でオシッコをして、……小さくて恥ずかしい陰茎を見られてしまうかも知れない場所でブリーフを脱ぎ、野糞だって何度も。例えばコンドームに出した便を交換して自分の胎内に収めて快楽を得ることなど、そうした模索の末に辿り着いたものだ。
宙に浮いたままの排便なんて、まだしたことがない。
思えば諭良だって、今日の学校での失敗はその模索の果てに辿り着いた結論に違いない。そして射精に匹敵するような快感を得るに至ったのだ。
「わ……、かった……、えっと……、うんこ、出るかわかんないけど……」
考えてみればそもそも、先程はブリッジの体勢で失禁し、排便し、射精するに至った訳だがそれも初めてのことだった。強い興奮を催したのは何も夢想のおかげだけではなく、未経験のポーズも手伝っていたのかも知れない。ブリッジほど派手な体制ではないにせよ、……両手をバンザイのように上げて排泄することなどこれまで一度もなかった。