7, 7, 7.

俺は手を伸ばして、クラウドの小さな尻に触わってみた。

柔らかな感触が人差し指と中指に、とてもリアルに伝わって来る。押すと、そのまま凹む、だけど瑞々しく、押し返して来る。ザックスが好きだった、俺の尻だ。「可愛い」と言っていた。確かに、そう見えなくも無い。小さな二つの丘…猫の尻尾が、少し邪魔な気もするけど、でも俺の尻だ。指で丘を開いて見る、無垢な肛門が、薄暗い中で解かる。 ザックスの気持ちになってみる。こういうのが良かったんだよ、クラウド……そう耳元で、笑っている。

そっと、その蕾を撫でてみる。くすぐったそうに窄まる穴を、可愛いと思うのがザックスなら、俺も確かに、多少はそう思うから、ザックスなのかも。

クラウドが、こそりと内腿を擦り合わせた。俺は片手で引き続き肛門を撫でながら、もう片方を腰の前に回し、手ぬぐいごしに探る。つんと前に突き出た幼い茎が、すぐ解かった。クラウドがビクッと跳ねて、目を醒ました。

「……にゃっ」

「……やあ」

俺は、五割程度ザックスだから妙に落ち着いて微笑んだ。多少下半身は固くなっているけれど、いつも通りを装って。

「…びっくりしたぁ、いま、また……、黒い髪のおじさんの夢、見たよ……」

「そうだろうな」

俺は笑って、クラウドの身を起こす。

「クラウド、見てごらん」

手ぬぐいを外して灯かりを点けて、勃起しているのにどこか頼りない性器を、彼自身に見せてやった。

「……ここがこんな風に硬くなって、…擦ってるとそのうち、さっき出てきたみたいな白いネバネバしたのが出て来るんだ。別に、オネショとかお漏らしとかじゃないから、心配しなくていいんだ」

「にゃ……」

やらしさなんて微塵もない目で、自分の欲求の現象を見つめている。立ってもまだ剥けない幼さに、俺の中にも存在するヘンタイ(っていうか、ザックス?)の部分がクスクス笑って、神経をくすぐってきた。

「……病気?」

「違うって。……男の子なら、誰でもあることさ。俺だって。……見てみるか?」

「うん」

喉の奥で笑いを呑み込んで、俺はトランクスを下ろした。成長、が一目見て解かる。これが、こうなる、こんなになってしまう、時間って恐ろしい。

「俺のも、固くなって、上向いてるだろう?」

「うん……、ザックスのチンチン……おっきい……」

興味深げに俺の下半身を見つめる。背徳、だろう、この感覚、何だか、じわじわと昂ぶる俺、麻薬とか覚醒剤とか未成年の飲酒喫煙――いけないことをしようとしているときの焦りにも似た欲求不満。

あとで絶対に後悔すると気付いていながら、その毒が美味なことを知っていれば手を伸ばしてしまう。

悪いのは俺じゃない。手の届く範囲に毒を置いた神様がいけないんだ。いや、待て。いけないことかどうかは、解からない。答えだってまだ、出てないんだ。

「……この状態で、擦ってると出て来るんだ。白いのが」

七割くらいザックスの俺は、クラウドの幼い部分を指先で突いた。クラウドを抱き上げて、彼が夢の中で、そして俺がされたように、俺の胡座の中に座らせる。まだ「立ってるだけ」の彼の陰茎に手を回し、先端の、危うい感じに覗ける細く小さな路の入口をそっと撫でた。

「あぅ」

途端、悲鳴を上げて俺の手を抑えた。

「……何か、来るだろ、ここ…」

「何か、いたい」

「……まだ剥けてないからな。じき慣れるさ」

俺は空いた左手で大きな耳を掻いてやりながら、ただ「立ってるだけ」ではなくて、色々な理由を付けるために、弄る。包皮の上からでも解かる、少し膨らんだ亀頭の根本を指先で摘まんで小さく動かす。「だけ」に、ちょっと色が付いてきた。

「……気持ち良いだろう。……例の『黒い髪のおじさん』、こんな風にしてたんじゃないか?」

クラウドはただ、こっくりと頷いた。俺の指先で生まれた電流に、身体が痺れて時々震えて、心臓にエネルギーを与えていく。血流に運ばれた吐息が、声ととろけあいながら唇から零れた。 俺はますます調子に乗せられる。 尿道口に浮かんだ露を指で、僅かに覗く亀頭に滑らせた。

「や……!」

ぴっ、と力が篭ったそこは「だけ」を通り越した。何も解からないなりに、求める気持ちは確かに存在するようで、甘え鳴きしながら請う声に、八割ザックスの俺は確かな快感を覚えていた。

「……ザックス、俺、……何か、あっ……、ん、……そこ、……触られると……」

「先っぽ触られると?」

「……っん、なんか、やん、漏れちゃい、そう、だよぉ」

括約筋を締める訳だから、「漏れる」とは逆の感覚だと思うけど。

初めてのとき、俺もそんな風に感じたのかもしれない。

「いいんだよ、漏らしたって。怒らないから」

笑いながら、言える余裕の俺は、彼の尻尾の根本に触れる自分のペニスがどんどん、どうしようもなくなってくるのを歓迎する汚い野郎になっていた。

「……もっと、気持ち良くしてあげるから」

三本の指で、上下させ始めると、たちまち猫――じゃない、「クラウド=ストライフ」は生々しい震えを伴った声を上げ始めた。その声は、自分の声じゃないんだと思う。何故って、自分の声かどうかなんて、解からない。聞いたことないし。第一、俺はとっくの昔に喉仏が出っ張ってるわけで同じ声じゃない。俺じゃない、クラウドの声だ。俺はクラウドじゃない、俺はザックスだ。今はとりあえず。

あとで後悔するぜ?

「ひっ、あ……!!」

体を仰け反らせた拍子に、ちりん、と鈴が鳴った。幼稚な男の証明から、彼自身の胸目掛けて、甘くない蜜が飛び出した。クラウドは、はぅ、と引き攣って息を一つ。後ろから彼の頬に触れた指先が濡れた。

夢精した分だけ薄まっている精液がつぅと指を伝った。

「……びっくりしたか?」

耳元至近距離で囁かれ、解かりやすくびくりと我に帰った。

「……おれ……、あの、……え?」

「これ、お前のそこから出たんだよ?……嗅いでみな」

鼻に近づけてやると、すぐ顔を背けた。

「やだ……くさい……」

「臭いって、お前のから出たんだぞ」

「っ、……んっ」

口の回りに塗り付けた。

「んっ、えぅ……、おいしくないよぅ……」

「そうか?」

俺も、舐めてみる。

「……そんな事無いじゃないか。お前のちんちんから出たミルク、美味しいよ」

そして俺は、気付けばクラウドの項の髪を退けて、キスを落としていた。 セックスとキスの間には驚異的な差があると、思うんだけど。

「なあ、……でも、気持ち良かっただろう? ……気持ち良くならなきゃ、これは出ないんだぞ」

「……わかんない……、なんか、ムズムズして……我慢出来なく、なって。……いまも、何か、変……」

ときめくのは、単純に「したい」だけか。

「変か。なら、正常だ」

でもそう考えたくないと思うのは、何でだろう。そう、抜くだけなら、簡単だ。

この猫の尻の穴か口か、ちょっと借りて、勝手なことを教え込ませて、射精すればいいだけのこと。しかし、それに悲しさを覚えずにはいられないのは何故か。俺はクラウドを手術台に寝かせた。

「クラウド」

涙のフィルタがかかった視線が、堪らなく切なくて、俺はどうしようもなく感じてた。心がぎゅ、と締め付けられる。

「……ざっくす」

性行為を通じていろいろな物事を考えるのを汚いと思う向きもあるかもしれない。

だけど、俺とザックスは、愛と、体で、つながっていた。愛と肉欲が両立したって、いいじゃないか。好きだからセックスしたいなんて思ってたし、それは正しいことだと信じていた(当時はあんまり、セックス好きじゃなかったけど)。だから俺とザックスの関係を考えるときに、性行為は蔑ろには出来ない。 抱

かれたいと、好きだから、思った。

「……クラウド、クラウ、ド」

抱きたいと思った。

勃起して破裂しそうな自分自身に急かされているだけじゃないと、信じたい。

それから一ヶ月後には、本当に恋人同士として触れ合えるようになっているってこと、その時はまだ知らなかったけど、だけど、俺は「俺として」ではなくて、ザックスとして、クラウドを好きになれるような、気がした。

(逝かないで)

俺は、俺のザックスは、いなくなった。死んだ。殺された。

この猫クラウドのザックスはいなくならない。俺のことをにゃあにゃあ鳴きながら慕って付いて来る、俺に命を預けて生きているクラウドを、俺はもう消したいなんて思わない。一人にしたくない。俺と同じ身体をしている贔屓目もあるから、辛い思いはさせたくない。俺が味わった幸福以上を、この子に味あわせてあげたい。

一人の同居人としてだけじゃない。俺の心の、もっと重要なものになりそうだという予想は、当たっているような気がする。 ザックスになろう、俺は、喜んで。 ザックスは許してくれるだろうか、解からない、だけど、もう関係無い。俺が、俺の身体が心が「クラウド」の体を心を欲している。

俺はクラウド=ストライフ、ザックス零割。俺だ。

「なぁ、お前は俺のこと、好き、か?」

「……すきだよ、ザックスのこと、おれ、すき」

「クラウド、なぁ、『あいしてる』って、解かるか? 『愛してる』」

「解かるよ。……俺、ザックスのこと、愛してるよ……」

嬉しい。

すごく、嬉しかった。

「……ありがとう」

一つ呼吸して、俺は、クラウドに、キスした。 少し緊張気味でも、柔らかい、さっき舐めさせた味がする、俺の唇。 いや、クラウドの、唇。

「……ざっく……」

零れた息に、匂いがない。 俺と同じ匂いだから、鼻を素通りするのだ。

「……ありがとな、クラウド」

もう一度、唇を押し当てた。すぐに外して、舌で唇を舐める。

「ん……ふぅ」

くすぐったいらしい。少し逃げの体勢をとった身体を抱いて押さえて、舌を、その口の中に滑り込ませた。さっきの味が残っている。それ以外は、俺と全く同じ。だけど、そんなことはなるべく考えないようにする。俺と同じだろうが違おうが、一人の人間に「愛してる」と言われて、こんなに、こんなに、嬉しいというのに、そんなせせこましいことなんて考えていられない。今は一方通行でもいい。クラウドの舌を味わう。クラウドは俺の舌のなすがままだ。ひょっとしたら、噛まないよう努力をしているのかもしれない。

だが、恐る恐るというか、偶然かもしれないけど、クラウドが俺の舌に舌を、絡めて来た。舌先で、俺の舌の側面を舐めかえして来た。それがまた、堪らなく嬉しくて仕方が無い。俺は涙が頬を伝うのも気にせずに、クラウドの舌の裏とか、上顎とか、舐め続けた。クラウドは時々「んっ」と声を漏らしながらも、俺の真似をして、舌を動かしてくれる。

「ん、はぁ……」

唇から、移した唾液が溢れて伝ってる。手のひらでそっと拭ってやると、クラウドは俺の頬が濡れてるのに気付いたらしい。

「……泣いてるの?」

「……何でか解かんないけどな……」

あるいは、これはしっかりザックスの悦びが、俺の中で形になったものなのかも。

「クラウド、……俺に、お前のお尻、弄らせてくれないか?」

「え?」

「……俺はお前を、もっと気持ち良くしてやれる。……そして、……俺もお前とおんなじに、気持ち良くなりたい。だから、お前のお尻をちょっと、してあげられたらって、思って」

傲慢なのは解かってる。セックスの、痛い部分だ。……こと、男同士に関しては。クラウドはでも、「痛い」なんて知らないから、ちょっと考えただけで、「いいよ」と。

「あんまり、ジロジロ見ないって、約束して」

少し恥ずかしそうに、そう言った。

「わかった。……うつ伏せになって、お尻高く上げて」

言われた通りに、膝を折り、尻を突き出した格好、尻尾がふわりと揺れる。俺の心の恥部が歓声を上げた。――あくまで「俺の」恥部だ。

「……こ、う?」

「……そう。じゃあ…、始めるから」

両手で尻を割り開いて、淡く染まった肛門に舌先を付けた。途端、クラウドは尻尾をぶわっと膨らませて不快感を示す。慌てて、

「ごめん……ちょっと、我慢してくれ」

俺が言うと、少し、膨らみが収まる。

「な、んか、ぬるくて、へんなの……」

「……大丈夫。変な事はしてないから」

痛い思いはさせたくないから。

俺は、再び舌で、唾液をそこに纏わせる。全体を濡らしたら、両の親指で入口を少し広げて、濡らす。

「ざ、っくす? ……そ、んな、とこ……」

「……大丈夫だよ、心配するな」

「……う、うん……、でも、そこ……キタナイよ、恥ずかしいよ……」

「……平気だから。……気持ち良くなってこないか?」

少し顔を離して、肛門の下のに垂れ下がる袋をそっと揉んだ。

「んにゃぁ……」

ついでに、根本を探ると、早くも固くなって、前の方を向いている。入口を舐めながら、袋を刺激しつつ根本を指先で摩る。クラウドは、色っぽい声で喘ぎ始めた。無意識に、尻をくねらせながら。

「どうだ?」

「……は、ぁっん……、んん、んぅ」

「いいみたいだな…。言葉にならないほどに」

俺は性器に当てていた手を、肛門へと戻した。左手の二本指で入口を横に広げて、嘗めて濡らした右手の人差し指で、そっとそっと、開いた中心を、押した。

「ぅや……っ」

「大丈夫。大丈夫だから、……力抜いて……、クラウド」

「ん……ふっ、ふぁ」

人間の身体にはちゃんと「生殖器」っていうのがあって、ここはそもそもそうじゃない。だから無理があるのは百も承知。だけど、最高に気持ち良くなるには、やっぱりここを開くことが必要なんだ。 第一間接まで入り、そこからさらに、奥へと進ませる。クラウドの中は生暖かくて狭くて…って、恐らく誰の中も同じなんだろうけれど、クラウドだからという特別条件があるから、俺からしたら、そこはかとなく、好ましい。…いま、人差し指の第二間接を通過。一段と圧迫が強くなる。俺は、慰めるために、左手で尻を撫でた。いい子いい子をするように、そっと、優しく。

「あっ、ん、お尻……ぃ」

「痛いか?」

「いたい……けど、……っん、あぅ」

「けど……何だ?」

「撫でられると、……なんか、へんだよぉ、チンチン熱くなって…さっきみたいに……!」

やっぱり、尻は感じるらしい。撫でられるだけでこんなに鳴くのだったら、中はもっと。

「……よし、クラウド、人差し指奥まで入った。……動かすよ」

ギチギチに詰まった胎内の中で、人差し指を少し、引いて、また押し入れた。クラウドはその途端、「あああ」と声を上げて、尻をもっと高く上げた。

「痛い?」

「……あぁ……はぁっ、あっ」

「……大丈夫そうだな」

指を回して、次に入る中指の分、少しだけでも広げておく。痛みを和らげるよう、尻に愛撫を施しながらも、堪えている自分のためにも。一旦人差し指を抜いて、再び入口を舐める。血は、出ていない。ホッと息を吐く。

人差し指と中指をきっちり合わせ、なるべく細くなるようにして、入口から今度は、さらにゆっくりと押し入れていく。奥まで入れたら、少しずつ、神経を使って、ギュウギュウ詰めの中を、出来るだけ緩める。

「……はぁ……はっ、あぁ……、ざ、っぁ、っくすっ、くるし……、くるしいよ、ザックス……っん」

「今に、……すぐ、気持ち良くなるから、頑張れ、クラウド」

 ……誰のために?

二本の指が、ある程度……本当にある程度だが、動かせるようになった。動かすたびに、痛がりながらも、クラウドはよがる。肛門でこれだけ、感じられるってことは、俺の素質か。左手で触れたペニスは固く尖っていた。

「……良いか?」

「……っ、わかん、ない…、あっ、ふ、ぅん……」

きっと、良いんだろう。気持ち良いところ悪いけれど、俺は指を抜いた。

「にゃっ……」

肩越しに、紅潮した泣き顔を俺に向けた。痛かったのか、もっとしてほしかったのか、入り交じった表情だ。

「……クラウド、ここ、擦られると気持ち良くなっただろ?」

俺はクラウドの根本を撫でながら、言った。こく、と素直に頷いた。

「……俺もいっしょなんだ。……擦られると、気持ち良くなって、お前が出したみたいな白いの、出すんだ。それで……、その、俺も、気持ち良くなりたいんだ。……お前のお尻で」

「……ど、ういう、こと?」

俺は、少し迷った。やっぱり止めようか、と。まだ、口でしたほうが、痛くないし。

でも、同じ事だ。結果は同じ。

「……お前のお尻の中に俺のこれ、入れても、構わないか?」

クラウドは、すぐに返して来た。

「……俺……、いたくない?」

「……多分、気持ち良いと、思うよ」

クラウドは、その言葉で落ちた。……確認したくはないが、――やっぱり俺なのかなぁ。

「……いいよ」

考えたくないことは考えなければいい。俺はクラウドを仰向けにした。

「……え?」

「……顔見ながらの方がいいだろ?…お互い、ちゃんと、見れた方が。それに、向かい合えばキスも出来る」

動物のセックスは、基本的にバックからだけど、俺たちは人間同士だし。それに俺は、顔が見えた方が好みだ。抱くにしろ抱かれるにしろ、相手がちゃんと良くなってくれるかが気になる。今回は相手が初めてだし、余計に。

「じゃあ、……入れるよ」

「……うん」

入口に先端が触れた。クラウドがきゅっと肛門を閉じた。それに構わず、俺はゆっくりと、腰を進めた。亀頭が入っただけで、相当に締め付けて来る。

「っんっ……ぁ、あぁ……」

徐々に腰を沈めていく。クラウドの肛門は収縮を繰返しながらも、耐えて俺を受け入れてゆく。締めては緩み、また、締める、その度に、クラウドのペニスがピクンと動き、尿道口からは熱そうな蜜が溢れて来る。

「っん……お、っきぃ、すごい、ぅんん、……ザックスの……」

嬉しいけど今は気にしてる余裕がない。何とか奥まで押し込んだら、体勢を起こしつつ、クラウドの背中に手を回して、彼の身体を俺の胡座の中に納める。重力にプラスされて、クラウドは切なげな声を上げた。 そう、切なげな声。何とかかんとか、ちゃんと感じられているようだ。

「……クラウド、どう?」

「ふっ……ぅ、や……、も、…がまん、出来ない……おかしくなりそぉ……、おねが、い、うごかして……チンチンごしごししてぇ…、白いの、出したいよぉ…」

「……解かった。いかせてやるよ。……しっかり俺にしがみ付いて……、自分でも腰、振って。お前のごしごししてやるから」

俺が右手でクラウドのペニスを握ると、クラウドは言われた通りに、両足を俺の腰に回して、腰を前後に動かし始めた。左手を伸ばして、尻を支えて、俺も揺らすのを手伝う。接合している点から、グチュグチュという音が漏れ始めた。

「はっ、あ…ひっ、あっ……あっ、っん、ぅっ、出ちゃ、ぅうっ」

どくん、とひと震え、薄い精液が飛び出した。だけど、俺は構わずクラウドに快感を与え続けることにした。もっと、もっと、いっしょに良くなろう。

「あ……あーっ、あぅん、あぁ、ん、んっ、お、れ、おかし、っんっ、くなっちゃ、うっ、……あぁ……あっ」

ひっきりなしに声になりそこねた声が溢れて止まらない唇を、俺はキスで塞いだ。

俺を欲しがって、自分から舌を出して来る。いっぱい、動かして、同じ匂いの吐息を口の中で混ぜこぜにして、何も気にしないで腰を、振る。突き上げるたびに「あぅ」とか「んっ」とか、色々な反応を見せてくれるものだから、俺の身体は、もうそんなにはもたなかった。

「あっ……! あ、……っ、ひぃ、……いっ……」

「……くっ……」

鳴いたクラウドのペニスから少しだけしか濁っていない精液が零れた。その締め付けが、すごくて、俺もクラウドの胎内に、激しく射精した。クラウドに教え込んでる最中からずっとしたかったのだから、自分でも自覚出来るほどに量が多い。

「あぅ……っ、……ん、ん、……はぁ、ざ、くす、……おしり、……変だよぉ、…なんか…」

クラウドを横たえて、詰まっていた俺をゆっくり、抜いた。俺が放った液が、トロトロと溢れ出てくる。その感触に、クラウドがさらに紅くなった。手を伸ばしてティッシュを何枚かとって、綺麗に拭く。クラウドは、恥ずかしくても為されるが侭、足をM字に開いて、一番恥ずかしい格好を保つしかない。

俺の中で徐々に、理性というものが目を醒まし始めた。

「……ごめんな」

何やってたんだろう、俺。改めて見た顔は、やっぱりどうしても、俺の顔。

俺は、俺を抱いた。俺の胎内に射精した。

俺は俺で、イッた。

「……ん……、な、んで?」

クラウドは、続けて、まだ熱を持って震えている幼茎を拭われて身体を強ばらせながら、聴いて来た。

「……痛かっただろう……。それに……こんな、こと、させて」

セックスの意味も知らない、男の子に、こんなこと覚え込ませた。なお悪いことに、俺と同じ顔の。

俺はナルシスト?

「……ザックス、おれ……、なんか、まだ、……へんだよぉ」

クラウドは俺の謝罪を気にもとめず、掠れた声を上げた。

「変?」

「……な、んか、身体、熱いの、終わらない……。まだ、…入ってるみたいに、……お尻が、じんじんするよ……、なんか、痺れて……」

「……ああ、いや、きっと、初めてだからだよ。慣れれば、そういうのも無くなるさ」

慣れれば、って。慣らすのか。

「疲れただろう。……もう、時間も遅いし。お休み」

「……ん……にゃ…」

「俺、ちょっと一人で考え事したいんだけど……、向こうの部屋に居るよ。……ひとりでも、大丈夫だよな……?」

クラウドは不安げな表情を浮かべたが、すぐに、にっこりと笑った。

「ん……、平気だよ、なんか…いま、俺、ザックスがいっしょにいるみたいだから」

「……そうか」

頭を撫でて、ひとりで枕に頭を乗せたのを確認してから、俺は罪悪感に悶えるために、書斎に引っ込んだ。

 

 

 

 

412日目

 

 

「はぁ」

……思い出すんじゃ、なかった。 そう、俺は、勢いに任せて、クラウドのことを抱いちゃったんだ。勢いに任せつつ、精一杯、その場で驚くほどの勢いで生まれて来る愛情も含めていたつもりだけど…、でも、暴走する性欲を停められないまま……。

あれが、俺たちのはじまりか。「自分と一緒じゃないか!」とは思っても、やめなかった俺の根性の無さに、自分で拍手を贈ろう。情けないけれど、あれがなかったら今の俺たちはいないんだから。

でもせめて、もうちょっと、優しいキスとか、手を繋ぐところから、とか……、無理か俺じゃあ。

「……ザックス?」

「……何だ、寝てなかったのか」

「ザックス、起きてるから」

「あー……、そう、ごめん。もう寝るよ」

最初のころはクラウドも、セックスが恥ずかしいことっていう意識がなかったから、平気でえっちな事、言ってたなあ、そう言えば。今は頼んでもなかなか言ってくれないし。まぁ、反抗的な顔を苛めるのも、楽しいんだけど。

な、なな、ななな。

七、七、七。

あっという間じゃないか。その間に俺は、一生分くらい成長してしまったけど。

そう、例えば、もう、ザックスを考えることはしなくなった。彼は、俺が愛した人であって、クラウドが愛している人じゃない。

俺とクラウドの間に、どんどん、「違う」ところも出来て来た。昔は同じだった匂いも、今は少し違う。クラウドの息は、甘ったるい。俺の息は、ミルクコーヒーの少し苦い香りなんだそうだ。こんな感じで良いと思う。自分と全く同じよりは、自分と違う魅力を探しあって喜びたい。

あと、何度だってセックスをする。ナルシストじゃなくて、単純に、君のことが好きだ。その身体を欲しいと思う、自分とは違うから欲しいと思う。

「……ざく……」

「ん? ……平気だよ、何もしないから」

「う、うそっ、当たってるもんザックスの」

にやけてしまう。成長したな、クラウド。昔は自然に「ザックスのちんちん」まで、言ってたのに。

「俺の、何が?」

「っ、ばかっ、言わないもん、絶対、言わない」

それもまた、良しか。

七百七十七回の交精を経て、俺はそう思うまでに成長した。


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