天賦の才

 この小さな身体にたくさんのキスをくれる恋人二人は、果たして自分に何を見ているのか、常日頃に少年は疑問を払拭出来ない。九歳が十歳になっても成長期遠きその身体、どんな断面から見ても幼い。『大きな目に傷のない肌に小さな手に脂質感はなくとも柔らかな輪郭の腹部』、例えば二人ならそう評する身体も、何の特徴の無い子供のものに思える。

 実際、ビビの身体は何の特徴も無い子供のものだ。同じ年代の子供たちと背の順に並べたら、かなり前の方へ来るであろうという点を含めても、決して目立つところなど無い。なるほど目鼻立ちは整っていて、十年後はどういうの美男子に育つかという楽しみはあるが、それが九歳十歳の子供らと並べて大きな「特徴」となるかは覚束ない。実際、他の少年たちはビビの恋人二人ほどビビを重要視はしない。

 でも言う、

「ビビは可愛いなあ」

 言う、

「すげえ、好きだよ」

 言う。

「愛してる」

 それだけの言葉に霧のような優しさで包まれたなら、勘違いしてもおかしくはないところ、風呂上り、じっと鏡で自分を見て、やっぱり何も持っていないと謙虚な溜め息を吐く。要はそういう心にジタンとブランクは強く惹かれる。少しの臆病さは更なる愛らしさを生み、これだけ抱擁を重ねても擦れることなく瑞々しい反応を見せてくれる点に、男の喜びを見出す。

 ビビの目には、二人の男ほど、素敵な存在はない。何時見たって、何度見たって、二人を素敵だと思う。いつも長閑におどけて見せて、いざと言う時には本当に頼りになるジタンと、そのジタンが心からの信頼を寄せる以上、揺らがぬ大樹の如き温かな存在感に安堵できるブランク。時に、甘えたいという欲求が心に生まれるのは子供である以上当然だろうが、その願いを十全に叶える。抱き締めてキスをして、ビビが拒まなければそれ以上の形で甘えさせる。「ビビは可愛いね」とたくさんの言葉を身に浴びて、精液という形で受け取る。それは二人の欲求を満たすと同時に――或いはそれ以上に――ビビを喜ばせる。

 何の特徴も無い僕を誉めて称えて、甘えるのには堪えてくれて、何度だってキスをしてくれて。

 昼下がりに鮮やかな色の若草を撫ぜて抜けてきた風がビビの足に絡んだ。清潔な新しい下着に穿き替えるのをやめて、最後にもう一度ごしごしと髪を拭いて、ドアを開けた。ひとまず冷たい水を飲みたい。

 ドアを開けて出る。ブランクは窓を開けて、外に身を乗り出して煙草を吸っている。どうしてわざわざと思ったが、「バカか、それじゃねえっつってんだろ、その左の、それだって」と怒鳴っているのを聞いて、ああ、ジタンにガーデニングの指示を出しているんだと判る。「やかましい文句あんならテメェ自分でやれよ」、そう怒鳴り返したジタンに、ブランクが無慈悲に灰を落す。こんなやりとりをしつつも、今年も春先、見事に咲き誇ったチューリップを見てビビが微笑んだから、二人は土いじりに精を出す。心の十割に光が当たったような気になる。

 裸のままで、ソファに座った。

「使えねえ」

 と呟いて、ビビの気配を感じてブランクは振り向いた。ビビが裸であるのを見て左手からするりと灰皿が落ちた。遅れてジタンのくぐもった声がした。

「ビビ……、ダメだよ服着なきゃ。風邪ひいちゃう」

 そう指摘するブランクは、機会さえあればビビを裸にするくせに。

「服着ないでいれば……、脱がせる手間なくていい、でしょ?」

「……え?」

 テメェ殺す気かこの野郎と汚い言葉を撒き散らしながら、灰皿を片手にどたどたと玄関からジタンが入ってくる。裸のビビに視線が至り、口も開く、灰皿が床に落ちてごとんと大きな音がする。それからどういう思考回路が働いたか、キッとブランクを睨む。

「この変態!」

「なっ……、俺じゃねえ!」

「じゃあ何で裸なんだよ!人に土仕事させておきながらテメェは!」

 ビビが裸なら、二人は嬉しい。ぎらつく瞳で睨み合いながらも、コンマ何秒の余白に裸のビビをちらちらと盗み見る。自分たちの平和と愛情の象徴をすぐ傍に感じながら、啀み合うのは難しい。

「……なんで、ビビ、裸なんだよ。風呂から出たらちゃんと服着なきゃ」

 ブランクともども、真っ当な大人のような物言いをする。しかし彼らの下半身には裸の少年を前にして、着実に血が積もる。

 普段もあまり裸に頓着しない。十歳が同性相手へする反応と考えれば一般的だが、二人にとっては恋人の裸だ。他の十歳の誰でもよければ特に意識もしないところ、彼らにとっては他の誰とも違う。男でも女でも大人でも子供でもない、奇跡のように、その心がその身体に宿り自分たちの側に居てくれることが、どこまでも大きい。

 自分の裸に全く自信はない。その一方で、恋人たちが自分の身体をどういう風に思っているかを知っている。だから当然、自分が裸で座っている姿を見て、二人の身体がどうなり、今後どうなっていき、自分を含めたこの世界が何を軸に廻っていくか、聡明な少年には把握しきれている。

「お兄ちゃん、ジタン」

 立ち上がり、ソファの脇に立つ。男二人の目線はビビの銀色の瞳に固定しようとしつつも、その下半身へ何度も何度も目が行く。可愛い、可愛い、触りたい、触りたい、疼くような視線がビビの腰の周りに絡みつく。

「座って」

 ビビがちょこんと裸の尻を乗せていたソファに、男が二人座る。ジタンは百六十後半、ブランクは百七十を少し超えるばかりで、二人とも決して大きな身体をしているわけではないが、ビビとは比ぶべくもない。

「そしたら……、シャツ、脱いで」

 ジタンとブランクは顔を見合わせる。土仕事で汗を吸ったシャツを脱ぐと、肉体のデータよりも男性的な輪郭になる。それでも、例えばジタンはまだ十七歳にしか過ぎない。発展途上の危うさも兼ね備えた二人の裸からは、本人たちの全く意識しない性の匂いが漂う。

「あのう……、俺たち多分すげえ汗臭いんだけど」

「いいの。いいから脱いで」

 本当はズボンもパンツも脱がせてしまいたい、ちらと頭の片隅にそういう思いも生まれた。しかし、欲望に弱い自分がまた甘えてしまうのは明白だった。

 ビビは、ブランクの膝の上に上る。昇って、キスをした。反射的に、「あっ、ずりぃ」、ジタンが子供のような不平の声を上げる。その頬へ、右手を伸ばした。あやすように掌で撫ぜ、親指で唇を撫ぜた。それで、すんなり黙る。

 二人は当然、困惑する。

 平時は「な、しよう?な?気持ちよくしてあげるからさ」、そんな風に誘って、恥ずかしがるのを宥めて透かして裸にするところ、自ら裸になったビビが膝に乗り、キスをしてくる……。

 とりわけ、キスをもらうブランクは困惑の度合が深い。こんなにえっちなキスが出来るのかと、耳の後ろがざわつく。唇を啄ばむように優しく吸われ、滑らかな舌でなぞられ、差し込まれた舌は歯の裏へ伸ばされ上顎を舐められる。普段は「僕からするよ」と言ってされるのは頬か額、唇でも重ねるまで。こちらから深く舌を差し込めばそれだけで目を潤ませて我慢出来なくなるような、敏感なビビなのに。

 ただ真似をしているだけだ、ジタンのする、ブランクのする、キスの。これでいいのかな、こんな感じだったっけ、ぎこちなくともブランクの舌にはリキュールの風味。

「……はっ……」

 離して間近に見た顔が、お互いに、こんなに美しかったのだと改めて認識出来る喜びは、再度の短いキスで説明できる。

 頬の手だけではそろそろ足りなくなってきていたジタンが妬み始める頃、ビビはようやくブランクの膝から移動した。ぼんやりと、ビビの重さがなくなったのを寂しがるような顔をするブランクに、おやと思いながらも、ビビを歓迎する。間もなく、その表情の答えをジタンは知るのだ。

「……っ、……んぁ……!」

 ブランクほど我慢強くないその唇から呆気なく声が零れた。ぴちゃ、ぴちゃ、そんな音を立てて自分の唇を舐るビビの舌、その動きの巧みなこと、あっさりと流されてしまいそうになる。

 ビビの左手は伸びて、ブランクの首から胸へ移動する。いつも自分が愛しげに撫ぜられている、その数分の一でいい、技術があればと思いながら、

「っ……、ちょっと……っ、ビビ……!」

 だがその指が乳首へと至り、ブランクは思わず声を上げる。お前のピンク色の可愛いのと違う、俺のなんて弄ったってと。ビビは指を止めなかった。ただ、大人のブランクが、珍しくそんな声を出した、それが少し、嬉しかった。

 少年の身体はもちろん反応していた。幼根はブランクにキスを終える頃にはもう立ち上がっていた。それでも心は比較的に冷静だ。まだ自分の身体のどこにも何もされていないからに他ならないが、それ以上に主導権が自分の手の中に在る事を意識するからだ。

「ん、……っ、あ、……あっ……」

 ジタンは早漏だ。彼がブランクと二人だけでする時、どういう格好になっているかを、直接見たことはなくとも想像は出来るビビである。

 ジタン、かわいい……。

 そう思うことが多少の歪みを含むことは避けられなくとも、可愛いと思ったことを否定は出来ない。

 ビビは、唇を離してジタンの顔を見た。その目がかすかにだが確かに潤んでいるのを見て、普段胸や脇腹を吸われるときに感じるのとはまた異なった胸の高鳴りを覚える。

「……ビビ……」

 自分が濡らした唇で、呟く。そのさまを見て、危うく色いろを手放してしまいそうになって、すぐに目を剃らすと、まだ弄っていないから勃ってもいない、ジタンの乳首へ唇を落とした。

「んっ、うあ……、……っ、っは……」

 ジタンが僕のおっぱいを弄るのが上手なのは、きっとそうされ慣れているからなんだと、ビビは知る。再びジタンの唇から零れ始めた声は、妙に艶っぽく、ビビの副意識では男である以上それに興奮する。分泌された何かとろりとした液体は結果的にビビが女の子と同じ扱いを受けた結果として溢れるものとして意義を持つにしろ、恋人の艶気を見ての反応としては正常なものだ。

 足場をブランクに戻し、ブランクの肌に、幾つかの跡を付けて歩き、同様に乳首を啄ばむ。こうして見るとただ男の乳首といっても千差万別あるのだろうとビビは想像する。ジタンとブランクと、体型にそう大きな差異のない二人で、これほどまでに見た目が違うというのは奇異に思える。とは言え足と足との間に下がる身体の一部ですら、人の顔と同様、似たものはありつつも同じものは二つとしてないように。

 され慣れていないから、ブランクはジタンほど酔わない。ただ、腰の辺りがぼんやりとくすぐったい気がする。悪い気はしない。余裕のあるブランクの様子に、広い胸に、唇を寄せると、性的なことをしているにも関わらず、不思議と心が落ち着きそうになる。

「……ビビ、どうして……」

 ジタンの、まだかすかに息の震える声を聞いて、はっとする。膝から降りて、

「ズボン脱いで」

 普段と少しも変わらぬ声音、但し有無を言わせぬきっぱりとした口調で言った。

「ええと、……はい」

 男二人はすごすごとズボンを下ろす。言わなきゃわかんないの?そう言いたげに、じっと、二人の柄物の下着を見て唇を尖らせる。困惑気味に、下ろされた下着の中で、ジタンの性器は露すら浮かべるほどに勃ちあがっている。ブランクもまた、裏筋までビビの眼に見せている。

「そしたら……、してほしい?」

 勢い込んでジタンががくがくと頷く。ワンテンポ遅れて、こっくりとブランクも頷く。既にビビがなぜこんなことをするのか、ジタンにとってはもうどうでもよく、ブランクはまだ多少引っかかっているのだ。

「お兄ちゃんは?」

 自分の思惑通りに行かないことに対して、ビビは機嫌を損ねた。普段は素直なビビだから、こういうことは珍しい。むきになって、左手でブランクの男根を掴み、頬張る。しゃぶりつかれた口の中で早速舌が動き、手は茎をスライドさせる。左隣の少年に比べれば遥かに性質の大人であるブランクではあるが、愛しいビビにそうされれば、陥落までは早い。

 ジタンはブランクの性器に吸い付くビビを見て、辛抱出来なくなってくる。もういっそ自分で扱いて出してしまおうか、そんなことを思いついたところに、ビビの右手が伸びた。一瞬、口からブランクを抜いて、上目遣いに、

「だめ」

 言われて、右手、細い指が、赤らんだ根に絡みつく。再びビビはブランクへの口撫を始める。ブランクの唇が薄く開かれ、熱い息が零れた。ビビは舌から神経を抜くことはなく、ジタンの性器を指で辿る。人差し指の先、尿道口に触れ、ぬるりと滑った。その液体を指先で亀頭に広げていく。ビビの掌の中で熱の篭ったジタンの性器がビクンと跳ねる。粘液が伸びなくなったら、尿道の輪郭に沿って指が下がり、袋を弄ぶ。

「ビビ……、ねぇ、ビビ、俺もういきたいよ」

 泣き声を出したジタンに、ビビの胸が麦穂が揺れる。「ジタンが可愛い」という、普段はどこにしまってあるのかわからないような感情が不意にビビの心の空に架かる。ブランクはジタンをどういう風に愛するのだろう?想像することすら難しいそんなことを、知りたいと思う。そしてビビ自身はそんなジタンを見て、もっと、もっともっと、意地の悪いことをしたくなってくる。

 だから、ぎゅっと、無きに等しい握力で、ジタンのものを掴んだ。

「ん!」

「……、まだ、だめ」

 不器用な乾いた舌は、再びジタンの茎を辿る。敏感な筋の辺りは仮令指であってもジタンの括約筋をただでは置かない。

「ビビぃ……」

 甘えたような声で情けを誘うが、ビビはもうサディズムの存在に気付いていた。ジタンの声に、口の中のブランクが一つ弾む。

「……ビビ……、いく」

 或いは、ジタンの声がきっかけになったのか、ビビの口の中へ、苦蜜が零された。それが止むまで、手を止めず、口も外さない、この辺りは男の恋人として、心得たものだ。

「……は……あ……」

 ソファに腰を落としたブランクの指がビビの銀の髪に触れ、頬に触れた。ブランクの目には、今しがたまで自分を咥えていた少年が、今まで以上に、とんでもないレベルにまで美しくなっているように映る。

「ビビ、ねえ、もう、ほんとにやばいよ」

 ブランクの思考は、ジタンに目を向けたビビを見つつ続く。どうしたんだろう、本当に。これまでこんな風に誘ってきたことは一度もなかった。どころか、あんな意地悪をすることも。

 じっとジタンを見上げながら、ビビは右手を止めない。無表情に近いが、その目に満ちているのは慈愛の表情だ。ふと、ビビに意地悪をする俺たちはああいう綺麗な表情を浮かべるときなどあるのだろうかとブランクは思った。

男たちは時として、ビビに意地悪をする。愛しているのになぜ意地悪をするのか、答えは出にくい。結局は自分らの欲求、ビビの泣き顔だって見たいと、それだけを振りかざしているに過ぎない、だからあまり理由を考えたくはなかったが、ひょっとしたらの思いを抱く。

今、自分は楽だった、そして、ジタンも楽をしている。無論、怠惰さを表すものではない。ビビの側からアプローチされるのは、射精までが命令口調的で、且つジタンのように我慢を強いられたとしても、ありがたい話なのである。普段は自分の先鋭的な欲求の犠牲にしているかのような錯覚すらあったが、双方の同意の上に成り立つのであれば、攻める側より攻められる側の方が楽なのかもしれないと、検討の必要なことを考え終える頃、ビビはようやく唇をジタンに寄せる。ただ、そこが触れるよりも一瞬早く、ジタンは限界を迎えた。

「……あとで」

 ビビは顔を拭い、指を舐めて、ジタンの性器を一撫でして言う。

「また、元気になったらね」

 ある特別な種類の艶を、ビビが手に入れつつあるのかもしれない。それをどう迎え入れるべきか、喜ぶべきか否かも見えないで、結論を出すわけにも行かない。

 ジタンもぐったりと、椅子に崩れ落ちた。到達に際して、ほんのかすかな敗北感のようなものに苛まれている。

「……お兄ちゃん、あのね、……僕もしてほしい」

 そんなことは言われなくとも判っていると、ブランクは膝の上にビビを招き、ジタンの味のキスをした。そうされている時のビビの顔は、普段の無毒な少年のそれだった。指を舐めさせ抱き寄せ、後ろに手を回して指を押し入れれば、忽ち愛らしい泣き声を溢れさせる。

「んっ……、あん……っ」

 その声を聞けば本来の立場へするりと戻り、ビビの耳元へ、「我慢してたの?」、ほんの少しのスパイスをかけて言った。

「んやぁ……っ」

 どちらでもいい、そう言えば、どちらでもいい、ブランクはそう断じ、小さな耳を舐めながら中指を中へ入れる。「可愛いな」と息で囁き差し込まれた言葉を、ビビはこれまで以上に信じきる。

「ひゅ、ぅん……!」

 首を振り、額をブランクの肩へ摺り寄せる。ぽんぽんと髪を撫ぜて、まだ早いよと宥める。

「ビビ、な、もっと足開いてみ」

 復活したジタンがブランクの膝の前に座って、甘ったるい声で言う。ブランクの指が抜かれ、さっきとは別人のような素直さで、尻をジタンの顔の前に晒す。ジタンは顔を寄せ、舌を伸ばす。すべすべした尻を撫ぜつつ、一般の神経で素直に「いい」と思えるかどうか判らなくとも、少なくとも悪くはない。放射状の筋の中心に舌を捩じ込んで、舌先に動く動きに味に、ジタンは先ほどの屈辱はどこへやら、ビビを開く作業に熱中する。内壁を擦る指をぐいと曲げられ、危うく失禁しかけ、背中を反らす。

「そろそろいい感じだね……」

 二本目の指も緩やかに入るようになって、ジタンは唇を舐めた。

「さて、どうするよビビ。俺のとお兄ちゃんのとどっちが欲しいよ」

 ビビは振り返り、唇を八の字にする。もう、これはいつも通り愛らしきビビだ。

「どっちも……」

 こんな欲が、愛が、「可愛い!」と、ブランクは、ジタンは、叫びだしたい。

「テメェはあとでビビに咥えてもらうんだろうがよ、俺が先だ。なぁ?」

「……ん、お兄ちゃん先」

 改めて膝の上に座りなおす。

「可愛い。ホントに可愛いよビビ。ちんちんこんなに元気なんだなあ」

 指摘して指で突付くと、ふるりと震える。ブランクは満足げに微笑んで、おいでとキスをする。

「……うん」

 二人の手で開かれた尻の穴に、手を添えたブランクの性器を導き入れる。ちぇ、と背後でジタンが不満げに唇の音を立てた。

「んん……!」

「どう、ビビ」

「……んん……っ、おっ……きぃい……っ」

 例えば、可愛い自分がこうして愛されるなら。或いは、誘い込んで愛することも幸せなら。互いに愛し合っていることが確かなら自分たちは形に拘らない、そういうことだ。

 ジタンがしゃがみこんで、烈しい音を立てるビビの尻を覗く。

「……すっげ、ビビ、めっちゃでけぇの出たり入ったりしてんの丸見えだ」

「……そりゃ誉め言葉か?」

「まあ、そうなるかなあ」

 ブランクの肉茎を抱き締めるように何度も何度も締め付け、射精を促がす。さあ僕の中へ、中へ。まだ脆弱なる子供の身体は、あっさりとその願いを手放す。ビビは射精した。ブランクはふっと笑い、ビビにソファを譲り、仰向けに寝かせる。ビビの身体に散った精液を、ジタンに舐めさせる。自分は変わらずビビに挿入したままで、射精の余韻に浸るビビの締め付けを楽しむ。

「なあ、可愛いよ……、ビビはホントに、超可愛い。なあ、さっき、ビックリしたけど嬉しかったよ。なあ?」

 ジタンはビビの精液を啜って笑う。ビビは薄らんだ思考が、ただ悦びの色に染まるのを感じていた。

「うん、ホントに思うわ。……ビビはもう、マジで可愛い。大好き」

 ブランクも全面的に同意する。その言葉を、今は心から信じられる。言葉を紡ぐ余裕はないが、言えたなら言っていた、「お兄ちゃんもジタンも可愛いよ」、心の底から。三人揃って本当に美しい恋人一家と、世界に誇る。そういう風に考えられる、胸を張って恋人に抱かれる自分を晒せる、言ってしまえばそう考えられる少年の持った、愛し愛されの天賦の才。


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