「ビビがとにかく可愛い」というのはブランクとジタン、性癖の偏りは否めない、その他の感性も普通とは違うかもしれない、ながら、当人達は凡人のつもりでいるある種の天才二人共通の意見であって、ビビの銀の髪から眼、白い肌の指先まで、全部どこを拾ってもどう見てもどうしても可愛いと信じている。そしてそれは大体正しい。
しかし、細かく分析していくと二人の「可愛い」は、平面ではなく切断面で異なることが明らかになる。
「俺はさあ」
ジタンは窓の外に煙を吐き出しながら言う。外は爽やかに春風が舞い、黄色や赤やピンクや白の花が視界のそこここに、まるでそれ自体がひらひら舞う花弁のように映る。要するに、それらにさほど興味を抱かないジタンである。外を見なくても室内には本来十分観察に値する存在がある訳で、わざわざ視神経を疲れさす必要もねぇやと思っているのだ。
「俺はね、お尻入れた瞬間の、……なんだろ、それまでずーっとギリギリ握ってたもんを手放して、ホントに裸になってくれた顔が好きだな。入れたてってスゴイじゃん、その上あの顔見ちゃったら俺はもう、ヤバイね」
コーヒーを飲みながら「ふーん」、ブランクも想像する。確かにと同意する部分もある。多くのケースで二人はビビを抱くとき、文字通り「抱っこ」の形、膝の上に乗せて、その顔を見たがる。それはビビの括約筋と同じく、その表情も二人の男を熱くする要因となるからに他ならない。
「俺は……、まあ、その瞬間の顔もすげえイイと思うけど、もっと手前だなあ」
煙草の火を消し、ソファに横になってブランクを机ごしに見る。割合、いい男だ、ツギハギが迫力だけれど。そしてブランクから見たジタンも同様で、かつて、そして今も時々、その直腸の中に邪魔をする相手だから、不必要に可愛いと思う。二人が互いに認識する以上のレヴェルで、ビビは二人を過大評価する訳で、美化された空間の中で交わされるこの会話は、ビビの視座では批評の価値もある。特定の人間にとっては崇高な議論の場だ。
「もう、ホントに最初、服脱がすとこくらいでもう、イイ顔してんなぁって思う」
「フェティッシュだな」
「そうかな。そうは思わんけどな。まあ、もうちょっとレベル進めて言えばさ、例えば最初におっぱい吸った瞬間とかね。もうちょっとレベル戻すと、シャツ自分で捲った瞬間」
「……あー……」
「解るべ」
「……解る、ような、気がする、ああ、なるほどな、うん……」
「まだちょっと硬い、恥ずかしい気が残ってて、でも、嬉しがってんだ、あの顔がどうしようもないくらい可愛いと俺は思う訳だ」
誰かに責められて初めて「非」になるわけで、ビビも含めて彼らを責めることはない。恐らく生前の288号やクジャもそうだろう。だから、ここにはごく清い空間が存在すると言っていい。
「声も可愛いし……」
ジタンは左手をひらりと浮かべた。
「……たまんないよ、ホントに、あの子、最高」
好き、愛してる、もっと言葉がないのを痛切に嘆く。そう例えば、今ちょっと買い物に出かけているだけのあの子、ちゃんと帰ってくるかな、そう思うだけで胸が苦しく鳴り響く。だからこそ、見る目無き者たちから「下品」と蔑まれるリスクを犯した上で、前夜その前夜そのまた前夜――及び今朝――のビビを脳内で再上映しているのである。オナニーをするのは寂しいからだという意見を全面的に肯定しているブランクとジタンである。
「……いった後の、出した後の」
ブランクは空のコーヒーカップの底を覗き込んだ。
「顔……」
ジタンは左手を腹の上に下ろして聴いている。言葉からビビを呼び出す。
「……あのさ、これ俺だけかな。ビビがいった後の顔ってのがさ、物凄く綺麗で、……綺麗っていうのは要するに、ちょっと大人びて見えるんだけど、そんでもってそれがすげえドキドキするんだけど」
「ああ」
ジタンはすんなりそれに頷く。
「んっ、あっ、あっ……ああっ!」の後の、「……ん……あ……、はぁ……、……っ、は……」、そこに浮かべられるビビの表情はリアルに思い出すことが可能で、またそれは、確かにひ若い少年のものとは思えない「色」があるとジタンも感じる。
恐らく、そこに至るまで、またそこを過ぎた後のビビは、ひ若い少年が持つ少年らしさで以って、二人の男の心を先鋭的にするのだ。あどけない仕草や幼い声、細い体に。
しかし到達した直後、その身体に宿っている青さは不意に、甘い熟れた匂いに包まれる。染まった頬や濡れた唇は、その数秒前とはまた違った光を放つ、それがまさに「色」だと、二人は定義することが出来る。
到達した直後の朦朧とした頭で見るから、余計に「色」を孕んで見る、その余地も検討を要するが、二人の指標ではどうか。
「じたん……」
若しくは、
「……おにいちゃん」
濡れた唇声瞳、胸に散ったビビ自身の精液を舐める時に、そう呼ばれる。舌を出したまま、思わず顔を上げる。真っ向からぶつかる視線に、「俺の」「心は」、呆気なく粉々になる。
「俺と結婚してくれ」
「ふぇ?」
「絶対、一生、お前のことを幸せにするから」
あの濡れた唇声瞳、見ればあっさりそんなことを言う、トチ狂っていると少しも思わない。
「……遅いな」
ジタンが二本目の煙草に火をつける、ブランクもその隣りで火をつける。
「……そうか?」
「そうじゃないかな」
「……まあ、……そうだな」
数秒後には二人立ち上がり上着を引っ掛けて、家の中だからとズボンを穿いていなかったジタンは慌ててズボンをずり上げながら、まだ社会の窓を開けたままでついて行く。
天変地異を引き起こす程の魔力ブランク及びジタンの指で囲えるほどの腕に宿したビビである。左手でぎゅっと握った杖から伝う魔力をその身体に通し、炸裂させる、その指先から火の球氷の飛礫、青い稲妻。
さわわ、と風に葉擦れの音に、物騒な足音が七つ八つ。
「もう……やだって言ってるのにー……」
チョコボの背で、ビビは困惑しきった表情を浮かべ、囲繞する魔物たちを見回す。そのどれもがビビの何倍も大きな体躯をし、危険そうな唸り声を上げている。
はぁ、とビビは溜め息を吐く。
一年ちょっと前ならば、こんなシチュエーションですぐに泣きそうになってジタンに助けを求めていたかもしれない。
「……僕はやだって言ったからね?」
そう、少し口を尖らせて……、右手、細い腕、その細い指先、印を結ぶ。
「えっと……ちょっと弱めの、メテオ」
「ビビっ」
「ビビ!」
まさにその刹那にその場に到達しただらしない格好の男二人。
「あ」
降り注ぐ「ちょっと弱めの」隕石群、が、適確に魔物にぶつかる。あくまで「ちょっと弱めの」メテオであるから、肉体に致命的な損傷を与えるほどのものではない。小石の雨と呼んだほうが相応しいが、魔物たちを怯えさせるには十分なダイナミックさである。
当然のように、ビビを護らんと飛び込んだ二人の男にも降り注ぐ、「あいて」「うわたたたた」、みっともなく頭を庇って逃げ惑う。
「なんで二人……」
あちこちにコブを作って、ほうほうの体で逃げ出す魔物の群れがいなくなり、残ったのはあちこちに痣の原因を作ったジタンとブランク。出血するという事態には至っていないものの。
ひきつった顔で、倒れた二人をビビは見る。一瞬遅れて声をかけようと思って、チョコボの背から飛び降りた、瞬間に。
「ビビっ」
「だいじょぶか!!」
「きゃ」
素っ頓狂な勢いで飛び跳ねるように起き上がり、駆け寄る。そして二三歩でばたりと顔から倒れる。
「ういてててて……」
「フツーに……痛すぎる……」
「そりゃそうだよぅ……ちょっと弱めでもメテオだもん……」
ポケットの中から取り出したポーションを二人に与える。
「痛かった……」
「っていうか、二人とも何やってんの? こんなとこで……」
「……ビビが遅いから」
「遅いって……、だって、買い物ちゃんとして、寄り道しないで帰って来てるよ?」
仮令自分たちよりも強いビビであっても、世界で宇宙で、一番弱く、それゆえに護らねばならない。だから、心配するなと言われても、絶対に無理な話。もちろんビビもその気持ちは判っているつもりだが、それにしたって只の買い物の一往復でここまでされる。嬉しいことには確かに嬉しいが。
「まあ、無事で何よりだけどな」
「……ジタンたちの方が無事じゃないよ」
「平気だよ俺たちは。丈夫だもん」
「……僕だって丈夫なのに……」
ひょいとジタンは「丈夫」な身体を抱き上げる。細ッこい腰に足に腕、どこがと問いたい。一方で、ビビの言うことなら肯定してやりたくもある。
「お、お、おろしてよっ」
軽いなあ、としみじみ、ジタンは思う。暴れられてもちっとも苦じゃない。その身体をブランクに委ねる。ブランクも肩の上に乗せて、やっぱり軽いよなあと、同じく。ジタンはチョコボを木に繋ぎ、ちょっと待っててな、そう言い残す。
「ど、どこ行くの?」
「ちょっと」
「そこまで、な」
魔物よりもよほど性質が悪い自分たちなのは、ビビが自分達に向けて本気のメテオを放つはずがないという確信があるから。
森の中、少し下ると、川と呼ぶには覚束ない小さな流れがある。そこでようやく、ブランクはビビを下ろした。ビビの頭の中はチョコボの脇にジタンが置いたままにした野菜の事で一杯だ。
「ビビ、いいか? お前は全然丈夫じゃないぞ」
やや無理をしつつ、ジタンは言った。
「そう。ビビはまだちっちゃい。腕だって俺の半分くらいしかないじゃないか」
ブランクも、銀の髪を撫ぜながら言う。聡明なビビは二人を代わる代わる見て、それはもうとてもリアルに、十分後の自分を想像し、しかし両手はしっかりジタンに握られている、逃げられない。
「……なんで……」
眉根を下げて、言葉を纏められないことに、諦めを覚えた。
「俺たちはビビのことを黒魔道士としては見られないんだな。まあ、俺なんか特に。ビビと一緒に戦ったことなんて一度あるだけだ。もちろん、腕力だけが強さじゃないって知ってるつもりだけどさ、でもね、お前見てるとどうしても、さ。その辺の俺らの気持ちも判って欲しい」
などと言いながら、ビビのセーターの裾を捲る。
「……どうして、それが、これと、つながるの」
ジタンが意外だという顔をする。
「繋がるだろう?」
「わかんないよ」
「じゃあ教えてあげる。お前が死んじゃうと思ったからだよ。まあ、そこまで大げさでなくてもだな、お前のこと心配して飛び出してきて、まあ、今こうして無事にビビがいてくれる、それを祝福しないわけにはいかないだろ?」
十分に行くと思うのは、ビビだけではない。
とりあえずジタンはブランクの言った、乳首を弄られたときの、ブランクはジタンの言った入れられたときの顔を、そして二人して、最後の「色」を、どうせならこの場で確かめてしまおうという思いがある訳である。そして二人して、いや、恐らくは結果的には「三人して」、一連の行為を感動的な愛情に拠るものだと信じている。
都合よく、乾いた芝生に、それでも一応ブランクの脱いだシャツを敷いて、ビビを寝かせる。最初のキスが終わる頃には、ビビもビビで、間違っていると知りながら、でも三人でするのって久しぶりだな、そんな破廉恥なことを考え始めているのだ。そしてそもそも「久しぶり」と言っても一昨々日以来。一昨々日が「久しぶり」になれてしまうのは、今朝も昨日の晩も、もちろん交じり合っているからだ。ベッドや浴室ばかりではない、トイレや居間のソファや台所、そしてこんな屋外だって、気を許せる場所はないのである。
さしあたり、ジタンがじっと見つめる。ブランクはビビのシャツをそっと捲り上げる白く細いへそのラインも、くびれた腰も、いつだって瞼の裏、正確に描写出来るのに、また見て、確かに一つ硬くなる。当然のことだと考え直す。今朝のビビとこの時間のビビだって、まったく違う輪郭をなしているのだ。そしてその一つひとつが素晴らしく嬉しく感じられること自体が愛情なのだ。
その表情に目を移す。やはり恥ずかしそうな表情、かすかに頬が染まり始めている。そして、ブランクの唇が、瑞々しい色の乳首に吸い付いた瞬間に、
「ん」
世界が確かに揺れる。俺の恋人を見る俺の恋人の眼は俺の恋人の眼だからして当然正しいと確信するに至る。うん、そうだ、確かに、なるほどな、ジタンは誰にともなく頷いた。
「はっ……、ぁん」
穢れ無き果実、のように見えて、実はもう全てを剥かれた後なのか。それとも、まだ頑ななのか。
ビビ自身の内奥に在るのは淫らな火種に他ならぬ。少年には不相応なやり方であると、自身で知りながら、しかし、それが愛情意思の伝達手段であると定義されるのならば、積極的にもっと進みたい。小さいとか大きいとか論じる以前に平たくこれから先も印象をさほど変えないであろうその胸の、中にある心肺が苦しく思えるほどの大波に身を浸す歓びを、知ってしまった。誰にも知られたくない、分けたくもない、傲慢に。
瑞々しく零れる声。自分の耳ではただみっともないものに聞こえたとしても、二人の男が感じてくれると言うならば、まるでラブメイカー。立派に誇れると信じる。
実際にジタンとブランクは厳しさを感じるほど張り詰めている。
「ビビ」
ビビの唇を辿る、その隙間に、ブランクが呼ぶ。ビビは小さな手で、ブランクのズボンを擦る。密やかに熱く、いとおしい。ちゃんとそこから生まれるものが生み出す命を認識する。
「……うん、……気持ちいいよ。な、直接触ってくれる?」
じ、じ、と不器用にチャックを下ろす。ブランクは敢えて手伝わず、小さな耳に息を這わせる。熱い息、俺感じてんよ、お前ですげえ気持ちよくなる支度してんよ、そう伝える為にだ。
ブランクよりもビビがもどかしげに開いた扉、下着を掻い潜り、ようやくブランクの男根に触れたとき、ビビは弾けそうになる。どれだけブランクが自分を欲しているか、知ってしまう。腰が途端に落ち着かなくなる。
「ビビもしたい? して欲しい?」
「……ん……」
「そっか。じゃあしてあげような」
大きな手の無骨な指、その一本とどちらが大きいか。
ブランクは少し硬い自分の手のひらでビビを痛がらせないように気を配りながら、ビビの愛撫を受けながらもとりあえずは心の配線を変えて、そっと包み込んだ。
「可愛いね、こんなに硬くなってんだね」
耳元で囁く、ビビの右手は呆気なく覚束なくなった。
「いきたい?」
こく、こく、潤んだ瞳が見上げて頷く。それはどんなに厳重にロックした心だって開くノック。
「でも、ビビ、俺も行きたいな」
ちらり、とブランクはジタンに目をやる。ズボンのベルトに、既に手をかけて臨戦状態で待っている。見せてもらおうじゃねえかと、偉そうに思う。本当はすごく見たい、ちゃんと、観察したい。ジタンが言うビビの可愛いところを。
「ビビ、入れて欲しいか?」
取り出した性器を掲げる。ビビの濡れた目はそれを捉え微かに揺れる。
「じゃあ、お尻、こっちに向けて。広げないと、ね?」
「ん……」
ジタンは屈みこみ膝をつき、ビビのズボンをパンツごと引き下ろす。白いひんやりとした臀部に頬を寄せた。すべすべ、つるつる、少しぷにぷに、ああ、イェア、やべぇ、超可愛いや。そこをするすると撫でてから、指で開いて、顔を近づけて。もう既に心の準備だけは万端に整って、ヒクヒクしている小さな小さな蕾。手順を詳らかにはしない、恐らくそろそろ誰の興味もそそらなくなるだろうから。しかし、ジタンはそのプロセスをも大いに愉しんで居る。
指が入った瞬間の顔を、ブランクはじっと見つめる、そして、ああ、はい、これもすごくやばいです、お前は正しいよと納得する。そして、出しっぱなしのペニスをビビの顔の前に。
「ね?」
「……ん、ん」
ついつい、いつも、可愛いものだからその顔にたくさんかけてベトベトにしてしまう。それがいいのか悪いのかは知らない、ただ、とりあえずビビの肌はとても綺麗だ。にきびもそばかすもない。ひょっとしたら精液がいいのかもしれないし、若しくは「かけてしまってるから」という負い目から、普段から綺麗に顔を拭いてあげる癖がついているからかもしれない。
口をぱっくりと開けて、ブランクを包み込んだ。柔かい口の中に半ばまで吸い込まれ、舌が精一杯器用に動き回らんとする。裏筋、面で、点で、辿る。苦しいんじゃない? ちょっと心配になるくらいまで深く、奥へと咥え込んだら、扱き始める。眉間に皺が拠る、ジタンが腰を進め始める。ブランクが見ているのは、この世で一番淫らだから美しくなった、少年の姿だった。白い羽が生えたなら天使だし、黒い羽が生えたならば悪魔だ、そして、その二つは大差ない。
「んんっ……」
ジタンがビビの中に熱を放つ。それをビビの声と身体の震えで知る。だから、ブランクも安心してその口の中へ、精液を流し込んだ。
「……っ……!」
触発されるように、ジタンの右手に絡まれていたビビの陽物も震え、弾む。敷いたブランクのシャツなどどうでもいいくらいに散らした。
ビビの口から、中から、二人は息を止めて、抜き取った。ビビが、力を無くして、シャツからずれて芝生の上、こてんと転がる。銀の眼が少し危うい動きで、覗き込むブランクを、ジタンを見る。
「……おにいちゃん……ジタン……」
性欲と愛情と、一貫性なく、どっちもが上になったり下になったり。
……ああ、やばい、二人して思う同じ事。
「愛してる」
「すげえ、好きだよ、ビビ」
何でこんなに、好きに……なれるのか。もちろん、こんなに気持ちいい身体を他に知らない、それも一つの原因にはなっているだろうけれど、それはきっと愛しいからだ、愛しいからこそ、言葉一つに、目線一つに、ここまで気持ちよくもなれるのだ。
一概には言えないことと理解してはいるけれど、やはり好きだから欲しい。
「んん……」
二人に、代わる代わる額にキスをされて、ビビの心も満ちる。
「どんくらい気持ちよかった? 俺のちんちん」
ジタンの問いに、ビビは自分から流れ出る精液を気にしながら、
「……すごく……」
と、小さな声で応える。
「俺のは? 美味しかった?」
そのブランクの問いにも、こっくりと頷く。
儀礼的なものと分類されるかもしれないこんな遣り取りも、せずにはいられないのはきっと愛情だからだという解に辿り付く。欲のみならば面倒だ、身体さえそこにあればいい。三人して贅沢だから、それ以上のものを欲しがっている、互いの身体に深い意味と絶大な力を与え合い、触れ合う歓びを何倍にも増幅する。
「すっげぇ、可愛い……。ビビはホントに可愛い」
語彙の少なさを少しも恥じず、持った言葉で流し込む。ジタンはビビのへその脇に、ブランクはその細い肩に、それぞれ印を刻んだ。そうされている間、ビビは自分の身体が自分だけの物でない事を確認し嬉しく思う。ひとりぼっちじゃない。
悪意のない悪者二人なら憎むこともせずに。
十割本心からではないにしろ、心配して来てくれたことだって事実だったろう。
「……しゃぶってくれなかったね」
だったら、心配をかけた僕は。
「なんだ……、して欲しかったのか?」
「……だって、いっつも……してくれるから」
二人を心の底から愛す証に二人を全面的に認める、そして、良いように。またそうすることで喜びへとたどり着ける、淫らなサイクル、リサイクル。
「こんなにちっちゃい。のに、そんなえっちなこと考えてるのか」
「もちろん、しゃぶってあげるのは構わないけど……、じゃあビビ、俺のもしゃぶって」
「あんた今さっきまでしゃぶってもらってたじゃねえか」
「うるさい、一回じゃなくて二回が良いんだ」
「じゃあ誰がビビのしゃぶんだよ」
そんな下らない言い争いも、視点を変えれば十分に心地良く、ちっともくだらなくない。寧ろ嬉しく優しい声の響きで、……どうしたらそんな声が出せるのかな、僕も見習おう。
「じゃあ……、なあ、ビビ、このおっさんが言うこと聞かないからさあ」
「……テメェこそ我慢するって方法は思いつかねえのか」
ビビはこくりと頷いた。頷いてしまえる
いいよこれくらい、大丈夫、僕、出来るよ、僕もちょっとだけ、我慢するから。
「したら、しゃぶって?」
「うん、そりゃもう」
「もちろん」
「……あんたにはしゃぶらせない」
「黙れ、俺がするんだ、お前下手だからビビが気持ちよくなれん」
「んだと」
「事実を言ったまで……」
「……ん」
「オマケに……、早漏だしな」
「……うるせい」
それはもう丁寧に一生懸命に愛情一杯に、しゃぶる舐めるビビの唇舌、どこより可愛いのはその精神だ。その底から生まれ出ずる電気信号だ。俺たちを満たしたいという感情が大部分、そしてついでに自分も気持ちよくなりたいという一部分、その割合は時に逆転しているかもしれないが、無論それでも肯定するし、その心の色に感じてしまえる。ブランクとジタンは、愛しげに自分らの性器を愛撫し口淫するビビを誇らしくも思う。
切断面で異なっても、結局コアが同じ。
まだ?
ジタンは縋るような眼でブランクを見た。ブランクはもうちょっとと応える。ビビもそれに気付き、ジタンには手で指で、ブランクのものに、ふかぶかと吸い付く。ああ、ズルイな、俺手だけでいかされちゃうのか、あんたさっき口で、そういう不平が表情に出ただろうか。ブランクの魂が間近で感じられる頃、ビビは手と口を交代させた。
「あ」
思わず零れたジタンの声に、ブランクは徐々に白くなる頭の中でよかったじゃねぇかと呟く。うん、ほんとよかった、幸せ……。
「ふゃっ……」
荒く弾かれた二人の精液が、ビビの顔へ。ああ、改めて考えると、この子に顔射するのすげえ好きだね俺たち……、うん、可愛いもん、可愛いんだもん。
もう、いっそ一生そんなことをほざいていれば幸せだ俺たち。ビビは全部可愛い、今日はここが一番可愛い、いや、どこも同じようにとても可愛い、そんなことを論じていよう、大丈夫、誰の迷惑にもなっていないからさ。
「えぅ……、出しすぎだよぉ……」
「気持ちよかったから。ビビの舌えっちで、すげぇ気持ちよかったから」
この瞬間なら舌が可愛いし精液塗れの顔も可愛いしちょっぴり非難するような目だって可愛いし、約束どおりしゃぶってもらえるのを待ってるちんちんだって可愛いよ。
そして何よりその身体を動かす心臓。そこが教える幸せの大きさ。二人の男はそれに平伏したい気持ちだが、やはりセックスが楽しいので、とりあえず二人でビビに覆い被さり、小さく表面積だって乏しいその部分を、舐めた。
行為に移すのが面倒なだけで、内心に在るのはそれはもう、貴い愛情関連。