このところ本当に毎日暑くて、三人のうちで一番に汗っかきで暑いのキライ夏キライのジタンは日中の大半を床のゴミくずとして、もしくは川面を流れる水死体として過ごしている。そしてたまに動き出したかと思えばアイスを買ってきて食べて腹を壊してトイレに篭りきりになって滝のような汗をかいて出てくる。暑いと言うから思うから暑くなるのだとうちわで顔を仰ぐブランクもほぼ裸同然の格好でその縫い目だらけの身体を曝しているが、その乱れ方はジタンと比してずいぶんとささやかな程度。
「だってさあっ、暑いもんは暑いじゃんっ、暑いの誰だって嫌じゃんっ、汗かくからうざいじゃんっ」
「でっけえ声出してんじゃねえよボケ」
「だって暑っちぃんだもんよぉ!」
ビビはキチンとシャツを着て、買い物から帰ってきた。毎年の如く、細い両腕は小麦色に焼けている。少し伸びて煩くなった前髪を、ゴムで結んで上げている、このゴムはブランクが巻いたものだ。露になった聡明そうな額にも、珠の汗が浮いている。
「おかえり。プリン冷えてるよ」
「っ、ちょ待てコラ、何処にだ」
「誰がテメエにやるかバーカ。ビビの為に冷やしておいたんだ。手ぇ洗ったらおいで」
結局は心優しいビビ、ジタンにも「ひとくち」とあげてしまう。
「外すっごく暑いよ、……毎年夏になると思うんだけど、ジェノムのみんなも、黒魔道士のみんなも、あんな厚着で暑くないのかなあ」
「まあ、人には感じ方があるさ。ビビだって黒魔道士だけど、すごい暑いだろ? あのクズも」と、ブランクはジタンを指差して、「一応はジェノムだけど、暑いと腐るだろ? それと同じで。……ただまあ、今年の暑さはちょっと尋常じゃないような気もするね。毎年同じ風なこと考えてる気もするけどさ」
誰がクズだ誰が腐ってるだ、因縁をつける声を上げながら汗を全身から噴き出させているジタンがよろよろと立ち上がる。
「お前に決まってんだろうがよ。床にへたばって人の視界に入んじゃねえ、目障りなんだよ。……お前それ以上一歩でも俺とビビに近づいたら蹴る」
ジタンは人並み以上に見られた顔をしているだろう。それはブランクも認めるし、ビビはもちろん認めるし、多分ジタン自身も認めるところだったろう。しかし、頬に長い髪を貼り付けて、寝不足気味の目をして、床の糸くずを胸につけて、汗と埃と男の臭いを漂わせた彼を、誰も愛したいとは思わないのだった。
「……お風呂入ってくれば?」
見かねて、ビビはいつものように言う。その後なんと言われるか、うすうすわかっていながらも。
「ビビが一緒じゃないと入んない」
「アホか」
ここからまたいつものひと悶着がある。ジタンと共に風呂に入ればどういうことになるか判っているから、ビビは後ろ向き。ブランクはビビのジタンによって上げる声を、ジタンがビビをからかう声を、聞きたくないが為、当然反対。要するにジタン一人の我儘ということになるのだが、それでも延々二十分は我儘を言いつづけて、余計な汗をべったりとかいて、
「ふんだもういいッ、俺一人で入るからいいっ、お前らなんか入れてやらん!」
とあべこべに怒って、結局一件落着、一人入浴する。暑苦しく歌謡曲をがなるので、またブランクが「うるせえ」と怒鳴る。
「拭いてから出て来いっつってんだろうがよお!」
髪から腕から指の先から足元にポタポタと滴を垂らして、ビビの使い終えたスプーンをその後頭部目掛けて投げつける。
ぎゃあぎゃあと喚き合う二人を背景に、ビビは窓際の籐椅子でうちわを使う。今日は暑さが悪いんだ、冬は寒いからいけないんだ、二人は何も悪くなんかないんだよ、そう割り切ることにしているビビだ。そしてこうでなくては二人も不健全だと思う。あれが二人の愛のコミュニケーションなんだなと、判っている。
「暑くない?」
小競り合いと呼ぶにはやや派手なコミュニケーションを交わし終え、シャワーを浴び終えてびしょ濡れのジタンの身体には、新しい汗が浮かびつつある。ブランクも鼻の頭に汗を浮かべている。
「……暑い」
ビビを振り向いたジタンの顔はもうそれが何なのか聞く気にならぬほど濡れている。だからこの季節、ジタンと一緒にベッドに入るのは、いくら好きでもしんどいものがある。蛙とは言わない、鰻とは言わない、しかしスライムにしがみ付かれる気分というのは、どうしたって微妙なものがある。
「でも、ほら」
ビビは窓の外を指差す。あんなに白く晴れていた空が、灰色、黒の雲に遠くの方から塞がれはじめた。耳を澄ませば――いや、実際には二人の罵り合いの間から、していたのだが――遠雷が聞こえる。今に、大粒の雨が降り出す。
「ああ……」
間もなく、屋根を叩く音が始まる。通りからジェノムや黒魔道士の姿が消え、ばらばらと鳴る太鼓が騒がしい家庭を黙らせる。
「……これで少しは涼しくなるだろ」
「うん……、たまには夜も涼しく寝たいよ」
「なあ。今夜もお兄ちゃんとこで寝ろよ」
「うん、そうする」
ちゅ、と短いキスを交わす、妙にジタンが騒がないと思ったら、玄関先で裸のまま雨に打たれて両手を大きく広げて、何を勘違いしているのかアイツはと、ブランクは呆れる。ビビはぽかんとする。
「……恥ずかしくねえのかお前は。何粗末なんブラ下げて」
「誰が粗末だ黙れツギハギ。……どうせ粗末なら俺のモン見たって誰も何も思いやしねえし」
誰も何もと言いつつ、ブランクとビビは少なくとも心が擽られる。それは認めている。
「あー……、冷てえ、マジで気持ちいい……、くああ生き返んなあ!」
家の前の芝生で大の字になる、粗末と評されたものまで雨に打たせて。ブランクは傘を畳んだままその腹部に放った。クリーンヒットしたのを見届けてから、ドアを閉め鍵をかける。
「テメエ何しやがる殴んぞオラ」
「うるせえ家の前で喚くな単細胞、お前みたいな変態は入れん」
内側からそう言って、ブランクはビビを抱き上げて、ソファに座る。
「涼しくなってきたから、少し昼寝しようか、な」
「ん。お昼寝する」
「いい夢を」
「おやすみなさい」
ちゅっと短いキス一つ。
ビビから貰うキスは格別だと、ブランクは思う。まだキスという行為に慣れていなくて、どことなくぎこちないことは否めない。けれど、それがいいのだ。ビビから貰う小さなキスは、ブランクの精巣の働きを活発にする。
「……もう一回……」
「え……?」
ビビを腹の上に乗せたまま寝そべり、ブランクは甘い声で強請った。
「ねえ、ビビ。……もう一回」
ビビは、少しだけ躊躇って、二度目のキスを舞わせる、そのキスは、霧雨のようにブランクを湿らせる。唇が離れた瞬間に、刹那的切なさを切に感じ、「ああ……」と途方に暮れたような声を上げる。
「……ビビはキス上手だよな……」
そんな声を上げた自分を笑って、ビビの銀の髪を撫でた。ビビは、少し恥ずかしげに目を反らす。
「お兄ちゃんやジタンのほうが、ずっと上手だよ」
そう、口を尖らせて、言う。頬が赤くなる。
「そうかな。……俺はビビにキスしてもらうだけで、幸せになれるけどな」
「それは」
咄嗟にそこまで言って、ビビは気付く、気付いて、迷う、……どうしよう。
相手がジタンだったら、きっと言わなかったろう。
けれど、相手は「お兄ちゃん」だ。
「……僕だって、同じだよ……」
決してジタンを愛していないのではない。
例えばこういうときに「お兄ちゃん」には言って「ジタン」には言わない、そういった差別化を、良いか悪いかは別としても、ビビはしている。現状でその思考回路が二人を苦しめるものでない以上、少なくとも間違いとは決め付けられない。
ビビの頭を、さらり、さらり、ブランクは撫でて、微笑む。
一生に何度も浮かべられる種類の笑顔ではない、しかし、自然と頬の肉はその表情を形作る、天使のようなこの子供の前で、そして時々は、間違いなく、あの憎たらしい少年の為にも。
「幸せになりたいか?」
うん、ビビが頷く、その瞬間。
「……テメエら……」
開いていた窓からびしょぬれになって入ってきた異界生物に、ビビがブランクの腹の上でさながら猫の瞬発力で飛び上がった、下腹部にジャンピングニードロップを受けるところ、咄嗟に腹に力を入れなければ、食べたものを全部出してしまうところのブランクは、ビビを抱き上げて、前髪全部前に垂らして床を濡らすジタンにもうあまり言葉も無い。罵声は言い尽くしてしまった。さすがに死ねとは言えないし。
「……人を外に置いていちゃついてんじゃねえ」
「テメエが外に出たいっつうから出してやったんじゃねえか、傘だって置いてやったのに何しに戻ってきた」
「うるせえゴタゴタ抜かすんじゃねえ、ミコトにチンコめっちゃ見られたんだよボケ」
「そうゆう状況にしてっからそうゆう目に遭うんだ自業自得だろ」
「あーもう、腹立つなあ! びしょ濡れんなった……ビビ! 風呂入るぞ風呂!」
「え、ええ?」
「いいから来い! そんな小手先だけのエロオヤジじゃなくて、俺が可愛がってやるから!」
「でも……」
ブランクはビビが不憫になる。なあ、あんな奴でも好きなんだもんしょうがないよなあ、その気持ち判るよ。そんでもって、なあ、お前、俺のことも好きなんだもんしょうがないよなあ、そうなんだよ、俺だってお前もアイツも可愛くてさ。
長い溜め息を吐いて、ブランクはしっかりとビビを抱いたまま、
「……俺も浴びるわ」
と呟く、それは何とも言えない陰影のある声だった。しかし、それにビビもジタンも不平を唱えない。こういった形で幸せが成立しているのだから敢えて関係を拗らせる必要は少しだってないのだ。
最初から全裸のジタンが、ビビを裸にし、じゃあ僕がという形で、ビビがブランクを脱がせる。これだけ見たなら、なんと微笑ましい家族だろう。
「ねえ、ジタン?」
ビビが見上げる。ジタンはビビの裸を拝み、具体的にはシャツとズボンに隠されていた下着よりもなお純白の肌に機嫌を直して、ん? と聞いた。
「……僕ね、さっきね、お兄ちゃんとキスするところだったんだよ」
その口ぶりは、自己主張を含んでいた。まさかジタンをジャマとは言えないけれど、ね、あのね、そういう響きの。
「ああ」
全て飲み込んだ、「ああ」だった。
「お湯溜める?」
ジタンが、空の浴槽を覗き込んで聞くその時には、もう、ビビもブランクも幸せになった後だ。
「溜めなくていい。洗ってねえし」
「そうだっけか」
「どうせ体洗うだけだし」
「そうか。……ビビ、な、俺にもキスして」
「えー……」
「えーじゃないよ、な、してよ、キス、キスミー、ホラ早く」
ダメ人間になっているジタン、というか、ジタンが本質的にダメ人間なのかもしれないが、ともあれ、それに同情するビビでありブランクであり、しかし尊敬もしている。ビビは結局、身を屈めたジタンに、キスをした。
「ああ……」
と、ブランクと同じ声を出す。
「……何ッつうのかなあ、ビビのキスって、たまンねえんだよ……、ぎゅって、来るんだよ、……疼く、っていうかなあ」
音の響く浴室で大声で解説を始める。
「……タマってんじゃねえのか」
「実はそう。夕べもビビをどっかの誰かさんに攫われちまったモンでねえ」
「道理で今朝からウルセエと思ってたんだ……」
チッ、とブランクは舌打ちをして、ビビにシャワーを手渡す。
「一人で浴びられるな?」
「う? ん」
浴槽の縁に座ったジタンの足の間に屈み込んで、粗末だ何だと貶したところを握る。
「してくれんの?」
「そうしねえと手加減しねえだろうが。ビビが可哀想なんだよ」
ブランクは、握ったところを上下に擦る、溜まっていたと本人言ったとおり、ビビのキスだけでそこは確かな力感を孕む、仮性の皮を降ろして、戻して、握ってコスって、すぐに、固く反り立つ。
「なあ、ブランクさん?」
ビビは、「わあジタンいやらしいなあ」と思う、その顔、その声。
「……なんだよ」
「あのう、ちんこ咥えて欲しいです」
「俺の手が下手とでも言いてえのかお前は」
「っていうか、口の方が早いでしょ」
それはそうだな、とブランクは、面倒臭そうにジタンを咥えた。
塩の味を、すぐに覚える。そしてかすかな甘い汗の香りと。
「……ったねえなあ……、洗ってんのかよ」
良い匂い、思いながら、ぎゅううううっと握る、
「いでででででででで!!」
「お前なあ、お前のはなあ、皮被ってんだからもっと綺麗にしろよな、人に食わせるっつんなら余計にな」
その言葉を聞いて、身体を洗いはじめていたビビは自分のものをじいっと見下ろし、石鹸を手に乗せて大切に洗い始めた。
「さっき風呂入って、何してやがったんだ」
「水かぶっただけだ」
「意味ねえんだよそれじゃあよお。洗えよなあ……ビビ石鹸ちょうだい」
「ん」
手のひらの石鹸の泡を、ビビから受け取る。勃起して皮が降ろされたジタンのペニスの亀頭に、泡を乗せて、手のひらで上から撫でて洗う。ジタンが一瞬息を止める。
「っ……あー……すっげ……。ションベンちびりそう……」
ジタンは、恍惚となる。
シャワー、とビビに手を出す。湯のシャワーをヒクヒクと熱いペニスに振りかけて、泡を流す。ブランクのものに比べて、色の薄い亀頭、泡が消えると、薄紅に張り詰めたつるりとした亀頭は、清潔を感じさせる。人差し指を尿道口に当ててすっと撫でると、シャワーの湯ではない、もっとずっと熱く、滑らかな、卑猥なもの。
「この程度で濡らしてんじゃねえよ」
「気持ち良いんだもん」
「もん、じゃねえよ、ウンコガキが。お前が言ったって可愛かねえ」
ビビが身体を洗い終えた。
「あ、ねえ、ビビも手伝ってよ、この野郎乱暴でさあ」
「んだとテメエが頼んだからしてやってんじゃねえか」
「な、ビビ、頼むよ、俺のちんちん気持ち良くして」
ビビは困ってお兄ちゃんを見る、お兄ちゃんだって困る。そして相憐れんで、どうして俺たちこんなん好きになっちゃったんだろうねえ。
優しい少年はブランクに変わって、ジタンの足の間に座った。ブランクは縁を跨いで、後ろからジタンの耳に口をつけ、まだ石鹸でぬるつく手のひらを、その胸板に当てた。しっかりとした手ごたえのある体で、ビビにはない硬い手触り。悪いものとは思えない自分の心をある程度大丈夫なのかと疑いつつ、舌はこの上ない優しい動きで耳の、陰茎の裏側並に複雑に入り組んだ輪郭をなぞる。二つの舌と二つの手のひらに甘く愛されて、ジタンはその唇から途方のない溜め息を漏らし、間もなくビビの中へ息の果てを落とした。
「んーああ……っ、すっげえ……気持ちよかったあ」
清々しくそう言われて、けっと排水溝に向けてブランクは唾を吐く。ビビは苦い潮をこくんと飲み込む。要するにそれが一つの愛の形であれば良いのではないかと。
一人が満足して終りにはなれない。三角形から始めて平面の図形となるのであって、点一つ、或いは二点による一辺を少なくとも三人は面白く思わない。ビビはブランクがジタンに施し始めたあたりから幼茎を立ち上がらせつつあって、今はもう先をぴんと立ち上がらせているし、ブランクも、まだ見た目に変化は無くとも、内心に渦巻く疼きを隠している。
「ビビ、ありがとな、……一応あんたもありがとな」
「どういたしまして」は言わない。すぐにイーブンにするから。
外で雨は上がったらしい、雷の音もしなくなった。
「気持ち良くなりたそうだなあ?」
ブランクはビビの下半身をそう指摘する、ビビはもちろん頬を赤らめ、しかし清楚でありながら貪欲なこの少年は頷く。
「……なりたい……」
なっていいんだよ、ブランクは浴槽から出て、石鹸を手にとリ、また泡立てる。たくさんの泡を取って、ビビを胡座の中に座らせて、
「ん……ん、ん……んふぅ……ん」
ぬるり、ぬるり。ブランクは小さな体をそんな風に手のひらで舐り、反応を楽しむ、そのうちに、自制心を超えて男根が息づき始めた。
「やぁ……あん、っ、さっき、からだ、洗ったよぉ……」
「でも、ちゃんと洗えたかどうか判らないだろ? ジタンの方だって気にしてたし、な、お兄ちゃんがちゃんと洗ってやるよ」
と、たくさんの白い泡に先っぽだけを覗かせる肌色のペニスの先を、指でぬるぬると撫ぜる、しみるような快感に、ビビは鳴き声を上げる。すぐに手を離して、泡に埋もれた乳首を指で探し当てて、指先で往復する。ぷつぷつと泡が千切れる中で、粒になって突起する小さな珠が指にかかるたび、ビビはもちろん悦ぶし、ブランクの心も満たされる。
「おに、っ、ちゃん……っ」
ビビの声が躍る。
「ん?」
「……っ、ちんちん、……おちんちんもっと、してぇ」
開けっぴろげに言うのは、恐らくジタンの影響ではないかと思う。だったら、いい影響を受けたものだと、ブランクはビビのはしたない科白を咎めもせず、ただ微笑んだまま、
「ダメ。ビビすぐ一人でいっちゃうんだもの」
と、袋の裏をすり抜けて小さな尻の小さな窪みに指を当て、そこも石鹸でぬるぬるぬる。
「ふ、……っ、やう……んん! あーっ、っ、ふあっ、……んっ、やぁあ!」
思う存分に、ビビは声を擲つ。手持ち無沙汰ながら、いっそ自慰してしまおうかと思いつつ、ジタンはビビの鳴く様を見ている。いいなあ、可愛いなあ、可愛がりたいなあ、愛されたいなあ、たくさん強請って、それを、ここでは何とか飲み込んで、ブランクに愛されて悦ぶビビを見ている。くちくちと、出入りするような音が、淡く響いて。
「おちんちんっ……してぇ、っ、……っちゃう……からぁ、あんっ、……んっ、……ひゃああ!」
ビビがそんなたまらない声を上げた、ほとんど泡に埋もれていた幼い芯の先から、泡と同じく白い飛沫が飛び散った。二度高く打ち上げられ、ビビは力尽きる。
「……可愛いなあ」
それ以外に言えないのかと苦笑しつつ、ビビを評するにそれ以上の言葉なんて無いのだとも思う。可愛いのだ、いかがわしいかもしれない感情も、可愛いのだから仕方がない。
「にっ……っ、ちゃん……っ……」
はう、はう、泳ぐ息。
ここまで誠心誠意施してきて、さすがに我慢が出来なくなったブランクである。シャワーで泡を綺麗に流す、小麦色と純白のツートンカラーの裸は、いつも以上に眩しく煌いて見えた。
「ビビ、俺お尻にちんこ入れたい」
ビビは潤んだ目をブランクに向ける。――ジタンにはさっきお口でしてあげた、僕はいまいかせてもらった、だったら――いいよ、とビビは頷く。石鹸の泡のぬるぬるで、いつもよりは少し楽に広がっているお尻は、既に塞がれたいと思っていたのだ。
ビビはブランクの首に手を回し、ブランクはそのお尻を軽がる持ち上げて。
「んん……」
「う……」
一つになる。ずぷりと奥まで鍵を入れて、そのまま、一度ブランクはビビを抱き締めた。小さな体、その額に、キスをして、自分の大きさを無駄に感じて。
「……な、どっちか、口開かない?」
ジタンがアソコをぎんぎんに硬くしている。ビビは困ったような顔になる。
「……もうちょっと我慢しろよ」
ブランクは、ビビにこっちを向かせる。
「ビビ、あのバカにも、後でしてやってくれな」
「……ん」
「俺の後だと、あんま気持ち良くないかも知れんけど……」
ブランクは冷静を保っているように見えて、その実、今は絶対にビビを独り占めしたいと、衝かれている。繋がっているだけで、ビビの括約筋に締められる。湿った穴の中、苦しいくらいの窮屈さ、ここはビビのお尻、ビビの一番恥ずかしい場所、でも、一番いとおしい場所。そこに俺の一番みっともない場所、だけどビビが一番欲しがってくれる場所が、入って、繋がるんだ。
「動かすよ」
「うん……、んっ、あっ、あっ……あ! きゅっ……っんっ、んん! ふっ……ふぁあっ」
浮ついた声に、ブランクは、最後の我慢を断ち切った。ビビを揺さぶり、激しく扱く。ビビは、内壁を焼けつくように擦られて、高い声を、隠すことなど少しもしないで上げる。
「あんっ……んっ、んん! っ、んっ、はぁ……あ! あっ、ん! ん! っ、んあ」
それは、言葉にならない「愛している」の群れで、全て伝えたなら膨大な時間量。
ジタンが我慢するのを諦めて、扱き始めた。それを右耳で聞きながら、ブランクは今はただビビを愛するのがジタンの為でもあると、そして自分も気持ち良くなるのがビビのためであると、ビビを揺さぶる。
「ビビ……、すっげ気持ちいぃ……すっげえ、しまるよ……」
「にぃ……ちゃ……っ、ん! ん! ぼく、……っ、ふぁ、ああ! っ、また、っ、……ん!」
「いいよ、出して、俺も出すから、な、ビビ、愛してる、愛してる、愛してる」
「っいっ、しっ、ぇ……っるっ……、あっ、……ってるよ! んっ、あっあ……ん!」
ビビが先に到達した、ブランクはその苦しみを飲み込んで耐えて、射精し終えたビビの体に、
「……俺も、出すよ」
注ぎ込む、
「……ぁ……あ! あ……っ、て……る……、お兄ちゃん……の……、出てる……」
「うん、……気持ちいい、気持ちよかった、から。お前のお尻、……ね、たくさん」
「ん……、っ、……あ、はぁっ……、ん」
ジタンが限界を迎えつつある。ブランクはビビを横たえた。ジタンは膝を突き、ビビの顔に、二度目の精を振りかけた。ビビは顔にジタンの潮を浴び、少しも嫌がらない、寧ろ、自分でブランクとジタンが放熱するのだという事実に、恍惚となる。
「なあ……、ビビだと全然我慢出来なくなっちまうんだ」
ブランクが、そっと腰を退く、蕾から白い蜜が溢れ出す。
「んん……」
ビビの眉間に皺が寄った。
「痛い?」
「んん、……そうじゃ、なくって……、あのね……」
少し身を起こし、自分の尻、手を当てる、まるで栓をするように。
「……せっかくお兄ちゃん出してくれたのに、……僕、……もったいないなって……」
「……うん、まあ……しょうがないよ。な、その分、ジタンの」
「うん」
顔に放たれた熱の粘液を、手で拭って、ぺろぺろ舐めて、飲み込む。これは美味しいものだ、優しい命の塊だと、ビビは思っていたから、そういったことをがまるで当たり前に出来たし、ああいったことも言えるのだ。
「僕、二人のおちんちん好きだよ」
唐突に、ビビはそう言った。二人は驚いて、ビビの顔を見る。
「こんなこと言うの、いけないのかもしれない、悪い子なのかもしれないって思うけどね、でも、僕は二人のおちんちん大好き。僕を幸せにしてくれるから」
だからね、とビビは、ジタンの、ようやく収まりかけた物を繊細な手つきで撫でる。
「ジタンの、時々僕とお揃いになるのも」
ブランクの、寝つきつつあるものを、下からそっと持ち上げる。
「お兄ちゃんの、すごくかたくておっきいのも」
その笑顔は言っていることとは裏腹に、純粋に過ぎた。まるで本当の、本物の、天使にそう言われたような心持になって、ジタンもビビも、ぐっとなる、ぐっとくる。
「同じように大好き。……いっつも、ありがとう」
えっちをするのは恥ずかしい、これはいつだって変わらない。しかし、終わってしまえば、やはりこれが一番幸せな行為という事実を、身を以って味わうわけだ。次にするときまでは持続しないけれど、やはり幸せは幸せ、肉体から起こり心へ繋がる。
「俺だってビビのちんちん大好きだ」
と、ジタンとブランクは、声を揃えてそう言う。二人が結局すごい仲のいい恋人同士なのだとビビが信じる瞬間は例えばそんなときだ。俺の方が好きだ、俺の方が上に決まっている、黙れ粗チン、うっさいツギハギ、そんな言葉による愛情の交わし合いもいいとビビは考えている。
正三角形の生活が続く。