夏の夜のけだもの

 少年の甘い甘い身体を独占できる稀有なる時間も未だ持て余す理由が恐らくナルシチズムにあるのだということを、288号はそろそろ理解しつつある。彼はジタンやブランクのようにビビを愛する上で適当な変態性を持っていないわけではなく、ビビに向かう性欲は自覚できるほどに鋭いものがあるのだが、其れを表出させることがどうしても出来ない。ジタンとブランクを見ていれば、「ビビのちんこ超可愛い」と口走る彼らが決して醜くも無いことがわかるのに、同じ言葉を口にする自分はとても見られたものではないような気がする、ビビに嫌われてしまうような気がする。

 その夜、ビビはローテーション通り288号のものだった。昼間は小川で水遊び、夏の過激な太陽の下、水着一枚で遊ぶのが夏のビビの楽しみで、それを水辺で自らも足をせせらぎに浸しながら眺めるのがブランクの楽しみで、ジタンは暑いのが嫌だと部屋の床に裸で延びている。これが夏の平凡な一日の彼らのスタイルで、288号はすることもないのでブランクと一緒にビビを拭くタオルと水筒を持って小川に付き合った。

「可愛いよな」

 ブランクがぼんやりと口にする。百パーセント以上の同意を得られることが確実な言葉だ。銀髪の先に雫を光らせて遊ぶ少年は妖精のようで天使のようで、しかしそれ以上にもっといいもので、人間の操ることの出来る言語の範疇を超えている。やっと言えるのが「可愛い」という、ごく無難なものに落ち着いてしまうのだ。

「うん」

 こうして見ると、ビビは本当に無垢な子供なのだ。危険なほどに美しすぎる見目をしてはいるし、日夜男三人の性欲にまともに付き合うことも出来るけれど、その本質は未だ無邪気な少年なのである。其処まで考えれば、その「少年」が喜ぶと判っていても、その少年の前で自分の小汚い変態性を見せることには躊躇いが生じてしまって。

 膝の上に載ったビビはパンツ一丁である。こんがりと美味しそうな色に焼けて、ただ座っているだけなのに何だか普段より華やな雰囲気を纏っているのは、銀髪に銀の瞳に雪色の膚、色素の薄い身体をしているビビに、一片の夏が舞い降りたように見えるからだ。言うまでも無く冬の真っ白なビビだって愛らしいのだが、季節限定夏少年、折々の美しさを愛でるのも風流なものである。

 ただ、ジタンならばさっさとその白い下着を剥ぎ取って「穿いてないのに穿いてるみたい」とはしゃぐのだが、288号はまだ膝の上にビビを載せたままで、甘く残る汗の匂いにだって胸が擽られるのにまだ膝に乗せたままその膚に触れもしない。

 見目はビビ同様に美しく、硝子細工のような顔のつくりは常人の前に出れば思わず声を失って見惚れられるほどのもの、黒魔道士TYPE-C288号。身長も知能も、足りぬものは何一つ持っていないように見えるのに、決定的に彼は、自信がない。ちんこだって俺より全然でかいのになとジタンがそう妬むが、男性自身にまつわる自信は彼には何の意味も持たないのだ。

 ジタンに散々羨まれた、「俺もこんがりビビとベタベタしたかったなあ」と。ブランクは何も言わなかったが、似たようなことを思っていたことは想像に難くない。ただ「あんま夜更かしさせるなよ」と一言告げられた。

 ある程度は夜更かしを、させてあげるべきなのだろうか。ビビ自身がそれを想定して今こうして、膝の上に居ることには疑いはない。

「夜は涼しいね」

「ん? うん」

 開け放った窓からは、、川面を撫ぜて部屋に忍び込んだ涼風、ビビの緩い癖の付いた髪の先を擽っていく。幼いビビと身を重ねていても汗ばむことはまるで無い。

「だから、くっついていっぱい動いても平気だよ? いっぱい汗かいたら、寝る前に一緒にお風呂入ろ」

 其れは、小さなビビが288号に向ける健気で精一杯な誘い言葉だ。その小さな掌、ごく僅かな握力で心臓を掴んでみせる。

「……うん」

 ここまでのアプローチを、無碍に出来る勇気もまた、288号は持って居ないのだ。誘ってもらえたならば其れに乗って、……こんな小さな少年に連れて行ってもらうなど、男として何とも情けない有様ではあるけれど。

 その気になればこの臆病な賢者だって、男、大いにビビを喜ばせるぐらいのポテンシャルは持っている。ただ、未だ彼は其れを使いこなせない。

「ほら」

 膝から、ベッドの上に立ち上がってビビが下着のゴムを、少し引き下ろして見せた。

「こんなに焼けたんだよ」

 ほんの僅かに膨らんでいることで、愛らしい曲線を描く腹部までは香ばしく焼けているものの、ゴムをずらすとその内側に、下着と同じ純白の生肌が隠されて居て、コントラストに思わず息を呑む。まだ其処は性的な場所ではないはずだが、あと一センチでも下がれば陰茎の根元のラインまでも明らかになる場所であって、其処を自分にだから見せてくれるのだ。

「えっと……」

 こんな子供に勇気を搾らせている、「……あのね、お尻も、おちんちんも、まっしろ、なんだよ?」。

 頬が仄かに染まったビビに、ぎこちなくとも微笑んで。

「いいよ」

 その手を止めて、

「脱がせてあげる」

 代わりにウエストに手をかけた。

 君のことが愛しいと、君のことが可愛いと、思うならばかなぐり捨てなければならないものが288号には山ほどあって、其れをこれからビビと共に過ごしていく時間の中で一体どれ程克服していけるかはまったく判然としないが。

 努力することは忘れてはいけない。

 微かな躊躇いを解き放って、最後の一センチまで。見ても良い? 訊かなくてもいい、言葉を止めたまま、288号はビビの白い下着を、鮮やかな小麦色の足元まで下ろした。

 雪色の膚は、反対側の季節を其処に止め置いていたように、眩しささえ伴って居る。

「……本当だね、真っ白だ」

 恥ずかしげに、それでも小さく微笑んでビビはこっくりと頷いた。性器を間近に見られることにはどれほどの時を重ねたところで慣れられるはずもないのだが、其れでも「あなただったら構わない」と思える相手のためにビビが思うように、288号もまた「君のならば」と思う。其れを形にする方法に、もう少し、器用になったっていい。

 そのまま其処にキスをしたいような気になった。

 そう思ったならば、其れを止める必要性は、恐らく何処にも無い。

「んん……」

 それでも、控えめに、ほんの小さな口付けだけだ。まだ楚々として垂れ下がるだけの其れは―妖精のようで天使のようで、しかしもっとずっと、いいもの―淫らさよりも愛らしさの方がずっと先に立つ。顔を上げた288号を、ビビが照れ隠しの笑みで迎える。

「しよう」

 膝の上に再び座って、ぎゅっとビビが細い腕に繊細な力を込めて抱きつく。細い背中を滑らかに指で滑りながら「うん」と、288号は自分の責任においてしっかりと、言う。

 まだ288号はパジャマ代わりのシャツも、トランクスも脱いでいない。ビビに裾を引っ張られるまで着たままで居る鈍感を、しかしビビは責めない。初めから全裸で待っている方がいい? それも考え物だ。

「288号も、少し焼けたね」

 横たえた288号の胸の上に軽い体重を乗せて、彼の顔に指を這わせる。言われるまで気付かなかったが、そういえば鼻の頭が少しばかりひりつくような気もする。

「ちょっとだけ、男らしく見えるよ」

 そう言われれば、もちろん悪い気もしない。ビビは288号がする気になったことで大いに満足し、心躍らせ、288号の顔にキスを幾つも幾つも落として行く。自分の膚、敏感なところを少しでも辿られればたちまちペースを握りこまれてしまうことは経験上知っているビビだから、自分のしたいようにさせてくれる288号とするセックスはビビの少年らしい好奇心を満たしてくれて、他の二人とするときとはまた違った楽しみと繋がっている。

 もっとも288号は288号で自分から動かなくてはならないという焦りを、ビビの軽い体重によって押し止められながら、心地よい指と唇の愛撫に任せて快楽に身を任せてしまうことに、罪深さを感じてはしまうのだが。

「……288号、おちんちん触ってもいい?」

「え?」

 288号から求めることはないのだ。だから、ビビが動く。288号が思うほど、彼らの関係は288号の在り様によって大幅に変化するものではないのだ。賢者の自責は常人には理解に苦しむほど、浅く、そして深い。

「ダメ?」

「……いや、いい、けど……」

 自分の身体の上を、這って下りながら所々にキスを落とす。この巧みな仕方は当然ブランクにされたのを実践しているに違いないと思いながら、ビビが懸命に、自分の身に受けた快感を288号の膚へと移そうとしていることには、有り難さばかり浮かんでくる。288号の乳首を一度吸って、「う……」、思わずそんな声を上げた彼に、ビビは嬉しそうな微笑みを見せた。

 ビビがきつく勃ち上がっている288号の性器まで辿り着いた。直接的な刺激はほとんど受けなくとも、愛しい少年の裸身を前にし唇を重ね愛撫を受ければ自然とこうなる。そしてビビは其れを、心の底から喜ぶ。

「おっきいね……」

 間近に捉えて、眼を丸くする。熱を帯びて脈打ち赤く腫れた男の性器は、宿主自身何故もう少しスマートな見目で居られないのかと思う――そんなことをジタンに言えば、「嫌味かそれ」と不快そうな顔をする――。しかしビビは288号の足の間にちょこんと座って、

「いつも思うんだけどね」

 そっと、大切なものに触れる手つきで包み込む。

「……僕のおちんちんも、いつかみんなみたいに大きくなって、こんな風に皮も剥けたりするようになるのかなって。でも、ずっと先なのかな……、おちんちんの先っぽ出しっぱなしに出来ないし……」

 独り言のように呟くビビは、空いた左手で自分の幼い茎をそっと摘む。上体を起こした288号に「ほら、……ここまでしか、剥けないんだ」と、いかにも脆弱な粘膜を晒して見せる。ビビが勃起していることは自然であるはずなのに、其の表情が相変わらずあまりにも穢れとは無縁であるものだから、却って禁忌なるものであるような錯覚を288号に与えた。

「ビビの、……も、そのうち、剥けるようになると、思う、よ?」

 やっとのことで288号は、可も無く不可も無い答えをビビに与える。

「んー……」

 自分の性器と288号の性器を見比べて、やがて納得したように頷いた。ビビが、あのすらりと均整の取れた体躯をした黒魔道士と同じほどの体型に育つ日が来ることは、現状288号にも想像が付かぬことではあった。

「……ときどきね、思うんだ」

 288号の性器に、再び顔を近付けてビビは言う。288号にとっては股間から少年の変声期間遠い声が這い上がってくる。見下ろせば、にきびの一つだってまだ出来る気配の無い潤った膚のすぐ傍に自分の性器が在って、ビビの細い指は其れを甘い力で握っているのだ。

「僕のおちんちん、……みんなみたいに大きかったらみんなも楽しいだろうなって」

「……楽しい?」

 ん、と頷いて、ビビは躊躇い微塵も無いままにぱくんと288号の先端を口に含んだ。亀頭が生温かい口中に包まれていたのは一瞬のことで、すぐにビビは口を外す。ただ、ビビの唾液が絡んで濡れた先端がぬめぬめと光る跡を残す。

「……僕は、楽しいから」

 ビビはじっと、握った性器に語りかけるように、言葉を垂らす。

「おっきいおちんちん、気持ちよくするの楽しい。みんなのね、すごく硬くって、熱くって大きいのが、僕の手や、お口や、……お尻の中で気持ちよくなってくれると、嬉しいし、……みんなのこと気持ちよくするの僕、楽しい。だから、ね、僕のおちんちんももっとおっきかったらみんなも楽しいだろうなって」

「それは……、どうだろう……」

 ほんの小さな身体、抱き締めるときの腕の力にだって気を使わなければならないような小さな小さなビビの性器は、身体に比しての割合について論じる必要も無かろうが、当然288号のものと比べたって半分以下のサイズである。だからビビの性器を愛撫するときの手の動きは、握るというよりは「摘む」。しかしそれをつまらない物足りないなどと思ったことが在るはずもない。

「ビビの、……は、ビビの、今の、ままでパーフェクトだと僕は思うよ」

 288号は顔色が出ない、表情も希薄だ、ただその言葉を吐くときには流石に頬が引きつった。

「そう、なのかな……。ジタンもおんなじこと言ってたけど……、でも、自信ない」

「……一瞬一瞬、成長していくものだよ。ジタンが言いたかったのは、そして僕が言いたくて、ブランクも恐らく思っているのは、……君の身体は今在るこの瞬間にしか見せない輝きを持っていて、……それ以上のものを僕らは望まないし、今以上のものなんて想像出来ないくらい、君と居て幸せなんだ。君が何かを望まなくても、僕らは全身全霊を以って君を幸せにしたく、思う」

 微かに日焼けしたその頬に、赤味が差すのをビビに見られただろうか。288号は起き上がって、「僕は、君の、この小さな此処に触って、君が気持ちよくなるところを見るのが好きだ」と、真理を改めて口にするという愚かな真似をして、ビビを膝の上に乗せる。

「こんなに可愛い。……皮も剥けてなくて、本当に真っ白で、勃起していても少し、柔らかいようにも見える。君の此処、見てるだけで苦しいくらいに、可愛い」

 衝動に駆られている自分を意識している。しかし、止めぬ努力を288号はした。膝に乗せたときに微かに香る少年の性器から漂う性臭は彼の嗅神経を刺激し、煽った。

「う、ぁンっ……!」

 指に届く脈動、響く鼓動、一つひとつ切り取って胸に刻み込むのは、瞬間の連続性に拠ってこそ成り立つ今の、恋人の美しい姿だ。ビビの性器は288号の指扱のたび、開く包皮の先端に浮かべた蜜を泡立て、くつくつと微かな音を立てる。

「っふぁ……、あっ、ン! んっ、……だ、めだよぅ、にひゃっ……、僕っ、……あなたのおちんちんっ……、ふゃあっ……ン、んっ、んぅ」

 か細い腕を伸ばして、足と足の間で反り立つ288号の性器に手を伸ばす。其れを自らの陰嚢に押し当てて感じる熱に、ビビが甘美な音色を奏でる喉を反らした。

「ビビ、……僕のは、いいよ、大丈夫だよ」

 口先ばかりはそう言って、しかし止めないのはビビの小さな陰嚢に押し付けられた亀頭が不可思議な快感に包まれて居るから。ビビの健気な指の動きを止めるのは残酷と言い訳をする。

「あ、んんァっ、ッは……っ、も、……でるっ、いっちゃう……っ、いっひゃうよぉっ」

 痩せた背中に重ねた胸へ、ビビが引き上げられるように体重を掛ける。勢いは、さほど強くはない、量も決して多くは無いし、粘り気も少ない、だが明瞭な快楽の証が少年自身の薄っぺたい胸へと飛び散る。濃い蒼の匂いを嗅ぎながら、288号は腕の中で射精した少年の小麦色した膚を流れていく精液に、暫し眼を奪われたままでいた。

「……う、あう……、ン、うー……」

 ビビが、少し不満げに声を上げる。まだ288号のペニスは、ビビの陰嚢に押し当てられたままだった。

「ぼくが、……おちんちんしてたのに……」

 身体を垂れて流れる液体が在るから、すぐには動けない。枕元の塵紙を取って、その身を拭きながら「ごめんね」と素直に288号は謝った。

「君の……、ことを、気持ちよくしてあげたくて、すごく」

「僕だって、288号のこと気持ちよくしてあげたかったんだもん」

 まだ全部拭き終わっていないよと288号が言っても、ビビはひょいと彼の膝から降りて、足の間に跪く。今度は僕の番と、言ってほとんど余韻に浸ることもせず、288号の性器に顔を近づけた。

 見下ろす背中から腰にかけてのラインはいつもながら、どうしてこんな幼い少年にこれほどの色香が漂うのかと288号を混乱させる。加えて今日は更に降りた先、臀部は眩い白さで目を誘う。代わる代わるに三人の男の性器を受け入れていながら、其処は依然として少しの傷も汚れもなく、頬を当てれば滑らかに潤って冷んやりと心地よいのだ。

 口を開く、紅い舌が覗く。

 ビビが愛しげに、288号の性器の根元から先端へ、れ、と舌で昇る。ブランクやジタンに比べて軟い銀の性毛の中に左手の指を潜らせ、右の掌に陰嚢を包んだ。鼻先でぴくんと288号の性器が震えたのを見て、ビビが嬉しそうに微笑んだ。

「いっぱい、……気持ちよくなってもらうんだからね。僕にあなたがしてくれたよりも、もっともっと、あなたのことを気持ちよくしてあげたいよ」

 悪戯っぽい笑顔は何処までも無邪気そのものなのに、我が意を得たりと弦を舌で弾き先端微かに浮かぶ腺液を掬い取る、その動きは罪深いほどに淫らだ。その潮の味が好きだとビビは言う。ひと掬いして、もっと出してと茎を丹念に舐め、それから舌は陰嚢へと降りた。袋を下から持ち上げるようになぞってから、珠を一つ頬張る。口中で幾度も舌で擽ってから解放して、再び浮かんだ露を見て、

「288号も、タマタマ、気持ちいい?」

 と訊く。熱っぽい思考のままに頷いたら、「じゃあ、こっちもしてあげる」ともう片方にも同じように。それから再び茎を上り、腺液を舐めた。

「……288号の、おつゆ、しょっぱくって美味しいね」

「……しょっぱい……? 僕のが……?」

「ん。ジタンやお兄ちゃんのおつゆより、しょっぱい」

 名残惜しげにもう尿道口をもうひと舐めして、仕上げにキスを一つ。そんなものを美味しいと思ってはいけないとか、そもそもこの行為自体が誤りだとか、言い始めたらキリが無いしそもそも言葉を並べられるだけの余裕も今の288号にはない。

「288号のせーしも、たくさん飲ませてね?」

 言ったビビに、こっくり、頷いただけ、そしてぬるついて柔らかい口の中に包み込まれては、もう何も考えられなくなる。

 欲はビビの原動力となる。少年が多少の息苦しさも厭わず男の性器を咥えられるのは、その味が匂いが、そして届く鼓動が、全て少年自身の悦びと繋がっているからだ。口元から立つ音は品が無い、テーブルでそういう音を立ててはいけないことを、ビビはよく知っている。それでも、自分の欲が先に立つ、今は欲しいものが在る。

 共に在ることの幸せを感じるのはこんなときばかりではもちろん無いけれど。

 其れでも此れをしたい、こうしていつでも、愛し合っていたいと思うのは、年幼い少年にも解かる愛情生活習慣。微かにまた舌に届く腺液の味が、少年の幸せとダイレクトに繋がる。

「……ビビ、そんな、……奥までしなくても大丈夫……」

 288号は銀の緩やかな癖のある髪に指を当てて、しかしそれ以上止めることは出来ない。ビビが舌を茎に沿わせながら頭を動かし始めて、288号の思考ごと吸い上げる。左手は間断なく陰嚢を揉みしだき、右手ではその小さな口ではカヴァ出来ない陰茎の根元にリングを作り補うようにスライドさせる。

 後頭部から引きずり込まれるように、沈んでゆく、伴って腰が浮揚しかける。堪えるように、抑えるように、努めた力がそのまま射精への引き金だった。熱の塊がビビの口へと流れ込む――ジタンのように一人の夜を持て余してオナニーをするような男ではない――、三日間溜め込んだ無意識の劣情を少年が受け止めるのを、重力から解き放たれたようにふわつく腰で感じていた。

「……んく」

 精液を飲み込んで、ビビが微笑む。

「いっぱい、出た」

 その嬉しそうな顔に幸せそうな微笑に、平伏したいような感謝を覚える。ただ今しばらく言語の糸は絡まったまま、解けなかった。ビビはまた少し浮かぶ288号の精液を欲しがって、舌先で掬い取る。何処にも淫らさなど見えないのに、どうしてこれほど男の心臓を揺さぶれるのだろうと、呆然の中、手にした疑問はふわふわと揺れていた。

 ビビが、座り直して、勃起した自分の性器を見下ろし、下腹部をそっと撫ぜる。それからほんの少しだけ躊躇ってから、

「……おしっこしたい」

 とぽつり、恥ずかしげに言った。

「……おしっこ?」

「ん……」

 こういうところは、本当に普通の子供なのだ。しかし「普通」が何かなどと論じられる288号ではない、普通だからどうしたという気さえする。ただ反駁の暇も無く、

「じゃあ、トイレ、行っておいで。待ってるから」

 少しずつ紡ぎなおした言葉を十全に用意した。

 ビビはベッドから裸足で降りて、ふと振り返る。

「……288号は、僕のおしっこ見たいって思ったりしないの?」

「は?」

「んんと、……ジタンは僕のおしっこしてるとこ見るの、好きなんだって」

 性欲よりも尿意が先に立っているからだろう、ビビの性器は、ゆっくりと普段のサイズへと柔らかく寝そべっていく。

「288号はそういうの、ないのかなって」

 ジタンという男を、変態を、弁護する必要が在るかどうかは不明ながら、ジタンがビビと並んでマダイン・サリの崖から「友情の儀式」をしたのは、彼が少年に対して性欲を持ち始めた頃とほぼ時期を同じくする。小さな少年がぶかぶかズボンのベルトを外し、下着から胸の痛くなるほど小さな性器を取り出して放尿するのを見下ろしたジタンに、あらぬ考えが浮かんだことを誰も責められまい。だから以後、ジタンはビビの小便するところを見たくて仕方がない病気に罹患した。それはこのところ益々拍車が掛かっているといっていい。そして伝染性の病気は、ブランクのことも毒している。

 288号は今のところ、その点においては健康体の自覚で居る。しかしながら、口中にビビが失禁しても其れを平気で飲み干せるぐらいには、既に進行していた。

「……僕は、……その、自分がされて恥ずかしいと思うことはあまり、するべきじゃないんじゃないかって思う」

「そう、『思う』んだ」

 ビビの眼に、僅かに浮かんだのは何の色だったろう、288号には判らなかった。

「……うん、そう、『思って』居る」

 結局288号は裸のまま、裸のビビと二人でトイレに入った。

「なんでかな」

 ビビは便器の前に立って、幼稚な疑問をそのまま口にする。

「せーし、出した後って、おしっこ行きたくなるんだ。……いつも」

 だから、射精直後のビビの性器を執拗に弄くれば、大抵ジタンやブランクの期待通りに、少年は失禁するのだ。ただ、そのからくりは聡明な魔道士の少年であっても守備範囲の外にある。人生経験もまだ少ない。

「尿意を催す理由は僕にも判らないけど」

 同様に魔道士であり人生経験も少ない288号である。

「……射精直後の尿道には、少量ながら精液の残滓が残っていて」

 しかし知っていた。ブランクが話していたのを聴いたことがあるだけのことだが。

「其れを洗浄する意味でも、射精後におしっこをすることはいいことらしい。恐らくは本能的に身体が其れを求めているのではないかな」

 感心したように、

「そうなんだぁ……。僕だけじゃないんだ」

 そして納得したように、少年は自らの泌尿器を摘んで、放物線を描いた。興味がないつもりで、それでも高いところから見下ろしてしまう自分はやはり、ジタンやブランクのことを決して悪く言えないと288号は思う。そもそもその仕事だけしていればいいようなビビの性器から薄黄色の尿が流れるさまを見て、288号は微笑みはしないけれど其れが微笑ましい有様だとも思うのだ。

「ブランクお兄ちゃんがね」

 ちょろちょろと音を立てながら、ビビが言う。

「おしっこ、汚くないんだって言ってた」

「そうらしいね。健康体の尿は空気に触れない状態では雑菌も含まれていなくて、身体から分泌されるほかの液体、例えば汗とも何ら変わりがないと聞いたことが在る」

 288号の言葉のうちに、ビビのせせらぎは勢いを失い、止まった。皮の先の雫を舐めさせろ舐めさせろと駄々を捏ねるような男では288号は無いので、ビビが見上げた眼から、眼を逸らす。

 一歩、後ろに下がって、

「288号の番」

 とビビが言う。

「へ?」

「288号も、せーし出したばっかりだから、おしっこしたいでしょ?」

 手を引っ張られて、一歩、前に出る。便器の前に、立った。

「……あの」

「僕のおしっこしてるとこ見たでしょ? 僕も288号のおしっこしてるとこ見る」

 言って、ビビはすぐに打ち消すように首を振った、「見たい」。

「……僕の、おしっこしてる、ところを?」

「ん。だって、みんなはいっつも僕のおしっこしてるとこ見てるけど、僕は見たことないもん」

 其れはそうだろう、当然そうだろう、ジタンにしろブランクにしろ、ビビの放尿は愛らしいものだと思っても自分の其れは単に不潔なものとしか思わないはずだ。

 あまり、見られると、恥ずかしいよ。

 だが、そんなことを言えるはずがない。ビビだって見られるのは恥ずかしいのだ。そしてこの聡明な少年は其処まで諒解した上で、求めているに違いないのだ。288号の性器は排尿するのに都合のよいサイズに萎えていた。……こんなの、喉が詰まる、嫌だ、……。口中で唇を噛んで、少年の見ている前で彼は放尿した。

「わあ……」

 ビビは口をぽかんと開けて、288号の性器に顔を近付ける。慌てて「ダメだよ、ビビ」、彼にしては珍しく焦った声を上げた。

「大人のひとのおしっこって、こんなふうに出るんだ……」

 其れは性欲ではなくて、心底からの興味に基づいた動きだろう。ビビは288号の性器に触れて、「……おしっこが、おちんちんの中で流れてるの、わかる」と呟く。288号は顔を真っ赤にして、せめてビビの手を、そして余りに近いその顔を、汚すことの無いように努めるほか出来なかった。膀胱の中味を出し切るまでの時間を無限と錯覚する。

「おちんちんの皮が剥けてると、きれいなんだね」

 ビビが感想を述べる。

「……え?」

「みんなのおちんちんがおしっこくさくないの何でかなって、……わかった」

 また余計な知識を植えつけてしまったと、288号は眩暈すら感じながら思って、思考に空白が浮かんだところだったか、ビビが、288号の柔らかくなった性器を上に向けて、先端の光を舐め取ったのは。

「ひ」

「……しょっぱい」

「び」

「……ん」

 にこ、とビビは笑う。

「288号、前に僕のおしっこ飲んだから、これでおあいこ」

 と、悪いことをしたとは思っていない顔で、笑う。トイレの壁に手を付いて、「……口を、ゆすぎにいこう、ね、ビビ」、やっとのことで288号はそう言った。

 少年は斯様に、賢者の心を悩ませる。悪気の微塵も無いことは賢者であるが故に288号も判り過ぎるくらいに判っていて、其れが辛さを増長する。

 再び膝の上に乗せた軽い身体をブランクやジタンよりも安定感を伴って抱いている自覚は在る。ビビは賢者の気も知らず、その肩に頬を当てて、時折キスをした。応じるように288号はごく自然な動きで銀の髪を擽る。小麦色の膚は銀の髪に、ぞっとするほどに映えるようだった。

 少年の手は、とろりと揺れる液体の入った小瓶を握っている。ブランクの作った粘液である。

「……ねえ、288号?」

「……ん?」

 音を立てて、また288号の薄い胸板に口付けて、

「……えっとね、これ、ブランクお兄ちゃんには内緒にしてくれる?」

 両手で、握った小瓶を撫ぜながら、少しだけ口篭る。

「えっちの……、ときは、288号のことも『お兄ちゃん』って呼んでいい?」

 銀の眼にはある種の決意が在るように見えた。笑っては居ない。

「……288号のこと、呼びたいのに、えっちのとき、気持ちよくしてくれたとき、上手に呼べなくなっちゃうから、……『お兄ちゃん』なら、ちゃんと言えるよ」

 ビビはそう言って、288号の返答を待った。

 製造年次ならば体型とは裏腹に、試作型のビビの方が年上ということになる。288号は量産型黒魔道士の中でも最後期モデルであり、それゆえに量産型の中では最も強い魔力を持っているし、知識レベルも最高域にある。それらはビビの尊敬の的となり、自分よりも遥かに背の高い彼は、決してビビには「弟」などとは思えない。

 其れよりも寧ろ、敬意と共に、「お兄ちゃん」。ブランクを呼ぶように。

 無論、ジタンを呼び捨てすることが、彼への敬意がないことと同義ではない。ジタンは元より少年の「仲間」であった。

「……君が、呼びたいように呼べば良いと、思うよ」

 288号に言葉に、ビビがふわりと微笑んだ。それから改めて「お兄ちゃん」と、真っ直ぐ目を見て言った。呼びにくいからそう呼びたいと言ったのは初めてではないし、実際「288号」とは何と無味乾燥な名前だろうかと彼自身も思うところではあったが、こうして秘密を握り合うようにして齎される響きには、得がたい満悦が伴った。

「……お兄ちゃん、もっと、えっちしよ。もっともっと、えっちなこと、いっぱいしよ」

 ビビは瓶を持つ手を退かして、自分の股間を晒した。幼いながらもぴんと勃起して、まだ涙を零してはいないものの、ひくりひくりと震えている。ビビは瓶の蓋を開け、掌に粘液を垂らし、握って開いて糸を引いて、288号のペニスへと纏わせた。ビビの性欲の矛先が直接的に自分に向いているのを見れば、288号だって当然、勃起する。

「えへへ……、お兄ちゃんのおちんちん、おっきくなったね」

 膝の上で正対に座り直し、ビビは粘液塗れにした288号の男根に幼根をぴったりと押し当てる。

「……お兄ちゃんのおちんちんの方が、あつくて、かたいね。先っぽ、ぬるぬるで、つやつやしてる」

 新しい粘液を更に掌に垂らし、今度は288号の両の乳首を撫ぜる。彼にとっては性感帯ではないはずの場所なのに、細い指がくるりと辿って思わず、息を呑む、性器が弾む。

「お兄ちゃんも、ここ、気持ちいい?」

 素直に頷くのは、嬉しそうな微笑が見たいからか。

「……僕とおんなじ。同じ身体」

 ビビは粘液塗れになった大小二本の性器を両手で上から包み込んで、

「っふぁ……っ」

 愛撫し始めた。小さな掌の中で、ほとんど同時に性器に力が篭ったのを感じて、ビビがくっきりと目元に喜びの色を差して笑う。

「ぅんん、……お、ちんちん、っ、にゅるにゅるする……」

 其れは赤子のように幼く、純粋な喜びによってのみ浮かぶ笑みだ。

「おに、ちゃんのぉ……、おちんちん、あつくって、コリコリしてるよ……」

 快楽と直結しているから其の手は器用には動かない。288号は跳ね回る心臓を堪えて、シーツを握る。つい先程、奉仕したがったビビを押し止めて愛撫して、怒られたことをちゃんと覚えているのだ。粘液をたっぷりと絡み付けた小さな掌細い指、二本の性器のどちらもが大切と、泡を立てながら幾度も幾度も幾度もスライドする。そんなふうにしたらもうほとんど猶予もないだろうと288号は思う、いい、君の思うがままに。

「あん、ンッ、んっ、ひ、もちっ……いっ」

 そんな288号の思いに抗うようにビビは手を止めた。眼に涙を浮かべて、浅く水っぽい呼吸を繰り返し、何度も何度もペニスを震わせながらも、射精の引き金を引く寸前に、自分の欲を止め置く。

「……う、はう……、……もう」

 ぎゅ、と、288号の陰茎を、両手で握る、「そうじゃなくってぇ……」、涙眼のまま言い訳をするように口元を、少し尖らせた。

「ぼくの、……おちんちんどうして、がまん、出来ないのかなぁ……」

 うにうに、うにゅうにゅ、自分のひくつく幼茎を情けないように見下ろしながら、288号のペニスを扱いて、「お兄ちゃん、まだ、ぜんぜんいかないのに、僕だけ漏らしちゃいそうになった……」、言う。

 288号は言葉も無い、言葉が出せるはずもない。少年の柔らかな指は粘液を帯びれば一層滑らかなものとなり、その独特の滑る感覚の中に288号はビビの指の瑞々しさをリアルに感じることが出来る。気を取り直したように、はっきりと自分を射精まで追い込もうという決意と共に扱かれれば、――そうする相手が自分の愛しき者であれば当然のことながら――終点への道筋はその指で真ッ直ぐに引かれる。

 熱を持て余していることは、ビビにもはっきりと伝わっているはずだ。表情を窺ったところ、嬉しそうな眼が合った。

「ね、お兄ちゃん、立って」

「へ?」

「……僕、お兄ちゃんに……、えっとね、あの、せーし、かけて、欲しいな」

「へ……?」

「……お兄ちゃんの、せーし。……僕に」

 どうして、と問うより先に、ほんの僅か、恥ずかしそうな顔をして、

「ずっと……、最初のときからね、ブランクお兄ちゃんや、ジタンが、僕にせーしかけるの好きって言ってた。よくわかんないけど、でも、好きなんだって」

「……そう、なの」

「でもって、……僕も、何でかな、かけてもらわなくっても、出してもらえるだけでも嬉しいけど、でも、……でたのがちゃんと判るから」

 だから、好き、かな、ビビは自分の言っていることのおかしさを自覚しているのだ、だから少し俯いて、時折ちらちらと上目遣いで288号の反応を窺う。

 其の目が射抜く。

「……僕、も」

 心臓まで。

「君に、かけるのは、多分、好きなんだろうと思う」

 立ち上がった288号の前に膝立ちになって、にっこりと微笑む。本当に、其処だけ切り取ったならば何処までも天使のような子供なのだ。両手に大切なものとして包み込んだ288号の性器を再び扱き始め、ふと手を止めたかと思うと、鈴口に泡立った粘液ではない288号の露を見つけてちろりと舌を伸ばす。くちゅくちゅと品の無い音を盛んに立てて男性器を扱く少年に、「求められている」との思いは288号の思考の細かな凹凸の中に砂糖の粒を挟ませて、甘く痛んだ。

 288号の細い腹筋が、微かに痙攣する。

「……お兄ちゃん、もう、出る? せーし、出る?」

「……ん……」

「したら、……かけて。僕の、お顔にも、身体にも、いっぱい……」

 ビビの言葉が最後まで語られ終わらぬうちに、288号が肉芯でビビの指を弾くように激しく震わせて射精した。健康的に日焼けしたその顔、頬に額に鼻に何の遠慮もなくぶちまけた欲の澱は薄ら白く垂れ流れ、ビビの身体をとろとろと伝っていく。

「……すごい……」

 精液のシャワーを浴びたビビは、陶然と自分の胸部腹部を見下ろして呟く。小麦色の膚は微かに上気して、えもいわれぬ淫らな色を映し出していた。薄い苺の汁の中に漬け込んだなら、そんな色を成すのだろうか。呆然と見下ろす288号の前で、ビビは左の乳首を通り過ぎて流れる精液を指で掬い取り、再び自分の粒へと絡めて、盛んに刺激し始めた。

「……っふぁ……っン、んっ……、ん! んぅ……っ、おっぱい……っ、おっぱいっ気持ち、ぃっ……」

 腰をベッドに落として、288号はもうしばらく呆然としていたい気を振り払う。

「僕の……、精液でおっぱい弄るのが気持ちいいの?」

「ん、んっ、きもちぃっ……」

 左手の人差し指は感心するぐらいに繊細な動きで少年自身の小さな胸を刺激している。ただ乳首を捏ね回すだけではなくて、刺激に微かにピンク色を帯びて全体が薄っすらと膨らんでいるようにも見える乳輪を摘んだり、指で輪郭をなぞったり、……見ている射精直後の288号が思わず腰を震わせてしまうほどな貪欲さを以って、快楽を求めている。ブランクによって性感帯として開発されきった――と言うには語弊があるか、ブランク曰く「俺はキッカケを一つ与えただけだからな」――場所を弄る技術に長けたのは、ブランクでもジタンでも288号でもなく、誰よりビビだった。

 きゅ、きゅ、と288号の精液が伝った幼いペニスがたまらない震えを見せる。

「はぁ……、あ……っん、っ、んっ、おちんちん……っ、おちんちんくる……っ」

「くる?」

「ンっ、せーし、っ、きてるっ……、んっ、くんっ、ンはぁっ……あ……!」

 先端、ぷくりと白濁が雫となって浮かんだ、遅れて、ごく低い高さに、幾度も幾度もビビが精液を射ち上げた。腰から力が抜けたようにぺたんと尻餅を付いて、ビビはまだ、鋭さに欠き何処か漫然とした射精の、持続的な快感に沈み込んだように、甘い声をとろとろと零しながら乳首を弄り続けていた。

「……すごいな」

 新しい欲を湧き立たせながら、288号は気圧されたように呟く。性に対する飽くなき探究心がビビの中に潜在的に宿っていることは疑いようもなく、だから直腸粘膜を激しく擦られていきたいと願ったり、乳首や陰嚢を性感帯として開発されたりすることにも悦びが伴う。しかしその悦びは決して程度の低いものではないと288号は確信する、少年の中に在るのは何処までも知的な探究心である。

「指、止まらないね、ビビ」

 288号が清潔なタオルで自分の精液を浴びせた身や顔を拭いてやりながら、288号は訊く。ビビはひくんひくんと震えながら、「きもちい……」と蕩けるような声で応えた。

 足をしどけなく開き、精液の伝ったペニスを間断なくひくつかせる。閉じられることのない唇の端からは見るからに甘そうな唾液が零れ、理性と完全に切り離された表情を浮かべていても、貴い美しさとは無縁では居られない。この身体に求められているのだ、この身体に宿る心が、……俺の事を好きだと言うのだ。

「んひゃあぁっ……?」

 跪いて288号が唇を当てたのは、音もなくゆるやかに蠢くビビの小さな陰嚢だった。

「にゃっ……あ、あ、あっ……んはぁァ……!」

 其れは288号の口ですっぽりと包んでしまえるほど小さく、中に入った珠など心細いほど小さい。舌を外して、柔らかな其の場所を指の腹でそっと押す、そのまま窪んで、ごく薄い皮の向こう側に在るビビの命そのものに触れたとき、逃げるように其れが中で動くのを感じて、288号の理性も吹き飛ばされる。

「いやぁ……、タマタマいやぁっ、また、……またすぐっ……!」

 意地悪をしよう、などと、普段の彼に考え付くはずもない。それだけ288号はビビに対しては臆病だった。左手に陰嚢を捉えたまま、右手でそっとビビの包皮を剥き下ろした。冷たいピンク色をした粘膜は三人の男たちの同じ場所とは全く違った趣で、精液の残滓か新たな腺液か判然としないが、濡れていた。男たちの欲に応えるように腺液や精液や尿を噴き出させる小さな尿道口とその周辺に舌先をくるりと巡らせて、すっぽりと口で覆い込んだ。もちろん、陰嚢は左手で能う限り優しく撫ぜてやりながら。

「い、っ、……ンっ……!」

 突然に与えられた快感にビビはほとんど声も出せぬまま、288号の口へと射精した。さすがに量は半減しているが、少年の水蜜特有の薄く蒼いがほとんど生臭さを感じさせない精液は288号の舌に絡んで美味なるもので、飲み下してなお、もう少し欲しいなどと思わせられる。曖昧な境界線だった乳首での射精、そしてくっきりと境界線を引かれるような二度目の射精の余韻にビビが腰を沈めるのを、288号はもちろん許し、しばらくはその隣に肘を付いて横たわり、銀の髪を撫ぜたり、キスをしたりして、過ごす。言うまでもなく再び彼の男根は硬く滾っているのだが、こうして待つことは苦ではない。寧ろ自分によって少年に快楽を与えることが出来たと思えば、喜ばしいことですらある。

 何度目かのキスで、ビビが舌を出した。細い腕でしっかりと288号の頭を抱いて、その口中まで短い舌を伸ばす。288号の応じる舌を唇で捕えて、小刻みなキスで吸い上げながら、288号を焦らすようにその乳首を優しく抓る、気付けばビビの身体は288号の上に載っていた。枕元の粘液に再び手を伸ばすと、其れを自分の体幹から膝の辺りまでに垂らして塗り広げ、濡れた体で身を重ねる。

「えへへ……、ぬるぬる……、つめたくって、気持ちいいね。……でも、おちんちんのとこだけ、熱い」

 此れだけの身長差だ、ビビの膝の上辺りに、288号の性器は在る。ビビは悪戯をするように、ぬるぬるの右膝で288号の性器をぐりぐりと弄る。それから少し身体を降りて、自分の陰嚢に288号の性器の先を宛がうと、小さな袋の弾性で亀頭の裏側を刺激し始めた。

「ん、あつい……、タマタマ、やけどしちゃうくらい、お兄ちゃんのぉ……っ、おちんちんの先っぽ、熱いよぉ……」

 まだ少し、余裕はある。しかし腰を動かすたび、か細く弱いビビの性器の先端は288号の下腹部に擦り付けることとなるから、もう数えるのも面倒なほど射精してもなお、新しい欲に火がついてしまう。

「……ビビ……」

 288号も同様だ。

 いつでもビビの見せる、想定もしていない淫らさに心を狂わされる。一体この少年はどういう思考回路をしているのだろう……、288号よりもずっと想像力に溢れ、其れを思いのまま形にする行動力も伴って居る。ビビはひょっとしたらとても男らしい子なのかもしれないと、288号はぼんやりと考えた。陰嚢の刺激は強いものではないが、ビビが見せるあどけなく愛らしい腰の動きと下腹部に与えられる粘っこい温かさ、そして身を重ねることでしか生まれることのない体温に、引き金に手が掛かる。

「……うぁ……っ、あはぁ……っ、タマタマに、……出てる……っ、おにぃちゃんの……、せーしタマタマに……どくどくしてる……!」

 嬉しそうに、ビビが笑う。ビビと自分の下腹部で幼茎がびりりと痙攣する。射精の解放感が徐々に薄らいでいくのと反比例して、今度はじんじんと痺れるような快感が長引くようになる。ビビは濡れた288号の胸に頬を当て、声と唾液を垂らし続ける。

 もう、全てが満ちているはずだ、これだけ長いこと、性行為をしていれば。愛し合っていれば。

 それでも、ビビは起き上がる。

 288号の上で身体の向きを変えて、陰嚢にかけられた恋人の精液を指で掬い取って舐めて、288号の顔の上に足を広げる、「……お兄ちゃん……」。香ばしい色に焦げたビビの膚において、決して太陽の舌の届かない場所は淡いピンク色をして、窄まったり緩んだりを繰り返しながら、誘っている。

「……おしり、も、……ね?」

 ビビは案外恥ずかしげもなくこの体位を選ぶ。一方で288号は自分がビビの秘部を見てどういう反応を示しているかが瞭然とわかってしまう、羞恥心を煽られる。ただ、「うれしいな」、ビビは言う、「おちんちんまだ、硬くって……」。どうして最初から最後まで愉しむことだけ考えられないのだろう? しかしこんな自分だから此処までビビは、楽しめる。

「……あ」

 ビビが、何か思い出したように股下から覗く、「……ん?」、とんでもないところで眼が合う。

「……え、うっと……、あの、お尻、舐めないで、ね?」

「……え?」

「その……、まだ、お風呂、……終わってから入ろうねって、言ったでしょ?」

 何を言っているのかぽかんと口を開けてしまったのは、ビビの身体から香る匂いがどれも此れも桃の果実のように甘く馨るからだ。邪魔なのは自分の吐き出した精液の匂いぐらいで、他の何処よりも汗をかいている股下だって、「ちっとも、臭くなんかないよ?」。

「んンっ、それだけじゃ、なくってぇ……っ」

 ひた、と舌を当てた。

 汗と、その他諸々の匂い、「ほんのちょびっとだけ……、しょっぱくて、ほろ苦いかな」、きゅうっとビビが額を288号の腹部に額を埋める。今宵初めて、ビビが見せる恥ずかしそうな素振りに、下衆なる心が呼び覚まされる。

 けれど、そのまま虐め続けることが出来ないのが、やはり288号という男だった。

「お風呂、先に入る?」

 288号の問い掛けに、こっくり、頷いた。ビビも自分も同様に粘液に塗れている。順番が少し違うだけのことだと、288号はビビをひょいと抱き上げると、紅い頬にキスをした。

 288号はビビとのベッドタイムを控えて身体を綺麗に洗ったあとだ。本来ならばビビも行為の前に入浴していて然るべきだが、ジタンとカードゲームをしていたせいで省略せざるを得なくなったのだ、「どうせ終わった後また浴びんだからいいだろ」とジタンに言われて、それもそうかと納得して。

 「其処」がそういう場所であることを、四人は諒解している。だから舐めるのだって平気と思っている。一方で、自分のは舐めちゃダメ、だって俺の汚いもん、そんなわけの判らないことが「判るだろ」と押し通されてしまう空間である。

 ビビの身体を微温湯で洗い流してやって、改めて自分の身体も洗って、乾きかけた粘液が再び粘性を取り戻すから「足元、滑らないようにね」、そんなふうに言うことも忘れない。ビビはまだ少し恥ずかしそうに、床のタイルにぺたんと座って膝を抱えて見上げている。

「……ほら、ビビ」

 手を差し伸べて、立ち上がらせる。

 部屋よりも強い光の下では、ビビの膚のコントラストは一層際立った。鏡の前に立たせたビビは勃起していなくて、繰り返しの射精で少し赤らんだペニスはぷるりと無害に垂れている。

「少し足開いて、……前に手を付いて、腰を楽にして」

 恥ずかしさを抱えながらも、ビビは素直にそうする。ピンとした張りを帯び、流れる水滴が潰れぬ臀部は、しばらく眺めていたいような気と、早く挿入したい気とが同時に沸き起こるような場所だ。ビビをあまり困らせてはいけないと、その谷間にも微温湯を流し込み、軽い力で擦って洗う。指先の少し奥で、ビビの括約筋がひくつくのを感じながらも「洗う」という行為に専念することには、少しの苦労が伴った。

「……ふ……、ぅんン……」

 其の上、ビビがそんな声を出し始める。

 ただ、洗っているだけ。

 僕はただ、洗っていればいいだけ。

 そんな風に言い聞かせていても、停まらなくなってしまう、停められなくなってしまう。指先が、時折環状筋の中に忍び込む。そのたびにビビが愛らしい声で鳴く、其れを耳にして脳に這い入り込むたび、耳の孔から必要なものが漏れ出してしまう。

 「ビビ」、尾骨から右の尻へと舌を這わせた。男の子のものとは思えない滑らかな舌触りを愉しむとき、どうしても上がってしまう自分の呼吸が鬱陶しかった、「四つん這いになって。もっとよく洗ってあげるから」。言葉のままに、手をタイルの上に付いて尻を向けたビビの雪色の双丘は、落ち着きなく微かに震えていた。

 口に、微温湯を含む。

「にひゃっ」

 宛がわれた唇に、「お兄ちゃん」と呼ぶことも忘れてビビが声を上げる。

「にゃぁ……っ、やだっ、やだぁ……、なに、なにしてるのぉ……っ」

 288号は答えない、のではなく、答えられないのだ。ビビの肛門に唇を当てて、その細道に口中の微温湯を流し込むことに忙しくて。

「やぁあ……っ、おゆ、っ、いれひゃやだぁっ……!」

 咎める声にさえ興奮を覚えて、「まだ漏らしちゃダメだよ、もっと入れるんだから……」、もう一口、口に含んで、押し当てる。本来ならば固体にしろ液体にしろ出ることはあっても入ってくることはない場所だが、ビビは先天的に巧みな力の入れ具合、心とは裏腹に288号の口から微温湯を飲み込んでゆく。そしてその口が離れれば反射的に括約筋に力を入れて漏らさぬように努力だってするのだ。

 五口半ほどの湯を入れたところで、ビビが「もう無理、もう無理だよぉ」と切羽詰った声を上げたから、止めにする。ビビの手を取って立ち上がらせたら、下腹部は普段よりもほんのりと丸みを帯びているようにも見える。微かに震えながら、それでも括約筋の力だけは抜くまいとしている健気な努力に、もう、申し訳ないことをしたかと反省するより、嗜虐心がそそられる辺りに、ようやく288号も辿り着いていた。

「僕はビビのお尻が少しぐらい汚れてたって気にはしないけど」

 頬にキス、微笑を柔らかな其処へ沿わせて、「君が気になるなら、仕方ないよね?」。

 ふるふると首を振って、288号の肩を掴んで身を支える。

「もう、出ちゃう? 我慢できない?」

 ブランク同様、問うときの声音はあくまで知的で優しいものだから、ビビとしても咎める術を持たない。していることはこんなに変態的であっても、責めようがない。しかし其れは変態丸出しにして実践するジタンが相手であっても同じことだ。自分を「可愛い」とか「好きだ」とか思ってしてくれるのなら、どんなことでも許せてしまう。

「み、ちゃ、……やぁ……っ」

「おしっこするところは見せてくれたのに?」

「だってっ……、だってっ、恥ずかしいもんっ」

 泣きそうになって、言う。その必死さに胸が詰まる。

「いいよ、じゃあ、このまま出して」

 こく、とビビが頷いて、両足を開く、少し、尻を突き出すようにして、そっと括約筋の力を、緩める。

「……んん……、は、あぁ……あ……」

 ちょろちょろと、丁度小便をするような音を立てて、ビビの秘穴から湯が零れ出す。一部はその太腿を伝い、濡れたタイルの上に生温かい水溜りを作ってゆく。ビビは耳まで真ッ赤にして、288号の肩に顔を埋める。

「よく我慢したね、でも……、透き通ってる、洗わなくてもいいくらいビビのお尻の中、綺麗だったんだよ」

「え……?」

 思わず顔を上げて、気付く。288号の視線は鏡へと向かっている、そしてその鏡に向かって尻を突き出して、微温湯を排出していたことにビビはようやく気付く。

「や、やぁっ、見ちゃやっ、あっ……ンっ……」

 慌てて停めようとするのに、ビビの力は空回る。泡を伴う音を立てながら、自分の肛門から湯が噴き出しているのを288号はほとんど性欲を感じさせぬ目で眺めているのだ。

 眩暈を覚える。しかし、鋭敏になった膚の感覚は、嫌味なほどに288号の指が頬を撫ぜる感触に、震えてしまう。……早く、早く、出し切って、こんなの、恥ずかしい……。

「うぁっ……」

 水音のユニゾン、縮み上がったビビの幼茎の先から、まるで同じ音を立てて黄色いせせらぎが流れ始めた。ほんの小さく288号が笑って、

「すごいね……、ビビ、前からも後ろからもおしっこしてる」

「う、やっ、と、まらなっ……、おひっことまらないよぉっ」

「うん、停まらないね、ビビのおしっこ、いっぱい出てるね……」

 独特の匂いの立ち込める浴室で、ビビを困惑の坩堝へと落とす。まだ排泄が停まっていないのに、キスをする。失禁しながら与えられる口付けに、倒錯、「可愛いよ、ビビ……。本当にすごく、可愛い」、また、……繋がってしまう。

 全てを出し切ったビビの性器は一体幾度目か、硬く勃ち上がっていた。もちろん288号のペニスもくっきりと熱を帯びている。

「……もお……、もお、お尻……、だいじょぶだからっ、おちんちんっ、お兄ちゃんのおちんちんっ、欲しいっ」

「……ん?」

「だって、だって……、だって、いっぱい我慢したもんっ、だからぁ……」

 見っとも無いなどと、言えるだろうか。浅ましいなどと。

「心配しないで。僕も同じだ、我慢なんて出来ないから」

 抱き締めたい欲を堪えることも出来なかった、ビビのことを抱き締めて、何度も何度もキスをする。愛に基づく行為一つひとつ、してみせるその表情は本人の思いとは裏腹に清冽な美しさを伴って居る。ビビが涙眼でこくんと頷く、その銀の瞳から涙が零れる直前にキスをして、吸い取る。つい一分前まで少年の肛門に直接口を付けて温水浣腸をしていた男と同じ顔で。

「ベッドまで戻るかい?」

 んん、と首を横に振る、「ここでいい……」。

 見下ろした、細い腰、小さな尻、はっきりとした膚の濃淡。掌で谷間をそっと開き、肉の塊を押し当てる。鏡に手を付いて目前の、自らの顔から目を逸らしたところに、288号の顔が在る。少しでも冷静になれば自分の恋人が自分と同様かそれ以上に興奮しているのは明白なのに、ビビはその美しい顔が自分の泣き顔を見ていることに射抜かれるような思いを味わう。

 288号の目が、局部へ降りる。

「……ビビのお尻、ヒクヒクしてるね。僕のおちんちん、欲しがってるんだね」

 主導権を握り込めば此処までのことが言える。288号はほとんどもう自覚もないままにビビの肛門の中に指を入れ、其処が生甘い力で締め付けてくるビビの反応に、子供のように無邪気に笑う。

「お尻は冷んやりしてもう乾き始めてるのに、中は温かくてぬるぬるしてる。……ビビが弄られてお漏らししちゃうのは此処?」

「んきゅっ……んっ、も、ぉっ、しないもんっ、おしっこ空っぽだもん……」

「そうだよね、……タマタマの中も空っぽかな」

 ふるふる、ビビが首を振る、「出ないかもだけど……、ちゃんと、できるもんっ」。

 いい子、と背中から尻まで掌が伝わせた。

「ふあぁああん……!」

 這入るというよりは、「繋がる」という言葉を使いたい。そんな甘ったるい言葉を選べる自分で、少し得意になりそうなぐらい、288号の思考は煮えて滾っている。見下ろせば水着の跡の残った臀部、ウエストラインはくっきりと膚の色の濃淡を刻み白いところはあくまでも白いが、双子の丘は薄っすらと上気していてえもいわれぬ甘い匂いが漂うようだ。埋めて突いて、少し引いて、自分の肉茎を「離したくない」とでも言うように粘っこく絡んで露わになる腸壁の内側の淫ら過ぎる紅色を、決して血で濁したりしないようにと念じながらも、288号の雄性は回りだして停まらなくなる。

 それでも、

「……大丈夫? ビビ、……痛くない?」

 訊けるからこそ彼は賢者である。臆病すぎる賢者である。

「んっ、んんっ、きもちぃっ、しゅ、ごっ、いっ……ひ、ぃンっ、にゃっ、かぁ……、ら、ひっ、ンぃ……!」

 288号は――言葉に出来なくてもいい君の唇から零れる音そのものがいとおしい――ビビの美しさを賛美するために一体どれだけの言葉を僕に用意できるだろうと考えはじめていた。言霊遣いのブランクをして、「可愛い」以外言わせない雪少年に自分のような愚鈍な者に一体何が。

「……愛してる」

 つまりこういうことだ、「僕は、君に、平伏します」、言葉さえ用意できなくなって、そんなことを口走ってしまうくらい、僕は、君に。

 直腸壁の微細な凹凸、与えられる圧迫、全て全て、漏らさず身体の芯に受け止める。

 ああ、もう、すっげー……、超、やばい、めちゃくちゃ、可愛い……。

 こういう言葉でいいのだと其の瞬間288号は肯定した。

「に、ひゃっ、いっ……いっ、きゅ、っ、も、っ、いくぅ……!」

 やはりビビの性器の先端からはもう何も出なかった。ただ先の丸い刃のような快感に尿道を痺れさせるばかりの、そしてビビ自身の快楽よりも288号に圧迫を与える意義の方が大きいような「射精」。

 それでも、

「……ビビ……っ」

 自分で恋人が息を詰まらせる、それだけで震えるほど嬉しい「射精」。腰、止めなくっていい、止めなくていいってば、言いたくとも言葉にはならないし、結局止めてしまう、それでも288号はタイルの上に腰を下ろし、ビビと正対して再び繋がった。

 其れは――あなたの顔が見たいから――互いの――君の顔が見たいから――要請に基づいて。

 当然、抱き締めあう腕が在る、いっそ獣のように愛し合う、夜をもう少し先へと延ばす、時間の一欠けらさえ零したくないと求める野性の法則に基づいて、288号はビビの中に少量の精液を、それでも力強く射ち込んだ。


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